イタリアで病院・薬局を使うには|救急112・Guardia MedicaとFarmacia(緑十字)の使い方を薬剤師が解説

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イタリア渡航者必読!現地医療事情と体調不良時の対処法

イタリアは観光地として人気が高く、毎年多くの日本人が訪れます。しかし異国での体調不良は、言葉の壁や医療制度の違いで想像以上にストレスが大きいものです。本記事では、薬剤師の視点から「イタリアで病気になったときの正しい対処法」「現地医療制度の利用方法」「保険の活用」を詳しく解説します。事前知識があれば、万が一の時も冷静に対応できます。

この記事で分かること

  • イタリアの公的医療(SSN)と私的医療の違い
  • 救急番号112・118、Guardia Medica(夜間・休日診療)の使い分け
  • Farmacia(緑十字の薬局)で買える薬の成分と薬学的注意点
  • 海外旅行保険の正しい申請フロー
  • 渡航前の準備チェックリスト

イタリアの医療制度の基礎知識

公的医療と私的医療の二重構造

イタリアの医療は、1978年に設立された国民保健サービス(Servizio Sanitario Nazionale、SSN)を基盤とする公的医療と、私的医療機関の二層構造です。SSNはEU加盟国の国民・長期居住者を対象とし、基本的な医療を無料または低額で提供します。一方、短期滞在の観光客はSSNの正規患者登録ができないため、実質的に私的医療機関を利用することになります。

項目 公的医療(SSN) 私的医療
対象者 イタリア国籍者・EU居住者・在住日本人登録者 誰でも利用可能
受診方法 かかりつけ医(Medico di base)から紹介 直接受診可能
費用負担 無料〜低額 高額(現地払い)
受付時間 平日日中が中心 24時間対応の施設あり
言語対応 限定的(イタリア語中心) 私立大病院は英語対応良好
利用者 主に地元住民 観光客・富裕層
救急(Pronto Soccorso) 誰でも利用可(搬送後) 私立救急は一部あり

観光客の多くは「私的医療機関」を利用することになります。 ただし、救急搬送された場合は公立病院のPronto Soccorso(救急部門)に運ばれるケースが多く、その後の費用処理は保険会社と要確認です。

薬剤師メモ 日本の海外旅行保険で対応できるのは、原則として「私的医療機関」での受診です。公的医療SSNの診療を受けた場合、保険が下りないケースもあるため、受診前に保険会社のコールセンター(24時間対応)へ必ず連絡してください。また、EU諸国のEHIC(欧州健康保険カード)保有者はSSNで無料診療を受けられますが、日本人観光客はこのカードを持てないため注意が必要です。


Guardia Medica(ガルディア・メディカ)— 夜間・休日の一次救急

日本でいう「夜間・休日診療所」に相当するのが Guardia Medica(継続医療サービス、Continuità Assistenziale)です。平日夜間(20時頃〜翌朝8時頃)および土曜・日曜・祝日に活動し、緊急性は低いが翌日まで待てない症状(高熱、強い痛みなど)に対応します。

Guardia Medicaの特徴:

  • 電話で症状を伝えると、医師が往診または来所を指示してくれる
  • イタリア語が中心だが、都市部では英語対応医師がいる場合も
  • 費用は観光客の場合、診察料が発生(目安:€20〜50程度)
  • 処方箋を発行してもらい、翌日以降に薬局で調剤できる

電話で使える基本フレーズ:

I'm a tourist and I need medical help.
(アイム ア ツーリスト アンド アイ ニード メディカル ヘルプ)
I have a high fever.(アイ ハヴ ア ハイ フィーバー)
My chest hurts.(マイ チェスト ハーツ)

Guardia Medicaの番号は地域によって異なります。ホテルのフロントに確認するか、地元の薬局の掲示で確認してください。


体調が悪くなったときの段階的対処法

ステップ1:軽症の場合(かぜ症状、軽い下痢など)

薬局(Farmacia)での相談

イタリアの薬局は「白地に緑の十字(Croce Verde)」が目印です。欧米の薬局は日本より圧倒的に権限が大きく、医者の処方箋がなくても多くの医薬品が購入できます。

