イタリア渡航前ワクチン|基本ワクチンと接種スケジュールを薬剤師が解説

Read this article in English →

イタリア渡航前に必要な予防接種ガイド|薬剤師が解説する接種スケジュールと費用

イタリアは欧州連合に加盟する先進国で、衛生環境は日本と同等です。しかし海外渡航にあたり、感染症リスクは存在します。本記事では、渡航前に押さえるべき予防接種について、薬剤師の視点から実践的な情報をお届けします。渡航先の衛生レベルが高くても「日本国内で免疫が不完全な状態で出発する」こと自体がリスクである点を、まず理解しておきましょう。


イタリア渡航時に必要な予防接種の全体像

イタリア渡航者の予防接種は、以下の3段階で考えます:

  1. 定期予防接種 → 日本の定期接種の履歴確認・補完
  2. 推奨ワクチン → 滞在期間や活動内容で検討
  3. 状況別予防接種 → 時期や地域による特殊対応

イタリアは欧州疾病予防管理センター(ECDC)の感染症サーベイランスに加盟しており、はしか(麻しん)・風しん・百日咳・ダニ媒介脳炎など複数の感染症について定期的なアウトブレイク報告があります。「先進国だから安心」という認識は、特に麻しんに関しては危険です。イタリアは2017〜2019年に大規模な麻しん流行を経験した国であり、その後も散発的な感染が報告されています。

薬剤師メモ イタリアは肺炎球菌やインフルエンザなどの定期予防接種が充実した国です。ただし予防接種手帳(予防接種歴)を紙で保有していない方が多いため、出発前に医療機関で確認することをお勧めします。渡航前のワクチン相談は「旅行医学外来」「渡航外来」という名称で受け付けている医療機関が便利です。


日本で事前に確認すべき定期予防接種

母子健康手帳で確認する基本ワクチン

渡航前30日以内に、以下のワクチン接種歴を確認してください。不足分があれば、イタリア渡航前に接種を完了させるのが最善です。

ワクチン名 対象年代 接種回数 重要度
MMR(麻しん・おたふく・風しん) 全年代 2回 ★★★
二種混合(DT) 全年代 1回以上 ★★★
ポリオ 全年代 4回 ★★★
B型肝炎 全年代 3回 ★★☆
水痘 全年代 2回 ★★☆
日本脳炎 全年代 3回 ★★☆

薬剤師メモ 麻しんとポリオは国際的な移動で重視される感染症です。母子健康手帳に記載がない場合、血液検査(抗体検査)で免疫の有無を確認するか、未接種なら早急に接種を検討してください。イタリアでは近年もはしか(麻しん)の小規模な流行が報告されている地域があります。

麻しん(はしか)リスクを薬学的に理解する

麻しんウイルス(Measles morbillivirus)は非常に感染力が強く、基本再生産数(R₀)は12〜18と推定されています。これは新型コロナウイルス(R₀: 2〜5程度)をはるかに上回ります。ワクチンによる集団免疫を達成するには、集団の95%以上の免疫保有が必要とされており、接種率が低い地域では免疫の「すき間」を利用して感染が拡大します。

日本では1978〜1989年生まれの世代が「麻しんワクチン1回接種世代」にあたり、2回接種によるブースター効果を受けていない場合があります。この世代は抗体価が経年的に低下している可能性があるため、特に注意が必要です。抗体検査(麻しんIgG定量)で確認するか、自費で麻しん含有ワクチンを追加接種することが推奨されます。

成人向けジフテリア・百日咳ワクチンの再接種

日本では二種混合(DT:ジフテリア・破傷風)が推奨されていますが、欧州ではジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合(Tdap)が標準的です。

  • 日本の予防接種歴が10年以上前の場合:破傷風トキソイド(Td)またはTdapの再接種を検討
  • イタリアで破傷風リスク(古い建物での作業、農場訪問など):出発2週間前の接種を推奨

百日咳(Bordetella pertussis)の薬学的ポイント: 百日咳トキシンは細胞のGiタンパク質を不可逆的にADPリボシル化し、気道の免疫応答を抑制します。成人では典型的な「コンコン」という咳が続く病型を示すことが多く、見逃されやすいため注意が必要です。イタリアでは成人の百日咳が周期的に増加しており、ECDCは成人へのブースター接種を推奨しています。


