UAEで吐き気・嘔吐になったら|現地薬局で買える薬と薬剤師による買い方ガイド

UAEで吐き気・嘔吐になったら|現地薬局で買える薬と薬剤師による買い方ガイド

UAE(アラブ首長国連邦)、なかでもドバイやアブダビを旅行・出張中に吐き気や嘔吐に悩まされる日本人は少なくありません。40℃を超える酷暑、スパイスの強い食事、砂漠ツアーでの激しい揺れ、日本との8時間もの時差——これら複数の要因が重なりやすい環境です。本記事では、博士(薬学)取得・薬剤師の立場から、原因の解説、重症度判定、現地薬局で入手できるOTC薬の具体的情報、薬局での英語フレーズ、そして帰国後に注意すべきポイントまでを網羅的に解説します。


UAEで吐き気・嘔吐になる原因の解説

気候と脱水

UAEは年間を通じて気温が高く、夏季(5〜9月)は日中の気温が45℃を超えることもあります。屋外での活動だけでなく、室内外のエアコン温度差(屋外40℃超/屋内20℃前後)による自律神経の乱れも吐き気を誘発します。発汗量が多いにもかかわらず水分補給が不十分な場合、脱水が急速に進行し、それ自体が悪心・嘔吐の原因となります。湿度は夏季でも低い(砂漠性気候)ため、のどの渇きを感じにくく、気づかないうちに脱水になるケースが多い点に注意が必要です。

食文化・食中毒リスク

UAEはインド系、フィリピン系、アラブ系など多様な食文化が混在しており、クミン・コリアンダー・チリなどのスパイスを大量に使用した料理が日常的に提供されます。日本人の消化器はこうしたスパイスへの耐性が低いことが多く、それだけで胃腸刺激による悪心が起きやすいです。また、観光地やショッピングモール周辺の屋台・フードコートでは、調理環境の衛生管理がまちまちであり、サルモネラ属菌・カンピロバクター・病原性大腸菌による食中毒リスクが存在します。特にシャワルマ(回転焼き肉)は内部まで十分に加熱されていない場合があり、食中毒の代表的な原因食品として現地でも知られています。

水質問題

UAEの水道水は基本的に海水淡水化処理水であり、人体に無害とされていますが、配管や貯水タンクの衛生状態が施設によって異なります。ボトルウォーターの使用が推奨されており、旅行者は歯磨きにも市販ボトルウォーターを使うことが望ましいです。氷も水道水から作られる場合があるため、冷たい飲み物の氷には注意が必要です。

乗り物酔い(モーションシックネス)

ドバイ近郊の砂漠ツアー(デザートサファリ)では、四輪駆動車(SUV)で砂丘を激しく上下・左右に揺れながら走行します。この「ダウンヒル・オフロード走行」は前庭感覚と視覚情報の乖離が著しく、乗り物酔いが非常に起きやすい状況です。また、アブダビ〜ドバイ間の幹線道路(Sheikh Zayed Road)での長距離ドライブや、湾岸諸国を巡るバスツアーなど、長時間の車移動も誘因となります。

時差・睡眠不足

日本(JST)とUAE(GST)は通常5時間の時差があります(サマータイム廃止済みの日本、夏期は4時間差の場合あり)。帰国便は夜間出発が多く、機内での断続的な睡眠も自律神経を乱し、胃腸の不調を招きます。到着直後の不規則な食事タイミングも胃排泄リズムを崩し、吐き気の遠因になります。


重症度判定チェックリスト

以下の指標を参考に、自己判断の目安としてください。診断は医師の領域であり、迷う場合は医療機関を受診してください。

🚨 緊急受診(今すぐ救急へ)

チェック項目 理由
嘔吐物に血が混じる(鮮血・コーヒー色・黒色) 消化管出血の可能性
激しい頭痛と同時に嘔吐が繰り返される 頭蓋内圧亢進・髄膜炎の可能性
意識が混濁する・ろれつが回らない 重症脱水・神経系異常の可能性
尿が全く出ない(8時間以上) 重症脱水・急性腎障害の可能性
胸痛・背部痛を伴う嘔吐 心血管系・膵臓疾患の可能性