イタリアの薬局は大きく2種類に分かれます:

種類 特徴
Farmacia(ファルマチア) 資格を持つ薬剤師が常駐。処方薬・OTC薬・医療材料を取り扱う。
Parafarmacia(パラファルマチア) 処方薬は扱わないが、OTC薬・サプリメント・化粧品などを販売。

軽い症状なら、まずFarmaciaの薬剤師(Farmacista)に相談しましょう。都市部では英語が通じることも多いです。

薬局で使えるフレーズ:

  • Do you speak English?(ドゥ ユー スピーク イングリッシュ?)
  • I have a stomachache.(アイ ハヴ ア ストマックエイク)
  • I have diarrhea.(アイ ハヴ ダイアリーア)
  • I have a fever of 38 degrees.(アイ ハヴ ア フィーバー オブ サーティエイト ディグリーズ)
  • I'm allergic to penicillin.(アイム アラージック トゥ ペニシリン)

主な症状別OTC医薬品(処方箋不要):

症状 成分名(一般名) 薬学的ポイント
頭痛・発熱 アセトアミノフェン(パラセタモール) 空腹時でも服用可。飲酒時・肝疾患患者は要注意
頭痛・発熱・炎症 イブプロフェン 食後服用推奨。腎機能低下・消化性潰瘍に禁忌
下痢 ロペラミド塩酸塩 腸管運動抑制薬。感染性下痢では使用注意(後述)
下痢・腸炎 スメクタイト(dioctahedral smectite) 吸着作用。他の薬と同時服用で吸収を阻害する場合あり
胃痛・胸焼け オメプラゾール プロトンポンプ阻害薬(PPI)。CYP2C19を阻害するため薬物相互作用に注意
胃痛・胸焼け 炭酸マグネシウム・水酸化アルミニウム配合制酸薬 即効性あり。他の薬と2時間以上間隔を空けて服用
便秘 ビサコジル(坐剤・錠剤) 大腸刺激性。坐剤は30分以内に効果発現。長期使用不可
アレルギー・花粉症 ロラタジン、セチリジン塩酸塩 第2世代抗ヒスタミン薬。眠気は少ないが個人差あり
鼻閉 オキシメタゾリン(点鼻薬) 血管収縮薬。3〜5日を超えての連続使用で反跳性鼻閉のリスク
目の充血・アレルギー ケトチフェンフマル酸塩(点眼薬) 抗ヒスタミン+抗アレルギー。コンタクト装用中は外してから点眼

薬剤師メモ:ロペラミドの使用に関する重要な注意点 ロペラミドはオピオイド受容体(μ受容体)に作用して腸管蠕動を抑制します。血液脳関門をほぼ通過しないため中枢作用は限定的ですが、高用量服用やP糖タンパク質阻害薬(例:クラリスロマイシン、ケトコナゾール)との併用で心電図QT延長・不整脈が報告されています。 また、細菌性腸炎(血便・高熱を伴う下痢)では使用を控えてください。原因菌の排出が遅れ、重症化のリスクがあります。旅行者下痢症(トラベラーズダイアリー)の軽症例に限定して、成人用量を守って短期間使用するのが原則です。

薬局の営業時間と当番薬局:

  • 通常:月〜土 9:00〜13:00、15:30〜19:30(地域差あり)
  • 日曜・祝日:休業が多いが「Farmacia di Turno(当番薬局)」が対応
  • 当番薬局の検索:薬局の店頭掲示、またはスマートフォンで "farmacia di turno [都市名]" と検索

ステップ2:中程度の症状(高熱、激しい下痢、激痛など)

私立クリニック(Clinica Privata)または私立診療所(Studio Medico)への受診

言葉が通じやすく、対応が迅速な私立医療機関を利用してください。

受診までのフロー:

  1. 医療機関の検索

    • Google マップで "English speaking doctor [都市名]" "Medical Center [都市名]" と検索
    • 宿泊ホテルのコンシェルジュに相談(多くは信頼できる医療機関を把握している)
    • 旅行保険の24時間コールセンターに医療機関の紹介を依頼(最も確実
  2. 予約・受診

