ハンガリー渡航前の予防接種について
ハンガリーはヨーロッパ中部に位置し、医療水準は比較的高い国です。しかし、日本で一般的でない感染症が存在する可能性があるため、渡航前の予防接種は重要な準備です。本記事では、薬剤師の視点から必要・推奨される予防接種、接種スケジュール、費用の目安を詳しく解説します。
ハンガリーの首都ブダペストは観光・ビジネス双方で日本人渡航者が多い都市ですが、国土の大部分は農村・森林地帯が広がり、特に春から秋にかけてはダニ媒介感染症のリスクが存在します。CDCおよびWHOが公開しているトラベルヘルス情報でも、ハンガリーはダニ媒介脳炎(TBE)の流行地域として明記されています。一方で黄熱病・コレラ・マラリアなど熱帯特有の感染症リスクはほぼなく、感染症プロファイルは日本と部分的に重なりながらも、いくつかの重要な差異があります。渡航目的(観光・留学・長期赴任・農村ボランティアなど)や渡航期間によって推奨ワクチンは異なるため、個別のリスク評価が欠かせません。
ハンガリーへの渡航で必須の予防接種
ハンガリーへの入国時に法的に義務付けられている予防接種はありません。ただし、感染症リスクを考慮して、以下のワクチンは強く推奨されます。
1. 麻疹・風疹・おたふくかぜ(MMR)
ワクチン名(成分名): 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合生ワクチン(国内製品名: MRワクチンまたはMMRワクチン)
推奨理由: ヨーロッパにおける麻疹流行は依然として存在し、ハンガリーも例外ではありません。渡航者の多くが集団接種の対象外である場合、感染リスクが高まります。特に2019年以降、欧州で麻疹の再流行が報告されており、WHOのデータでは東欧・中欧での発生が継続しています。
接種スケジュール:
- 初回接種後、4週間以上の間隔を開けて2回目接種
- 渡航予定日の2週間以上前に完了が目安
薬学的ポイント(機序・免疫応答): MMRワクチンは弱毒生ワクチンであり、接種後にウイルスが体内で限定的に増殖することで、自然感染に類似した強固な免疫記憶が形成されます。2回接種完了後の麻疹に対する抗体陽転率は97%以上と報告されています。免疫記憶は通常20年以上持続しますが、渡航前に抗体価測定(麻疹・風疹IgG)を行うことで、不必要な再接種を避けることもできます。
副作用の薬学的解説: 接種後5〜12日目頃に発熱・発疹が出現することがあります(ワクチン株ウイルスによるもの)。これは感染性はなく、通常2〜3日で自然軽快します。まれに血小板減少性紫斑病(ITP)の報告があり、発生頻度は1〜2万接種に1件程度とされています。卵アレルギーがある方は事前に医師・薬剤師に申告してください(ゼラチンアレルギーも注意)。
薬剤師メモ: 1966年以前に生まれた方は自然免疫の可能性があります。ただし、渡航者は抗体検査(麻疹・風疹IgG)を受けて確認することをおすすめします。生ワクチンは妊娠中に接種できないため、妊娠予定がある女性は接種後28日間の避妊が必要です。
2. 破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap/Td)
ワクチン名(成分名): 沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(Tdap)、または沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(Td)
推奨理由: 破傷風菌(Clostridium tetani)は土壌に広く存在し、ハンガリーでの野外活動・農村滞在中の外傷リスクが考えられます。ハンガリーを含む欧州では百日咳の再流行も周期的に報告されており、成人の追加接種が推奨されています。
接種スケジュール:
- 10年ごとの追加接種が推奨
- 前回接種から10年以上経過している場合は1回追加
薬学的ポイント: 破傷風トキソイドは破傷風菌が産生する毒素(テタノスパスミン)を不活性化したものです。テタノスパスミンは末梢神経終末から逆行性に中枢へ移行し、抑制性神経伝達物質(GABAおよびグリシン)の放出を阻害することで、特徴的な強直性けいれんを引き起こします。トキソイドによる抗体は毒素の作用部位への結合を競合的に阻害し、発症を防ぎます。接種後の抗体価は数週間で防御レベルに達し、10年間有効な免疫が維持されます。
