スウェーデン渡航時の予防接種の概要
スウェーデンは北欧の先進国で、医療水準が高く感染症リスクは比較的低いとされています。しかし渡航者であるあなたが日本から持ち込むリスク、または現地での予期しない接触に備えるために、事前の予防接種は重要です。本記事では薬剤師の視点から、必須・推奨ワクチンと接種計画をお伝えします。
スウェーデンの気候は緯度が高く、南部のスコーネ地方から北部のノルランド地方まで大きく異なります。夏季(5〜9月)は比較的温暖で屋外活動が活発になり、森林や湖畔でのハイキング、キャンプが盛んです。この時期はとくにマダニ(Ixodes ricinus)の活動期と重なり、ダニ媒介性脳炎(Tick-Borne Encephalitis: TBE)のリスクが高まります。スウェーデン公衆衛生庁(Folkhälsomyndigheten)の報告によると、TBEは毎年スウェーデン国内で数百例が確認されており、ストックホルム周辺のメーラレン湖沿岸、ゴットランド島、ウップサラ周辺が高リスク地域として知られています。
一方、都市部(ストックホルム、ヨーテボリ、マルメ)への短期出張・観光が目的であれば、TBEリスクは低くなります。渡航目的・期間・訪問地域を整理したうえで接種計画を立てることが、費用対効果の高い予防策につながります。
薬剤師メモ スウェーデンは麻疹排除国(2000年以来麻疹患者なし)ですが、渡航者からの輸入症例リスク軽減のため、2回接種済みの証明が推奨されます。また、個人の予防接種歴により必要なワクチンは異なりますので、必ず医療機関で相談してください。
スウェーデン渡航前に確認すべき基本ワクチン
日本で通常受けているワクチン(確認必須)
以下は日本の定期接種に含まれるワクチンです。渡航前に接種歴を確認し、未接種や不完全な場合は補完してください。
| ワクチン名 | 必要性 | 接種回数 | 有効期間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 麻疹・風疹(MR) | 推奨 | 2回 | 生涯 | 1966年以降生まれで1回以上必須 |
| 百日咳・ジフテリア・破傷風(DPT) | 推奨 | 初回3回+追加 | 破傷風:10年 | 成人は10年ごとの追加接種を検討 |
| ポリオ(IPV) | 推奨 | 4回 | 生涯 | 1981年以降生まれで4回接種済み確認 |
| 日本脳炎 | 推奨 | 2回 | 生涯(2回接種時) | スウェーデン内では流行なし |
基本ワクチンの薬学的補足
麻疹・風疹(MR)ワクチンは生ワクチンに分類され、弱毒化した生きたウイルスを含みます。接種後に体内で軽度のウイルス増殖が起こり、自然感染に近い免疫応答(液性免疫・細胞性免疫の両方)を誘導します。1回接種で約95%、2回接種で約99%の防御効果が期待できます。生ワクチンであるため、免疫抑制状態の方や妊婦には接種禁忌となります。接種後少なくとも1ヶ月間は妊娠を避けるよう指導が必要です。
破傷風トキソイドは、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)が産生する毒素(テタノスパスミン)をホルマリン処理して不活化したものです。毒素そのものの感染性はなく、アルミニウム塩のアジュバントとともに筋肉内注射されます。最終接種から10年以上経過している場合、ブースター効果(記憶免疫の再活性化)を得るために追加接種が推奨されます。スウェーデンでは登山・自転車・キャンプ中の外傷リスクが考えられるため、破傷風への備えは実用的な意味を持ちます。
薬剤師メモ 破傷風ワクチンは、スウェーデンでの転倒や切り傷などのリスクに備えて特に重要です。10年以上接種していない場合は、渡航の2週間以上前に追加接種を受けましょう。
スウェーデン渡航で推奨される追加ワクチン
ダニ媒介性脳炎(TBE)ワクチン ★スウェーデン特有の重要推奨
必要性:スウェーデン独自の重要推奨(自然の多い地域への訪問・長期滞在者)
TBEはフラビウイルス科に属するTBEウイルスによる中枢神経系感染症で、マダニ(Ixodes ricinus)の咬傷を介して感染します。スウェーデンでは年間約300〜400例が報告されており、ストックホルム群島、ウップサラ県、ヴェストマンランド県などが主な流行地とされています。潜伏期間は7〜14日で、二相性の経過をとることが多く、第一相は発熱・頭痛・筋肉痛、第二相は髄膜炎・脳炎症状(意識障害・麻痺など)へ進行します。致死率は欧州型TBEウイルスで約1〜2%、後遺症(長期的な認知機能障害・麻痺)は10〜20%程度とされます。
ワクチンの薬学的特徴
