イスラエルで発熱になったら|現地薬局で買える薬と買い方を薬剤師が解説
イスラエルへの渡航中に発熱した場合、適切な薬を選び正しく使用することが重要です。本記事では、博士(薬学)を取得した薬剤師の立場から、現地薬局で入手できるOTC(一般用医薬品)の具体的な情報、ヘブライ語での症状表現、重症度の判断基準、そして帰国後に注意すべき輸入感染症まで網羅的に解説します。
イスラエルで発熱が起こりやすい原因
気候・環境的要因
イスラエルは国土が小さいにもかかわらず、地中海性気候・砂漠性気候・半乾燥気候など多様な気候帯が混在する特異な国です。テルアビブ沿岸部は温暖な地中海性気候ですが、エルサレムは標高約800mに位置するため、夏でも夜間は気温が急激に下がり、昼夜の寒暖差が15℃以上に達することも珍しくありません。
5月から9月の夏季は、気温が35〜40℃を超える日が続きます。死海周辺(海抜マイナス430m)や南部のネゲブ砂漠では体感温度がさらに高くなります。この環境下では脱水と熱中症が発熱の大きな引き金になります。一方、3〜4月と10〜11月には「ハマシーン(Hamsin)」と呼ばれる砂漠から吹く熱風が到来し、砂埃による上気道刺激・気道炎症が発熱を招くことがあります。
感染症的要因
イスラエルでは、ウイルス性上気道感染症(いわゆる風邪)とインフルエンザが渡航者の発熱原因として圧倒的多数を占めます。特に冬季(12〜2月)はインフルエンザウイルスが流行し、観光スポットや公共交通機関での接触感染リスクが高まります。
食事・水に関しては、イスラエルの水道水は高度に浄化されており飲料水として問題ないとされていますが、屋台や観光地周辺の飲食店で提供される食事に起因する軽度の腸炎(細菌性)が、発熱を伴うことがあります。腸チフスやA型肝炎は過去と比べ大幅に減少していますが、渡航前のワクチン接種は推奨されます。
渡航者特有の要因
日本からイスラエルへの直行便は限られており、ヨーロッパや中東経由で飛行時間は合計14〜18時間に及びます。長時間のフライトによる睡眠不足・時差ボケ(約6〜7時間の時差)は免疫機能を低下させ、ウイルス感染への感受性を高めます。機内の低湿度(湿度15〜20%程度)による粘膜乾燥も感染リスクを上げる一因です。また、観光で西の壁(嘆きの壁)、ヤド・ヴァシェム、マサダなど屋外スポットを長時間歩き回ることによる体力消耗も発熱の遠因になりえます。
まとめると主な原因
- ウイルス性上気道感染症(風邪・インフルエンザ):最多
- 熱中症・脱水(夏季・死海周辺)
- 細菌性腸炎に伴う発熱
- 長距離フライトによる免疫低下
- ハマシーンによる気道刺激
- アレルギー反応(花粉・砂塵)
重症度判定チェックリスト
発熱時の対応を誤ると重篤化するリスクがあります。以下の3段階で自身の状態を確認してください。
🔴 緊急受診(直ちに救急病院へ)
以下の症状がひとつでも該当する場合は、自己判断での服薬は行わずに直ちに救急受診してください。
- 体温39.5℃以上が続き、解熱薬を服用しても体温が下がらない
- 意識が朦朧とする、言葉がうまく出てこない、呼びかけに反応が鈍い
- 全身に広がる紅斑・点状出血(特に体幹・四肢)
- 激しい頭痛と項部硬直(顎を胸に近づけようとすると痛みで曲げられない)
- 呼吸困難、胸の痛み、唇・爪がチアノーゼ状態
- けいれん発作
- 尿量が極端に少ない、もしくは尿がまったく出ない状態が6時間以上
- 直近4週間以内にサブサハラアフリカ・東南アジアへの渡航歴があり、高熱が続く(マラリアを疑う)
🟡 準緊急(24時間以内に医療機関へ)
- 38.5℃以上の発熱が24時間以上継続している
- OTC解熱薬を正しく服用しても4時間以内に再び38.5℃以上に戻る
