オーストリアでアレルギーになったら|現地で買える薬と買い方を薬剤師が解説
オーストリアは中央ヨーロッパ屈指の観光地でありながら、日本人にとって「想定外のアレルギー」が起きやすい国でもあります。シラカバの花粉、ブタクサ、ヘーゼルナッツを多用するスイーツ文化——日本ではほとんど暴露されないアレルゲンが、ウィーンの石畳やザルツブルクの山麓に数多く潜んでいます。
本記事では、薬剤師・博士(薬学)の立場から、現地で実際に購入できるOTC薬のブランド名と成分、ドイツ語でのコミュニケーション方法、重症度の見極め方、そして日本帰国後の注意点まで、7,000字超で徹底解説します。
1. オーストリアでアレルギーになる原因の解説
気候と植生が生む季節性アレルギー
オーストリアは標高差が大きく、ウィーン盆地(標高約180m)からアルプス山脈(最高峰グロースグロックナー3,798m)まで多様な植生が広がります。この多様性が、日本人の免疫系にとって未知のアレルゲンを大量に発生させる要因となっています。
春(3〜5月): シラカバ(Birke)の花粉が最大の脅威です。日本国内でシラカバ花粉に暴露された経験がない(北海道以外の出身者など)方は、初暴露で強い反応を示すことがあります。また、ハンノキ(Erle)、ハシバミ(Haselnuss)の花粉も3月から飛散を開始し、ウィーン市内でも採取されています。イネ科植物の花粉は4月末から増加し、インスブルック近郊の草原地帯では特に高濃度が記録されます。
夏〜秋(6〜9月): ブタクサ(Ambrosia)は要注意です。東ヨーロッパ全域で勢力を拡大しており、オーストリア東部・ドナウ川河川敷は欧州でも有数の高濃度地帯とされています。ヨモギ(Beifuß)も同時期に飛散し、これらはシラカバ花粉との交差反応(口腔アレルギー症候群)を引き起こしやすい点が特徴的です。
通年: ハウスダストと室内ダニは季節を問わず問題になります。ウィーンやザルツブルクの旧市街にある歴史的建造物を改装したホテルや、アパートメント型宿泊施設では湿度管理が不十分なケースもあり、ダニアレルゲン濃度が高くなりがちです。
食文化由来の食物アレルギー
オーストリアの伝統料理はアレルゲンの宝庫ともいえます。とりわけ以下の点に注意が必要です。
- ヘーゼルナッツ(Haselnüsse): ザッハートルテやモーンシュトゥルーデルなど、ウィーンの菓子文化に深く根付いています。シラカバ花粉との交差反応も多く、口唇・口腔内のかゆみ・腫れ(口腔アレルギー症候群)が出現することがあります。
- セロリ(Sellerie): EU(欧州連合)は食品表示義務14品目にセロリを含めており、オーストリア料理でも広く使用されます。セロリアレルギーは日本では稀ですが、欧州では比較的多く報告されています。
- 乳製品(チーズ・バター): 伝統的なウィンナーシュニッツェルやスパーツレなど、乳製品が調理に多用されます。乳糖不耐症との鑑別も必要です。
環境因子
ウィーン旧市街では観光用の馬車(フィアカー)が今も現役で運行されており、馬糞由来のアレルゲンが路上に飛散することがあります。また、アルプス地方の針葉樹林や牧草地帯では、高濃度の花粉が短時間に押し寄せる「花粉の嵐(Pollenflug-Alarm)」が春季に発生することがあり、日本の花粉飛散レベルとは比較にならない高濃度になる地域もあります。
2. 重症度判定チェックリスト
アレルギー症状は軽症から生命の危機まで幅広く、適切な対応を判断するためのチェックリストです。薬剤師は診断を行いませんが、以下を参考に緊急度を自己判定してください。
🟢 経過観察レベル(OTC薬で対応可能)
以下の症状のみで、急速な悪化がない場合は、まず現地薬局(Apotheke)でOTC抗ヒスタミン薬を購入して対応できます。
- □ 鼻水・鼻づまり・鼻のかゆみ
- □ くしゃみ(連続するが呼吸は正常)
- □ 目のかゆみ・充血・涙目(視力に変化なし)
- □ 皮膚の軽度のかゆみ・赤み(直径2cm未満の局所的な発疹)
- □ 口腔内の軽微なかゆみ・ピリピリ感(5〜10分以内に自然消失)
🟡 準緊急レベル(速やかにクリニック受診を推奨)
以下の症状が1つでも該当する場合は、なるべく当日中に医療機関を受診してください。OTC薬を服用しながら受診を検討します。
- □ 全身にじんましん(蕁麻疹)が広がっている