UAE救急番号:999

⚠️ 準緊急(当日または翌日診察を受けること)

チェック項目 理由
嘔吐が24時間以上継続している 重症脱水・感染症の可能性
38.5℃以上の発熱を伴う 細菌性・ウイルス性感染症の可能性
強い腹痛(痛みスケール7/10以上)を伴う 虫垂炎・腸炎・膵炎の可能性
水分が一切摂取できない(飲むと即嘔吐) 経口補水不能→点滴が必要
乳幼児・高齢者(65歳以上)・妊娠中 ハイリスク群は早期受診が原則
口渇が強く、皮膚に張りがない 脱水の客観的サイン

✅ 経過観察(OTC薬+自宅ケアで対応可能)

チェック項目 状況
嘔吐が1〜数回で止まっている 胃腸への一時的な刺激、乗り物酔い等
嘔吐から4〜6時間後に水分が摂れる 回復傾向あり
発熱がない(37.5℃以下) 感染症の可能性が低い
腹痛が軽度または伴わない 深刻な器質的疾患の可能性が低い
症状が出た状況が明確(砂漠ツアー直後、食後すぐ等) 原因が特定しやすい

現地薬局で買えるOTC薬(5〜8品)

UAEの薬局(ファーマシー)はショッピングモール内、ホテル近隣、ガソリンスタンド併設など非常に数が多く、入手性は良好(pharmacyAccess: easy)です。代表的なチェーンとしてAster PharmacyLife PharmacyBoots UAEThumbay Pharmacyなどが広く展開しています。英語対応できる薬剤師がほぼ全店に在籍しており、症状を英語で伝えれば適切な薬を案内してもらえます。

以下の価格は概算であり、店舗や時期により変動します。

ブランド名 有効成分(一般名) 主な剤形・規格 用法・用量目安 価格目安(AED) 入手できる主なチェーン
Dramamineドラマミン ジメンヒドリナート(Dimenhydrinate) 錠剤 50mg 1回1〜2錠、6時間ごと(1日3〜4回) 15〜25程度 Aster, Life, Boots UAE
Bonineボニン / Antivert相当品 メクリジン(Meclizine) 錠剤 25mg 1回1錠、8〜12時間ごと 20〜35程度 Life Pharmacy, 大型薬局
Buscopanブスコパン ブチルスコポラミン臭化物(Hyoscine butylbromide) 錠剤 10mg 1回1錠、1日3回(食前) 15〜25程度 Aster, Life, Thumbay
Gavisconガビスコン アルギン酸ナトリウム+重炭酸ナトリウム(製品による) 液剤・チュアブル錠 食後および就寝前 1〜2錠(または10mL 20〜40程度 Boots UAE, Aster
Domperidone(ジェネリック) ドンペリドン(Domperidone) 錠剤 10mg 1回1錠、1日3回(食前30分) 10〜20程度 要薬剤師確認(国により処方箋要否が異なる)
Pepto-Bismolペプトビスモル 次サリチル酸ビスマス(Bismuth subsalicylate) 液剤・チュアブル錠 製品添付文書に従う 25〜45程度 Boots UAE, 大型ハイパーマーケット薬局
Emetrol相当品(フルクトース・デキストロース・リン酸配合) フルクトース・デキストロース・リン酸(Phosphorated carbohydrate solution) 液剤 15mLを必要に応じて15分ごと(最大5回) 薬剤師に確認 大型薬局(取り扱いは店舗による)
経口補水塩(ORS) ブドウ糖・塩化ナトリウム・塩化カリウム等 粉末(WHO処方比率) 1袋を250mLの水に溶かして適宜補水 5〜15程度(1袋) 全薬局チェーン・スーパーマーケット

