ポルトガル渡航時の予防接種について
ポルトガルはEU加盟国で先進医療体制が整っており、日本からの一般的な観光・出張であれば重大感染症のリスクは低いとされています。しかし、渡航前3ヶ月以内の予防接種相談は、予期しない健康リスク低減に重要です。本記事では、薬剤師として必須・推奨ワクチンを解説します。
ポルトガルの2023年衛生統計では、麻しんの小規模アウトブレイク(特にリスボン首都圏)が複数報告されており、日本人渡航者も油断できません。また近年、ヨーロッパ全土でワクチン接種率の低下に伴う感染症再興が問題視されており、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は定期的にリスク評価を更新しています。ポルトガルは観光インフラが整っている反面、農村部や離島(マデイラ諸島、アゾレス諸島)では衛生水準が都市部と異なる場合もあるため、滞在先の環境に応じたワクチン選択が重要です。
ポルトガル渡航時に必須の予防接種
1. 麻しん・風しん・おたふくかぜ(MMR)
接種対象: 1968年以降生まれで、過去に2回の接種または罹患歴のない者
理由: ヨーロッパではMMR流行が散発的に報告されています。ポルトガルでも風しん患者が確認されることがあります。
接種回数: 2回(1回目から4週間以上の間隔)
費用目安: 1回あたり5,000~8,000円
薬学的解説:MMRワクチンの免疫機序と薬学的特性
MMRワクチンは弱毒生ウイルスを含む生ワクチンです。麻しんウイルス(Schwarz株またはEdmonston-Zagreb株)、風しんウイルス(Wistar RA27/3株)、ムンプスウイルス(RIT 4385株等)を同時に含有します。
接種後、弱毒化されたウイルスが体内で限定的に増殖し、自然感染に近い形で液性免疫(中和抗体産生)および細胞性免疫(CD4⁺/CD8⁺T細胞応答)の両方を誘導します。2回接種後の麻しん予防効果は97%以上、風しんは95%以上と報告されています。
副作用と発現時期(薬学的観点):
| 副作用 | 発現頻度 | 発現時期 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 注射部位の発赤・腫脹 | 高頻度 | 接種当日~翌日 | 自然軽快 |
| 発熱(37.5℃以上) | 約5~15% | 接種後5~12日 | 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)対症療法 |
| 一過性の発疹 | 約5% | 接種後5~12日 | 自然軽快(感染性なし) |
| 一過性の関節痛 | 成人女性に多い | 接種後1~3週 | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で対応可 |
| 熱性けいれん | まれ(1/3,000未満) | 接種後5~12日 | 医療機関受診 |
| アナフィラキシー | 極めてまれ | 接種後30分以内 | 接種後30分の院内待機必須 |
禁忌・注意事項:
- 妊娠中は接種不可(ウイルスが胎盤通過する理論的リスク)
- 接種後2ヶ月間は確実な避妊が必要
- 免疫抑制状態(ステロイド全身投与、抗がん剤使用中等)では接種不可
- ゼラチンまたはネオマイシン(培養工程で使用)アレルギーのある方は医師相談必須
2. 破傷風トキソイド(Td/Tdap)
接種対象: 10年以上前に接種を受けた者、または接種歴が不明な者
理由: 破傷風は土壌由来菌による感染症。キャンプ、ハイキングなどの屋外活動予定時に重要です。
接種回数: 必要に応じて1~2回(間隔10年)
費用目安: 1回3,000~5,000円
薬学的解説:トキソイドの作用機序と抗体価の維持