- □ 顔(まぶた・唇)が腫れてきた
- □ 喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー音)はないが、胸が少し苦しい感覚がある
- □ 口腔アレルギー症候群の症状が30分以上続く
- □ 軽度の頭痛・倦怠感を伴う発疹
- □ 花粉症症状が市販薬で48時間改善しない
🔴 緊急レベル(ただちに救急車・112番通報)
次のいずれか1つでも該当したら、迷わず112番(ヨーロッパ共通緊急番号)に電話してください。アナフィラキシーショックを疑います。
- □ 急激な呼吸困難・喘鳴・声がかすれる
- □ 舌・喉・気道の腫れ(唾が飲み込みにくい、声が変わった)
- □ 血圧低下を示すめまい・立ちくらみ・意識が遠くなる感覚
- □ 顔面蒼白または全身紅潮とともに動悸・胸痛
- □ 嘔吐・腹痛・下痢が急激に起こり、皮膚症状も伴う
- □ エピネフリン自己注射(エピペン)を持参している場合は使用後も必ず受診
薬剤師メモ: アナフィラキシーは「食べた・刺された・薬を飲んだ後5〜30分以内」に出やすいですが、2相性反応として数時間後に再燃することがあります。一度症状が落ち着いても医療機関で観察を受けることが重要です。
3. 現地薬局(Apotheke)で買えるOTC薬
オーストリアの薬局(Apotheke)は処方箋なしで購入できるOTC医薬品(Rezeptfreie Arzneimittel)の品揃えが充実しています。以下の表は、実在が確認されている成分・ブランドに絞って掲載しています。価格は目安であり、薬局・時期によって変動します。
内服抗ヒスタミン薬(第2世代・非鎮静性または低鎮静性)
| ブランド名 | 有効成分(一般名) | 用法・用量(成人標準) | 価格目安 | 処方箋 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| Piriteze | セチリジン塩酸塩10mg | 1日1回 1錠(就寝前推奨) | €4〜7 /10錠 | 不要 | ウィーン市内ほぼ全Apothekeで入手可。第2世代標準薬。比較的眠気少なめ |
| Zyrtec | セチリジン塩酸塩10mg | 1日1回 1錠 | €5〜8 /10錠 | 不要 | Piriteze と同成分。ブランドにより価格が異なる場合あり |
| Xyzal | レボセチリジン塩酸塩5mg | 1日1回 1錠(夜間服用推奨) | €6〜10 /10錠 | 不要 | セチリジンの活性光学異性体。低用量で高効果、運転への影響が比較的少ない |
| Claritine / Loratadine 系 | ロラタジン10mg | 1日1回 1錠 | €5〜8 /10錠 | 不要 | 非鎮静性の代表格。ただし効果発現は12〜24時間後のことあり。即効性は期待しにくい |
| Telfast / Fexofenadin系 | フェキソフェナジン塩酸塩(規格は製品により異なる) | 製品指示に従う | €8〜12 / 包装単位 | 不要 | 胃内容物の影響を受けにくく、効果発現は比較的早め。運転への影響が少ない |
注意: 第1世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン含有製品など)は眠気・認知機能低下が著しく、オーストリアでの観光・レンタカー運転中には避けることを強く推奨します。
局所作用薬(鼻・目への直接投与)
| ブランド名または成分 | 有効成分 | 用法 | 価格目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Otrivin | キシロメタゾリン塩酸塩(点鼻薬) | 1日2〜3回 各鼻孔に1噴霧 | €4〜6 | 血管収縮薬。連用は3〜5日以内。長期使用で薬剤性鼻炎のリスク |
| モメタゾンフランカルボン酸エステル配合点鼻薬(要薬剤師相談) | モメタゾンフランカルボン酸エステル | 1日1回 各鼻孔に2噴霧 | €10〜15 | ステロイド点鼻薬。効果発現は数日後。即効性はないが継続使用で有効。Rx要の場合もあり |
| ケトチフェン含有点眼薬(成分名で相談) | ケトチフェン | 1日2〜4回 1〜2滴 | €5〜9 | マスト細胞安定化作用+H1拮抗作用。眼のかゆみ・充血に有効 |