イタリア渡航者に推奨される追加ワクチン

インフルエンザワクチン

接種時期: 渡航予定の10月〜翌年3月の場合、出発前4週間以内

イタリアの冬季(11月〜3月)はインフルエンザの流行時期です。

接種方法 予防効果 特記事項
不活化ワクチン(ショット) 約60〜70% 最も一般的。1回接種
鼻腔噴霧ワクチン 約70〜80%* 日本では一部医療機関のみ

*小児用のみ(2歳〜18歳対象)

費用(目安): 3,000〜5,000円(自費)

薬学的解説 — 不活化ワクチンの免疫応答: インフルエンザ不活化ワクチンは筋肉内注射後、抗原提示細胞(樹状細胞・マクロファージ)に取り込まれ、T細胞・B細胞を活性化します。中和抗体(主にHAに対するIgG)が形成されるまでに約2週間を要するため、渡航直前の接種では十分な防御効果が得られない場合があります。渡航4週間前の接種が推奨される理由はここにあります。

また、インフルエンザワクチンの有効率は「ワクチン株と流行株の一致率」に大きく左右されます。欧州の流行株は北半球の予測に基づいて毎年選定されており、日本のワクチンと構成が異なる場合があります。現地での追加接種を検討する場合は、ECDCの季節ワクチン勧告を参照してください。

新型コロナウイルスワクチン

イタリアでは2026年時点で定期接種の位置づけが変化していますが、以下の場合は出発前の確認が重要です:

  • 60歳以上、または免疫不全がある場合 → 最新ワクチン接種を検討
  • 医療従事者など職業上のリスク → 最新情報を確認

薬剤師メモ 医療機関受診時に予防接種歴の提示を求められる可能性があるため、接種証明書(英文)を携行することをお勧めします。日本では「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」からデジタル証明書を取得できます。

A型肝炎ワクチン

推奨対象:

  • 2週間以上の滞在予定者
  • 衛生管理が不確実な飲食店への出入りを予定する者
  • 農村部・南部イタリアへの長期滞在者

イタリアは先進国ですが、南部地域や農村部での衛生管理は北部と差がある場合があります。A型肝炎ウイルス(HAV)は糞口経路で感染し、汚染された水・食品(特に生ガキ・貝類)が主な感染源です。

ワクチン種別 接種回数 接種間隔 有効期限(目安)
不活化A型肝炎ワクチン 2回 6ヶ月間隔 20年以上
A+B型肝炎混合ワクチン 3回 0・1・6ヶ月 長期

費用(目安): 1回 7,000〜10,000円

接種スケジュール例:

  • 1回目:出発60日前
  • 2回目:出発30日前(※ただし標準は6ヶ月後の追加接種)

薬学的解説 — A型肝炎ワクチンの抗体応答: 1回接種後2週間で約90%以上の接種者に防御的抗体価(抗HAV IgG ≥ 20 mIU/mL)が得られるとされています。ただし長期的な防御には2回接種が必要です。出発直前でも1回接種を行うことで短期渡航中の感染リスクを低減できるため、渡航が近い場合でも接種の価値があります。

B型肝炎ワクチン

推奨対象:

  • 医療従事者
  • 1ヶ月以上の滞在予定で医療リスク職業従事者
  • 既往歴不明の場合
  • 性感染症リスクを考慮する場合

B型肝炎ウイルス(HBV)は血液・体液(性的接触を含む)を介して感染します。イタリアはHBV中程度流行国(HBsAg陽性率1〜2%程度)に分類されています。

基本スケジュール(0・1・6ヶ月法): 出発予定が3ヶ月以内の場合は、緊急スケジュール(0・7日・21日後に3回、12ヶ月後に追加)を検討し、医師に相談してください。

費用(目安): 1回 5,000〜8,000円 × 3回

薬学的解説 — B型肝炎ワクチンと免疫応答の個人差: B型肝炎ワクチン(組み換えHBs抗原を有効成分とする)は筋肉内投与後、液性免疫(抗HBs抗体)を誘導します。標準3回接種後の抗体陽転率は健常成人で約95%以上とされていますが、高齢者・肥満・免疫抑制状態にある方では応答が低下することが知られています。これらに該当する方は、接種後に抗HBs抗体価を測定し、必要に応じて追加接種を行うことが推奨されます。なお、ワクチン接種で得られた免疫は少なくとも20年以上、多くの場合生涯持続するとされています。


