ハンガリーで病院・薬局を使うには|救急112・MentőkとGyógyszertárの使い方を薬剤師が解説

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ハンガリーの医療制度と薬局システムの基礎知識

ハンガリーは中欧の医療先進国であり、ブダペストを中心に西欧レベルの医療サービスが整備されています。ただし、日本とは異なる医療制度のため、事前理解が不可欠です。

ハンガリーの医療制度概要

ハンガリーは国民皆保険制度(Egészségbiztosítási Alap:EBF)を採用しており、欧州経済領域(EEA)加盟国の国民には一定の医療サービスが保障されます。ただし、日本国籍者は対象外となり、私的な医療施設の利用が原則です。

公的医療機関では「家庭医(Háziorvos)」が一次医療の窓口となり、専門科への紹介状(Beutaló)を発行する仕組みが採られています。外国人が緊急時以外にこの体制に組み込まれることは現実的ではなく、英語対応が可能な私立クリニックや国際医療センターの利用が実質的な選択肢となります。

EU加盟国として、欧州健康保険カード(EHIC)を持つEEA市民は公立医療機関での緊急治療が保障されますが、日本人にはこのカードは発行されません。日本人はすべての医療費を自己負担(旅行保険で補填)することを前提に行動する必要があります。

ハンガリーの医療費は西欧諸国と比べてやや低めですが、日本の国内医療費と比較すると高額になる傾向があります。ブダペストの私立クリニックでの初診料は目安として6,000〜15,000フォリント(約2,400〜6,000円、レート次第)程度が多く、専門科受診や検査が加わると大幅に増加します。

薬剤師メモ:ハンガリーの公的医療機関(Állami intézmények)は主に国民向けで、外国人は私立クリニックや国際医療センターの利用が推奨されます。言語対応の充実度も異なるため、事前に「English-speaking」対応を確認することが重要です。特にブダペスト以外では英語対応が著しく限定されるため、翻訳アプリ(Google翻訳のハンガリー語対応)を活用する準備もしておきましょう。

ハンガリーの医療用語と院内表示の基礎知識

受診時や薬局利用時に目にする可能性が高いハンガリー語の医療用語を以下に示します。スタッフへの最低限のコミュニケーションに活用してください。

ハンガリー語 日本語の意味 読み方(目安)
Gyógyszertár 薬局 ジョージセルタール
Orvos 医師 オルヴォシュ
Kórház 病院 コールハーズ
Rendelő 診療所・クリニック レンデルー
Mentők 救急隊・救急車 メントーク
Vészhelyzet 緊急事態 ヴェースヘイゼット
Recept 処方箋 レツェプト
Vény nélküli 処方箋不要(OTC) ヴェーニ ネルキュリ
Allergia アレルギー アッレルジア
Fájdalom 痛み ファイダロム

ハンガリーの薬局(Gyógyszertár)について

薬局は街中に多く存在し、白い看板に赤い文字で「Gyógyszertár」と表示されています。または緑の十字マーク(欧州共通の薬局シンボル)が目印となっています。営業時間は通常8:00〜19:00(月〜金)、土曜は8:00〜13:00程度ですが、ブダペスト市中心部には24時間営業の薬局もあります。

ハンガリーの薬局では、日本と同様に薬剤師(Gyógyszerész)が常駐しており、医薬品の販売と服薬指導を担っています。OTC医薬品(処方箋不要薬)は薬局カウンターで直接販売されており、スタッフへの症状説明で購入が可能です。一方で、日本のドラッグストアのようにセルフ棚陳列型の販売はほとんどなく、すべてカウンター越しの対面販売が基本です。

項目 詳細
営業時間 平日8:00〜19:00、土8:00〜13:00(目安)
処方箋要否 医師処方箋必須(多くの医薬品)
支払い方法 現金・クレジットカード(主要カードOK)
言語対応 英語対応の薬局は限定的(ブダペスト市内は比較的対応あり)
24時間薬局 ブダペスト市内に複数あり
販売形態 原則カウンター越し対面販売
薬剤師常駐 法令上、薬剤師常駐が義務

体調不良時の対処フロー|薬局受診前後の流れ

軽症(風邪・消化不良)の場合

ステップ1:薬局での相談

ハンガリーでは一部の医薬品が処方箋不要で薬局販売されています。軽い症状の場合、薬局のカウンターで薬剤師(Gyógyszerész)に相談することが有効です。

相談時の英語表現とカタカナ発音:

  • I have a cold.(アイ ハヴ ア コールド)
  • I have a headache.(アイ ハヴ ア ヘッドエイク)
  • I have diarrhea.(アイ ハヴ ア ダイアリーア)
  • I have a fever.(アイ ハヴ ア フィーヴァー)
  • Can you recommend an over-the-counter medicine?(キャン ユー レコメンド アン オーヴァー ザ カウンター メディシン?)
  • I am allergic to ___. (アイ アム アレルジック トゥ ___)

薬剤師メモ:ハンガリーの薬局スタッフは医学知識が豊富で、症状説明で適切な医薬品を提案してくれます。ただし薬局での助言は医師診断の代替にはなりません。3日以上症状が続く場合は医療機関受診が必要です。アレルギー歴や現在服用中の薬がある場合は、必ず薬剤師に伝えてください。薬物間の相互作用チェックは薬剤師の職能であり、ハンガリーの薬剤師も対応しています。