| クロモグリク酸ナトリウム含有点眼薬(成分名で相談) | クロモグリク酸ナトリウム | 1日4〜6回 1〜2滴 | €4〜8 | マスト細胞安定化。予防的使用に適する。副作用が少なく安全性高 |
薬剤師から一言: ステロイド点鼻薬やRx(処方箋)扱いの製品については、必ず薬局カウンターで薬剤師に「OTC(Rezeptfrei)で入手可能ですか?」と確認してください。同一成分でも規格によりOTC/Rxが分かれる場合があります。
4. 現地語での症状表現・薬局での買い方フレーズ
オーストリアの公用語はドイツ語です。ウィーンや観光地では英語も十分通じますが、ドイツ語を少し使えると薬剤師との意思疎通がスムーズになります。
薬局での基本フレーズ(英語・ドイツ語)
| 日本語 | 英語(カタカナ発音) | ドイツ語(カタカナ発音) |
|---|---|---|
| アレルギー症状があります | I have allergy symptoms.(アイ ハヴ アレルジー シンプトムズ) | Ich habe Allergiesymptome.(イッヒ ハーベ アレルギーズュンプトーメ) |
| 処方箋なしで買えますか? | Can I buy this without a prescription?(キャン アイ バイ ディス ウィズアウト ア プレスクリプション?) | Kann ich das ohne Rezept kaufen?(カン イッヒ ダス オーネ レツェプト カウフェン?) |
| 眠気が少ない薬をください | I'd like something that doesn't cause drowsiness.(アイド ライク サムシング ザット ダズント コーズ ドラウジネス) | Ich möchte ein Mittel, das nicht müde macht.(イッヒ メヒテ アイン ミッテル、ダス ニヒト ミューデ マハト) |
| 運転しても大丈夫ですか? | Is it safe to drive after taking this?(イズ イット セーフ トゥ ドライヴ アフター テイキング ディス?) | Kann ich damit Auto fahren?(カン イッヒ ダミット アウト ファーレン?) |
| 1日何回飲みますか? | How many times a day should I take this?(ハウ メニー タイムズ ア デイ シュッド アイ テイク ディス?) | Wie oft täglich nehme ich das?(ヴィー オフト テークリッヒ ネーメ イッヒ ダス?) |
| 子供(○歳)に使えますか? | Is this suitable for a child aged ○?(イズ ディス スータブル フォー ア チャイルド エイジド ○?) | Ist das für ein Kind im Alter von ○ Jahren geeignet?(イスト ダス フュア アイン キント イム アルター フォン ○ ヤーレン ゲアイグネット?) |
症状別ドイツ語表現
| 日本語の症状 | ドイツ語表現 | カタカナ発音 |
|---|---|---|
| 鼻水が止まらない | Ich habe ständig Schnupfen | イッヒ ハーベ シュテンディヒ シュヌップフェン |
| くしゃみが続く | Ich niese ständig | イッヒ ニーゼ シュテンディヒ |
| 目がかゆい | Meine Augen jucken | マイネ アウゲン ユッケン |
| 鼻が詰まっている | Meine Nase ist verstopft | マイネ ナーゼ イスト フェアシュトップフト |
| 皮膚がかゆい | Ich habe Juckreiz auf der Haut | イッヒ ハーベ ユックライツ アウフ デア ハウト |
| じんましんが出ている | Ich habe Nesselausschlag | イッヒ ハーベ ネッセルアウスシュラーク |
| 顔が腫れている | Mein Gesicht ist geschwollen | マイン ゲジヒト イスト ゲシュヴォレン |