状況別・地域別の予防接種判断

田舎・農村地域への長期滞在の場合

追加検討ワクチン:

  • 狂犬病 → 野犬・野生動物接触リスク高(農村部・山岳地帯)
  • ダニ媒介脳炎(TBE: Tick-borne encephalitis) → イタリア北部アルプス地帯・山岳地帯で流行
  • 髄膜炎菌ワクチン → 長期滞在や集団生活予定の若年成人

ダニ媒介脳炎(TBE):北部イタリアへの渡航者に特に重要

ダニ媒介脳炎はフラビウイルス科のTBEウイルス(Tick-borne encephalitis virus)によって引き起こされ、マダニ(Ixodes ricinus)を媒介として感染します。イタリアでは北東部(フリウリ=ベネチア・ジュリア州、トレンティーノ=アルト・アディジェ州、ヴェネト州)を中心に報告されており、ECDCも当該地域を流行地として指定しています。

接種項目 内容
感染リスク期 4〜11月(マダニ活動期)
高リスク活動 ハイキング・登山・農作業・キャンプ
ワクチン種別 TBE不活化ワクチン(欧州承認品)
日本での入手 困難(海外製品)。現地または渡航前に欧州で接種
基本スケジュール 0・1〜3ヶ月・9〜12ヶ月後(3回)
緊急スケジュール 0・14日後・5〜12ヶ月後(3回)

薬学的解説 — TBEウイルスの病態: TBEウイルスは中枢神経系に親和性が高く、感染後7〜14日の潜伏期を経て2相性の経過をとります。第1相はインフルエンザ様症状、第2相では約30%の患者が髄膜炎・脳炎・脊髄炎を発症します。欧州ではTBEワクチンは高リスク地域居住者・訪問者に広く使用されており、接種後の発症リスクを大幅に低減します。なお、マダニに咬まれた後の免疫グロブリン製剤(受動免疫)は予防効果が不確実で現在は推奨されていません。

狂犬病ワクチン(曝露前予防接種)

イタリア本土は狂犬病清浄国に分類されていますが、バルカン半島から越境する野生動物(キツネなど)を介したリスクがゼロではないとされています。また、コウモリによる狂犬病は欧州の清浄国でも報告例があります。

接種を検討すべき対象:

  • 野生動物・コウモリとの接触リスクがある活動(洞窟探索、野外作業)
  • 長期(1ヶ月以上)滞在でリスクが増加する場合
  • 現地での即時医療アクセスが困難な地域での活動

曝露前予防接種スケジュール:

  • 0・7日・21〜28日後に計3回筋肉内投与
  • 費用(目安):1回 12,000〜18,000円 × 3回

薬学的解説 — 曝露前接種の意義: 狂犬病は発症後の致死率がほぼ100%という特性から、ウイルス曝露前のワクチン接種(pre-exposure prophylaxis: PrEP)が有効です。曝露前に接種していることで、曝露後のポスト接種(PEP)スケジュールを大幅に簡略化できます(未接種者では狂犬病免疫グロブリンの緊急投与が必要ですが、接種済者では不要になる場合があります)。これは現地での緊急医療へのアクセスが限られる地域では特に重要な意味を持ちます。

渡航期間が短い(1週間以内)の場合

優先度 ワクチン 理由
必須 MMR補完、DT確認 定期接種の基本
強く推奨 インフルエンザ(冬季) 流行時期の旅行
相談推奨 A型肝炎 食事リスク低い
不要 狂犬病 接触機会がない

短期観光(1週間以内)の場合でも、MMRと破傷風の接種歴確認は必須です。麻しんは空気感染するため、観光地での人混み(美術館・コロッセオ等)での感染リスクが存在します。


