スペインで下痢になったら|現地で買える薬と買い方を薬剤師が解説
スペインを旅行・出張中に突然の下痢に見舞われると、慣れない土地での対処に戸惑う方も多いでしょう。本記事では、博士(薬学)取得の薬剤師が、スペイン現地で購入できるOTC医薬品の具体的なブランド名・成分・用量から、薬局でのスペイン語・英語フレーズ、重症度の自己判定チェックリスト、医療機関の探し方、帰国後の観察ポイントまで、網羅的に解説します。
スペインで下痢になる原因|気候・食文化・水質から感染症まで
スペインは地中海性気候の温暖な国ですが、日本と異なる環境要因が重なり、渡航者に下痢が生じやすい状況があります。以下に主要な原因を詳しく解説します。
硬水による腸内環境の変化
スペインの水道水は地域によって硬度が大きく異なります。特にマドリードや内陸部は硬水(カルシウム・マグネシウム含有量が多い)であることが多く、日本の軟水に慣れた腸内細菌叢が急激な変化に対応できず、腸の蠕動運動が乱れやすくなります。これは医学的に「旅行者下痢症(Traveler's Diarrhea)」の一因とされており、体質によっては水道水を少量飲んだだけでも症状が出ることがあります。ミネラルウォーターに切り替えるだけで改善するケースも少なくありません。
スペイン料理の油脂・香辛料
スペイン料理はオリーブオイルを豊富に使うパエリャ(Paella)、コロッケ(Croquetas)、チョリソーを使った煮込み料理など、油脂分が日本料理より高い食事が中心です。胆汁の分泌量が追いつかず、消化不良から脂肪性下痢が起きることがあります。また、バルセロナなどカタルーニャ地方ではニンニクを多用するアリオリソースが日常的に使われており、消化器が弱い方には刺激になることがあります。
食中毒(細菌性・ウイルス性)
スペインでは夏季(6〜9月)を中心に気温が40℃近くまで上昇する地域もあり、食品の保管温度管理が不十分な場合に細菌性食中毒リスクが上昇します。サルモネラ菌(Salmonella)はスペインでも主要な食中毒起因菌であり、卵を使った料理(トルティーリャ・エスパニョーラなど)での感染事例が報告されています。カンピロバクター(Campylobacter)も鶏肉料理を通じた感染が多く見られます。夏のビーチリゾートでは生牡蠣や貝類を通じたノロウイルス感染にも注意が必要です。
旅行者下痢症(TD)の病原体
旅行者下痢症全体の約80%は細菌性であり、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)が最多です。スペインはETEC感染リスクが「中程度」の国に分類されており、衛生状態の良い国ではあるものの、大勢が集まるフェスティバルや屋外市場での飲食には注意が必要です。
疲労・時差・生活リズムの変化
スペインはサマータイム採用国であり、日本との時差は概ね7〜9時間(季節による)。長距離フライト後の時差ボケや睡眠不足により、自律神経バランスが崩れ腸管の運動が過活動または低活動になることがあります。旅行の興奮や歩き疲れも腸への影響を与えます。
過剰なアルコール摂取
スペインのビール(Cerveza)やサングリア(Sangría)は日本より安価で、気候が暑いため飲みすぎてしまうことがあります。アルコールは腸管の透過性を高め、腸の蠕動を亢進させるため、1日に多量飲酒した翌日に水様性下痢が起きるケースがよく見られます。
重症度判定チェックリスト|緊急受診・準緊急・経過観察の3段階
下痢の対処法は重症度によって大きく異なります。以下のチェックリストを使って、現在の状態を判定してください。
🚨 レベル3:緊急受診(Urgencias/救急外来)が必要
以下の1つでも該当する場合は、市販薬での自己治療は禁忌です。直ちにスペインの救急外来(Urgencias)または日本大使館に連絡してください。
- 便に鮮血または黒色のタール便が混じっている
- 38.5℃以上の高熱が下痢と同時に生じている
- 腹部に持続的な激しい痛み・硬直がある(板状硬)
- 6時間以上にわたり水を飲んでも嘔吐してしまう
- 意識がもうろうとしている、激しい目眩がある
- 尿が8時間以上出ていない、または極端に濃い