| 呼吸が苦しい | Ich habe Atemnot | イッヒ ハーベ アーテムノート |
| 花粉症です | Ich habe Heuschnupfen | イッヒ ハーベ ホイシュヌップフェン |
| 食物アレルギーがあります | Ich habe eine Nahrungsmittelallergie | イッヒ ハーベ アイネ ナールングスミッテルアレルギー |
5. 現地の医療事情
オーストリアの医療制度の概要
オーストリアは社会保険制度が充実した国ですが、外国人旅行者の扱いについて理解しておくことが重要です。EU圏外の日本人旅行者は原則として自費診療となります。海外旅行保険(Reisekrankenversicherung)への加入が必須です。
公的病院(Krankenhaus / Spital): 大学病院を含む公立病院は日本の救急に相当する時間外診療も行いますが、待ち時間は数時間に及ぶことがあります。
クリニック・開業医(Arztpraxis / Kassenarzt): 軽症〜中等症のアレルギー症状には、まず開業医を受診するのが効率的です。ただし予約制であることが多く、当日受診は難しい場合があります。
救急外来: 緊急時は病院の救急外来(Notaufnahme)へ。
主要都市の医療機関情報
| 都市 | 施設名 | 種別 | 連絡先(目安) |
|---|---|---|---|
| ウィーン | Allgemeines Krankenhaus Wien(AKH) | 大学附属病院・救急 | +43 1 40400 |
| ウィーン | Krankenhaus der Barmherzigen Brüder Wien | 私立病院 | +43 1 21121-0 |
| ザルツブルク | Universitätsklinikum Salzburg(LKH) | 大学病院・救急 | +43 662 4482-0 |
| インスブルック | Medizinische Universität Innsbruck(MUI) / Tirol Kliniken | 大学病院 | +43 512 504-0 |
| グラーツ | LKH-Univ. Klinikum Graz | 大学病院 | +43 316 385-0 |
注意: 連絡先電話番号は変更されることがあります。渡航前に公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。
緊急連絡番号
| 番号 | 用途 |
|---|---|
| 112 | 欧州共通緊急番号(救急・警察・消防すべて対応) |
| 144 | オーストリア救急専用(Rettung) |
| 141 | 夜間・休日の医師往診サービス(Ärztefunkdienst、ウィーン) |
| 1450 | オーストリア国内の医療電話相談(Gesundheitshotline) |
日本語対応・英語対応
ウィーン市内の大きな病院や国際的なホテルに近い開業医では英語対応可能なスタッフが在籍していることが多いです。完全な日本語対応が可能な医療機関の情報は変動が大きいため、在オーストリア日本国大使館(ウィーン)または在ザルツブルク日本国総領事館に事前確認することを推奨します。
- 在オーストリア日本国大使館: +43 1 531 92-0(代表)/ 緊急連絡は同番号で確認
旅行保険について
オーストリアの医療費は自費になると高額になる場合があります。旅行前にクレジットカード付帯の海外旅行保険の補償内容を確認し、アレルギー既往歴がある方は特約付きプランの検討を推奨します。渡航前に保険会社のキャッシュレス対応病院リストを確認しておくと安心です。
6. 薬剤師の視点:渡航前準備と持参推奨OTC
渡航前に必ずやること
1. アレルゲン検査の実施: 自分が何に反応するか事前に把握していれば、現地での対応が格段に変わります。特にシラカバ花粉、ブタクサ、セロリ、ヘーゼルナッツへの感作をあらかじめ確認しておくことを推奨します。
2. 主治医・かかりつけ薬剤師への相談: アレルギー専門医またはかかりつけ医に、渡航先の季節・活動内容を伝えて処方薬または推奨OTCを確認しましょう。重症アレルギー歴がある方はエピネフリン自己注射(エピペン)の携行を強く検討してください。