日本国内で承認・入手可能なTBEワクチンは限られており、渡航医学専門のトラベルクリニックに問い合わせが必要です。欧州で広く使用されているワクチン(不活化全粒子ワクチン)は、TBEウイルスをホルマリンで不活化し、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加したものです。筋肉内投与後、アジュバントが抗原提示細胞を局所に誘引し、Th2優位の液性免疫応答を増強します。中和抗体(TBEウイルスのエンベロープタンパクE蛋白に対するIgG抗体)が防御の主体です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ワクチン種別 | 不活化全粒子ワクチン |
| 接種スケジュール(標準) | 0日・1〜3ヶ月後・5〜12ヶ月後(3回) |
| 接種スケジュール(速成) | 0日・14日・5〜12ヶ月後(3回) |
| 防御効果発現 | 2回接種後(約85〜90%)、3回接種後(約98%) |
| ブースター接種 | 3回完了後3年、以降5年ごと |
| 費用目安 | 1回 8,000〜15,000円(目安) |
| 接種開始推奨時期 | 渡航の3〜6ヶ月前(標準スケジュールの場合) |
薬剤師メモ TBEワクチンは渡航の直前に思い立っても標準スケジュールでは間に合わない場合があります。速成スケジュールでは2回目接種を14日後に繰り上げられますが、それでも渡航1ヶ月前には初回接種を済ませることが理想です。夏の森林・アウトドア活動を計画している方は、半年前から準備することを強くお勧めします。
マダニ対策との組み合わせも重要です。TBEワクチンは有効ですが、マダニが媒介するライム病(Borrelia burgdorferi)にはワクチンがなく、忌避剤(ディート含有製品など)や長袖・長ズボンの着用、帰宅後の全身チェックが予防の柱となります。
A型肝炎ワクチン
必要性:推奨(特に衛生状態が不確実な地域への訪問予定者)
- 接種回数:初回 + 6〜12ヶ月後に追加(2回)
- 有効期間:20年以上
- 費用目安:1回 8,000〜12,000円(目安)
- 実施時期:渡航の3〜4週間前から開始
スウェーデンの衛生水準は高いものの、野菜や貝類を通じた感染リスクは存在します。2週間以上の滞在予定者には推奨されます。
薬学的解説:A型肝炎ワクチンの機序
A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンです。ホルマリン処理により不活化したHAVウイルス粒子を水酸化アルミニウムアジュバントに吸着させた製剤です。初回接種後2〜4週間で防御レベルの中和抗体(抗HAV IgG)が産生され、1回接種だけでも渡航前の短期防御として機能します。しかし長期免疫には2回接種が必須で、ブースター接種(2回目)により免疫記憶が確立し、理論上は20年以上の防御が得られます。
副作用として、接種部位の疼痛・腫脹(頻度:約20〜50%)、発熱・倦怠感(数%)が報告されています。アナフィラキシーはまれですが、接種後30分の経過観察が推奨されます。
B型肝炎ワクチン
必要性:推奨(医療機関訪問予定者、長期滞在者)
- 接種回数:3回(0日・30日・180日)または4回(0日・7日・21日・1年後)
- 有効期間:20〜30年以上
- 費用目安:1回 5,000〜8,000円(目安)
- 実施時期:渡航の6ヶ月前から開始が理想的
薬学的解説:B型肝炎ワクチンの機序
B型肝炎ワクチンは遺伝子組換えワクチンです。酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)に組換えHBs抗原遺伝子を導入して産生したHBs抗原蛋白を、水酸化アルミニウムアジュバントとともに製剤化したものです。接種後、抗HBs抗体が産生され、抗体価10 mIU/mL以上が防御基準とされています。3回接種完了後の防御率は成人で約90〜95%ですが、加齢(40歳以上)・肥満・喫煙・免疫抑制状態では抗体産生が低下することが知られています。
速成スケジュール(0日・7日・21日+12ヶ月後ブースター)は、短期間で3回接種を完了できますが、長期防御には12ヶ月後のブースター接種が必要です。接種後に抗体価測定を行い、10 mIU/mL未満の場合は追加接種を検討します。
髄膜炎菌ワクチン(メニンゴコッカス)
必要性:特定条件で推奨
- 種類:4価結合型ワクチン(血清型A・C・W・Y対応)
- 接種回数:1回
- 有効期間:5年(追加接種で延長可)
- 費用目安:1回 10,000〜15,000円(目安)