各薬の特徴補足

**Dramamineドラマミン(ジメンヒドリナート)**は第一世代抗ヒスタミン薬に分類され、前庭神経への作用によって乗り物酔い・嘔吐を抑えます。顕著な眠気が生じるため、砂漠サファリ乗車前の予防投与には有効ですが、服用後の運転は禁忌です。

メクリジンはジメンヒドリナートと同系統の抗ヒスタミン薬ながら中枢神経移行性が低く、眠気が比較的少ない点が特徴です。乗り物酔いの予防目的で旅行前1時間に服用するのに適しています。UAE薬局ではBonineボニンブランドまたは成分名で販売されている場合があります。薬剤師に「Meclizine(メクリジン)」と伝えてください。

**Buscopanブスコパン(ブチルスコポラミン臭化物)**は消化管平滑筋の痙攣を抑制する鎮痙薬であり、食中毒による腹部痙攣を伴う嘔吐に有用です。緑内障・前立腺肥大・心拍数が速い方は使用前に薬剤師へ申告してください。

Gavisconガビスコンは胃内でゲル層を形成し、胃酸の逆流を物理的に防ぐ製品です。スパイシーな食事後の胸焼けや逆流性の吐き気に向いています。制酸作用も持ち、空腹時のむかつきにも対応可能です。

ドンペリドンは消化管運動促進薬(プロキネティクス)であり、胃排泄を促進することで吐き気・嘔吐を改善します。UAE薬局では一部OTC扱いとなっていることがありますが、国際的には処方箋医薬品扱いの国も多く、購入前に薬剤師へ確認してください。心臓疾患(QT延長)の既往がある方は使用を避けてください。

**Pepto-Bismolペプトビスモル(次サリチル酸ビスマス)**は腸管粘膜保護・抗菌・制酸の複合作用を持ち、旅行者下痢に伴う吐き気にも効果が期待されます。アスピリンアレルギーがある方、18歳未満、妊娠中の方は使用禁忌です。服用中に便が黒色になることがありますが、これはビスマスによる正常な変化です。


現地語での症状表現・薬局での買い方フレーズ

UAEでは薬剤師・医療スタッフのほぼ全員が英語を話します。アラビア語は補助的に使用できれば便利ですが、英語のみで問題なく対応できます。

英語フレーズ(声に出して使う表現)

日本語 英語フレーズ カタカナ発音
吐き気がします I feel nauseous. アイ フィール ノージャス
嘔吐しました I have been vomiting. アイ ハヴ ビーン ヴォミティング
今朝から続いています It started this morning. イット スターテッド ディス モーニング
吐き気止めの薬はありますか? Do you have medicine for nausea? ドゥ ユー ハヴ メディシン フォー ノージア?
乗り物酔いです I have motion sickness. アイ ハヴ モーション シックネス
食中毒かもしれません I think I have food poisoning. アイ シンク アイ ハヴ フード ポイズニング
妊娠中です I am pregnant. アイ アム プレグナント
子ども(○歳)に使えますか? Is this safe for my child? They are ○ years old. イズ ディス セーフ フォー マイ チャイルド? ゼイ アー ○ イアーズ オールド
眠くならない薬をください I need something that won't make me drowsy. アイ ニード サムシング ザット ウォント メイク ミー ドラウジー
処方箋なしで買えますか? Can I buy this without a prescription? キャン アイ バイ ディス ウィズアウト ア プリスクリプション?

アラビア語フレーズ(補助的に活用)

日本語 アラビア語 発音(ローマ字転写)
吐き気があります أشعر بالغثيان Ash'uru bil-ghathayān
嘔吐しました تقيأت Taqayya'tu
薬が必要です أحتاج دواء Aḥtāju dawā'an
吐き気止めの薬 دواء لمنع الغثيان Dawā'un li-man'i al-ghathayān
医師に診てもらいたい أريد رؤية طبيب Urīdu ru'yata ṭabīb