3. アレルギー情報の英文・ドイツ語メモ作成: 自身のアレルゲン、既往歴、現在服用中の薬を英語またはドイツ語で1枚にまとめたカードを作成し、財布に入れておくことで緊急時の医療者への情報伝達が迅速になります。
日本から持参を推奨するOTC・医療用薬
| 薬剤名(日本) | 有効成分 | 特徴 | 持参の推奨度 |
|---|---|---|---|
| ストナリニS(佐藤製薬) | セチリジン塩酸塩10mg | 日本の医療用Xyzalと同成分。使い慣れた薬で安心 | ★★★ |
| アレグラFX(久光製薬) | フェキソフェナジン塩酸塩60mg | 非鎮静性。1回60mg・2錠で120mg相当 | ★★★ |
| クラリチンEX(大正製薬) | ロラタジン10mg | 非鎮静性の代表。運転への影響少なめ | ★★★ |
| アレジオン20点眼液(参天製薬) | エメダスチンフマル酸塩0.05% | 目のかゆみ・充血に有効 | ★★☆ |
| エピペン(処方箋必要) | エピネフリン0.3mg | アナフィラキシー既往者は必携 | ★★★(該当者のみ) |
持参上の注意点: 個人使用目的の医薬品はオーストリア入国時に申告不要(個人使用量の範囲内=概ね1〜2ヶ月分が目安)ですが、注射剤(エピペン等)を携帯する場合は医師の英文証明書を携行することを推奨します。税関での確認を求められた際に提示できると迅速に通過できます。
現地入手のリスクと注意点
- 正規Apothekeでの購入が原則: オーストリアはEUの医薬品規制(EMA基準)に準拠しており、正規の薬局(緑の十字マーク「♦」が目印)で購入する限り品質は担保されています。
- スーパーマーケット・ドラッグストア(dm、Müller等)での医薬品販売: これらの店では処方箋医薬品はもちろん、一部の医療用OTC製品も販売されていません。購入できるのはサプリメント・外用保湿剤・衛生用品が中心です。必ず「Apotheke」の看板がある薬局で購入してください。
- インターネット購入: EU認定のオンライン薬局もありますが、旅行中の緊急対応には不向きです。現地調達を基本としてください。
7. 帰国後の観察ポイント
オーストリアは衛生水準が高い国であり、アレルギーそのものが海外からの輸入感染症になることはありません。しかし、渡航中に使用した薬の影響、または新たに感作されたアレルゲンに関して、帰国後に注意すべき点があります。
帰国後に続く・悪化する症状への対応
帰国2週間以内に受診を推奨する状況:
- 渡航中から継続して蕁麻疹・皮膚発疹が改善しない
- アレルギー症状に発熱(38℃以上)を伴う
- 体重減少・倦怠感・リンパ節腫脹を伴う
- 渡航前にはなかった食物アレルギー症状が新たに出現した
これらは単純なアレルギーではなく、感染症(皮膚真菌症、疥癬等)や自己免疫疾患が潜んでいる可能性を除外するために専門医の受診が必要です。
新規感作の可能性
ヨーロッパ渡航後に、帰国してから初めて「特定の食物を食べると口や唇がかゆくなる」症状が出ることがあります。これはシラカバ花粉との交差反応(花粉食物アレルギー症候群、PFAS)が現地での花粉暴露により新たに誘発された可能性があります。
典型的な交差反応食品(シラカバ花粉との関連):
- リンゴ、洋梨、桃、さくらんぼ(バラ科果物)
- ヘーゼルナッツ、アーモンド
- セロリ、ニンジン
- 大豆
帰国後に上記食品で症状が出た場合は、アレルギー内科または耳鼻咽喉科・皮膚科(アレルギー専門医)を受診してください。
帰国時に確認する内服薬・点鼻薬の残薬処理
- 使い残した現地購入OTC薬は、成分が日本で承認されている成分(セチリジン、ロラタジン等)であれば持ち帰り使用可能です。ただし、個人使用の範囲内とし、他者への譲渡はしないでください。
- ステロイド系点鼻薬の残薬は、かかりつけ薬剤師または医師に相談の上、継続使用の可否を判断してもらうことを推奨します。
8. 日本の同成分OTC(渡航前持参の参考リスト)
以下は日本国内で購入可能で、実在が確認されている製品のみを掲載しています。
| 日本の製品名 | 有効成分 | メーカー | オーストリア対応製品との比較 |
|---|---|---|---|
| ストナリニS | セチリジン塩酸塩10mg | 佐藤製薬 | Piriteze / Zyrtec と同成分・同用量 |