ハンガリー渡航で推奨される予防接種
1. A型肝炎ワクチン
ワクチン名(成分名): A型肝炎ウイルス不活化ワクチン(国内では「エイムゲン」等の成分名でも知られる)
推奨理由: ハンガリーはEU加盟国で衛生水準は比較的高いものの、農村部・地方都市の屋台食や生野菜摂取時には一定のリスクがあります。A型肝炎ウイルス(HAV)は主に糞口感染経路(汚染された食品・水)で伝播し、日本人成人の多くは免疫を持たないため感染すると重篤化しやすい傾向があります。
接種スケジュール:
- 初回接種後、6〜12ヶ月後に2回目接種
- 渡航予定日から6ヶ月以上前の開始が理想的
- 1回目接種のみでも出発2〜4週間後から有効な部分免疫が得られます
費用(目安): 1回あたり約6,000〜8,000円
薬学的ポイント(免疫持続期間): A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンであり、2回接種完了後の抗体陽転率はほぼ100%です。数理モデルによる推計では、免疫持続期間は25〜30年以上とされており、2回の接種完了後は追加接種なく長期防御が期待できます。免疫記憶(メモリーB細胞)が形成されているため、たとえ抗体価が低下しても、実際の感染に際して迅速な二次免疫応答が誘導されます。
薬剤師メモ: B型肝炎との同時接種が考慮される場合、A型・B型両成分を含む混合ワクチンの利用が接種回数の節約につながり効率的です。混合ワクチンを使用する場合は0・1ヶ月・6ヶ月の3回接種スケジュールとなります。
2. B型肝炎ワクチン
ワクチン名(成分名): B型肝炎ウイルスワクチン(組換え型、HBs抗原ワクチン)
推奨理由: 医療機関での針刺し事故や性感染症リスク、輸血が必要になった際の感染予防。ハンガリーのHBs抗原陽性率は日本より高く、長期滞在者・医療従事者には特に推奨されます。
接種スケジュール:
- 標準スケジュール: 0日・1ヶ月・6ヶ月(3回接種)
- 短縮スケジュール: 0日・7日・21日(渡航が急ぐ場合。1年後に追加接種を要する)
- 渡航前8週間以上前の開始が推奨
費用(目安): 1回あたり約5,000〜7,000円
薬学的ポイント(組換えワクチンの特性): 現在使用されているB型肝炎ワクチンは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)を利用した遺伝子組換え技術によりHBs抗原タンパク質を産生させたものです。アルミニウムアジュバントが添加されており、抗原提示細胞を活性化し強い免疫応答を誘導します。3回接種完了後のHBs抗体(抗HBs)陽転率は健常成人で90〜95%です。免疫応答が低い方(高齢者・肥満・免疫抑制状態)では陽転率が低下する場合があり、接種後の抗体価確認が推奨されることがあります。
3. ポリオ(不活化ポリオ)ワクチン
ワクチン名(成分名): 不活化ポリオウイルスワクチン(IPV)
推奨理由: ハンガリー自体のリスクは低いものの、周辺地域(中東、中央アジア方面)への連続渡航予定がある場合は強く推奨されます。日本では2012年以降、定期接種がIPVに移行しており、幼少期に接種済みの方が多いですが、成人後の追加接種記録の確認が必要です。
接種スケジュール:
- 10年ごとの追加接種
- 過去の接種歴により異なります
費用(目安): 1回あたり約4,000〜6,000円
4. 風疹ワクチン(単独または組み合わせ)
MRVワクチンの項目を参照ください。成人女性で抗体価が不十分な場合は、妊娠前の接種が特に重要です(風疹は妊娠初期感染で先天性風疹症候群を引き起こすリスクがあります)。
特定の活動予定に応じた追加ワクチン
| 活動内容 | 推奨ワクチン | 優先度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 野外活動・ハイキング | ダニ媒介脳炎(TBE) | 高 | 春〜秋の活動は特に注意 |
| 動物との接触が多い | 狂犬病 | 中 | 露出後予防も可能だが事前接種で対応が容易に |
| 長期滞在(3ヶ月以上) | 結核検査(QFT/T-SPOT) | 中 | ワクチンではなく帰国後の潜伏結核スクリーニング |