- 嘔吐・下痢を伴い、水分が十分に摂れない状態が12時間以上
- 激しい咽頭痛(扁桃炎・溶連菌感染を疑う)
- 耳痛・耳閉感(中耳炎を疑う)
- 目の充血と大量の眼脂(結膜炎)
- 排尿時痛、尿の混濁(尿路感染症を疑う)
- 渡航前にインフルエンザワクチンを未接種で、高熱と全身筋肉痛が急激に発症した場合
🟢 経過観察(OTC薬で対処可能)
- 体温37.5〜38.5℃の範囲
- 食欲低下はあるが水分は摂れている
- 軽度の鼻水・鼻閉・軽い咽頭痛を伴う
- 解熱薬服用後に体温が正常域まで下がり、全身状態が改善する
- 発熱から48時間以内で症状が緩やかに推移している
薬剤師メモ: 体温計を持参していない場合、現地薬局でデジタル体温計(Digital thermometer)を購入できます。Super-Pharmなど大型薬局ではBeurer・Omronブランドの体温計が販売されています。
現地薬局で買えるOTC薬一覧
イスラエルの薬局は医療保険系列(Clalit、Maccabi、Leumit)と独立系・チェーン系(Super-Pharm等)に大別されます。以下に実在が確認されているブランドを中心に示します。なお価格はあくまで目安であり、時期・店舗により変動します(1シェケル=約37〜40円、2024年時点の概算)。
| ブランド名 | 有効成分(一般名) | 1錠あたりの含量 | 標準用法・用量 | 価格目安 | 主な入手先 |
|---|---|---|---|---|---|
| Panadol(パナドール) | アセトアミノフェン | 500mg | 1〜2錠を4〜6時間ごと、1日最大8錠 | 15〜30シェケル(12錠入り) | Super-Pharm、各薬局チェーン |
| Tylenol(タイレノール) | アセトアミノフェン | 500mg | 1〜2錠を4〜6時間ごと、1日最大8錠 | 20〜35シェケル(24錠入り) | Super-Pharm、都市部薬局 |
| Acamol(アカモル) | アセトアミノフェン | 500mg | 1〜2錠を4〜6時間ごと、1日最大8錠 | 15〜25シェケル | Clalit薬局、Maccabi薬局 |
| Advil(アドビル) | イブプロフェン | 200mg | 1〜2錠を4〜6時間ごと、1日最大6錠(1,200mg) | 18〜30シェケル(24錠入り) | Super-Pharm、都市部薬局 |
| Nurofen(ヌロフェン) | イブプロフェン | 200mg | 1〜2錠を4〜6時間ごと、1日最大6錠(1,200mg) | 20〜35シェケル(12錠入り) | Super-Pharm、Leumit薬局 |
| Voltaren Rapidard(ボルタレン ラピダード) | ジクロフェナクカリウム | 25mg | 用法は添付文書に従うこと(解熱目的での単独使用は非推奨) | 参考まで | 要薬剤師確認 |
薬剤師による選び方のポイント
アセトアミノフェン系(Panadol・Tylenol・Acamol)が第一選択
渡航中の発熱にはアセトアミノフェン500mgを第一選択として推奨します。理由は以下の通りです。
- 胃粘膜への刺激が少なく、空腹時でも服用可能
- 妊娠中・授乳中でも使用できる
- 高齢者・腎機能への影響がイブプロフェンより軽微
- 他の薬との相互作用が比較的少ない
- 1日最大4,000mgまで使用可能(1回1,000mgまで)だが、渡航中は1回500〜1,000mgで対処できるケースがほとんど
イブプロフェン系(Advil・Nurofen)が有効なケース
