韓国への渡航者必読:現地の医療事情と体調不良時の対処法
韓国は医療インフラが整った国ですが、渡航者にとって言語や保険制度の違いは大きな課題です。本記事では、緊急時の対応から日常的な医療利用まで、薬剤師の視点から実践的な情報をお伝えします。事前準備と現地対応の知識があれば、万が一の場合も安心です。
韓国の医療水準は国際的にも高く評価されており、OECD加盟国のなかでも人口当たりのCT・MRI設置台数が多い国の一つです。一方で、外国人旅行者が現地の医療システムを即座に理解し、適切に利用するには一定の予備知識が不可欠です。特に「医薬分業」の仕組みや、薬局で購入できる医薬品の範囲は日本とは異なります。本記事を渡航前にひと通り読み、緊急連絡先やフレーズをスマートフォンにメモしておくだけで、実際の場面での対応力が大きく変わります。
韓国の医療制度の基本情報
医療システムの特徴
韓国の医療制度は日本と異なる点が複数あります。以下の特徴を理解しておくことが重要です:
| 項目 | 日本 | 韓国 |
|---|---|---|
| 医師の診察と薬局 | 統合(処方箋で薬局へ) | 分業制(医師と薬剤師が完全分離) |
| 初診時の予約 | 不要な場合が多い | 大病院は予約推奨 |
| 医療費の実費率 | 70%保険適用 | 患者による自由な選択で変動 |
| 営業時間 | 夜間診療は限定的 | 24時間対応の医院が多い |
韓国では医師と薬剤師の役割が厳密に分離されており、医師の診察を受けた後、別の薬局で薬を受け取る仕組みになっています。これは2000年の医薬分業改革によって確立されたもので、日本の医薬分業政策と同様に、重複処方・重複投薬の防止と薬物療法の安全性向上を目的としています。
外国人旅行者が注意すべき点として、韓国の国民健康保険(국민건강보험)は基本的に韓国国民と韓国在住の外国人登録者を対象としており、短期渡航者は適用外となります。つまり、医療費は原則として全額自己負担となるため、海外旅行保険の加入が不可欠です(保険の詳細は後述)。
また、韓国の健康保険審査評価院(건강보험심사평가원)が定期的に医療機関の質を評価・公開しており、受診先を選ぶ際の参考になります。
医療機関の種類
韓国の医療機関は3段階のシステムになっています:
- 診療所(의원 ウィウォン):一次医療。軽症から中等症対応。最も安価。内科(내과)、耳鼻咽喉科(이비인후과)、整形外科(정형외과)など標榜科目で分かれていることが多く、目的に合った科を選ぶと診療がスムーズです。
- 総合病院(종합병원 チョンハプピョンウォン):二次医療。複数の診療科あり。中程度の複雑な症状に対応。外国人診療窓口(외국인진료센터)を設けている施設もあります。
- 大学病院(대학병원 テハクピョンウォン):三次医療。重症・難病対応。紹介状があれば優遇される。首都ソウルには延世大学、ソウル大学、三星医療センターなど国際的に知名度の高い大学病院が複数存在します。
緊急時には**응급실(応急室=ER、ウンゴンシル)**に直接行けます。予約不要で24時間対応です。
薬剤師メモ:韓国の病院では日本ほど「総合感冒薬」という概念がありません。医師が個別の症状に対して特定の薬剤を処方する傾向が強いため、処方内容が複雑に見えることがあります。何の薬か不明な場合は、薬局で「이 약이 뭐예요?(イ ヤギ ムォエヨ? この薬は何ですか?)」と確認しましょう。
韓国の薬局(약국)の特徴と役割
韓国語で薬局は「약국(ヤッグク)」と言い、緑の十字マーク(+)が目印です。コンビニエンスストアでの医薬品販売は限定的で、基本的な解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン製品など)が一部販売されていますが、種類は非常に少なく、薬剤師への相談も受けられません。体調不良時は必ず薬局を利用することを推奨します。
韓国の薬局は診療所・病院の近くに集中して立地していることが多く、処方箋を持って数分以内に調剤を受けられる利便性があります。また、薬剤師(약사 ヤクサ)が常駐しており、OTC医薬品の選び方や服薬方法についても相談できます。
現地で体調不良になった時の対応フロー
症状別の受診判断ガイド
軽症から重症まで、適切な医療機関を選ぶことで時間と費用を節約できます:
| 症状 | 対応機関 | 対応時間 | 概算費用(目安) |
|---|---|---|---|