破傷風トキソイドは、Clostridium tetaniが産生するテタノスパスミン(神経毒素)をホルマリン処理で無毒化したものです。接種によりテタノスパスミンに対する中和抗体(IgG)が産生され、毒素がGABAおよびグリシン作動性介在神経に結合するのを阻止します(毒素は脊髄前角運動ニューロンの抑制シナプスを障害し、持続性筋痙攣を引き起こします)。
抗体価と接種間隔の根拠: 基礎免疫(3回接種)が完了した場合、抗体価は10年間防御レベル(≥0.1 IU/mL)を維持します。このため、10年ごとの追加接種が推奨されています。ただし、深い創傷(土壌・錆等による汚染創)を負った場合は5年以内でも追加接種が推奨される場合があり、現地医療機関での判断が必要です。
Tdap(百日咳抗原も含む混合ワクチン)は、百日咳予防も兼ねるため、接種歴確認の上で主治医と相談することが望ましいです。
副作用: 注射部位の疼痛・発赤・腫脹が最も多く(約50~85%)、通常48時間以内に消退します。全身反応(発熱、倦怠感)はまれです。アルサス反応(局所過剰免疫反応:高度の発赤・腫脹・疼痛)は繰り返し短期間に接種した場合に起こる可能性があるため、接種歴の正確な把握が重要です。
3. 新型コロナウイルス(COVID-19)
接種対象: 最新のワクチン接種を受けていない者
理由: ポルトガルを含むヨーロッパは変異株流行の可能性があり、渡航時の感染リスク低減に有効です。
接種回数: 最新推奨に従う(2025年時点では追加接種の検討)
費用目安: 無料~3,000円(医療機関により異なる)
薬学的解説:mRNAワクチンの特性と最新株対応
mRNAワクチン(コミナティ等)はスパイクタンパク質をコードするmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)に封入したものです。LNPが筋肉内注射後に筋細胞・樹状細胞に取り込まれ、リボソームでスパイクタンパク質が翻訳・発現、免疫系に提示されて中和抗体産生とT細胞応答を誘導します。mRNA自体はDNAに組み込まれず、細胞内で数日以内に分解されます。
2024年以降、XBB.1.5対応または JN.1対応の最新製剤が利用可能となっています。最新の国内承認状況はPMDAまたは厚生労働省の公表情報を確認してください。
ポルトガル渡航時に推奨される予防接種
1. A型肝炎
接種対象: 長期滞在(1ヶ月以上)、または衛生環境が不確実な地域への渡航者
理由: 汚染食水・食物による感染リスク。ポルトガルの衛生管理は良好ですが、農村部での長期滞在は推奨される。
接種回数: 2回(初回から6~12ヶ月後)
費用目安: 1回4,000~7,000円
薬学的解説:A型肝炎ウイルスの感染経路と免疫持続期間
A型肝炎ウイルス(HAV)はピコルナウイルス科に属するノンエンベロープssRNAウイルスです。主に糞口経路で感染し、汚染された飲料水・生牡蠣・貝類・生野菜等を介します。ポルトガルではシーフード(特にムール貝・蛤等の二枚貝)を生食または加熱不十分な状態で食べる食文化があり、食物由来感染のリスクは完全に排除できません。
ワクチンは不活化HAVを含む不活化ワクチンです。1回接種後4週間で防御レベルの抗体が95%以上の接種者で誘導され、2回完了後は20~25年以上の免疫持続が期待できます。
急速接種スケジュール: 渡航まで時間がない場合、0日・7日・21日の3回接種スキームも一部製品で可能です(製品により承認スキームが異なるため、接種医に確認が必要)。なお、1回接種のみでも渡航期間中は一定の防御が期待できます。
2. B型肝炎
接種対象: 医療従事者、長期滞在予定者、不安全な性行為のリスク者
理由: 血液・体液への曝露リスク低減
接種回数: 3回(0日、1ヶ月、6ヶ月)
費用目安: 1回5,000~8,000円
薬学的解説:B型肝炎ワクチンの抗原と免疫応答
B型肝炎ワクチンは、遺伝子組換え技術により酵母(Saccharomyces cerevisiae)で産生したHBs抗原(hepatitis B surface antigen)を含む不活化ワクチンです。接種後にHBs抗体(抗HBs)が産生され、ウイルスが肝細胞に吸着・侵入する際に必要なHBs抗原を中和します。