全身の筋肉痛・関節痛を強く伴う場合(インフルエンザ様症状)や、解熱とともに抗炎症作用を期待したい場合にはイブプロフェン200〜400mgが有効です。ただし以下には使用を控えてください。
- 空腹時の服用(食後または食事とともに服用すること)
- 消化性潰瘍の既往がある方
- 腎機能低下が疑われる脱水状態の方
- 妊娠中(特に妊娠後期)の方
- アスピリン喘息の既往がある方
Acamolについて
Acamol(アカモル)はイスラエル発祥のアセトアミノフェン系OTC薬で、Clalit(クラリット)やMaccabi(マッカビ)などの医療保険系列薬局で特によく取り扱われています。PanadolやTylenolと同一成分であり、効果・安全性に差はありません。価格面でやや安価な場合があります。
現地語での症状表現・薬局フレーズ集
イスラエルの都市部(テルアビブ・エルサレム・ハイファ)の薬局スタッフは英語が堪能なケースが多いです。しかし郊外や小規模薬局ではヘブライ語が必要になることがあります。以下のフレーズを活用してください。
基本フレーズ一覧
| 日本語 | ヘブライ語表記 | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 発熱しています | יש לי חום | イェシュ リ ホム |
| 体温が38℃あります | יש לי חום של 38 מעלות | イェシュ リ ホム シェル シュロシム ヴェ シュモネ マアロット |
| 解熱剤をください | אני צריך/צריכה תרופה להורדת חום | アニ ツァリフ(男性)/ ツリハ(女性)トゥルファ レホラダット ホム |
| アセトアミノフェンはありますか | יש לכם פרסטמול? | イェシュ ラヘム パラセタモル? |
| 頭が痛いです | יש לי כאב ראש | イェシュ リ ケエブ ロシュ |
| 喉が痛いです | יש לי כאב גרון | イェシュ リ ケエブ ガロン |
| 妊婦(または授乳中)です | אני בהריון / מניקה | アニ ベヘライオン / メニカ |
| 子ども用の薬が必要です | אני צריך/צריכה תרופה לילד | アニ ツァリフ トゥルファ レヤレド |
| これは処方箋なしで買えますか | אפשר לקנות את זה בלי מרשם? | エフシャール リクノット エット ゼ ベリ マルシャム? |
| 領収書をください | בבקשה קבלה | ベヴァカシャ カバラ |
薬局での英語フレーズ(発音カタカナ付き)
英語が通じる薬局では以下のフレーズが便利です。
I have a fever of 38 degrees.(アイ ハヴ ア フィーバー オヴ サーティエイト ディグリーズ)Can I have acetaminophen or paracetamol?(キャン アイ ハヴ アセトアミノフェン オア パラセタモル?)I need something for a fever without a prescription.(アイ ニード サムシング フォー ア フィーバー ウィザウト ア プリスクリプション)Is this safe to take on an empty stomach?(イズ ディス セーフ トゥ テイク オン アン エンプティ ストマック?)How many tablets should I take at once?(ハウ メニー タブレッツ シュッド アイ テイク アット ワンス?)Do you have a children's version?(ドゥ ユー ハヴ ア チルドレンズ ヴァージョン?)