| 風邪の初期症状 | 診療所 | 営業時間内 | 30,000〜50,000ウォン程度 |
| 胃痛・下痢 | 診療所 | 営業時間内 | 25,000〜40,000ウォン程度 |
| 高熱・激しい頭痛 | 総合病院 | 24時間対応 | 60,000〜100,000ウォン程度 |
| 外傷・出血 | 応急室 | 24時間対応 | 80,000〜150,000ウォン程度 |
| 意識喪失・激痛 | 119番通報 | 24時間対応 | 病院費用に加算 |
※費用はあくまで目安であり、診察内容・検査・投薬により大きく変動します。外国人旅行者は健康保険が適用されないため、日本人が国内で受診するよりも高額になる場合があります。
体調不良のサインとして「RED FLAGS(緊急受診が必要なサイン)」を覚えておきましょう:
- 38.5℃以上の高熱が24時間以上続く
- 激しい頭痛(「今まで経験したことがない」レベル)
- 呼吸困難・胸痛
- 血便・吐血
- 意識の混濁・けいれん
- 重篤なアレルギー症状(蕁麻疹+呼吸困難=アナフィラキシー疑い)
これらの症状が一つでもある場合は、診療所ではなく直ちに응급실(ER)か119を利用してください。
病院受診の具体的なステップ
Step 1: 医療機関を特定する
- ホテルのフロント、Googleマップで「근처 병원(クンチョ ピョンウォン)」(近くの病院)と検索
- 主要観光地の病院:ソウル市内は外国人向け国際診療センター(외국인진료센터)がある大型病院が便利
- 言語対応:事前に「영어 통역 가능한가요?(ヨンオ トンヨク カヌンハンガヨ? 英語の通訳はできますか?)」と確認
- 「1339」(韓国の救急医療情報センター)に電話すると、外国語対応オペレーターに繋いでもらえる場合があります
Step 2: 受付で症状を伝える
受付窓口で以下の韓国語フレーズが活用できます:
- 「감기 같은데 진료 받고 싶어요(カムギ カタンデ チルリョ パッコ シポヨ)」(風邪っぽいので診察を受けたいです)
- 「열이 나고 목이 아파요(ヨリ ナゴ モギ アパヨ)」(熱があり、喉が痛いです)
- 「배가 아파서 화장실을 자주 가요(ペガ アパソ ファジャンシルル チャジュ カヨ)」(お腹が痛くてトイレが頻繁です)
翻訳アプリ(Google翻訳、Papago)を使用してもOKです。特にPapagoは韓国語に強く、医療用語の翻訳精度が高い傾向があります。
Step 3: 医師の診察を受ける
韓国の医師は診察が比較的短時間(5〜10分)の傾向があります。事前に症状をメモしておくと効率的です。医師が処方箋(처방전 チョバンジョン)を渡します。処方箋には薬品名・用量・用法が記載されており、薬局に持参します。
処方箋は**発行日から3日以内(一部例外あり)**に薬局で調剤を受ける必要があります。なお、向精神薬等の規制薬については別途手続きが必要な場合があります。
Step 4: 薬局で薬を受け取る
処方箋を持って、病院と提携している薬局(약국)へ。大抵は病院の近隣にあります。調剤を受けた際には、薬の飲み方・注意事項について薬剤師に確認することを強くお勧めします。韓国の薬袋(약봉투)には用法用量が韓国語で印字されますが、薬局によっては英語または日本語対応の薬剤師がいる場合もあります。
薬剤師メモ:韓国の薬局では、医師が処方した以外の薬(ビタミン剤、胃薬、鎮痛剤など)も自由に購入できます。ただし、一部の医療用医薬品は薬剤師の判断で販売が制限される場合があります。日本で常用している薬について心配な場合は、事前に国際処方箋を取得することをお勧めします。
救急119の使い方
119に電話した時の対応
韓国の救急番号は119です。火災・救急の両方に対応しています。日本と同じ番号ですが、オペレーターは原則として韓国語対応となります。外国語(英語・日本語)への切り替えが可能な体制は整備されていますが、時間帯や地域によって対応が異なります。
119通報時に伝えるべき情報:
- 場所(위치 ウィチ):ホテル名・部屋番号、または現在地の住所(地図アプリのアドレスをそのまま読み上げても可)
- 症状(증상 チュンサン):意識の有無、呼吸状態、外傷の有無
- 人数(인원수 インウォンス):何人が助けを必要としているか
最低限使えるフレーズ:
- 「도와주세요(トワジュセヨ)」(助けてください)
- 「救急車を呼んでください(救急車を呼んでください)」→ 韓国語で:「구급차 불러주세요(クグプチャ プルロジュセヨ)」