3回接種完了後の抗HBs陽転率は健康成人で90~95%以上ですが、高齢者・肥満・喫煙者・免疫低下状態では抗体応答が低下することがあります。接種後に抗HBs価を確認(10 mIU/mL以上で免疫成立)することで、追加接種の要否を判断できます。
加速スケジュール(0日・1ヶ月・2ヶ月) も一部製品で可能です。この場合、長期免疫持続のために12ヶ月後の4回目接種が推奨される場合があります。
3. インフルエンザ
接種対象: 特に秋冬の渡航予定者、高齢者、基礎疾患がある者
理由: ヨーロッパはインフルエンザシーズン(10月~3月)に流行します。
接種回数: 1~2回(前年接種歴による)
費用目安: 1回2,500~4,000円
薬学的解説:インフルエンザワクチンの抗原マッチと有効率
インフルエンザワクチンは4価不活化ワクチン(A型2株・B型2株)が現在の標準です。主な免疫応答は赤血球凝集素(HA)に対する中和抗体産生です。毎シーズン、南北半球でWHOが推奨する株が異なるため、北半球(ヨーロッパ)で流行するA型・B型株に対応したワクチンを渡航前に確認することが重要です。
接種後14日程度で防御抗体が誘導されます。高齢者(65歳以上)向けには高用量製剤または組換えタンパクワクチンが欧米で使用されており、通常量ワクチンより免疫原性が高いとされます(日本での同等製品の可用性は接種医に確認)。
4. 髄膜炎菌(MenACWY/MenB)
接種対象: 学生、大学寮滞在予定者、特に欧州での長期滞在者
理由: ヨーロッパで髄膜炎菌感染症の散発例が報告される。若年層の流行リスクがあります。
接種回数: 1回(MenACWY)、または1~2回(MenB)
費用目安: MenACWY:7,000~10,000円、MenB:12,000~15,000円
薬学的解説:血清型別ワクチンの選択と交差防御
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)はA・B・C・W・Y・X等の血清群に分類されます。ヨーロッパではB群が最多(約60%)で、次いでC・W・Y群が問題となります。
MenACWY(多糖体結合型ワクチン): A・C・W・Y群莢膜多糖体をジフテリアトキソイド等のキャリアタンパクに結合させた結合型ワクチン。T細胞依存性免疫応答を誘導し、乳幼児にも有効で免疫記憶が形成されます。
MenB(タンパク質ベースワクチン): B群莢膜多糖体は自己抗原に似た構造のため免疫原性が低く、外膜タンパク(fHbp、NHBA、NadA等)を抗原として使用します。MenACWYと異なる抗原を標的とするため、両ワクチンは独立した免疫を提供します。
両ワクチンは同日接種が可能ですが、注射部位を分けて投与します。長期欧州留学・寮生活予定者はMenBを含む両ワクチン接種を強く推奨します。
予防接種スケジュール(渡航前3ヶ月計画の例)
| 接種時期 | 接種ワクチン | 備考 |
|---|---|---|
| 初回相談時(渡航前3ヶ月) | MMR(1回目)、破傷風、COVID-19 | 必須ワクチンの確認・1回目接種 |
| 渡航前2ヶ月 | MenACWY、MenB(1回目)、B型肝炎(1回目) | 推奨ワクチンの開始 |
| 渡航前1ヶ月 | MMR(2回目)、A型肝炎(1回目)、MenB(2回目必要時)、B型肝炎(2回目) | 2回接種ワクチンの継続 |
| 渡航1週間前 | インフルエンザ(秋冬渡航時) | 抗体誘導に2週間必要なため、理想は2週間前 |
| 渡航中 | なし | 渡航中の新規接種は避ける |
| 帰国後 | A型肝炎(2回目)、B型肝炎(3回目)※ | 初回から6~12ヶ月後の完了接種 |
生ワクチンと不活化ワクチンの同時接種について
重要: MMR(生ワクチン)と他の予防接種の接種間隔
| 接種パターン | 間隔 | 理由 |
|---|---|---|