| 農村部・湿地帯での活動 | レプトスピラ症 | 低 | 直接ワクチンなし;防水靴・皮膚保護が有効 |
| 医療ボランティア | B型肝炎・A型肝炎 | 高 | 血液・体液曝露リスクあり |
ダニ媒介脳炎(TBE:Tick-Borne Encephalitis)
ワクチン名(成分名): ダニ媒介脳炎ウイルス不活化ワクチン(国内未承認。海外製品としてENCEPUR®〔ダニ脳炎ワクチン、ノバルティス系〕やFSME-IMMUN®〔バクスター系〕が欧州で使用されている。日本国内ではトラベルクリニックの輸入手続きにより入手可能な場合がある)
推奨理由: ハンガリーはヨーロッパのTBEリスク地域に含まれます。ECDCの疫学データによれば、ハンガリーでは年間数十〜百件超のTBE症例が継続的に報告されており、特に北部・北東部の丘陵・森林地帯でのリスクが高いとされています。春〜秋(4〜10月)にハイキングやキャンプ活動を予定されている方に強く推奨されます。
接種スケジュール:
- 標準スケジュール: 0日・1〜3ヶ月・5〜12ヶ月(3回接種)
- 渡航前3ヶ月以上前の開始が理想的(2回接種完了でも相当の免疫が得られる)
- 急ぐ場合の短縮スケジュール: 0日・14日・その後5〜12ヶ月(製品・医師の判断による)
- ブースター接種: 初回シリーズ完了後3年以内に1回、以降3〜5年ごと
費用(目安): 1回あたり約8,000〜12,000円程度(輸入ワクチンのため価格が変動する場合があり、要確認)
薬学的ポイント(TBEウイルスの病態と免疫機序): TBEウイルスはフラビウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスです。マダニ(主にIxodes ricinus)に吸着後数分以内にウイルスが体内に侵入するとされており、ダニを素早く除去しても感染を防げない場合があります。感染後、約7〜14日の潜伏期を経て二相性の経過をたどることが多く、第一相(発熱・筋肉痛)の後に一時的に改善し、約3分の1の患者で第二相として脳炎・髄膜炎を発症します。重篤例では後遺症(神経麻痺・認知機能低下)が残る場合があります。ワクチンは不活化ウイルスに対する中和抗体を誘導し、ウイルス血症段階でのウイルス排除を促進することで中枢神経系への移行を防ぎます。
副作用の薬学的解説: 局所反応(発赤・腫脹・疼痛)が最も多く、接種者の30〜40%程度に認められますが、通常2〜3日で消失します。全身反応としての発熱・頭痛・倦怠感も認められることがあります。アナフィラキシー等の重篤なアレルギー反応はきわめてまれ(1万接種に数件以下)です。卵アレルギーがある場合は、製品によってはウイルス培養に卵由来基質を使用しているため、処方医・薬剤師への事前申告が必要です。
薬剤師メモ: TBEワクチンは国内未承認のため、健康保険は適用されず全額自費となります。渡航前に接種するのが理想ですが、ハンガリー国内のトラベルクリニックでも接種可能です。ただし現地での接種は言語・制度の障壁があるため、日本国内での事前接種を強く推奨します。
狂犬病ワクチン
ワクチン名(成分名): 精製培養狂犬病ワクチン(国内製品: ラビピュール〔Rabippur〕等。フルセル不活化ワクチン)
推奨理由: ハンガリーは西欧同様に国内の家畜・ペットへのワクチン接種が進んでおり、国内での狂犬病清浄地域とされていますが、東欧・中欧国境近辺の野生動物(キツネ・コウモリ等)には散発的な陽性報告があります。農村部や野外活動で動物(特に野生動物・野良犬・コウモリ)との接触リスクがある場合、露出前予防接種(PrEP)を行うことで、万が一の咬傷時の対応を大幅に簡略化できます。
接種スケジュール:
- 露出前予防: 0日・7日・21日または28日の3回接種
- 渡航前3週間以上前の完了が必要
- 露出前接種済みの場合、咬傷後は2回の追加接種(0日・3日)で対応可能
- 未接種者の場合、咬傷後は4〜5回のワクチン接種に加え狂犬病免疫グロブリン(RIG)の投与が必要
費用(目安): 1回あたり約10,000〜12,000円