- 英語で言う場合:「I need an ambulance.(アイ ニード アン アンビュランス)」
救急搬送後の流れ
救急車(구급차 クグプチャ)で搬送された場合、応急室(응급실)での処置後に入院または外来治療の選択となります。この際、パスポートと海外旅行保険の証券・保険会社の緊急連絡先番号が必要になります。事前にコピーをとって身につけておくか、スマートフォンに写真を保存しておきましょう。
事前準備:旅行前にやるべきこと
海外旅行保険への加入
必須です。以下の観点から比較検討してください:
| 保険項目 | 推奨額(目安) | 説明 |
|---|---|---|
| 治療費用 | 300万円以上 | 入院・手術に備える |
| 歯科治療 | 10万円 | 急性歯科疾患への対応 |
| 疾病死亡 | 200万円以上 | 万が一の備え |
| 救援者費用 | 200万円以上 | 家族が駆けつける場合 |
保険加入時には、医療費キャッシュレス対応の病院リストが付属することを確認しましょう。提携病院なら現地で保険を直接使用できます。また、クレジットカードに付帯している海外旅行保険は補償額が低い場合があるため、必ず約款を確認するか、別途保険に加入することをお勧めします。
保険加入時にあわせて確認しておきたい点:
- 持病・既往症の補償可否:出発前に発症している疾患は「既往症」として補償対象外になる場合があります
- スポーツ・アクティビティの補償範囲:スキー、登山、モータースポーツなどは別途オプション加入が必要なことがあります
- 精神科的疾患の補償:精神疾患による受診は補償対象外となる保険商品が多くあります
持参すべき医薬品
渡航前に日本の薬局・医師から処方を受けましょう:
| 医薬品(一般名) | 用途 | 用量目安 | 携行する理由 |
|---|---|---|---|
| ロペラミド塩酸塩 | 下痢止め | 2mg製品、3〜5回分 | 食事・飲水の変化による下痢への対応 |
| ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 解熱鎮痛・抗炎症 | 60mg製品、5〜7回分 | 発熱・頭痛・関節痛対応 |
| ファモチジン または ランソプラゾール | 胃酸過多・胃炎 | 規格は製品により異なる、3〜5日分 | 暴飲暴食・ストレス性胃炎対応 |
| 総合感冒薬 | 風邪の初期症状 | 1〜2日分 | 受診前の一時的な症状緩和 |
| 抗ヒスタミン薬(例:セチリジン塩酸塩等) | アレルギー・花粉症 | 常用者は全旅行期間分+予備 | 韓国のPM2.5対応 |
| 常用薬(慢性疾患用) | 慢性疾患管理 | 全期間分+予備(約5日分追加) | 現地での同等品の確認が困難な場合の備え |
| 整腸薬(乳酸菌製剤等) | 腸内環境調整 | 3〜5日分 | 抗菌薬服用時や下痢後の腸内フローラ回復 |
薬学的解説:ロペラミド塩酸塩(下痢止め)
ロペラミドはオピオイド受容体(μ受容体)に作用する末梢性の腸管運動抑制薬です。腸管壁のオピオイド受容体を刺激することで蠕動運動を抑制し、腸管内の水分・電解質の吸収を促進します。BBB(血液脳関門)をほとんど通過しないため、中枢性の鎮痛・鎮静作用はほぼ示しません。
旅行者下痢症への使用上の注意点:
- 細菌性腸炎(発熱・血便を伴う場合)への使用は禁忌に準じて避ける
- 感染性下痢での使用は原因菌の排出を遅らせ、症状を遷延させる可能性がある
- 成人の通常用量は1回2mg、1日最大16mgが目安(ただし自己判断での連日使用は短期間に留める)
- 経口補水塩(ORS)との併用で脱水予防を図ることが重要
韓国では暑い季節を中心に、辛い食事(カプサイシン含有)による消化器症状が生じることがあります。この場合は感染性ではないため、ロペラミドが有効な場面もありますが、症状が48時間以上持続する場合は必ず医療機関を受診してください。
薬学的解説:ロキソプロフェンナトリウム水和物(解熱鎮痛薬)
ロキソプロフェンはプロドラッグ型のNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)です。体内でトランス-OH体に変換された後、シクロオキシゲナーゼ(COX-1およびCOX-2)を非選択的に阻害してプロスタグランジン産生を抑制することで、解熱・鎮痛・抗炎症効果を発揮します。
海外旅行時の注意点:
- 空腹時の服用で胃粘膜障害が生じやすいため、必ず食後に服用
- 腎機能への影響:脱水状態(旅行中は脱水リスクが高い)でNSAIDsを使用すると腎血流量が低下し、急性腎障害のリスクが高まる
- アルコールとの相互作用:韓国旅行中の飲酒機会では胃腸障害リスクが増大
- アスピリン喘息の既往がある場合は禁忌
- ファモチジン等のH2ブロッカーとの併用で胃粘膜保護効果が得られることがある
なお、アセトアミノフェン(パラセタモール)は胃への刺激が少なく、NSAIDsが使えない方(喘息患者、胃潰瘍既往者)の代替薬として有用です。韓国の薬局でもアセトアミノフェン配合の解熱鎮痛薬はOTCで入手可能です。
薬剤師メモ:医療用医薬品(特にロキソプロフェン等)は、日本国内での処方が必要です。市販薬で対応できる範囲は限定的なため、事前に医師・薬剤師に「海外渡航用」と伝えて処方をお願いしてください。
国際処方箋の入手
常用薬がある場合、**国際処方箋(英文処方箋)**を取得すると現地医師・薬剤師への情報共有がスムーズになります:
- 日本の主治医に「英文処方箋を希望する」と伝える
- 医師が英文で処方内容を記載(成分名・規格・用法)
- 日本の薬局で調剤&英文薬剤情報を発行してもらう
- 韓国の医師や薬剤師に提示して薬の内容を説明する
ただし、国によって医薬品の承認状況・販売名・規格が異なるため、現地での同一製品の入手を保証するものではありません。「自分がどの薬を飲んでいるか(成分名・用量)」を英語で説明できるようにメモを持参するだけでも大きな助けになります。
薬局での医薬品購入:韓国特有の仕組み
一般用医薬品の購入方法
韓国の薬局(약국)では、日本の薬局とは異なるルールがあります:
処方箋なしで購入できる医薬品(일반의약품 イルバン ウィヤクプム):
- アセトアミノフェン配合の解熱鎮痛薬
- ビタミン剤・栄養補助食品
- 制酸剤・整腸薬の一部
- 外用消毒薬・絆創膏類
- 点眼薬(人工涙液など)
処方箋が必要な医薬品(전문의약품 チョンムン ウィヤクプム):
- 抗菌薬(抗生物質)
- 抗ウイルス薬
- ステロイド製剤(内服・注射)
- 睡眠薬・抗不安薬
- 向精神薬
日本では一部OTCで購入できる「トラネキサム酸配合の総合感冒薬」なども、韓国では成分・含有量によって処方箋が必要になる場合があります。
よく使用される韓国OTC医薬品
| 成分名(一般名) | 用途 | 備考 |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン(パラセタモール) | 解熱鎮痛 | 薬局でOTC購入可。胃への刺激が少ない |
| ジメチコン(シメチコン) | 消化器系のガス除去 | 薬局でOTC購入可 |
| ロペラミド塩酸塩 | 下痢止め | 薬剤師に相談の上で購入 |
| セチリジン塩酸塩・ロラタジン等の抗ヒスタミン薬 | アレルギー | 種類により処方箋不要 |
| 塩酸ナファゾリン等の血管収縮薬配合点鼻薬 | 鼻づまり | 連用で反跳性鼻閉に注意(後述) |
| 乳酸菌・ビフィズス菌配合整腸薬 | 腸内環境調整 | 薬局でOTC購入可 |
薬学的解説:血管収縮薬配合の点鼻薬(鼻づまり対策)について
韓国の薬局でも鼻づまりに対してナファゾリン・オキシメタゾリンなどのイミダゾリン系血管収縮薬が配合された点鼻薬が販売されています。これらは交感神経のα受容体を刺激して鼻粘膜血管を収縮させ、即効性の高い鼻閉改善効果を示します。
ただし、連続使用は3〜5日以内が原則です。それ以上使用すると、薬効が切れたときのリバウンドにより鼻粘膜が腫れる「薬剤性鼻炎(反跳性鼻閉)」が生じるリスクがあります。旅行期間が長い方はステロイド点鼻薬(要処方)の事前持参を日本の耳鼻科医に相談することをお勧めします。
薬剤師メモ:韓国の薬局では、医学的根拠が弱いものの「滋養強壮」「体力増進」として販売される注射製剤(栄養注射・白玉注射など)が一部の美容クリニック等で人気です。これらは医療用製剤であり、医師の管理下でのみ使用すべきです。特に初めて利用する渡航者が安易に使用することはリスクがあるため推奨しません。また、薬剤アレルギー(チオクト酸・グルタチオン等)の既往がある方は特に注意が必要です。
保険金請求の流れ
キャッシュレス対応の利用
最も簡単な方法です:
- 受診前に保険会社の緊急連絡先に電話し、「キャッシュレス対応病院かどうか」確認