| 生ワクチン同士(異なる部位・異なる日) | 4週間以上 | 干渉によるウイルス増殖抑制・免疫応答低下を避けるため |
| 生ワクチンの後に不活化ワクチン | 制限なし(同日接種可) | 干渉なし |
| 不活化ワクチンの後に生ワクチン | 制限なし(通常2週間程度が目安) | 理論的干渉リスクは低いが一定の間隔が望ましい |
| 異なる不活化ワクチン同士 | 制限なし(同日接種可) | 相互干渉なし |
特に注意が必要な薬物・ワクチン間の相互作用
渡航前後に使用する可能性のある薬剤とワクチンの相互作用を以下に整理します。
| 薬剤・状態 | 影響を受けるワクチン | 対応 |
|---|---|---|
| 免疫抑制剤(ステロイド全身投与・メトトレキサート等) | 生ワクチン全般(MMR等)禁忌 | 主治医・専門医と相談 |
| 抗ウイルス薬(アシクロビル等) | MMR | 接種前後の使用を避ける(生ウイルス複製を阻害する可能性) |
| 抗マラリア薬(クロロキン等) | なし(ポルトガルは不要だが周辺国経由の場合) | 通常影響なし |
| ワルファリン(抗凝固薬) | 筋肉内注射全般(出血リスク) | 医師確認のうえ皮下注射変更等を検討 |
| 免疫グロブリン製剤 | MMR・水痘等の生ワクチン | 3ヶ月以上間隔をあける |
予防接種の費用目安と公的補助
自費接種費用一覧
| ワクチン | 回数 | 1回あたり費用(目安) | 全体費用(目安・税込) |
|---|---|---|---|
| MMR | 2回 | 5,000~8,000円 | 10,000~16,000円 |
| 破傷風トキソイド | 1回 | 3,000~5,000円 | 3,000~5,000円 |
| A型肝炎 | 2回 | 4,000~7,000円 | 8,000~14,000円 |
| B型肝炎 | 3回 | 5,000~8,000円 | 15,000~24,000円 |
| インフルエンザ | 1~2回 | 2,500~4,000円 | 2,500~8,000円 |
| MenACWY | 1回 | 7,000~10,000円 | 7,000~10,000円 |
| MenB | 1~2回 | 12,000~15,000円 | 12,000~30,000円 |
| COVID-19 | 1回 | 無料~3,000円 | 無料~3,000円 |
総額目安(必須ワクチンのみ): 13,000~26,000円
総額目安(必須+推奨ワクチン含む): 40,000~80,000円以上
※費用は医療機関・地域・年度により大きく異なります。複数機関で見積もりを取ることをお勧めします。
公的補助制度
- 定期予防接種: 麻しん・風しん(MR)、破傷風(三種混合・四種混合の一部)は定期接種対象の可能性があります(年齢により異なる)。自治体に確認ください。
- 渡航予防接種費用補助: 一部の自治体・企業が補助制度を設けています。渡航前に勤務先の人事部や自治体保健センターに確認を。
- 高齢者インフルエンザ: 65歳以上は一部自治体で公費助成あり。接種前に市区町村の保健センターに問い合わせください。
予防接種実施施設の選択
推奨施設
-
渡航医学クリニック・トラベルクリニック
- 例:予防接種ナビ登録施設、海外渡航医学会(JSTAH)認定施設
- メリット:渡航地別のワクチン最新情報、スケジュール管理が専門的
- 費用:やや高め(医学的判断による)
-
予防接種センター・大学病院感染症科
- 例:大学病院、総合病院の感染症科・旅行外来
- メリット:複数ワクチンの同時接種、医師の相談が充実
- 費用:中程度
-
地域の内科・小児科クリニック
- メリット:費用が比較的安価、通いやすい
- デメリット:渡航医学の専門知識が限定的な場合がある
予防接種記録と英文証明書について
必須:国際予防接種証明書
取得方法:
- 接種医療機関で「予防接種済み証」を取得