- 実施時期:渡航の2週間以上前
スウェーデンでの流行は少ないですが、学生寮生活や長期共同生活予定者には推奨されます。
薬学的解説:髄膜炎菌ワクチンの特徴
4価結合型ワクチンは、髄膜炎菌の莢膜多糖を無毒化ジフテリア毒素(CRM197)やジフテリアトキソイドなどのキャリア蛋白に共有結合(コンジュゲート)させた製剤です。コンジュゲートにより、2歳未満の乳幼児でも免疫応答が誘導され、T細胞依存性免疫応答を活性化して記憶免疫が形成されます。多糖体ワクチン(非コンジュゲート型)と比べて免疫持続性が高く、ブースター効果も得やすい特徴があります。血清型Bには対応していないため、B型が流行している地域では別途B型対応ワクチン(国内未承認のものあり)の検討が必要な場合がありますが、スウェーデンでは特段の対応は一般的に求められていません。
インフルエンザワクチン
必要性:推奨(渡航時期による)
- 接種時期:スウェーデンの冬季(10月〜3月)に滞在予定の場合
- 接種回数:年1回(場合により2回)
- 有効期間:1年
- 費用目安:1回 3,000〜4,500円(目安)
- 実施時期:渡航の2〜4週間前
北欧の冬季はインフルエンザシーズンです。冬期滞在者は接種を強く推奨します。
薬学的解説:インフルエンザワクチンの特性
現在日本で使用されているインフルエンザワクチンの多くは、不活化分割ワクチン(サブユニットワクチン)です。ウイルスを脂質二重膜可溶化剤で処理し、HA(赤血球凝集素)・NA(ノイラミニダーゼ)を主成分として精製・製剤化します。WHOが毎年の流行株予測に基づき推奨する株(通常A型2株・B型2株の4価)を含みます。
接種後約2週間で防御抗体が産生されます。有効性は株のマッチ度に依存しますが、一般に40〜60%(重症化予防では70〜80%)とされています。北半球の流行株情報はスウェーデン(欧州北部)と日本でほぼ共通しますが、欧州向けワクチン株が微妙に異なる場合もあります。渡航前に日本で接種しておくことで、少なくとも渡航直後の感染リスクを低減できます。
不要なワクチン(スウェーデン渡航時)
以下は通常、スウェーデン渡航時には不要です:
- 黄熱病ワクチン:スウェーデンに黄熱病のリスクなし。ただし、第三国経由でスウェーデンに入国する場合、経由国の入国要件を確認
- チフスワクチン:スウェーデンでの発症リスク極めて低い
- 狂犬病ワクチン:一般的には不要。野生動物との接触リスクが高い場合のみ検討
- 日本脳炎ワクチン(再接種):既に日本で接種済みなら不要
狂犬病について補足
スウェーデン本土は1886年以来、陸生動物(犬・コウモリを除く)における狂犬病清浄国として認定されています。ただし、欧州型コウモリ狂犬病ウイルス(EBLV)がコウモリに存在する可能性があります。洞窟探検・コウモリとの密接な接触が見込まれる活動を予定している場合は、狂犬病暴露前予防接種(3回接種:0日・7日・21または28日)を検討してください。一般的な観光・業務渡航では不要です。
薬剤師メモ アフリカやアジア経由でスウェーデンに渡航する場合、経由国の黄熱病ワクチン証明書(国際予防接種証明書)が必須となる場合があります。ルートを確認し、必要に応じて事前に対応してください。
推奨される接種スケジュール例
接種スケジュールは渡航の目的・期間・訪問地域によって大きく異なります。以下は代表的な2パターンの目安です。個人の接種歴・健康状態により調整が必要なため、必ず医師・薬剤師に相談してください。
パターンA:3ヶ月以内の短期滞在者(都市部観光・出張)
| 実施時期 | ワクチン | 回数 |
|---|---|---|
| 渡航8週間前 | A型肝炎 | 1回目 |
| 渡航8週間前 | TBEワクチン(森林・島嶼部訪問予定の場合) | 1回目 |
| 渡航4週間前 | 破傷風トキソイド | 追加接種(必要に応じて) |
| 渡航4週間前 | TBEワクチン(速成スケジュール2回目) | 2回目 |
| 渡航2週間前 | A型肝炎 ※速成として(または渡航後6〜12ヶ月後に2回目) | 確認 |
| 渡航時期による | インフルエンザ | 1回 |
パターンB:6ヶ月以上の長期滞在者(留学・赴任)
| 実施時期 | ワクチン | 回数 |
|---|---|---|
| 渡航24週間前 | B型肝炎 | 1回目 |
| 渡航22週間前 | A型肝炎 | 1回目 |
| 渡航20週間前 | TBEワクチン | 1回目 |
| 渡航18週間前 | B型肝炎 | 2回目 |
| 渡航17週間前 | TBEワクチン(標準スケジュール2回目) | 2回目 |