薬学的ポイント: 狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科)は末梢神経を逆行性に移動し中枢神経系に到達します。発症後の致死率はほぼ100%であるため、予防と早期暴露後処置(PEP)が命を左右します。露出前接種により中和抗体が形成されると、暴露後の追加接種でアナムネスティック反応(二次免疫応答)が迅速に誘導され、RIG投与が不要になります。ハンガリー国内でRIGが常に入手できるとは限らないため、高リスク活動予定者には特に事前接種の価値があります。
予防接種の薬学的基礎知識:接種タイミングと免疫形成
渡航ワクチン接種において「いつ打つか」は免疫学的に非常に重要です。以下の表に各ワクチンの免疫形成タイムラインをまとめます。
| ワクチン | 防御免疫が確立するまでの目安 | 接種開始の目安(渡航前) |
|---|---|---|
| MMR(2回) | 2回目接種後2週間 | 8週間以上前 |
| A型肝炎(1回) | 接種後2〜4週間 | 4週間前(1回のみでも可) |
| B型肝炎(3回標準) | 3回目接種後2〜4週間 | 6〜8ヶ月前 |
| TBE(2回) | 2回目接種後2〜3週間 | 6〜8週間前(最低限2回) |
| 狂犬病(3回) | 3回目接種後1週間 | 4週間前 |
| Tdap | 接種後2週間 | 2〜4週間前 |
ワクチンの相互作用と同時接種に関する薬学的注意
生ワクチン同士の間隔
MMRは生ワクチン(弱毒化生ウイルス)であるため、他の生ワクチン(例: 水痘ワクチン)と同日接種しない場合は4週間以上の間隔が必要です。これは先行する生ワクチンが誘導するインターフェロンが後続ワクチンの増殖を抑制する可能性があるためです。ただし同日接種であれば問題ありません(接種部位を変えて投与)。
不活化ワクチン同士の同時接種
TBE・A型肝炎・B型肝炎・Tdap・狂犬病はいずれも不活化ワクチンです。不活化ワクチン同士は免疫干渉が生じにくく、異なる部位への同時接種が可能です。これにより接種回数を減らし渡航前のスケジュールを効率化できます。
免疫抑制剤・ステロイドとの相互作用
免疫抑制療法中の方(メトトレキサート・生物学的製剤・高用量ステロイド等)は、生ワクチン(MMR等)の接種が禁忌となる場合があります。また不活化ワクチンも免疫抑制状態では抗体応答が低下するため、免疫抑制剤使用者は必ず処方医・専門医に相談してください。
抗マラリア薬との相互作用
ハンガリーへの渡航のみであれば抗マラリア薬は原則不要ですが、経由地や前後の渡航先でマラリア予防薬を使用する場合、経口チフスワクチン(日本では一般的でないが海外では流通)との相互作用が知られています。詳細はトラベルクリニックで相談してください。
予防接種の接種スケジュール例
パターン1:最小限の推奨ワクチン(渡航4週間前から開始可能)
Week 0: MMR第1回、Tdap(前回接種から10年以上経過している場合) Week 4: MMR第2回 Week 2以降: A型肝炎第1回(任意)
パターン2:包括的な推奨ワクチン(渡航3ヶ月前から開始推奨)
Month 0:
- MMR第1回
- A型肝炎第1回
- B型肝炎第1回
- Tdap(必要な場合)
Month 1:
- MMR第2回
- B型肝炎第2回
- TBE第1回(野外活動予定時)
Month 2〜3:
- TBE第2回(第1回から1〜3ヶ月後)
Month 6:
- A型肝炎第2回
- B型肝炎第3回
- TBE第3回(第2回から5〜12ヶ月後)
パターン3:高リスク活動対応(4ヶ月以上の期間を推奨)
上記パターン2に加え、狂犬病ワクチン(0日・7日・21日)を組み入れます。TBEの短縮スケジュールも考慮します。
薬剤師メモ: 複数ワクチンの同時接種は安全で、むしろ推奨されます。ただし、生ワクチン同士は同日または4週間以上の間隔が必要です。不活化ワクチン同士は間隔制限がなく、同日異部位投与が可能です。
予防接種の費用目安
日本国内での接種費用
| ワクチン名(成分名) | 種類 | 費用(1回目安) | 必要回数 | 合計目安 |
|---|---|---|---|---|
| MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合) | 生ワクチン | 6,000〜9,000円 | 2回 | 12,000〜18,000円 |
| Tdap/Td(破傷風・ジフテリア・百日咳) | トキソイド | 3,000〜5,000円 | 1回 | 3,000〜5,000円 |