- 必要に応じて英文版を申請(別途手数料:500~1,000円が目安)
- 黄熱病ワクチン接種者は「国際予防接種証明書(Carte Jaune / Yellow Card)」が法的証明書として機能します(ポルトガルは要求しませんが、経由国で必要な場合があります)
保管: スマートフォン(写真撮影)と紙媒体の両方でバックアップを取ることをお勧めします。接種記録はかかりつけ医でも確認できますが、海外では手元の書類が最も実用的です。
英文表現:医療機関での証明書要請フレーズ
接種医療機関で英文証明書を請求する際や、現地で証明書を提示する際のフレーズを参考にしてください。
-
Could I have a vaccination certificate in English, please?(クッド アイ ハヴ ア ヴァクシネーション サーティフィケート イン イングリッシュ プリーズ?) -
I have completed my MMR vaccination.(アイ ハヴ コンプリーテッド マイ エムエムアール ヴァクシネーション)
ポルトガル到着後に必要な医療情報
医療機関の手配
ポルトガルで医療が必要な場合:
- 緊急: 112番通報(全国共通。救急・警察・消防すべて対応)
- 一般診療: 主要都市(リスボン、ポルト)の私立クリニック(Clínica Privada)利用。EU市民でないため、原則自費または保険利用
- 薬局(Farmácia): 街中に多数あり、緑十字マークが目印。処方箋医薬品の取得が可能。薬剤師(Farmacêutico)が常駐しており、軽症なら相談も可
現地薬局での基本的なコミュニケーション
ポルトガル語は英語と異なりますが、主要都市の薬局では英語が通じることが多いです。
-
I need something for a headache.(アイ ニード サムシング フォー ア ヘッドエイク)(頭痛薬をください) -
Do you have any medicine for diarrhea?(ドゥ ユー ハヴ エニー メディスン フォー ダイアリーア?)(下痢止めはありますか?) -
I have a fever.(アイ ハヴ ア フィーバー)(熱があります)
なお、日本から常備薬を持参する際は、成分名(一般名)の英語表記を控えておくと現地での説明が容易になります。例:アセトアミノフェン(acetaminophen / paracetamol)、ロペラミド塩酸塩(loperamide)等。
渡航医療保険
予防接種と並行して、海外旅行保険への加入を強く推奨します。ポルトガルの私立医療機関の費用は日本より高額な場合があります。EU圏ではEHIC(欧州健康保険カード)が適用されますが、日本人は対象外のため、旅行保険で医療費・救急搬送費をカバーすることが必須です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 渡航1週間前から接種しても大丈夫ですか?
A: 不活化ワクチン(破傷風、A型肝炎等)は接種後14日程度で防御抗体が誘導されます。渡航1週間前の接種では渡航中に十分な免疫が成立しない可能性があります。副反応(発熱・倦怠感)で出発直前の体調に影響するリスクもあるため、新規接種は2週間前までを推奨します。既に基礎免疫がある場合の追加接種(ブースター)であれば、記憶B細胞により即時的な抗体価上昇が期待できますが、それでも余裕をもった接種が理想です。
Q2: ポルトガルは黄熱病対象国ですか?
A: いいえ。ポルトガル本土・マデイラ諸島・アゾレス諸島はいずれも黄熱病流行地ではなく、黄熱病ワクチン接種証明書(イエローカード)の提示は入国要件に含まれていません。ただし、アフリカやラテンアメリカの黄熱病流行国を経由してポルトガルに入国する場合は、経由国の規定に従ってください。最新情報は外務省「感染症危険情報」および厚生労働省検疫所(FORTH)で確認してください。
Q3: 妊娠中のポルトガル渡航で推奨ワクチンは?