- 皮膚をつまんで離しても元に戻らない(著明な脱水)
- 乳幼児・高齢者・免疫抑制状態で下痢が6時間以上継続
⚠️ レベル2:準緊急(24時間以内に医師相談)
すぐに命に関わるわけではありませんが、翌日中にCentro de Salud(保健センター)か民間クリニックへの受診を強く推奨します。
- 38℃以上の発熱が下痢と同時にあるが鮮血便はない
- 24時間以上、改善が見られない
- 1日に10回以上の頻繁な下痢
- 便に粘液(ゼリー状のもの)が混じっている
- 持病(糖尿病・IBD・免疫抑制療法中)がある
- 妊娠中である
- 市販薬を使用しても48時間改善しない
✅ レベル1:経過観察(自己処置可)
以下の条件をすべて満たす場合は、現地OTC薬と電解質補給で様子を見ることができます。
- 発熱なし、または37.5℃未満
- 血便・粘血便なし
- 軟便〜水様便だが1日4〜6回程度
- 水分を飲める(口から補給できる)
- 腹部不快感はあるが激痛ではない
- 症状が24時間以内に始まった
薬剤師メモ: 経過観察中も脱水予防は最優先です。Suero Oral(経口補水液)を1〜2袋確保してから自己処置を開始してください。
現地薬局で買えるOTC薬 一覧
スペインの薬局(Farmacia)はどの街にも密度高く存在し、処方箋なしで購入できる下痢関連OTC薬が充実しています。以下の表に主要製品をまとめます。
OTC薬 比較表
| ブランド名 | 有効成分(一般名) | 規格・剤形 | 用法用量(成人目安) | 価格目安 | 入手しやすさ |
|---|---|---|---|---|---|
| Imodium | ロペラミド塩酸塩(Loperamida) | 2mg/カプセル | 初回2カプセル(4mg)、以後1カプセルを排便ごと、1日最大8mg | €3〜5 | ほぼ全薬局 |
| Fortasec | ロペラミド塩酸塩 | 2mg/カプセル | Imodiumと同様 | €3〜4 | ほぼ全薬局 |
| Pepto-Bismol | サリチル酸ビスマス(Subsalicilato de bismuto) | 262mg/錠または液剤 | 1回2錠(または15mL)、1日4回、食間 | €4〜6 | 大型薬局・パラファルマシア |
| Smecta(スメクタ) | ジオクタヘドラルスメクタイト(Diosmectita) | 3g/包(粉末) | 1回1包を水100mLに溶解、1日3回 | €5〜7 | ほぼ全薬局 |
| Ultralevura | サッカロミセス・ブラルディ(Saccharomyces boulardii) | 250mg/カプセルまたは粉末 | 1回1〜2カプセル、1日2回 | €6〜9 | 大型薬局 |
| Suero Oral(各ブランド) | ナトリウム・カリウム・ブドウ糖(WHO配合) | 粉末1包/液体ボトル | 1包を200〜250mLの水に溶解して適宜摂取 | €1〜2/包 | 全薬局・一部スーパー |
| Tanagel | タンニン酸アルブミン(Tanato de albúmina) | 500mg/錠 | 1回1〜2錠、1日3〜4回 | €4〜6 | 多くの薬局 |
価格はあくまで目安です。 薬局の立地(観光地・市街地など)や販売形態により異なります。
各製品の薬学的解説
Imodium / Fortasec(ロペラミド配合製剤)
ロペラミドはオピオイド受容体(μ受容体)に作用し、腸管の蠕動運動を抑制するとともに腸管分泌を減少させ、肛門括約筋の緊張を高めます。腸管からの全身吸収はほとんどなく、中枢神経作用は通常用量では生じません。スペインで最も広く知られた下痢止め薬であり、Farmaciaの窓口で「Tengo diarrea」と伝えれば多くの場合まず提案される製品です。
重要な注意点: 細菌性腸炎(高熱・血便を伴うもの)では、腸管内の毒素や菌を体外に排出する生理的な下痢を止めてしまい、症状が悪化するリスクがあります。レベル2・3に該当する場合は使用しないでください。
Smecta(ジオクタヘドラルスメクタイト)