現地の医療事情

医療制度の概要

UAEの医療は基本的に私立医療機関が中心であり、外国人旅行者は公立病院(Government Hospital)よりも私立病院・クリニックを利用することが一般的です。公立病院でも外国人は受診可能ですが、待ち時間が長く、英語対応が不均一な場合があります。旅行傷害保険への加入は必須と考えてください。キャッシュレス診療が利用できる保険会社と提携している病院は多いですが、事前にキャッシュレス提携先を確認しておくことが重要です。

主な医療機関

施設名 所在地 特徴 電話番号
American Hospital Dubai ドバイ、オウド・メサ JCI認定、英語対応◎、日本語通訳サービスあり(要事前確認) +971-4-309-6000
Cleveland Clinic Abu Dhabi アブダビ、アル・マリア島 JCI認定、国際水準の高度医療、英語対応◎ +971-2-659-0200
Mediclinic City Hospital ドバイ、ヘルスケアシティ JCI認定、24時間救急対応、英語対応◎ +971-4-435-9999
Aster Hospital(各院) ドバイ市内複数拠点 アクセス良好、24時間クリニックあり 拠点により異なる
Saudi German Hospital Dubai ドバイ、アル・バルシャ 中東系資本、英語対応◎ +971-4-389-0000

※日本語での対応が必要な場合は、**在ドバイ日本国総領事館(+971-4-221-3191)**に相談すると、日本語対応可能な医療機関を紹介してもらえることがあります。

救急・緊急連絡先

用途 番号・連絡先
救急車(UAE全土共通) 999
警察 999
消防 997
在ドバイ日本国総領事館(緊急時) +971-4-221-3191
在アブダビ日本国大使館(緊急時) +971-2-443-5696
外務省海外安全相談センター(日本) 03-3580-3311

薬剤師の視点:渡航前準備・持参推奨OTC・現地入手のリスク

渡航前に準備しておくべきこと

1. 常用薬の英語表記を確認する UAE税関・入国審査では、処方箋医薬品を持ち込む場合に医師の英文証明書(レター)が求められることがあります。OTC薬については原則として申告不要ですが、国際麻薬条約に基づく規制成分(コデイン含有薬など)はUAEで厳しく規制されており、現地での規制に準じた対応が必要です。渡航前に在日UAE大使館または外務省の最新情報を確認してください。

2. 旅行傷害保険への加入 UAEの私立病院は診療費が非常に高額になる場合があります(例:救急外来1回で数万円〜十数万円規模になることがあります)。クレジットカード付帯保険の補償内容を事前に確認し、不十分であれば別途加入することを強く推奨します。

3. 電子処方箋・お薬手帳のデジタル化 お薬手帳アプリや医師からの英文サマリーを事前に用意しておくと、現地の医師・薬剤師との意思疎通が円滑になります。

日本から持参すると便利なOTC薬

日本国内で入手できる以下の製品は、UAEでの入手が難しい場合または現地製品より慣れている場合に持参を推奨します。

日本のOTC製品名 有効成分 UAEの対応成分・製品 持参メリット
トラベルミン(各種) ジメンヒドリナート、スコポラミン等 Dramamineドラマミン 用量が慣れている
セレキノン(要処方)→代替:漢方の六君子湯など トリメブチン 現地に対応品少ない 機能性ディスペプシア既往者に有用
経口補水液OS-1(粉末タイプ) ブドウ糖・電解質 現地ORS WHO処方比率準拠で信頼性高い
大正漢方胃腸薬(漢方) 安中散 現地に同等品なし 胃もたれ・吐き気への漢方対応

なお、トラベルミンシリーズは成人用・子供用で成分・用量が異なるため、購入の際は対象年齢・用量を必ず確認してください。

現地入手のリスクと注意点

偽造医薬品リスク:UAE当局(MOHAP:Ministry of Health and Prevention)は医薬品の品質管理に積極的に取り組んでいますが、非正規ルート(SNSを通じた個人売買、非公認の露店)から購入した製品には品質・安全性の保証がありません。必ず**認可された薬局チェーン(ライセンス表示のある店舗)**で購入してください。