A: 妊娠中は生ワクチン(MMR、水痘等)は接種不可です。不活化ワクチン(破傷風トキソイド、A型肝炎、インフルエンザ等)は妊娠中も接種可能なものが多いですが、必ず産科主治医・薬剤師と個別相談を必須とします。特にインフルエンザワクチンは妊娠中の重症化予防として推奨される場合が多く、TdapはB型百日咳母子免疫のために妊娠後期(27~36週)に積極的に推奨されています(産科主治医と相談)。
Q4: 子ども(乳幼児)を連れての渡航の場合、追加で確認すべきワクチンは?
A: 定期予防接種の接種状況を必ず確認してください。MMR(麻しん・風しん混合)の1回目は1歳以上から接種可能です。日本の定期接種スケジュールを前倒しで完了させることが推奨される場合があります。また、乳幼児は髄膜炎菌感染症で重症化リスクが高いため、MenACWY・MenBの接種を小児科医と相談してください。
Q5: 同日に複数ワクチンを接種した際の副反応はどう対処すればよいですか?
A: 複数ワクチンの同日接種では、個々の副反応が重なる場合があります。注射部位の疼痛・腫脹はアイシング(15~20分)で軽減できます。発熱・倦怠感にはアセトアミノフェン(推奨用量は製品添付文書に従う)が有効です。NSAIDs(イブプロフェン等)も解熱鎮痛に使用できますが、胃への影響を考慮し食後服用が望ましいです。高熱・呼吸困難・血圧低下等の重篤症状は接種後30分以内のアナフィラキシーを疑い、直ちに接種医療機関またはかかりつけ医に連絡してください。
生ワクチンと不活化ワクチンの同時接種についての補足
重要: MMR(生ワクチン)と他の予防接種の接種間隔
| 接種パターン | 間隔 |
|---|---|
| 生ワクチン同士 | 4週間以上 |
| 生ワクチンの後に不活化ワクチン | 制限なし(同日接種可) |
| 不活化ワクチンの後に生ワクチン | 2週間以上 |
まとめ
- 必須ワクチン: MMR(麻しん・風しん・おたふくかぜ)、破傷風トキソイド、COVID-19
- 推奨ワクチン(渡航形態による): A型肝炎(長期滞在・食のリスクが気になる場合)、インフルエンザ(秋冬渡航時)、髄膜炎菌(若年・学生・寮生活)、B型肝炎(医療従事者・長期滞在者)
- 接種スケジュール: 渡航前3ヶ月以上前から計画を立て、医療機関に相談する
- 薬学的ポイント: 生ワクチン同士は4週間以上の間隔、免疫抑制薬との相互作用、抗体価確認の活用
- 費用目安: 必須ワクチンのみで13,000~26,000円、推奨ワクチン含めて40,000~80,000円以上
- 施設選択: 複雑な渡航予定はトラベルクリニック(JSTAH認定)、標準的な観光は地域クリニックで対応可能
- 証明書保管: 英文版の予防接種記録を電子版・紙版の2形式で保管
- 最新情報確認: 外務省「感染症情報」、厚生労働省検疫所FORTH、在ポルトガル日本大使館の渡航前情報確認は必須
最後の薬剤師からのアドバイス: 予防接種は渡航前の「投資」です。感染症による渡航中止や医療費請求の方が経済的・時間的負担は遥かに大きくなります。渡航前3ヶ月の事前相談を心がけましょう。副反応が心配な方も、接種医療機関で事前に丁寧に説明を受けることで対処できるケースがほとんどです。ご不明な点は必ず医師・薬剤師にご相談ください。
参考文献・情報源
-
厚生労働省検疫所FORTH「ポルトガル感染症・予防接種情報」
https://www.forth.go.jp/ -
WHO「International Travel and Health」
https://www.who.int/ith/en/ -
CDC「Travelers' Health - Portugal」
https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/portugal -
欧州疾病予防管理センター(ECDC)「Communicable disease threats reports」
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/communicable-disease-threats-report -
PMDA(医薬品医療機器総合機構)「ワクチン添付文書情報」
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/ -
外務省「海外安全情報・ポルトガル」
https://www.anzen.mofa.go.jp/
監修: 薬剤師(博士(薬学))