花粉の交差反応マップ
花粉アレルゲンは「科」レベルで共有されることが多く、 日本で反応していた花粉と同じ科の樹種を持つ国では、 海外でも症状が出る可能性があります。 薬剤師の視点で、主要な交差反応を樹種別に整理しました。
まず理解すべき3つの原則
- 同じ「科」の花粉は、主要アレルゲンタンパクが似ているため、 相互に交差反応する可能性が高い。
- イネ科花粉(Poaceae)は世界中でほぼ共通のアレルゲン(Phl p 1 / Phl p 5)を持ち、 地域を問わず交差する。
- Bet v 1(白樺の主要アレルゲン)は食物(りんご・もも・さくらんぼ・セロリ・人参等) とも交差し、「口腔アレルギー症候群(OAS)」を起こす。
主要な花粉の交差反応
スギ(Japanese cedar)
強い交差- ヒノキ日本国内の次の花粉期
- サイプレス地中海・南欧・北米南西部
- ジュニパー北米・地中海・中東
- マウンテンシダーテキサス・米南西部
いずれもヒノキ科(Cupressaceae)で主要アレルゲン Cry j 1 / Cup s 1 に交差性あり。マウンテンシダー(テキサス1〜2月)は特にスギ花粉症の日本人が発症しやすいことで知られる。
ヒノキ
強い交差- サイプレス地中海(仏南部・イタリア・スペイン)
- ジュニパー北米
スギ交差と同様、ヒノキ科の多くの海外樹種と強い交差性。地中海地域(1〜3月)に渡航すると発症しうる。
シラカンバ(白樺)
強い交差- ハンノキ欧州全域・北米・日本北部
- ハシバミ欧州
- イヌシデ欧州
- オーク欧州・北米
- ブナ欧州
カバノキ科の主要アレルゲン Bet v 1 はハンノキ・ハシバミ・イヌシデ・さらにブナ科のオーク・ブナと交差。北欧・中欧春季(4〜5月)の渡航で要注意。加えて Bet v 1 は食物(りんご・もも・さくらんぼ・セロリ・ニンジン等)とも交差し「口腔アレルギー症候群(OAS)」を起こす。
ハンノキ
強い交差- 白樺北欧・中欧・北海道
- ハシバミ欧州
ハンノキに反応する人は早春のヨーロッパ(1〜3月)でもアレルギー症状が出やすい。
カモガヤ(イネ科)
強い交差- チモシー全世界の温帯
- ライ麦欧州・北米の農耕地
- バミューダ熱帯・亜熱帯(ハワイ・豪・東南ア)
イネ科(Poaceae)花粉は主要アレルゲン Phl p 1 / Phl p 5 を共有し、**ほぼすべての種が相互に交差**する。イネ科花粉症の方は世界中どこでも5〜8月(北半球)or 南半球の夏に注意。
ブタクサ
強い交差- ヨモギ全世界
- アカザ欧米・中東
キク科・アカザ科の雑草花粉は相互に交差。米国北東部・中西部のブタクサ秋(8〜10月)は世界最悪の花粉期の一つ。メロン・バナナ・きゅうりと食物交差(OAS)もある。
オリーブ
中程度- トネリコ欧州
地中海地域のオリーブ花粉(4〜6月)は日本ではまれだが、ヨーロッパのトネリコ花粉症に反応する可能性あり。
オーク
中程度- ブナ欧州
- 白樺欧州(Bet v 1経由)
ブナ科は春(4〜5月)に欧米で飛散。日本のブナ科花粉症は稀だが、カバノキ科に反応する人は交差する可能性。
プラタナス
可能性ありスペイン・南仏・イタリアの都市部街路樹として植栽が多く、3〜4月の花粉は独立したアレルゲンプロファイル(Pla a 1)を持つ。他樹との交差性は限定的。
薬剤師メモ: 交差反応を前提にした渡航準備
渡航前に確認したい3ポイント:
- 過去にアレルギー検査を受けているなら、反応した花粉の「科」を確認する。
- 渡航先の主要花粉(国別カレンダー)と照合する。
- 交差の可能性があれば、日本で使い慣れた抗ヒスタミン薬を2〜4週間分持参する。
症状が強い方は、渡航1〜2週間前から予防的に服用を開始する 「先取り服用」戦略も選択肢。 詳しくは主治医・薬剤師にご相談ください。