| A型肝炎(不活化) | 不活化 | 6,000〜8,000円 | 2回 | 12,000〜16,000円 |
| B型肝炎(組換え型) | 不活化 | 5,000〜7,000円 | 3回 | 15,000〜21,000円 |
| A型+B型肝炎混合 | 不活化 | 11,000〜14,000円 | 3回 | 33,000〜42,000円 |
| ポリオ(IPV) | 不活化 | 4,000〜6,000円 | 1回 | 4,000〜6,000円 |
| TBE(ダニ脳炎、輸入ワクチン) | 不活化 | 8,000〜12,000円 | 3回 | 24,000〜36,000円 |
| 狂犬病(精製培養) | 不活化 | 10,000〜12,000円 | 3回 | 30,000〜36,000円 |
※費用はすべて目安です。医療機関・地域・時期により異なります。いずれも任意接種(自費)となります。
ハンガリー国内での接種費用
ハンガリーの医療機関でも予防接種は可能ですが、言語の壁・医療制度の相違・ワクチンの在庫状況の不確実性があります。渡航前の日本国内での接種を強く推奨します。なお、EU圏内の医療機関ではEHIC(欧州保険カード)が使用可能ですが、日本人渡航者には適用されないため、海外旅行傷害保険の加入を別途検討してください。
トラベルクリニックでの相談のポイント
事前に整理すべき情報
- 渡航期間: 日程と滞在日数(短期観光か長期赴任かで推奨ワクチンが大きく異なる)
- 訪問地域: 都市部(ブダペスト等)か農村部・森林地帯か、具体的な地名
- 予定活動: ハイキング・キャンプ・農業・医療施設での活動など
- 過去の接種歴: 母子健康手帳・予防接種記録の確認
- アレルギー歴: 特に卵アレルギー(TBE・MMR等)、ゼラチンアレルギー、抗菌薬アレルギー
- 妊娠の有無・予定: 生ワクチンは妊娠中禁忌のため非常に重要
- 免疫状態: 免疫抑制療法・HIV感染・無脾症等がある場合は必ず申告
- 現在の服薬内容: 免疫抑制剤・ステロイド・抗凝固薬(筋注時の出血リスク)等
相談する医療機関の種類
- 国立感染症研究所が公開するトラベルクリニック一覧の掲載施設
- 大学病院・総合病院の渡航医学外来・感染症内科
- 感染症外来専門クリニック
- 予防接種専門外来を持つ内科・小児科クリニック
薬剤師メモ: トラベルクリニックは完全予約制がほとんどです。渡航予定日の8〜12週間前の早期相談をおすすめします。初診時に渡航先・期間・活動内容を具体的に伝えると、個別最適化されたワクチンプランを提案してもらいやすくなります。
ハンガリー渡航前の接種記録と証明書
国際予防接種証明書について
ハンガリー入国時に黄熱病ワクチンの接種証明は不要です(黄熱常在国を直前に経由する場合を除く)。ただし、渡航計画に第三国が含まれる場合は要確認です。接種を受ける際は「国際予防接種証明書(イエローカード)」の発行依頼を医療機関に行ってください。
接種記録の持参・管理
- 母子健康手帳: 幼少期の接種記録を記載(紛失時は市区町村窓口で再発行手続き可)
- 接種済証・接種記録書: 任意接種を受けた医療機関から発行
- 英語版接種証明書: 海外での医療受診時・緊急時に有用(医療機関に英文発行を依頼)
- デジタルコピー: スマートフォンのクラウドストレージ等に写真で保存しておくと紛失対策になります
ハンガリーでの医療機関利用時の注意
診療時の準備物
- 接種記録(コピー)
- アレルギー歴のメモ(英語表記)
- 現在服用中の医薬品リスト(一般名・英語表記を推奨)
- 海外旅行傷害保険証・保険会社の緊急連絡先
現地での医療英語フレーズ
現地で医療機関を受診する際に役立つ英語フレーズを以下に示します。
-
I need to see a doctor.(アイ ニード トゥ シー ア ドクター) -
I have a fever.(アイ ハヴ ア フィーバー) -
I was bitten by a tick.(アイ ウォズ ビトゥン バイ ア ティック)※ダニに咬まれた場合 -
I am allergic to eggs.(アイ アム アラージック トゥ エッグズ) -
Do you have English-speaking staff?(ドゥ ユー ハヴ イングリッシュ スピーキング スタッフ?)