コデイン・オピオイド含有製品の持ち込みと所持:UAE(特にドバイ)はコデインを含む一部鎮咳薬・鎮痛薬を処方箋なしで所持することを禁止しており、違反した場合は当局による措置の対象となる可能性があります。日本で一般用医薬品として販売されているコデイン含有の風邪薬・咳止めの携行には十分な注意が必要です。詳細は外務省UAE危険情報・滞在情報および在UAE日本国大使館の最新案内を必ず事前に確認してください。


避けるべき成分・買ってはいけない薬

❌ 使用に慎重を要する成分・製品

プロメタジン(Promethazine)含有製品 フェノチアジン系の第一世代抗ヒスタミン薬で、強力な制吐作用を持ちますが、強い眠気・鎮静・錐体外路症状(身体の不随意運動)のリスクがあります。UAE薬局でも取り扱いがある場合があります。観光・運転中の使用は観光活動を著しく制限するため、薬剤師に相談の上での使用にとどめてください。2歳未満への使用は禁忌であり、小児への使用全般に慎重さが求められます。

ロペラミド(Loperamideロペラミド 下痢止めとして広く知られていますが、嘔吐症状そのものには無効です。細菌性食中毒が疑われる場合に下痢を強制的に止めると、腸内の病原菌・毒素が排出されずに症状が遷延・悪化する可能性があります。下痢を伴う食中毒の際のロペラミド使用は、細菌感染が否定されていない限り推奨されません。

非公認・パッケージなし医薬品 市場(スーク)や非公認のオンラインマーケットプレイスで販売される無表示の医薬品は、有効成分・含量が不明確であり、重大な健康被害につながるリスクがあります。必ず外箱・添付文書が揃った製品を購入してください。

⚠️ 特定の条件下での使用に注意が必要な成分

成分名 注意が必要なケース
ジメンヒドリナート 前立腺肥大・閉塞隅角緑内障・てんかん・妊娠初期は慎重使用
メクリジン 妊娠中(特に初期)は医師相談を推奨
ブチルスコポラミン 閉塞隅角緑内障・頻脈性不整脈・重篤な心疾患は禁忌
次サリチル酸ビスマス アスピリン過敏症・18歳未満・抗凝固薬服用中は禁忌・要注意
ドンペリドン QT延長症候群・重篤な肝疾患・他のQT延長薬との併用は禁忌

現地での自宅対処法(OTC薬と併用)

水分補給・脱水対策(最重要)

嘔吐が続いている状態では大量の水を一度に飲むと再度嘔吐を誘発します。5〜10mLを5〜10分ごとに少量ずつ口に含む「マイクロドリップ法」を実践してください。経口補水塩(ORS)を水に溶かしたものが最も効率的ですが、入手できない場合はスポーツドリンク(Gatoradeなど)を同量の水で薄めたもので代替できます。UAEの薬局では粉末ORSが安価(概ね1袋5〜15 AED)で入手できます。

炭酸飲料・柑橘系ジュース・牛乳・アルコールは胃を刺激するため、嘔吐が収まるまで避けてください。コーヒー・濃い紅茶も利尿作用があり脱水を悪化させる可能性があります。

食事

嘔吐が活発な時期は絶食が原則です。嘔吐が止まってから4〜6時間後に、おかゆ・プレーンクラッカー・トースト・バナナ(BRAT食)から少量ずつ開始します。スパイス・脂肪分・乳製品・生野菜は消化管に負担をかけるため、症状が完全に回復するまで避けてください。

環境・休養

UAE外気は気温が高く、嘔吐後の外出は脱水を加速します。ホテルの空調を心地よい温度(概ね24〜26℃)に設定し、暗く静かな環境で横になることを優先してください。横になる際は**右側臥位(右を下にする姿勢)**が胃の排泄を促し、逆流を軽減しやすいとされています。嘔吐直後は誤嚥リスクを避けるため、完全にうつ伏せにはならず、頭を少し高くした姿勢を保ってください。