購入手順
- 薬局の入口を入ったら、OTCコーナー(セルフサービス棚)またはレジカウンターへ向かう
- 上記フレーズで症状を伝えるか、スマートフォンのGoogle翻訳(日本語→ヘブライ語)を提示する
- 薬剤師にアレルギー・持病・妊娠の有無を申告する
- 薬を受け取ったら、パッケージの用法用量を必ず確認する
- 領収書を受け取り、旅行保険の精算に使用する(保険会社が求める場合がある)
イスラエルの医療事情
医療制度の概要
イスラエルは国民皆保険制度(National Health Insurance Law, 1994年)を採用しており、国民は4つの医療保険組合(Kupot Holim)のいずれかに加入しています。主要な保険組合はClalit(クラリット)、Maccabi(マッカビ)、Meuhedet(ムエヘデット)、Leumit(ルミット)の4つです。外国人渡航者はこの恩恵を受けられないため、私費診療(プライベート診療)または海外旅行保険を使って医療機関を受診することになります。
イスラエルの医療水準は中東地域で最も高い水準にあり、大学病院・総合病院は設備・技術ともに先進国と遜色ありません。一方、診察費・薬剤費は日本より高く、海外旅行保険への加入が不可欠です。
緊急連絡先・主要医療機関
| 機関名 | 所在地 | 電話番号 | 備考 |
|---|---|---|---|
| イスラエル全国救急番号 | — | 101(Magen David Adom) | 救急車・緊急医療 |
| 警察 | — | 100 | |
| Hadassah Medical Center | エルサレム(Ein Karem) | +972-2-677-7111 | 英語対応、高度医療機関 |
| Shaarei Zedek Medical Center | エルサレム(市内) | +972-2-666-6666 | 英語対応 |
| Ichilov Hospital(Tel Aviv Sourasky Medical Center) | テルアビブ | +972-3-697-4444 | 英語対応、国際診療部門あり |
| Rambam Health Care Campus | ハイファ | +972-4-777-2222 | 英語対応 |
| 在イスラエル日本国大使館 | テルアビブ(Kirya) | +972-3-695-7292 | 邦人援護・日本語可 |
日本語対応について
イスラエルには日本語専門の医療通訳が常駐する病院はほとんどありません。ただし、ハダッサー医療センターやイチロフ病院などの主要病院には国際患者部門(International Patient Department)があり、英語での対応は可能です。日本語が必要な場合は、在イスラエル日本国大使館(テルアビブ)に連絡し、邦人援護サービスを利用することを検討してください。
薬局の種類と営業時間
イスラエルの薬局(Beit Merkachat、またはフォーマルにはMirkahatと呼ばれる)は以下の種類があります。
- Super-Pharm(スーパーファーム): イスラエル最大の薬局チェーン。テルアビブ、エルサレム、ハイファ等の都市部に多数出店。OTCが豊富で英語表示も多い。営業時間は概ね9:00〜21:00(店舗により異なる)。金曜の夕方から土曜(シャバット)は短縮営業または閉店の場合あり。
- 医療保険組合系薬局(Clalit、Maccabi、Leumit): 組合員向けが中心だが、処方箋薬・OTC薬とも販売。
- 独立系薬局: 地域密着型、ヘブライ語のみの場合あり。
シャバット(安息日)の注意: 金曜日の日没(概ね16:30〜18:00、季節により変動)から土曜日の夜まではユダヤ教の安息日となり、多くの薬局が閉店または短縮営業となります。渡航者は金曜午前中までに必要な薬を購入しておくことを強く推奨します。緊急の場合は「当番薬局(Duty Pharmacy)」が営業しており、ホテルのフロントや在イスラエル日本国大使館に確認してください。
薬剤師の視点:渡航前準備と持参推奨OTC
渡航前に持参すべき薬剤リスト
| 薬剤(日本でのOTC例) | 有効成分(一般名) | 推奨理由 |
|---|---|---|
| タイレノールA(グラクソ・スミスクライン) | アセトアミノフェン500mg | 発熱・頭痛の第一選択。日本で入手可 |
| イブA(エスエス製薬)またはイブクイック頭痛薬 | イブプロフェン200mg | 筋肉痛・関節痛を伴う場合の第二選択 |
| 経口補水液パウダー(OS-1パウダー等) | ナトリウム・カリウム・ブドウ糖 | 脱水予防・熱中症対策。現地での入手は不確実 |
| 正露丸・ストッパ下痢止めA | 木クレオソート・塩酸ロペラミド | 腸炎予防的携行 |