天然粘土鉱物由来の吸着剤で、腸管粘膜を物理的に被覆・保護し、細菌毒素やウイルスを吸着して体外に排出します。ロペラミドのように腸管運動を抑制しないため、細菌性下痢の初期でも比較的安全に使用できるとされています。フランス発祥の製品ですが、スペインでも広く流通しています。粉末を水に溶かして飲むため、小児にも使用しやすい剤形です。
Pepto-Bismol(サリチル酸ビスマス)
ビスマスは軽度の抗菌作用、抗分泌作用、粘膜保護作用を持ちます。ヘリコバクター・ピロリへの作用でも知られ、軽度の旅行者下痢症に対して予防的・治療的な効果が期待されます。サリチル酸成分を含むため、アスピリンアレルギーのある方、抗凝固薬(ワルファリン等)を服用中の方は使用前に薬剤師に相談してください。服用後に舌・便が黒くなることがありますが、これはビスマスと硫黄化合物の反応によるもので無害です。
Ultralevura(サッカロミセス・ブラルディ)
酵母菌由来のプロバイオティクスで、抗生物質関連下痢症や旅行者下痢症に対してエビデンスが蓄積されている菌株です。腸管内でClostridium difficileや大腸菌等の病原体の定着を阻害し、免疫応答を調節します。抗生物質服用中でも死滅しない(抗生物質耐性)ため、抗生物質を処方された際の腸内環境保護にも有用です。
Suero Oral(経口補水液)
WHOの推奨する電解質・糖質配合の経口補水液です。下痢による電解質喪失(特にナトリウム・カリウム)と水分を同時に補給できる、最も根拠のある治療的介入のひとつです。スペインの薬局では複数のブランドから販売されており、粉末タイプと液体タイプがあります。「市販のスポーツドリンクで代用できる」と思われがちですが、スポーツドリンクは糖分が多くナトリウム濃度が不十分なため、医療用経口補水液の代替にはなりません。
現地語での症状表現・薬局での買い方フレーズ
スペインの薬局スタッフは英語を話せる場合も多いですが、基本的なスペイン語フレーズを知っておくと安心です。
症状を伝えるフレーズ
| 日本語 | スペイン語 | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 下痢です | Tengo diarrea | テンゴ ディアレア |
| 今朝から下痢が続いています | Tengo diarrea desde esta mañana | テンゴ ディアレア デスデ エスタ マニャーナ |
| 昨日から下痢が続いています | Tengo diarrea desde ayer | テンゴ ディアレア デスデ アジェール |
| 水っぽい便です | Las heces son líquidas | ラス エセス ソン リキダス |
| 熱はありません | No tengo fiebre | ノ テンゴ フィエブレ |
| 血便はありません | No hay sangre en las heces | ノ アイ サングレ エン ラス エセス |
| 腹痛もあります | También tengo dolor de estómago | タンビエン テンゴ ドロール デ エストマゴ |
| 吐き気もあります | También tengo náuseas | タンビエン テンゴ ナウセアス |
| 子ども用が欲しいです | Lo necesito para niños | ロ ネセシト パラ ニニョス |
| これをください | Me da esto, por favor | メ ダ エスト ポル ファボール |
| いくらですか? | ¿Cuánto cuesta? | クアント クエスタ? |
薬局での会話例
あなた:
"Buenos días. Tengo diarrea desde esta mañana." (ブエノス ディアス。テンゴ ディアレア デスデ エスタ マニャーナ。) おはようございます。今朝から下痢が続いています。
薬剤師(よく聞かれる質問):
"¿Tiene fiebre?"(ティエネ フィエブレ?)→ 熱はありますか? "¿Hay sangre en las heces?"(アイ サングレ エン ラス エセス?)→ 血便はありますか? "¿Cuántos años tiene?"(クアントス アニョス ティエネ?)→ 何歳ですか?