    • 私立施設は直接受診可能な場合が多い
    • 電話またはオンライン予約(英語対応施設を選ぶ)
    • パスポート・保険証券を持参
  3. 診察と費用

    • 一般診察料:€40〜100程度が目安(施設・診療科により大きく異なる)
    • 専門科・検査が加わると€200〜500以上になるケースも
    • 処方箋(Ricetta)をもらったら薬局で調剤

薬剤師メモ:イタリアの処方箋(Ricetta)について イタリアの処方箋には大きく分けて「Ricetta Bianca(白い処方箋)」と「Ricetta Rossa(赤い処方箋)」があります。白い処方箋は私立医師が発行し、抗生物質など多くの薬に使われます。処方箋には薬品名・用量・日数・署名が記載されます。 抗生物質は処方箋なしには原則購入できません。 薬局でのセルフ購入は耐性菌増加につながるため、欧州では厳しく規制されています。医師から処方された場合は、症状が改善しても必ず最後まで飲み切ることが重要です(コンプライアンスの徹底)。 なお、イタリアで処方された薬を帰国後に日本で継続服用する場合は、日本の主治医・薬剤師に必ず相談してください。日本で同じ薬が承認されていない場合、あるいは用量が異なる場合があります。


ステップ3:重症の場合(激しい胸痛、呼吸困難、意識障害など)

救急車(Ambulanza)の利用と緊急番号

番号 用途
112 欧州統一緊急番号(警察・救急・消防すべて対応、英語可)
118 イタリア医療救急専用番号(Ambulanza)
113 警察(Polizia)
115 消防(Vigili del Fuoco)

112は英語対応のオペレーターにつないでもらえるため、旅行者には最も使いやすい番号です。

通報時の基本フレーズ:

  • I need an ambulance.(アイ ニード アン アンビュランス)
  • My friend lost consciousness.(マイ フレンド ロスト コンシャスネス)
  • I think he is having a heart attack.(アイ シンク ヒー イズ ハヴィング ア ハート アタック)
  • We are at [ホテル名 / 住所].(ウィー アー アット ○○)

搬送先は多くの場合、公立大病院の救急部門(Pronto Soccorso)です。重症度によりトリアージが行われ、待ち時間が発生する場合があります。搬送後は保険会社に速やかに連絡し、費用処理の確認を行ってください。

薬剤師メモ:旅行者が特に注意すべき緊急症状 長距離フライト後の**深部静脈血栓症(DVT)/ 肺塞栓症(エコノミークラス症候群)はイタリア到着直後のリスクとして見逃せません。片脚の腫脹・疼痛・呼吸困難・胸痛があれば迷わず救急要請してください。また、夏季イタリアは高温になるため熱中症(Colpo di Calore)**も要注意です。大量の水分と電解質補給が必要で、意識障害を伴う場合は救急搬送が必要です。


イタリアで処方される主な医薬品一覧と薬学的解説

渡航者が遭遇しやすい症状と、イタリアで対応される医薬品を表にまとめました。

症状分類 成分名(一般名) 主な薬理作用 処方箋要否 日本人が注意すべき点
感染症 アモキシシリン・クラブラン酸 ペニシリン系抗菌薬+βラクタマーゼ阻害薬 ペニシリンアレルギー既往者に禁忌
アジスロマイシン マクロライド系抗菌薬 QT延長リスク。CYP3A4阻害に注意
シプロフロキサシン フルオロキノロン系抗菌薬 光線過敏症。乳製品・制酸薬との同時服用で吸収低下
消化器 オメプラゾール プロトンポンプ阻害薬(PPI) 不要 クロピドグレルとの相互作用(CYP2C19)
ブチルスコポラミン臭化物 抗コリン薬(平滑筋弛緩) 不要 緑内障・前立腺肥大に禁忌
ドンペリドン ドパミンD2受容体拮抗薬(制吐・消化管運動促進) QT延長リスク。心疾患患者に注意
アレルギー ロラタジン 第2世代抗ヒスタミン薬 不要 他の眠気を催す薬との併用に注意
デスロラタジン 第2世代抗ヒスタミン薬(ロラタジン活性代謝物) 不要 腎・肝機能低下で減量考慮
皮膚(真菌) クロトリマゾール イミダゾール系抗真菌薬 不要 外用のみ有効。内服は別薬剤
モメタゾンフランカルボン酸エステル ミディアム〜ストロング外用ステロイド 不要 長期・広範囲使用で皮膚萎縮のリスク