予防接種の具体的なスケジュール立案

理想的な渡航準備タイムライン

【渡航予定日の60日以上前】
 ↓
1. 母子健康手帳で接種歴確認
2. 医師に相談、不足ワクチン判定
3. 必要ワクチンの初回接種予約
 ↓
【渡航予定日の30日前】
 ↓
4. 2回接種が必要なワクチンの2回目接種
5. 国際予防接種証明書(イエローカード)取得手続き
 ↓
【渡航予定日の14日前】
 ↓
6. 免疫形成確認(生ワクチンは接種後2週間必要)
7. 渡航前最終チェック

実例:3ヶ月後にイタリア渡航予定の場合

初回相談時点(渡航90日前

  • MMR未接種 → 第1回接種決定
  • インフルエンザ未接種 → 時期により判定
  • A型肝炎検討 → 2回接種コース開始

1ヶ月後(渡航60日前

  • MMR第1回接種完了
  • A型肝炎第1回接種完了

2ヶ月後(渡航30日前

  • A型肝炎第2回接種実施
  • インフルエンザ接種(秋口の場合)
  • B型肝炎要検討者は初回接種

3ヶ月後(渡航直前)

  • 国際予防接種証明書(イエローカード)最終確認
  • 医師による渡航前チェック

薬剤師メモ 生ワクチン(MMR・水痘など)と不活化ワクチン(インフルエンザ・A型肝炎など)は同日接種可能です。ただし、生ワクチン同士を別日に接種する場合は最低28日間の間隔が必要です(免疫干渉を避けるため)。この点はスケジュール立案において見落とされやすいため、必ず医師・薬剤師に確認してください。

生ワクチンと不活化ワクチンの接種間隔に関する薬学的解説

生ワクチン(弱毒化した生きたウイルスを含む)は接種後にウイルスが体内で複製され、自然感染に近い強い免疫を誘導します。一方、異なる生ワクチンを短期間に接種すると、先に接種したウイルスが誘導したインターフェロン(特にI型インターフェロン:IFN-α/β)が次のワクチンウイルスの複製を抑制し、免疫応答が低下する「免疫干渉」が生じる可能性があります。このため、生ワクチン同士は同日接種するか、または28日以上の間隔を空けることが国際的なガイドラインで定められています(同日接種の場合は異なる部位に投与)。

不活化ワクチン(タンパク抗原・ウイルス様粒子など)はこの干渉が生じないため、生ワクチンとの間隔を問わず接種が可能です。


予防接種の費用と入手方法

日本での接種費用の目安

ワクチン 推奨接種回数 1回あたりの費用(目安) 合計費用(目安)
MMR(自費) 補完分1回 9,000円 9,000円
インフルエンザ(自費) 1回 3,500〜5,000円 3,500〜5,000円
A型肝炎 2回 8,000円 16,000円
B型肝炎 3回(緊急時) 6,500円 19,500円
破傷風トキソイド(Td) 1回 3,000円 3,000円
狂犬病(曝露前予防) 3回 12,000〜18,000円 36,000〜54,000円

*狂犬病はイタリア渡航で通常不要(高リスク活動を伴う長期滞在のみ検討)

合計(標準的な短〜中期渡航者の目安): 約30,000〜50,000円 合計(長期渡航・高リスク活動含む場合の目安): 約80,000〜100,000円以上

接種費用の負担

  • 定期予防接種(日本の公費対象分) → 無料(成人は一部自費)
  • 推奨ワクチン → 全額自費(保険適用なし)
  • 国際予防接種証明書(イエローカード) → 発行手数料は医療機関により異なる(目安:無料〜1,000円程度)

薬剤師メモ 一部の企業・団体では、海外渡航者向けの予防接種補助制度を設けています。勤務先の健康保険組合や総務・人事部門に確認することをお勧めします。また、ふるさと納税の返礼品として渡航ワクチン費用の補助を行う自治体はほとんどないため、基本的には全額自己負担で計画してください。

接種できる医療機関

国内での接種場所:

  1. かかりつけ医・内科診療所 → 個別相談に対応
  2. 渡航医学外来・旅行医学クリニック → 渡航医学に特化した医師在籍
  3. 各都道府県の保健所 → 一部ワクチンを低価格で提供

渡航医学専門の医療機関(一部例):

  • 国立国際医療研究センター 国際感染症センター(東京・新宿)
  • 各大学病院の感染症科・渡航医学外来
  • 国際空港近郊の検疫所(成田・羽田・関空)