| 渡航12週間前 | B型肝炎 | 3回目 |
| 渡航8週間前 | A型肝炎 | 2回目 |
| 渡航8週間前 | TBEワクチン(標準スケジュール3回目) | 3回目 |
| 渡航4週間前 | 髄膜炎菌ワクチン | 1回 |
| 渡航2週間前 | 破傷風トキソイド追加 | 必要に応じて |
複数ワクチンの同時接種について(薬学的視点)
複数のワクチンを同日に接種することは、免疫学的・薬学的に安全性が確認されており、国際的なガイドラインでも推奨されています。ただし、以下のルールを遵守する必要があります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 生ワクチン同士の間隔 | 同日接種または4週間以上の間隔が必要(例:MRワクチンと水痘ワクチン) |
| 不活化ワクチン同士 | 間隔の制限なし(同日接種可) |
| 生ワクチンと不活化ワクチン | 間隔の制限なし(同日接種可) |
| 接種部位 | 異なる部位(左腕・右腕など)に接種することが推奨 |
| 副作用モニタリング | 複数接種時は個別の副反応を判別しにくくなるため、記録管理が重要 |
TBEワクチン・A型肝炎ワクチン・B型肝炎ワクチンはいずれも不活化ワクチンであり、同日に異なる部位へ接種することが可能です。これによりトラベルクリニックへの来院回数を大幅に削減できます。
予防接種の実施機関と費用
日本国内での接種機関
-
トラベルクリニック(推奨)
- 渡航医学の専門医が対応
- 複数ワクチンの同時接種が可能
- 費用目安:初診料 3,000〜5,000円(目安)+ワクチン代
- 主な施設:成田空港クリニック、羽田空港医科学クリニック、各地の渡航医学センター
-
一般病院・クリニック
- かかりつけ医で相談可能
- ワクチン種によっては在庫確認が必要
- 複数回訪問が必要になる場合あり
-
保健所・市町村予防接種施設
- 定期接種(DPT・麻疹など)は無料〜低額
- 任意接種は実施していない場合が多い
費用の目安表
| ワクチン | 1回分単価(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| A型肝炎 | 8,000〜12,000円 | 2回接種が基本 |
| B型肝炎 | 5,000〜8,000円 | 3〜4回接種が必要 |
| 麻疹・風疹混合(MR) | 9,000〜11,000円 | 定期接種済み者は任意接種扱い |
| 破傷風トキソイド | 3,000〜5,000円 | 10年ごとの追加推奨 |
| インフルエンザ | 3,000〜4,500円 | 年1回 |
| 髄膜炎菌 | 10,000〜15,000円 | 1回接種 |
| TBEワクチン | 8,000〜15,000円 | 要事前確認(取扱施設限定) |
| 合計(全推奨ワクチン・目安) | 約60,000〜100,000円 | 渡航計画により変動 |
薬剤師メモ 複数ワクチンの同時接種は医学的に安全です。トラベルクリニックでは1回の来院で複数接種が可能なため、時間効率が良好です。異なる種類のワクチン(生ワクチン同士を除く)は同日接種できます。
ワクチン接種後の副反応と対処法
ワクチンは医薬品であり、程度の差はあれ副反応が生じる可能性があります。渡航前に主な副反応を理解しておくことで、不安なく接種に臨めます。
主なワクチン別副反応の整理
| ワクチン | 局所反応 | 全身反応 | 重篤な反応(まれ) |
|---|---|---|---|
| A型肝炎 | 疼痛・発赤・腫脹(20〜50%) | 疲労感・頭痛(5〜10%) | アナフィラキシー(極めてまれ) |
| B型肝炎 | 疼痛・腫脹(約20〜30%) | 発熱・倦怠感(5%以下) | アナフィラキシー(極めてまれ) |
| TBEワクチン | 疼痛・発赤(30〜60%) | 発熱・頭痛・筋肉痛(約10〜20%) | 神経症状(非常にまれ) |
| MR(生) | 発赤・腫脹(軽度) | 発熱・発疹(5〜15日後に出現することも) | アナフィラキシー(極めてまれ) |
| インフルエンザ | 発赤・疼痛(約10〜64%) | 発熱・倦怠感(5〜10%) | ギラン・バレー症候群(極めてまれ) |
副反応への実際的な対処法
- 接種部位の疼痛・腫脹:冷湿布(15〜20分間冷却)、揉まない
- 発熱・全身倦怠:水分補給・安静。高熱が続く場合は医療機関へ
- アナフィラキシー疑い(接種後30分以内の呼吸困難・蕁麻疹・血圧低下):直ちに接種した医療機関に報告・対応を求める