あなたの答え:
"No, no tengo fiebre."(ノ、ノ テンゴ フィエブレ)→ 熱はありません。 "No hay sangre."(ノ アイ サングレ)→ 血便はありません。 "Treinta y cinco años."(トレインタ イ シンコ アニョス)→ 35歳です。
英語でのフォールバックフレーズ
スペイン語に自信がない場合、以下の英語フレーズも活用できます。
I have diarrhea since this morning.(アイ ハヴ ダイアリア シンス ディス モーニング)No fever, no blood in my stool.(ノー フィーバー、ノー ブラッド イン マイ ストゥール)Do you have any medicine for diarrhea?(ドゥ ユー ハヴ エニー メディシン フォー ダイアリア?)Which one is the most common?(ウィッチ ワン イズ ザ モースト コモン?)Can you write the name down?(キャン ユー ライト ザ ネーム ダウン?)Is this safe to take with other medicines?(イズ ディス セーフ トゥ テイク ウィズ アザー メディシンズ?)
スペインの医療事情|公立・私立・救急・日本語対応
医療システムの概要
スペインは国民保健サービス(Sistema Nacional de Salud: SNS)による公的医療制度を持つ国です。EU市民には無料または低額で医療が提供されますが、日本人旅行者の場合は原則として費用が発生します。旅行者保険(海外旅行保険)への加入を強く推奨します。
医療機関の種類と使い分け
| 機関種別 | スペイン語名 | 特徴 | 費用(旅行者) |
|---|---|---|---|
| 保健センター | Centro de Salud | 軽症・中等症向け、要予約が多い | 有料(保険適用で一部カバー) |
| 救急外来 | Urgencias | 24時間対応、重症者優先 | 有料(保険適用で一部カバー) |
| 私立クリニック | Clínica Privada | 予約なしで受診しやすい、英語対応あり | 有料(高め) |
| 薬局 | Farmacia | 軽症の相談・OTC購入 | OTC薬の購入費のみ |
救急・緊急時の連絡先
- スペイン救急番号:112(欧州共通緊急番号、日本語オペレーター対応は状況による)
- 警察:092(市警)/ 091(国家警察)
- 在スペイン日本国大使館(マドリード):+34-91-590-7600
- 在バルセロナ日本国総領事館:+34-93-280-3433
英語・日本語対応施設について
マドリード、バルセロナ、マラガなど主要観光都市では英語対応可能な私立クリニックが複数存在します。ただし事前に電話で英語対応の可否を確認することを推奨します。日本語対応の医療機関は限られており、常設ではないため、日本大使館や各地の日本人コミュニティの情報を参照してください。
薬局(Farmacia)の見つけ方
スペインの薬局は緑色の十字マーク(Cruz Verde)を掲げています。夜間・日曜日はFarmacia de Guardiaと呼ばれる当番薬局が近隣で1店舗以上開いています。当番薬局の場所はFarmaciaの扉に掲示されているほか、「Farmacia guardia [都市名]」でGoogle検索すると表示されます。
日本から持参すべき薬と現地調達のリスク
薬剤師の視点:渡航前の準備
スペインはpharmacoAccessが「easy」の国であり、OTC医薬品の現地調達は比較的容易です。しかし渡航前に以下の準備をしておくことで、症状が起きた初日から迅速に対応できます。
持参推奨の日本OTC薬
| 日本の製品名 | 有効成分 | スペイン現地品との対応 | 持参の優先度 |
|---|---|---|---|
| ストッパ下痢止めA | ロペラミド塩酸塩1mg | Imodium/Fortasecと同成分 | ★★☆(現地調達可) |
| 新ビオフェルミンS | ビフィズス菌・乳酸菌・ラクトバチルス(3菌種) | Ultralevura(異なる菌株)で代替可 | ★★★(日本特有の菌株) |
| セイロガン糖衣錠 | 木クレオソート | 現地同等品なし | ★★★(持参推奨) |
| OS-1(粉末タイプ) | 経口補水塩 | Suero Oralで代替可 | ★★☆(現地調達可) |