- 病院の受付で「해외 여행보험을 사용하고 싶어요(ヘウェ ヨヘン ボホムル サヨンハゴ シポヨ)(海外旅行保険を使用したいです)」と伝える
- 保険会社と病院の間で費用清算
- あなたは免責金額・自己負担分のみ支払い
立て替え払いと後日請求
キャッシュレス対応外の場合:
- 医療費を全額支払い(クレジットカード可)
- 領収書・診断書・処方箋を必ず保管
- 帰国後、保険会社に所定の「保険金請求書」「領収書」「診断書」を提出
- 保険金が指定口座に振込される(目安:1〜3週間程度。書類に不備がある場合は遅延することがあります)
必要な書類チェックリスト:
- 領収書(韓国語・英語の記載が理想。日付・診療内容・金額・医療機関名が必須)
- 診断書(英文推奨)
- 処方箋コピー
- 薬局の領収書(「약국비용(薬局費用)」は診療費と別で請求することが多い)
- 銀行口座番号・支店名(帰国後の振込先)
- 保険会社所定の請求書類(事前にウェブサイトからダウンロードしておくとスムーズ)
薬剤師メモ:韓国の医療機関では「領収書に日付・診療内容・金額・医療機関名」が記載されているか確認してください。特に処方薬の場合、「약국비용(薬局費用)」と「진료비용(診療費用)」が分かれて記載される傾向があります。帰国後の請求時に、両方の領収書が必要になることがあります。
特殊な状況別対応
心理的ストレス・メンタルヘルス
渡航中の不安、睡眠障害、ホームシックなど:
旅行中の時差・睡眠環境の変化・非日常的な刺激は、自律神経のバランスを崩しやすく、不眠・食欲不振・不安感といった症状が生じることがあります。韓国と日本の時差はほぼないため時差ぼけは問題になりにくいですが、長期渡航者・留学生では慢性的なストレスが蓄積することがあります。
- 診療所の内科医に相談:不眠や軽度の精神的不調は内科で対応できることがある
- 精神科(정신과 チョンシンクァ)または神経精神科(신경정신과):専門医による診察(予約推奨)
- 薬局でのサプリ:メラトニン含有サプリメントは韓国でも健康機能食品として販売されていますが、日本と製品規格が異なります。服用前に含有量を確認してください。
女性特有の症状
- 月経困難症・月経痛:産婦人科(산부인과 サンブインクァ)で診察可。NSAIDsが処方されることが多い
- 膀胱炎症状(頻尿・排尿時痛):診療所(泌尿器科または内科)で相談。必要に応じて抗菌薬処方。水分摂取を増やすことが基本対応
- 経口避妊薬(ピル)の入手:韓国でも医師の処方が必要です。旅行期間分は日本から持参することを推奨します。なお、ピルは一部の下痢症状(吸収低下)や抗菌薬(リファンピシンを除き一般的な抗菌薬との相互作用は限定的とされていますが)との関係について渡航前に担当医・薬剤師に相談してください
アレルギー症状・PM2.5対応
韓国はPM2.5(微小粒子状物質)濃度が日本より高い傾向があり、春先は花粉(特にスギ・ヒノキ相当のハンノキ等)との複合汚染が問題となります。アレルギー体質の方は以下の対策を事前に講じてください:
- 第2世代抗ヒスタミン薬(セチリジン塩酸塩・フェキソフェナジン塩酸塩・ロラタジン等):眠気が少なく旅行中の使用に適している。日本から処方薬・OTC製品を持参することが望ましい
- ステロイド点鼻薬(フルチカゾンフランカルボン酸エステル等):医師の処方が望ましい。連日使用で効果が発現するため、渡航前から使用開始するのが理想的
- KF94マスク(韓国製の高機能マスク):現地のコンビニ・薬局で購入可能。N95相当の微粒子捕集性能を持つ製品もある
薬学的解説:第2世代抗ヒスタミン薬の特徴
第2世代抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンH1受容体への選択的拮抗作用に加えて、中枢移行性が低いため眠気の副作用が第1世代(ジフェンヒドラミン等)に比べて著しく少ないです。旅行中の運転・アクティビティを妨げにくい点で優れています。
ただし、以下の点には注意が必要です:
- グレープフルーツジュースとの相互作用:一部の抗ヒスタミン薬(特にフェキソフェナジン)は、グレープフルーツジュースにより腸管内吸収トランスポーターが阻害され血中濃度が低下することがあります
- アルコールとの相互作用:第1世代はもちろん、第2世代でも大量飲酒との併用では眠気増強の可能性があります