薬剤師メモ:フルオロキノロン系抗菌薬(シプロフロキサシン等)の注意事項 フルオロキノロン系抗菌薬はDNAジャイレース(トポイソメラーゼII)を阻害することで殺菌作用を発揮します。優れた組織移行性を持ちますが、腱炎・腱断裂のリスク(特にアキレス腱)、光線過敏症、QT延長などの副作用が知られています。カルシウム・マグネシウムを含む制酸薬、乳製品、鉄剤との同時服用でキレートを形成し、薬物の吸収が著しく低下するため、服用間隔を2時間以上空けることが必要です。旅行中の下痢に処方されるケースがありますが、用量・日数は医師の指示を厳守してください。


病院・医療機関の探し方と受診のコツ

主要都市の私立医療機関(参考情報)

ローマ:

  • Ospedale Privato Giancarlo Formentano(英語対応あり)
  • 国際医療センター系クリニック(Google マップで "international medical clinic Rome" 検索)

ミラノ:

  • Ospedale San Raffaele(有数の研究病院、英語対応)
  • CityLife Medical Center などの都市型クリニック

フィレンツェ:

  • Tourist Medical Center(観光客向け、英語対応)

ベネチア:

  • Ospedale dell'Angelo(Mestre地区、救急対応可)

注意: 医療機関の情報は変更される場合があります。必ずGoogle マップや旅行保険会社の医療機関リストで最新情報を確認してください。

受診時の準備物チェックリスト

  • パスポート(身分確認・医療記録作成に必要)
  • クレジットカード / 現金(€500以上を目安に)
  • 海外旅行保険証券または保険アプリ
  • 常用薬の成分名・用量・服用中の薬品名リスト(英語)
  • 薬物アレルギー情報(英語)
  • 症状をメモした紙(発症日時・経過・体温等)
  • スマートフォン(DeepL・Google翻訳などの翻訳アプリ)

薬剤師メモ 自分が常用している薬がある場合は、成分名(一般名)と用量を英語でメモして持参してください。 医師が重複処方や薬物相互作用を確認する際に必須です。 特に以下の薬を服用中の方は重複・相互作用リスクが高いため、受診時に必ず申告してください:

  • 抗凝固薬(ワルファリン、DOAC):NSAIDs(イブプロフェンなど)との併用で出血リスク増大
  • β遮断薬・カルシウム拮抗薬:一部の鎮痛薬・解熱薬と相互作用あり
  • 免疫抑制薬(シクロスポリン等):マクロライド系抗菌薬との重篤な相互作用
  • 抗てんかん薬(フェニトイン等):多くの薬物との相互作用が報告されている

海外旅行保険の正しい使い方

保険が適用される場合・されない場合

状況 適用 理由・注意点
急性の感染症・外傷 標準的に対応
事前に既知の持病の急性悪化 △〜× 保険会社・契約内容により大きく異なる。事前確認が重要
歯科治療(急性症状) 緊急時のみ、限度額あり
健康診断・予防接種 × 不適用
妊娠・出産関連 × 原則不適用(妊婦旅行保険を別途要確認)
精神疾患・うつ 契約内容で異なる
医療搬送(帰国含む) 高額になるため上限額に注意
COVID-19を含む感染症治療 △〜○ 近年は対応拡大傾向。個別確認が必須

保険請求の流れ

イタリア現地での対応:

  1. 受診前に保険会社の24時間コールセンターに電話(クレジットカード付帯保険の場合、カード裏面に番号あり)
  2. 医療機関名・受診理由を報告し、キャッシュレス対応可否を確認
  3. **「キャッシュレス診療(Direct Payment)」**が適用される場合、立替払い不要
  4. 診療後、必ず**領収書・診断書(Medical Report)**をもらう。複数枚コピーを取ること

帰国後の請求:

  1. 領収書(原本)、診断書、保険会社所定の請求書類を郵送
  2. 通常1〜2ヶ月で指定口座に振込
  3. 帰国後に日本国内で同一傷病の治療を継続する場合は、その費用も対象となる場合があり(「治療費用」または「緊急帰国費用」条項を確認)

薬剤師メモ イタリアの医療費は日本より高い傾向があります(同等の検査でも2〜4倍以上の請求になるケースあり)。高額な検査(CT・MRI・内視鏡など)が必要な場合は、実施前に保険会社のコールセンターへ連絡し、承認(prior approval)を得ることを強くお勧めします。承認なしに高額検査を受けた場合、保険適用が制限されることがあります。また、診断書はイタリア語で発行されることがあります。日本の主治医への引き継ぎ・保険請求双方に有用なので、必ず英語版の発行も依頼してください。

保険選択のポイント(渡航前の準備として)

確認項目 推奨水準
医療費用の保障限度額 1,000万円以上(€100,000相当)を推奨
歯科治療の有無 含まれているか個別確認
キャッシュレス対応 イタリアの主要病院への対応可否を確認
日本語サポート 24時間・365日対応
医療搬送(航空機搬送) 上限額または無制限か確認
賠償責任 事故加害時のカバー有無も確認

トラブル時の相談先

在イタリア日本大使館・総領事館

都市 施設 電話番号
ローマ 日本大使館 +39-06-487991
ミラノ 在ミラノ日本国総領事館 +39-02-627641
フィレンツェ 在フィレンツェ領事事務所 +39-055-284028

※最新の連絡先は外務省公式サイトで必ず確認してください。

大使館・総領事館では医療機関の斡旋は行いませんが、緊急の場合の連絡先紹介、帰国支援、通訳の紹介を相談できます。

オンライン医療相談・遠隔医療

イタリアでは遠隔医療(Telemedicina)が普及しつつあります。英語対応の国際オンライン診療サービス(Halodoc、Teladocなどの国際版)をあらかじめインストールしておくと、軽度の相談に使えることがあります。ただし、処方箋の発行・緊急対応はオンライン診療では限界があります。 中等症以上は必ず対面診療を受けてください。


薬剤師からのアドバイス:渡航前の準備

推奨される事前準備

1. 常用薬の持参・書類準備

  • 処方薬は十分な量を持参する: 旅行日数+予備分(最低5日分)を用意
  • 処方箋の英文コピーを取得: 主治医に依頼し、成分名(一般名)・用量・傷病名を英語で記載してもらう
  • 「薬の携帯証明書(Medication Card)」を作成: 服用中の全薬品を一覧にしたカードを携帯
  • 麻薬・向精神薬を含む場合: 外務省や大使館への事前確認が必要。イタリアへの持ち込みに規制がある場合があります

2. アレルギー情報カードの準備

記載項目
薬物アレルギー Penicillin allergy(皮疹・アナフィラキシー)
食物アレルギー Shellfish allergy
血液型 Blood type: A Rh+
既往歴 Asthma / Type 2 Diabetes
緊急連絡先 日本の家族の電話番号

3. 渡航前に持参すべき医薬品(目安)

以下はあくまで参考です。実際の内容物は、渡航先・日程・個人の健康状態に応じて主治医・薬剤師に相談してください。

症状 成分名(一般名)の例 備考
発熱・頭痛 アセトアミノフェン 安全性が高く最初の選択肢
下痢 ロペラミド塩酸塩 感染性下痢と非感染性下痢の区別が重要(薬剤師相談)
腸内環境 乳酸菌・ビフィズス菌配合整腸薬 抗生物質服用時の下痢予防にも
アレルギー・花粉症 セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩など 既に使用経験のある薬を
乗り物酔い ジメンヒドリナートなど 運転に影響。服用タイミングを確認
外傷・切り傷 ポビドンヨード消毒液、創傷被覆材 現地でも購入可能
目薬(アレルギー用) ケトチフェンフマル酸塩など 花粉・日差しの強いイタリアで有用