| 正露丸 | 木クレオソート | 現地同等品なし | ★★★(持参推奨) |
注意: 日本特有の生薬・菌株を含む製品はスペインで入手困難です。特に正露丸やセイロガン糖衣錠は渡航前に多めに持参することを推奨します。
持参時の注意事項
- 液体薬は機内持ち込みの液体制限(100mL以内)に注意
- 錠剤・カプセル剤は処方薬でなければ問題ありませんが、量は個人使用の範囲内(概ね1ヶ月分程度)に留めてください
- 英文の成分表・説明書があると税関での確認がスムーズです
- スペインはEU加盟国のため、日本OTC薬の持ち込みに関して特別な申告義務は原則ありませんが、量が多い場合や麻薬・向精神薬を含む薬は別途確認が必要です
現地調達のリスクと注意点
スペインの公式薬局(Farmacia)で購入する分には品質面の心配は不要です。ただし以下の点に注意してください。
- インターネット・観光地の露天商からの購入は厳禁: 偽造医薬品の流通が確認されており、成分量が不正確または有害物質が含まれる危険があります
- 正規薬局の見分け方: 緑の十字マークが目印。スペインでは薬局の開設に厳格な規制があり、薬剤師常駐が義務付けられています
- ジェネリック医薬品(Medicamento Genérico): スペインではジェネリックの品質は公定で管理されており、ブランド品と同等の有効性が期待できます
避けるべき薬・注意が必要な成分
細菌性腸炎が疑われる場合のロペラミド
発熱(38℃以上)や血便・粘血便を伴う下痢では、ロペラミドによる腸管運動抑制が毒素・菌の排出を妨げ、症状を悪化させる可能性があります。このような場合はロペラミド系製品(Imodium、Fortasec等)の使用を避け、医師の診察を受けてください。
抗生物質の自己投与
スペインではシプロフロキサシン(Ciprofloxacino)やアジスロマイシン(Azitromicina)などの抗生物質は処方箋(receta médica)が必要です。これらを旅行先で無処方で入手しようとすること自体が困難であり、また自己判断での服用は耐性菌を生む原因になります。重症の細菌性下痢が疑われる場合は医師の診察を受けてください。
アスピリン感受性がある方のPepto-Bismol
サリチル酸ビスマスはサリチル酸を含むため、アスピリン(アセチルサリチル酸)にアレルギー・不耐性がある方には禁忌です。また、抗凝固薬(ワルファリン等)やメトトレキサートとの相互作用があるため、これらを服用中の方は服用前に薬剤師に相談してください。
乳幼児・小児へのロペラミド
2歳未満の乳幼児への使用は禁忌です。2〜12歳の小児への使用は体重換算での用量調整が必要であり、薬剤師または小児科医への相談を必ず経てください。小児の下痢治療では電解質補給(Suero Oral)と医師への相談が最優先です。
帰国後の観察ポイント|輸入感染症を見逃さないために
スペインから帰国後も症状が続く場合、または帰国後に新たに下痢が始まった場合には注意が必要です。
帰国後に注意すべき輸入感染症
| 感染症名 | 潜伏期間 | 特徴的な症状 | 受診の目安 |
|---|---|---|---|
| 腸チフス・パラチフス | 1〜3週間 | 持続する発熱、比較的ゆっくりした脈拍、薔薇疹 | 帰国後発熱+下痢で受診 |
| 旅行者下痢症(遷延型) | — | 帰国後も2週間以上続く下痢 | 感染症内科受診 |
| ジアルジア症 | 1〜3週間 | 脂肪便、鼓腸、悪臭便 | 便検査が必要 |
| 赤痢アメーバ | 数週間〜数ヶ月 | 粘血便、大腸炎 | 感染症内科受診 |
| カンピロバクター腸炎 | 2〜5日 | 発熱・下痢・腹痛(ギラン・バレー症候群の前駆となることも) | 症状遷延時に受診 |
帰国後に受診すべき症状
- 帰国後2週間以上経過しても下痢・軟便が続く
- 帰国後に38℃以上の発熱が出現した
- 体重が著明に減少した(1週間で2kg以上など)
- 便に血液・粘液が混じる
- 腹部の膨満感・ガスが異常に多い
受診先と伝えるべき情報
帰国後はまず内科または感染症内科を受診し、以下の情報を必ず伝えてください。
- スペインに渡航していた期間(出発・帰国日)
- 現地での食事内容(生食・屋台食の有無)
- 症状が始まった時期(渡航中か、帰国後か)
- 現地で服用した薬(ブランド名・成分名)
- 他に現地で動物接触・川での水泳等をしたか