- QT延長リスク:テルフェナジン(現在は市販中止)等の一部は心拍リズムに影響することが知られていましたが、現行の主流第2世代製品では通常用量での問題は限定的とされています
言語サポートと情報源
使える電話・アプリ
| ツール | 内容 | 対応言語 |
|---|---|---|
| 119 | 救急車・火災通報 | 韓国語(外国語切替あり) |
| 1339 | 救急医療情報センター | 韓国語・外国語対応 |
| 120 | ソウル市コールセンター | 韓国語・英語・日本語・中国語 |
| 02-1345 | 外国人総合案内センター | 多言語対応 |
| Google翻訳 | リアルタイム翻訳 | カメラ翻訳で薬の表示を読める |
| Papago | NAVER製翻訳アプリ | 韓国語に強い |
すぐに使える医療韓国語フレーズ集
病院・薬局で役立つ基本フレーズをまとめます:
| 場面 | 韓国語フレーズ(読み方) | 意味 |
|---|---|---|
| 受診申込 | 진료받고 싶어요(チルリョパッコ シポヨ) | 診察を受けたいです |
| 症状説明 | 열이 38도예요(ヨリ サムシッポドヨ) | 熱が38度あります |
| 薬確認 | 이 약은 어떻게 먹어요?(イ ヤグン オットケ モゴヨ?) | この薬はどう飲みますか? |
| 保険提示 | 해외 여행보험이 있어요(ヘウェ ヨヘン ポホミ イッソヨ) | 海外旅行保険があります |
| 領収書請求 | 영수증 주세요(ヨンスジュン チュセヨ) | 領収書をください |
| 診断書請求 | 진단서 써주세요(チンダンソ ッソジュセヨ) | 診断書を書いてください |
| 薬剤師呼出 | 약사 선생님(ヤクサ ソンセンニム) | 薬剤師の先生 |
渡航前に確認すべき情報源
以下の公的情報源で最新情報を必ず確認してください:
- 外務省 海外安全情報(韓国):現地の治安・感染症情報を随時更新
- 厚生労働省 検疫所FORTH:韓国の感染症発生状況と予防接種推奨情報
- PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構):海外持ち出し可能な医薬品の情報
渡航前最終チェックリスト
出発前に以下を確認してください:
書類・保険
- 海外旅行保険に加入済み(治療費300万円以上の補償)
- 保険会社の緊急連絡先(24時間対応)をスマートフォンにメモ
- パスポートのコピー(スマートフォンに画像保存)
- 常用薬の英文処方箋または成分名メモ
医薬品
- 常用薬は全旅行期間分+予備5日分を確保
- 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンまたはロキソプロフェン)
- 下痢止め(ロペラミド塩酸塩)※感染性下痢への使用は注意
- 胃薬(H2ブロッカーまたはPPI)
- 経口補水塩パウダー(脱水対策)
- アレルギー薬(常用者)
- 消毒薬・絆創膏(外出時のけが対応)
情報・アプリ
- Google翻訳またはPapagoをダウンロード済み
- 119・1339の番号をメモ
- 宿泊ホテル近くの病院・薬局をGoogleマップでブックマーク
参考文献・情報源
-
厚生労働省「海外旅行と医薬品」(検疫所FORTH)
https://www.forth.go.jp/useful/medicine.html -
PMDA 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「医薬品に関する情報」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html -
外務省「海外安全情報 韓国」
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_139.html -
WHO「International travel and health」
https://www.who.int/health-topics/travel-and-health -
CDC「Traveler's Health – Korea」
https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/korea-south -
韓国健康保険審査評価院(건강보험심사평가원)公式サイト
https://www.hira.or.kr/eng/main.do
監修:薬剤師(博士(薬学))