接種当日・翌日は激しい運動やアルコール多飲を避けることが推奨されます。なお、副反応が生じても通常は24〜48時間以内に軽快します。
ワクチンの禁忌・相互作用・特別な注意が必要な方
接種禁忌のまとめ
| 条件 | 該当するワクチン | 対応 |
|---|---|---|
| 妊婦 | MR(生ワクチン)、水痘、黄熱 | 不活化ワクチンは一般的に可。必ず産科医に相談 |
| 高度免疫不全(抗がん剤・ステロイド大量投与中など) | 生ワクチン全般 | 不活化ワクチンは原則可。効果が低下する場合あり |
| 過去に同ワクチン成分へのアナフィラキシー歴 | 該当ワクチン全て | 禁忌。代替手段を医師と相談 |
| 卵アレルギー(重篤) | インフルエンザワクチン(一部製品) | 卵を用いない製造方法のワクチンを選択することも可能。医師に要相談 |
薬物との相互作用
ワクチン接種に際して特に注意が必要な薬物相互作用は以下の通りです。
- 免疫抑制薬(シクロスポリン・メトトレキサートなど):生ワクチン接種禁忌。不活化ワクチンは接種可能だが、免疫応答が減弱し効果が不十分になる場合があります
- 抗凝固薬(ワルファリン・直接経口抗凝固薬など):筋肉内注射後に出血・血腫形成リスクが増加します。INRが治療域内であれば接種可能ですが、接種後に圧迫を長めに行うなどの配慮が必要です
- 免疫グロブリン製剤:生ワクチン(MRなど)との同時接種は避けます。免疫グロブリン投与後3ヶ月以上はMR生ワクチンの接種を延期します
- NSAIDs・解熱薬(イブプロフェン・アセトアミノフェンなど):接種直前・直後の予防的使用は一部のワクチンで免疫応答を低下させる可能性があることが研究で示されています(特にA型肝炎・インフルエンザワクチンでの抗体価低下報告あり)。副反応が出てから服用するのが推奨です
スウェーデン到着後に接種を受ける場合
やむを得ず渡航前に接種が完了しなかった場合、スウェーデン国内でも接種は可能です。
- 実施機関:Vårdcentralen(ヴォードセントラーレン:地域診療センター)、民間クリニック(Privata kliniker)
- 費用:国籍や滞在ステータスにより異なります。EU/EEA圏の居住者は一部無料ですが、非居住の日本人渡航者は基本的に自費となります
- TBEワクチン現地入手:スウェーデンでは一般的にTBEワクチンは薬局(Apotek)で購入して診療所で接種する仕組みです。スウェーデン公衆衛生庁が4月〜5月の接種を推奨しており、夏のシーズン前は需要が集中します
- 英語対応:スウェーデンの英語普及率は非常に高く、都市部の医療機関では英語での受診が可能です
- 推奨:事前に渡航先地域の医療機関情報を収集し、手続き方法(1177 Vårdguiden:スウェーデン医療情報ポータル)を確認しておきましょう
渡航前のチェックリスト
□ 既往の予防接種記録を確認(母子手帳、予防接種台帳)
□ トラベルクリニックまたは医療機関に予約(2ヶ月前が理想)
□ 渡航期間・訪問地域・現地活動内容を医師に説明
□ 各ワクチンの接種スケジュールを確認
□ TBEワクチン:森林・島・湖岸地域訪問予定ならば早めに確認
□ 予防接種済証(黄色い本)の記載を確認
□ 国際予防接種証明書が必要な場合は取得申請
□ 第三国経由渡航時は経由国の入国要件を確認
□ 接種後の副反応対応方法を確認(医師の連絡先等)
□ アウトドア活動予定者はマダニ忌避対策品(ディート含有忌避剤等)を準備
□ 常用薬の持参量確認(スウェーデンは処方薬の購入が容易でない場合あり)
まとめ
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スウェーデンは医療水準が高く感染症リスクは低いが、予防接種は推奨
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スウェーデン独自の重要ワクチン:TBE(ダニ脳炎)ワクチン。夏季に森林・島・湖岸地域を訪問する場合は必須に近い。標準3回スケジュールには3〜6ヶ月かかるため、早期準備が鍵
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必須確認ワクチン:麻疹・風疹2回、破傷風トキソイド(10年以内)、ポリオ4回
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推奨追加ワクチン:A型肝炎(ほぼ全員)、B型肝炎(長期滞在・医療従事予定)、インフルエンザ(冬期滞在)、髄膜炎菌(学生寮・共同生活予定者)