| デジタル体温計 | — | 重症度判定に必須 |
| 抗ヒスタミン薬(アレジオン、クラリチンEX等) | エピナスチン、ロラタジン | ハマシーン・アレルギー対策 |
持参量の目安
- 1週間未満の渡航:アセトアミノフェン系を10錠程度持参すれば十分
- 2週間以上の滞在:現地でPanadolまたはAcamolを追加購入するほうが合理的
- 複数名のグループ渡航・家族旅行:小児用アセトアミノフェン製剤(シロップまたはチュアブル錠)も別途携行
日本からの薬の持ち込みルール
イスラエルへの医薬品持ち込みについては、以下の点に注意してください。
- 処方箋医薬品を持ち込む場合は、英語の処方箋(または英訳した処方箋)と薬の原パッケージを携行することを推奨します
- 一般的なOTC解熱薬(アセトアミノフェン・イブプロフェン等)は、個人使用の常識的な量であれば持ち込みに特段の制限はありませんが、入国時に税関で確認を求められる場合があります
- 麻薬・向精神薬に分類される薬(一部睡眠薬・鎮痛薬)を携行する場合は、事前に在日イスラエル大使館または外務省の海外安全情報を確認してください
現地購入のリスクと信頼できる薬局の見分け方
- 観光地の路上・市場での医薬品購入は厳禁(品質・真偽が保証されない)
- 正規薬局の目印:イスラエル保健省(Ministry of Health)の認可表示、薬剤師常駐の表示
- 購入前にパッケージの有効期限(תאריך תפוגה / Expiration Date)と製造元表示を必ず確認する
- 価格が著しく安い場合は偽造品の可能性を疑う
避けるべき成分・買ってはいけない薬
渡航中に避けるべき成分
- アスピリン(Aspirin): 胃粘膜刺激が強く、渡航中の軽症発熱には過剰。ライ症候群のリスクから小児・青年層には禁忌。
- ジクロフェナク(Voltaren等): 強力なNSAIDsであり、軽症の渡航者発熱に対してはリスクが効果を上回る。腎機能への影響も考慮が必要。
- ステロイド配合感冒薬: 軽症ウイルス感染への使用は不要。免疫抑制による感染遷延のリスクがある。
- コデイン・ジヒドロコデイン配合薬: 熱のみの軽症時に鎮咳麻薬成分を追加する理由はなく、副作用リスクが不必要に高まる。
アセトアミノフェンとアルコール
イスラエルはワイン・地ビール文化が豊かで、食事とともにアルコールを摂取する機会があります。アセトアミノフェン服用中の飲酒は肝障害リスクを高めるため、服薬中は飲酒を控えてください。
帰国後の観察ポイント:輸入感染症の見分け方
帰国後発熱に要注意
イスラエル渡航後、帰国から2〜4週間以内に発熱が生じた場合、単なる風邪と決めつけず、渡航先でかかった可能性のある感染症を念頭に置くことが重要です。
注意すべき輸入感染症
| 疾患名 | 潜伏期間の目安 | 注意すべき症状 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| マラリア | 1〜4週間(一部数ヶ月) | 周期的な高熱・悪寒・頭痛・倦怠感 | 近隣地域への渡航歴がある場合 |
| デング熱 | 4〜7日 | 高熱・激しい頭痛・関節痛・発疹 | イスラエル国内でのリスクは低いが渡航経路国に注意 |
| 腸チフス | 1〜3週間 | 持続する高熱・比較的徐脈・腹痛 | 衛生環境が劣る地域での飲食 |
| ウエストナイル熱 | 2〜14日 | 発熱・頭痛・筋肉痛・まれに神経症状 | イスラエルで蚊が媒介(夏〜秋に注意) |
| A型肝炎 | 2〜6週間 | 発熱・倦怠感・黄疸・食欲不振 | ワクチン未接種者の飲食リスク |
ウエストナイル熱について
イスラエルは過去にウエストナイルウイルスの流行が報告されており、夏〜秋(7〜10月)の蚊が多い時期に農村部・湿地帯近くで活動した場合は特に注意が必要です。帰国後に高熱・頭痛・筋肉痛が現れた場合は、渡航歴を医師に伝えてください。
帰国後に受診すべき医療機関
- 帰国後2〜4週間以内に38℃以上の発熱が生じた場合は、近医を受診する際に必ず「イスラエル渡航歴」を申告してください
- 輸入感染症が疑われる場合は、感染症専門機能を持つ医療機関(例:成田赤十字病院渡航者外来、国立国際医療研究センター病院 トラベルクリニック等)への受診を検討してください
- 渡航前にA型肝炎・腸チフス・インフルエンザのワクチンを未接種だった場合は、その旨も医師に伝えることが重要です
帰国後の自己チェックリスト
- ☐ 帰国後2週間は体温を毎朝測定し記録する
- ☐ 38℃以上の発熱が続く場合は「渡航歴あり」として医療機関を受診
- ☐ 黄疸(皮膚・白目が黄色くなる)が現れたら直ちに受診
- ☐ 意識混濁・けいれん・ひどい頭痛は救急受診
- ☐ 渡航中に蚊・ダニに刺された記憶があれば医師に伝える