| アレグラFX | フェキソフェナジン塩酸塩60mg | 久光製薬 | Telfast系より用量は低め(現地は規格が異なる製品あり) |
| クラリチンEX | ロラタジン10mg | 大正製薬 | Claritine と同成分・同用量 |
| コンタック鼻炎Z | セチリジン塩酸塩10mg | グラクソ・スミスクライン | 同成分。パッケージは異なる |
参考文献
-
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC)「Pollen monitoring and allergy information in Europe」https://www.ecdc.europa.eu/(2024年参照)
-
Österreichische Gesellschaft für Allergologie und Immunologie (ÖGAI)「Österreichischer Pollenwarndienst」https://www.pollenwarndienst.at/(オーストリア花粉情報公式サービス)
-
World Health Organization (WHO)「Allergen immunotherapy: therapeutic vaccines for allergic diseases」WHO Position Paper, Allergy 1998; 53(Suppl 44). https://www.who.int/
-
外務省 海外安全情報 オーストリア「感染症危険情報・スポット情報」https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_168.html(2024年参照)
-
European Medicines Agency (EMA)「Guideline on the clinical development of products for specific immunotherapy for the treatment of allergic diseases」https://www.ema.europa.eu/
-
日本アレルギー学会「アレルギー総合ガイドライン2022」https://www.jsaweb.jp/(協和企画、2022年)
-
Bundesministerium für Gesundheit Österreich(オーストリア連邦保健省)「Arzneimittelrecht und Apothekenwesen」https://www.sozialministerium.at/
まとめ
オーストリアでのアレルギー対策を簡潔に整理すると以下のとおりです。
渡航前: ①アレルゲン検査で自分の感作を確認、②使い慣れた抗ヒスタミン薬(セチリジン・ロラタジン・フェキソフェナジン系)を1〜2週間分持参、③重症アレルギー既往者はエピペンを医師に処方してもらい携行。
現地対応: ①「Apotheke」(緑の十字マーク)でのみ購入、②眠気の少ない第2世代抗ヒスタミン薬を選択、③ドイツ語か英語フレーズを活用して薬剤師に症状を伝える。
緊急時: ①呼吸困難・顔面腫脹・意識変容があれば即座に112番へ、②アナフィラキシー既往者はエピペン使用後も必ず受診。
帰国後: ①新規の食物アレルギー症状に注意、②帰国後2週間以内に症状が続く・悪化する場合はアレルギー専門医へ。
オーストリアは薬局の数が多く、薬剤師教育レベルが高い国です。正規の「Apotheke」を活用し、必要に応じてドイツ語フレーズを使いながら、安全で快適な旅行をお楽しみください。
免責事項: 本記事は薬学的な一般情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の指示を行うものではありません。症状の診断および治療方針の決定は必ず医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、現地の医薬品情報・価格・施設情報は変更される場合があります。渡航前に最新情報を公式機関でご確認ください。本記事の情報を使用したことによる損害について、執筆者および当サイトは責任を負いかねます。
監修: 薬剤師(博士(薬学))