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接種計画は最低8週間前から、TBEを含む場合や6ヶ月以上滞在予定なら半年前から開始
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トラベルクリニックの利用が効率的かつ安全(複数同時接種可、渡航医学専門知識あり)
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費用目安:60,000〜100,000円(ワクチン選択・回数により変動)
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不活化ワクチン同士は同日接種可能。生ワクチン同士は同日または4週間以上の間隔が必要
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常用薬との相互作用(抗凝固薬・免疫抑制薬など)は必ず医師・薬剤師に申告
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接種歴・健康状態・活動予定により個別対応が必要。必ず医療機関に相談を
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国際予防接種証明書が必要な場合あり。第三国経由時は経由国の要件確認が必須
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TBEワクチンはマダニ忌避対策(ディート含有忌避剤・長袖着用・帰宅後の全身チェック)と組み合わせることで、より高い防御効果が得られる
参考文献・公的情報源
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厚生労働省「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」および渡航者向け感染症情報 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/index.html
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外務省 海外安全情報:スウェーデン 感染症危険情報 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_157.html
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CDC(米国疾病予防管理センター)Traveler's Health: Sweden https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/sweden
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WHO(世界保健機関): Vaccines and vaccination https://www.who.int/immunization/diseases/en/
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Folkhälsomyndigheten(スウェーデン公衆衛生庁): Tick-borne encephalitis (TBE) https://www.folkhalsomyndigheten.se/smittskydd-beredskap/smittsamma-sjukdomar/tick-borne-encephalitis-tbe/
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ECDC(欧州疾病予防管理センター): Tick-borne encephalitis – Annual Epidemiological Report https://www.ecdc.europa.eu/en/tick-borne-encephalitis/surveillance-and-disease-data
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PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構): ワクチン製品情報 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
監修: 薬剤師(博士(薬学))