ハンガリーの薬局(patika)について
ハンガリーの薬局(ハンガリー語でpatika〔パティカ〕またはgyógyszertár〔ジョージセルター〕)ではOTC医薬品が購入可能です。ブダペスト市内には24時間営業の薬局も存在します。ただし製品名が異なるため、成分名(一般名)を把握しておくことが現地での購入時に非常に役立ちます(例: 解熱鎮痛薬ならparacetamol〔パラセタモル〕またはibuprofen〔イブプロフェン〕と伝える)。常用薬は十分な量を日本から携行することをおすすめします。
渡航後の感染症予防対策
予防接種だけでは不十分
予防接種は非常に有効な予防手段ですが、すべての感染症に対して完全な防御を保証するものではありません。以下の非薬物的対策も重要です。
衛生管理:
- 食事前・トイレ後の手指衛生(石けん+流水での手洗い、またはアルコール手指消毒)
- 未殺菌の生乳・加熱不十分な肉類・生の二枚貝の摂取を避ける
- 農村部では飲料水の安全性に注意(ペットボトル水の使用を推奨)
ダニ対策(TBE・ライム病予防):
- 春〜秋の森林・草地での活動時は長袖・長ズボン着用
- DEETまたはイカリジン含有虫除け剤を皮膚・衣類に使用(衣類にはペルメトリン処理も有効)
- 活動後は全身(特に鼠径部・腋窩・頸部後面)のダニチェックを実施
- ダニ発見時は市販のダニ除去ツールで頭部ごと垂直に引き抜く(絞る・燃やす等は禁忌)
- 除去後に赤い輪状発疹(ライム病の特徴)や発熱が出現した場合は速やかに受診
感染症情報の確認:
- 外務省「海外安全情報」(渡航中の感染症発生動向)
- 厚生労働省検疫所(FORTH)の最新渡航者向け感染症情報
まとめ
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必須級の推奨ワクチン: MMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)、Tdap(破傷風・ジフテリア・百日咳)は渡航者の多くに推奨されます。接種歴・抗体価を確認して必要な場合は早めに接種してください。
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推奨ワクチン: A型肝炎、B型肝炎は食事・医療リスク低減のため強く推奨。特に長期滞在・医療関係業務の場合は重要です。
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活動に応じた追加ワクチン: ハイキング・キャンプ・農村活動予定者にはダニ媒介脳炎(TBE)が最重要。動物接触リスクがある場合は狂犬病ワクチンも検討してください。
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接種スケジュール: 渡航予定日から8〜12週間前の早期相談をおすすめします。TBEやB型肝炎の標準スケジュールには6ヶ月以上を要するため、余裕を持った計画が重要です。
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費用目安: 最小限の推奨接種で約15,000〜25,000円、包括的な接種(TBE・狂犬病含む)で約80,000〜130,000円程度が目安(医療機関・価格変動により異なる)。
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ワクチンの薬学的特性の理解: 生ワクチン(MMR)と不活化ワクチン(TBE・A型肝炎等)では接種間隔・禁忌・副作用プロファイルが異なります。免疫抑制療法中の方は必ず担当医に相談してください。
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トラベルクリニック利用: 渡航計画に基づいた個別最適なワクチンスケジュールの立案に、専門家への相談が不可欠です。
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接種記録の管理: 英語版の接種証明書を取得し、デジタルコピーも保存しておくことで、ハンガリーでの緊急医療受診時に迅速な対応が可能になります。
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最新情報確認: 予防接種情報は定期的に更新されます。渡航前に外務省ホームページ・厚生労働省検疫所(FORTH)・国立感染症研究所の最新情報を必ず確認してください。
参考文献・情報源
-
厚生労働省検疫所(FORTH)「ハンガリーの感染症情報」
https://www.forth.go.jp/ -
WHO – International travel and health, Hungary country information
https://www.who.int/ith/ -
CDC – Travelers' Health: Hungary
https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/hungary -
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC) – Tick-borne encephalitis
https://www.ecdc.europa.eu/en/tick-borne-encephalitis -
国立感染症研究所「ダニ媒介脳炎とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/tbe.html -
外務省「海外安全情報 ハンガリー」
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_134.html
監修: 薬剤師(博士(薬学))