帰国後の観察ポイント(輸入感染症の見分け方)

UAE渡航後に帰国してから症状が遷延・悪化する場合、輸入感染症(海外で感染し国内に持ち帰った感染症)の可能性を念頭に置く必要があります。

帰国後に受診を要する症状の目安

症状・状況 考えられる原因 受診の目安
帰国後2週間以内に38℃以上の発熱が続く 腸チフス・マラリア・デング熱など 速やかに受診(渡航歴を必ず申告)
帰国後も下痢・嘔吐・腹痛が1週間以上続く 細菌性腸炎・寄生虫感染(ジアルジア等) 消化器内科・感染症科受診
黄疸(皮膚・白目が黄色い)が現れる A型肝炎・E型肝炎など 速やかに受診
帰国1ヵ月以内に断続的に発熱を繰り返す マラリア(熱帯熱マラリアはUAE周辺でリスクあり) 感染症科・旅行医学科受診

受診時の重要事項

医療機関を受診する際は、必ず**「UAE渡航歴があること」「いつ帰国したか」「どの地域を訪問したか」「何を食べたか」**を医師に伝えてください。これらの情報は診断・治療方針に直接影響します。国内の感染症専門外来や旅行医学外来(Travel Medicine Clinic)が対応しています。国立国際医療研究センター(NCGM)や各都市の大学病院感染症科に相談することも選択肢です。


まとめ

UAEで吐き気・嘔吐が起きたときの対処の要点を整理します。

  1. 原因を見極める:乗り物酔い(砂漠サファリ直後)→ジメンヒドリナートまたはメクリジン、食中毒疑い(食後数時間以内・腹痛あり)→Buscopanブスコパン+経口補水塩、胃酸逆流・胸焼け型→Gavisconガビスコン
  2. UAE薬局は英語で対応可能I need medicine for nausea.(アイ ニード メディシン フォー ノージア)の一言で薬剤師が案内してくれる
  3. 脱水対策が最優先:少量ずつの経口補水液投与を続ける
  4. 危険サインは即座に999または最寄りの私立病院へ:血の混じった嘔吐・24時間以上の持続・激しい頭痛・意識変容は緊急対応が必要
  5. 帰国後も2週間は症状を観察:遷延する発熱・下痢は輸入感染症の可能性があり、渡航歴を申告して受診する

参考文献

  1. World Health Organization (WHO). "Diarrhoeal disease." WHO Fact Sheets. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/diarrhoeal-disease

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Diarrhea." CDC Yellow Book 2024: Health Information for International Travel. https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2024/preparing/travelers-diarrhea

  3. 外務省. 「アラブ首長国連邦(UAE)感染症・衛生情報」. 外務省海外安全情報. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_017.html

  4. UAE Ministry of Health and Prevention (MOHAP). "Medications Regulations and Controlled Substances." https://www.mohap.gov.ae/en/services/

  5. 国立感染症研究所. 「輸入感染症とは」. NIID. https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-abroad.html

  6. 厚生労働省検疫所 (FORTH). 「アラブ首長国連邦の感染症危険情報・予防接種情報」. https://www.forth.go.jp/

  7. Pratt NL, et al. "Dimenhydrinate, meclizineメクリジン and motion sickness." Handbook of Clinical Drug Data. 10th ed. McGraw-Hill.


免責事項

本記事は、薬剤師(博士・薬学)が一般的な薬学情報・医療情報の提供を目的として作成したものです。本記事の内容は診断・治療の代替となるものではなく、個別の医療判断は必ず医師・薬剤師等の有資格者にご相談ください。医薬品の用法・用量・禁忌は製品添付文書を必ず確認し、自己判断での服用は避けてください。現地の医薬品規制・薬局事情は変更される場合があります。渡航前に外務省・大使館の最新情報を必ずご確認ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、執筆者および運営者は責任を負いかねます。

監修:薬剤師(博士・薬学)

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