予約方法: 事前に電話・WEB予約が必須(ワクチン在庫確保のため)。特に狂犬病・TBEワクチンは在庫が少ない医療機関が多いため、早めの相談をお勧めします。


ワクチンの副作用と渡航者が知っておくべき注意事項

主なワクチンの副作用プロファイル

渡航前ワクチンの副作用は、一般的に「接種部位の局所反応」と「全身反応」に分けられます。重篤な副作用(アナフィラキシーなど)は10万接種あたり数件程度とされており、接種後30分は医療機関内で経過を観察することが推奨されています。

ワクチン 主な局所反応 主な全身反応 特記すべき事項
MMR(生ワクチン) 発赤・腫脹 接種後5〜12日に発熱・発疹 妊婦・免疫不全者には禁忌
インフルエンザ(不活化) 疼痛・腫脹 発熱・倦怠感(1〜2日) 卵アレルギーは医師に要申告
A型肝炎(不活化) 疼痛・硬結 頭痛・倦怠感 通常は軽微
B型肝炎(組み換え) 疼痛 発熱(稀) 酵母アレルギーは要確認
破傷風トキソイド 腫脹・硬結 発熱 接種部位の持続的腫脹は報告あり
狂犬病(不活化) 疼痛・発赤 頭痛・筋肉痛 複数接種のため局所反応蓄積

薬学的解説 — アナフィラキシーへの対応: ワクチン接種後のアナフィラキシーは通常接種後30分以内に発症します。接種後は必ず院内で待機し、蕁麻疹・呼吸困難・意識消失などの症状が出た場合は直ちに医療スタッフに報告してください。治療にはアドレナリン(エピネフリン)の筋肉内注射が第一選択です。

渡航直前の接種で注意すべきこと

  • 発熱・体調不良時は接種延期: 免疫応答が低下し、副作用との鑑別も困難になります
  • 飲酒は接種当日・翌日を避ける: 免疫応答への影響と副作用悪化のリスクがあります
  • 長時間フライトの直前接種: 接種部位の局所反応が機内での不快感の原因になることがあります。可能であれば出発3〜7日前に接種するとよいでしょう
  • 免疫抑制薬・生物学的製剤服用中の方: ワクチンの効果が減弱する可能性があります。主治医に必ず相談してください

イタリア到着後の対応

現地での予防接種情報

イタリアの主要都市(ローマ、ミラノ、フィレンツェ)には、ワクチン接種を提供する医療機関があります。イタリアの公的医療(Servizio Sanitario Nazionale: SSN)は原則的に居住者が対象ですが、民間クリニックでは渡航者への対応が可能な場合があります。

ただし注意点:

  • イタリアのワクチンは欧州基準で、日本の予防接種歴との互換性確認に時間を要する
  • 言語の問題:英語が通じない場合があり、翻訳サポートが必要になることがある
  • 予防接種記録(英文)の携行が強く推奨される

現地での簡単な英語表現:

  • I need a vaccination.(アイ ニード ア ヴァクシネイション)
  • I was vaccinated for measles twice.(アイ ワズ ヴァクシネイテッド フォー ミーズルズ トワイス)
  • Do you have the hepatitis A vaccine?(ドゥ ユー ハヴ ザ ヘパタイティス エイ ヴァクシーン?)

緊急時の対応

渡航中に感染症が疑われる症状(発熱・発疹・黄疸など)が出現した場合:

  1. 滞在地の最寄り医療機関に連絡
  2. 在イタリア日本国大使館または総領事館の緊急連絡先に電話
  3. 帰国後は入国時に検疫所に申告(発熱・下痢・発疹などの症状がある場合)

緊急連絡先(目安):

  • 在イタリア日本国大使館(ローマ): +39-06-487991
  • イタリア緊急番号: 118(救急・医療)

よくある質問と回答

Q1: 出発まで1ヶ月しかない場合は?