渡航前準備の総合チェックリスト
- ☐ 海外旅行保険に加入(医療費・緊急移送をカバーするプラン)
- ☐ 渡航前ワクチン接種確認(A型肝炎・腸チフス・インフルエンザ・B型肝炎)
- ☐ アセトアミノフェン500mg(タイレノールA等)を10〜15錠持参
- ☐ デジタル体温計を携行
- ☐ 経口補水液パウダーを数袋携行
- ☐ 常用薬がある場合は英語の説明書・処方箋を準備
- ☐ Google翻訳・DeepLをオフライン使用設定でインストール
- ☐ 宿泊ホテル最寄りのSuper-PharmまたはClalit薬局の位置を事前確認
- ☐ 在イスラエル日本国大使館の電話番号(+972-3-695-7292)を保存
- ☐ 金曜午後〜土曜のシャバット期間中の当番薬局情報を確認
まとめ
イスラエル渡航中の発熱は、軽症であればウイルス性上気道感染症や熱中症が原因のほとんどを占め、OTC解熱薬による対症療法で自然軽快するケースが大多数です。
現地ではPanadol・Acamol・Tylenol(いずれもアセトアミノフェン500mg)、またはAdvil・Nurofen(イブプロフェン200mg)を、Super-Pharmをはじめとする正規薬局で容易に購入できます。ヘブライ語でのフレーズ「イェシュ リ ホム(יש לי חום)」を覚えておくと、英語が通じない場面でも役立ちます。
薬剤師として最終的に伝えたいことは以下の3点です。
- 体温と症状を正確に記録する: 重症度の判断と、医療機関受診時の情報提供に不可欠です
- アセトアミノフェン系を第一選択に: 渡航中の軽症発熱には安全性が高く、胃への負担も少ないアセトアミノフェン系が最適です
- 39.5℃以上・3日以上継続・意識変容があれば迷わず救急へ: 自己判断での対処には限界があります。在イスラエル日本国大使館(+972-3-695-7292)への連絡も選択肢です
安全で充実したイスラエル渡航のために、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
参考文献
- World Health Organization (WHO). "International Travel and Health – Israel." WHO Official Website. https://www.who.int/ith
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Israel – Traveler Information." CDC Travelers' Health. https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/israel
- 外務省海外安全情報. 「イスラエル国 感染症危険情報」. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_012.html
- Israel Ministry of Health (MOH). "Drug Registration and Licensing." https://www.health.gov.il/English/Topics/MedicineRegulation/Pages/default.aspx
- 国立感染症研究所 (NIID). 「ウエストナイル熱」. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/449-wnf-intro.html
- 厚生労働省. 「海外渡航と感染症 – 帰国後の健康管理」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html
- European Medicines Agency (EMA). "Ibuprofen and paracetamol – Product Information." https://www.ema.europa.eu
免責事項
本記事は、薬学的知識に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人への医療行為・診断・治療方針の決定を行うものではありません。記載された薬剤情報・価格・医療機関情報は執筆時点の情報に基づくものであり、変更される場合があります。発熱の原因・重症度の最終判断および治療方針の決定は、必ず医師の診察に基づいて行ってください。服薬に際しては、製品に添付の添付文書をよくお読みいただき、用法・用量を守ってご使用ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、著者および運営者は責任を負いかねます。
監修: 薬剤師(博士(薬学))