感染症専門医または旅行者外来(Travel Medicine Clinic)では便培養検査・寄生虫検査等を実施することができます。
薬剤師からの総括アドバイス
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経口補水液(Suero Oral)を最初に確保する: 薬局に着いたらまずこれを購入してください。下痢による脱水予防は、どの薬よりも優先順位が高い処置です。
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Smectaは細菌性・ウイルス性どちらにも比較的安全: 原因が分からない初期段階でも使用しやすい製品です。ロペラミドより先に試す選択肢として検討する価値があります。
-
「下痢止め薬=腸を止めればいい」ではない: 腸管蠕動は体が病原体や毒素を排出するための生理機能です。状況に応じた薬の選択が重要で、重症サインがある場合は薬で症状を抑えず医師の診察を優先してください。
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渡航前の海外旅行保険加入を必ず: スペインの私立医療機関での診察料・薬代は日本の感覚より高額になる場合があります。
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スペイン語のフレーズを1〜2文だけでも練習しておく: 「Tengo diarrea.(テンゴ ディアレア)」この一文だけでも薬剤師は適切に対応してくれます。
参考文献
-
World Health Organization (WHO). "The treatment of diarrhoea: a manual for physicians and other senior health workers." WHO Press. https://www.who.int/publications/i/item/9241593180
-
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Diarrhea." CDC Yellow Book 2024. https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2024/preparing/travelers-diarrhea
-
厚生労働省検疫所(FORTH). 「旅行者下痢症」. https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2012/04231538.html
-
外務省. 「スペイン 感染症・医療情報」海外安全情報. https://www.anzen.mofa.go.jp/
-
Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios (AEMPS). Consulta de medicamentos autorizados en España. https://cima.aemps.es/cima/publico/home.html
-
Riddle MS, et al. "Guidelines for the prevention and treatment of travelers' diarrhea: a graded expert panel report." Journal of Travel Medicine, 2017. https://doi.org/10.1093/jtm/tax026
-
DuPont HL. "Bismuth subsalicylate in the treatment and prevention of diarrheal disease." Drug Intelligence & Clinical Pharmacy, 1987;21(9):687-93.
免責事項
本記事は博士(薬学)を取得した薬剤師による薬学的情報の提供を目的としており、医師による診断・治療の代替となるものではありません。個々の症状・体質・服用中の薬剤によって適切な対処法は異なります。重症サインがある場合や不安な症状が続く場合は、必ず現地の医師または帰国後の医療機関を受診してください。掲載した薬剤の価格・入手可能性は変動することがあります。渡航前には最新の情報を現地薬局または医療機関でご確認ください。
監修:薬剤師(博士(薬学))