A: 緊急スケジュール対応が可能です。医師に「緊急渡航」を伝え、以下を優先します:

  • インフルエンザ(冬季の場合):即時接種可能
  • DT・Tdap:1回で完了
  • A型肝炎:1回目を接種(1回でも短期的効果あり)
  • MMR:接種後2週間で免疫形成のため、可能なら早期接種を

B型肝炎の3回コース(0・1・6ヶ月)は1ヶ月では完了できませんが、緊急スケジュール(0・7日・21日)で短期完了も可能です(医師に相談)。

Q2: 子連れでイタリアに渡航する場合の注意点は?

A: 乳幼児を連れての渡航では、以下の点を特に確認してください:

  • 定期予防接種が年齢相応に完了しているか(接種間隔の遅れがないか)
  • MMRの2回目接種完了年齢(日本では1歳と小学校入学前の2回)
  • 乳児(1歳未満)はMMRが未接種のため、周囲の大人の免疫が特に重要です(コクーン戦略)

Q3: イタリア現地でもワクチンを接種できますか?

A: 可能ですが推奨しません。言語の壁・費用・記録管理の問題があります。TBEワクチンについては日本での入手が困難なため、長期滞在や山岳地帯訪問を予定している場合はイタリア到着後に現地医療機関へ相談することを検討してください。

Q4: 妊娠中のワクチン接種はどうすればよいですか?

A: 妊娠中は生ワクチン(MMR・水痘など)は禁忌です。不活化ワクチン(インフルエンザ・A型肝炎・B型肝炎など)は通常接種可能ですが、必ず産科医・かかりつけ医に相談してください。


渡航先での感染症予防における非ワクチン的対策

予防接種はあくまで感染症対策の一部です。特に食品・水由来感染症(A型肝炎・腸管感染症)に対しては、以下の行動が重要です:

  • 飲料水: イタリアの水道水は一般的に安全ですが、農村部では市販の水を使用することを推奨
  • 食品: 生魚・生貝類(特にムール貝・アサリなど)は加熱調理を確認
  • 手指衛生: 食前・トイレ後の石けんでの手洗いを徹底
  • 虫除け対策(TBE・ライム病予防): 山岳・森林地帯では長袖・長ズボン着用、DEETディート含有虫除けスプレーを活用し、帰還後は全身のダニチェックを行う

これらの「non-vaccine preventive measures(非ワクチン予防措置)」はワクチンの有無にかかわらず実践すべき基本対策です。


参考文献

  1. 厚生労働省「海外渡航のための予防接種について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/travel/index.html

  2. CDC (Centers for Disease Control and Prevention) – Italy Travel Health
    https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/italy

  3. WHO International Travel and Health – Vaccine-preventable diseases
    https://www.who.int/ith/vaccines/en/

  4. ECDC (European Centre for Disease Prevention and Control) – Vaccine-preventable diseases
    https://www.ecdc.europa.eu/en/vaccine-preventable-diseases

  5. 国立感染症研究所「麻しん・風しんの発生動向調査」
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html

  6. ECDC – Tick-borne encephalitis in Europe
    https://www.ecdc.europa.eu/en/tick-borne-encephalitis


監修: 薬剤師(博士(薬学))

薬剤師おすすめの渡航グッズ

この記事に関連して、薬剤師が実際に渡航者に推奨している製品カテゴリです。 購入リンクはAmazonアソシエイト・もしもアフィリエイト(楽天市場・Yahoo!ショッピング)を利用しており、 リンクから購入された場合 PharmTrip に紹介料が発生することがあります。 お客様の購入価格は変わりません。

※ 記載情報は薬剤師が一般的に推奨する製品カテゴリの例です。 具体的な商品選択や使用方法については、主治医・薬剤師にご相談ください。

免責事項:本記事は渡航者向けの医薬品情報提供を目的とした薬剤師監修コンテンツです。 診断・治療に関する判断は医師の診察を受けた上で行ってください。 最新の規制・感染症情報は外務省・厚生労働省・現地大使館の公式情報を必ずご確認ください。

※ PharmTripは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。 また、もしもアフィリエイト・A8.net・バリューコマース等のアフィリエイトプログラムを通じて、一部の商品・サービスを紹介しています。 掲載する商品・サービスは薬剤師が独自に評価しており、広告主からの依頼による恣意的な順位変更は行いません。 掲載情報は執筆時点のもので、最新の条件は各公式サイトでご確認ください。 詳細は プライバシーポリシー をご覧ください。