薬剤師メモ:乗り物酔い薬と抗ヒスタミン薬の注意 多くの乗り物酔い薬には第1世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート等)が含まれており、強い眠気・口渇・排尿困難を引き起こします。高齢者では認知機能低下・転倒リスクが高まるため使用に注意が必要です。また、アルコールとの相互作用(相加的中枢抑制)に注意が必要です。現地のワイン・食事との組み合わせには十分注意してください。

4. ワクチン・感染症対策

  • イタリアへの渡航で必須のワクチンは特にありませんが、季節性インフルエンザ・A型肝炎ワクチンは渡航前接種が推奨されます
  • A型肝炎: 汚染水・生食による感染リスクがあります。2回接種(6ヶ月〜1年間隔)で長期免疫獲得
  • 麻疹(はしか): イタリアでは近年アウトブレイクが報告されている時期があります。ワクチン接種歴(2回接種)を確認してください

現地でよくある体調不良と対処の実際

旅行者下痢症(Travelers' Diarrhea)

イタリア旅行者が最も遭遇しやすい体調不良のひとつです。原因の多くは細菌性(大腸菌、カンピロバクター等)です。

対処の原則:

  1. 水分・電解質補給を最優先: 市販の経口補水液(Oral Rehydration Solution)、または水+塩+砂糖で簡易ORS(WHO処方:水1L・食塩3.5g・砂糖20g)を作成
  2. 軽症〜中等症: ロペラミドは腸管蠕動抑制で対症的に使用可能。ただし発熱・血便を伴う場合は使用禁忌
  3. 中等症以上・高熱を伴う場合: 抗菌薬が必要なケースも(医師診察が必要)
  4. 食事: BRAT食(バナナ・白米・リンゴソース・トースト)から再開

熱中症・日射病

夏季イタリア(7〜8月)は気温40℃を超える地域もあります。

対処:

  • 涼しい場所に移動、衣服を緩め、冷たいタオルを頸部・腋窩・鼠径部に当てる
  • スポーツドリンクまたは経口補水液で電解質補給
  • 意識障害・体温40℃超・けいれんを伴う場合は即座に救急要請(112)

まとめ:万が一のための行動フロー

症状発生
 ↓
軽症(微熱・軽い下痢・頭痛)
 → Farmacia(緑十字薬局)で薬剤師に相談
 → OTC薬で対処
 ↓
中等症(高熱・繰り返す嘔吐・激しい下痢・強い痛み)
 → 夜間・休日 → Guardia Medicaに電話
 → 平日日中 → 私立クリニック(英語対応)受診
 → 海外旅行保険コールセンターへ連絡(受診前)
 ↓
重症(胸痛・呼吸困難・意識障害・外傷)
 → 迷わず112または118に電話
 → 救急搬送 → Pronto Soccorso(救急部門)
 → 保険会社に速報連絡

参考文献

  1. World Health Organization (WHO). "International travel and health: Chapter 3 – Environmental health risks." WHO Publications. https://www.who.int/publications/i/item/9789241580472

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Diarrhea." CDC Yellow Book 2024. https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2024/preparing/travelers-diarrhea

  3. 外務省海外安全ホームページ. 「イタリア 危険・スポット・犯罪情報、医療事情」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_118.html

  4. European Medicines Agency (EMA). "Loperamideロペラミド-containing medicines: new restrictions to minimise risk of serious cardiac side effects." EMA/622226/2016. https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/loperamide-containing-medicines

  5. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 「医薬品に関する情報提供:フルオロキノロン系抗菌薬の腱障害」 https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html

  6. Ministero della Salute (イタリア保健省). "Servizio Sanitario Nazionale – Presentazione." https://www.salute.gov.it/portale/servizioSanitarioNazionale/homeSsn.jsp

  7. 厚生労働省. 「海外渡航者のためのワクチン接種情報」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/travel/index.html


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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