ステップ2:薬学的解説つきの一般医薬品ガイド

以下に代表的なOTC医薬品の薬学情報を示します。成分名(一般名)で薬局に申し出ることで、ブランド名が通じない場合でも対応してもらいやすくなります。

症状 有効成分(一般名) 薬局での確認名 主な注意点
頭痛・発熱 パラセタモール(アセトアミノフェン) Paracetamolパラセタモール 1回500〜1000mg、1日最大4g。肝障害者は禁忌
風邪・痛み・炎症 イブプロフェン Ibuprofenイブプロフェン 胃腸障害リスク。食後服用推奨。消化性潰瘍のある方は禁忌
咳・喉の痛み トローチ類(成分は製品による) Pastille / Cough drop 含嗽薬・局所麻酔成分含有品もある
消化不良・胃もたれ 炭酸水素ナトリウム・シメチコン配合品 Antacid(成分を確認) 腎障害者は長期服用不可
下痢 ロペラミド塩酸塩 LoperamideロペラミドImodiumイモジアムなど) 発熱・血便を伴う下痢には使用不可
アレルギー・花粉症 セチリジン塩酸塩 Cetirizineセチリジン 眠気に注意。自動車運転に影響する場合あり
アレルギー・花粉症 ロラタジン Loratadineロラタジン 非鎮静性。飲酒との相互作用少ない
鼻閉(鼻づまり) キシロメタゾリン(点鼻薬) Xylometazoline(nasal spray) 連続使用は3〜5日まで。反跳性鼻閉リスクあり

薬学解説:イブプロフェンとパラセタモールの使い分け

イブプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類され、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害することでプロスタグランジンの産生を抑制し、解熱・鎮痛・抗炎症作用を発揮します。胃粘膜保護に関わるプロスタグランジンも減少させるため、消化器症状(胃痛・悪心)が副作用として現れやすく、必ず食後に服用することが推奨されます。

一方、パラセタモール(アセトアミノフェン)は中枢神経系に作用して解熱・鎮痛効果をもたらしますが、末梢での抗炎症作用はほとんどありません。胃腸への直接的な刺激が少なく空腹時服用も可能ですが、過剰摂取では重篤な肝障害(劇症肝炎)を引き起こすリスクがあります。1日4gを超える使用や、アルコール多飲者への使用は特に注意が必要です。旅行中のストレスや食事の乱れがある場合、症状に応じた薬剤選択を意識してください。

薬学解説:ロペラミドの作用機序と注意点

ロペラミドは腸管のμ(ミュー)オピオイド受容体に結合し、腸管蠕動を抑制することで下痢を緩和します。血液脳関門をほとんど通過しないため中枢性副作用は少ないものの、感染性下痢(発熱・血便・粘血便を伴う場合)への使用は禁忌です。病原体を体内に留める可能性があるためです。旅行者下痢症(主に食品・水由来の細菌感染)では症状が強い場合の一時的な緩和に限定し、半日〜1日続く高熱を伴う場合は医師受診が必須です。

中等症(発熱が続く・食事できない)の場合

医師診察が必要です。ハンガリーの医療機関は大きく2つに分類されます。

施設タイプ 特徴 受診手続き
国際医療センター(Private clinics) 英語対応・国際基準の設備・高品質 直接予約または電話
公立病院の国際窓口 低コスト・混雑する傾向 紹介状や予約が必要な場合あり
緊急外来(Sürgősségi osztály) 24時間対応・重症者優先 直接来院可

受診の目安として、「38.5℃以上の発熱が24時間以上続く」「嘔吐や下痢で水分が取れない」「胸痛・呼吸困難を感じる」「意識の変化がある」場合は自己判断せず医療機関を受診してください。


ハンガリー主要都市の医療機関の探し方と受診手順

ブダペストの主要国際医療センター

FirstMed Centers Budapest

  • 住所:Nap utca 1., Budapest 1072
  • 対応言語:英語・フランス語・その他
  • 診療科目:内科・皮膚科・歯科・産婦人科・小児科など
  • 予約方法:電話 +36-1-799-0290 または公式サイトから予約

Medicover

  • 複数の拠点がブダペスト・地方都市に存在
  • 英語対応・入院施設有り
  • プライマリケア中心で、在住日本人コミュニティからの評判も高い

PrivaKlínika

  • ブダペスト市内複数拠点
  • 夜間・土日の受診可能
  • 一部拠点では24時間対応

薬剤師メモ:ブダペスト以外の地方都市(デブレツェン・セゲド・ペーチなど)では英語対応の医療機関が著しく限定的です。旅行前に滞在先周辺の医療機関を事前リサーチすることを強く勧めます。地方の公立病院では通訳なしの受診が困難なケースが多く、旅行保険の24時間サポートデスクが翻訳サービスを提供している場合はそれを活用しましょう。

医療機関受診時の準備物

  • 旅行保険証券(契約番号・24時間連絡先電話番号を控える)
  • パスポート(身分証として必須)
  • 常用薬の英語名リスト(ジェネリック名(一般名)と1日用量・用法を記載
  • アレルギー歴を記載したメモ(英語)
  • クレジットカード(自費診療の場合)

受診時の英語フレーズ

  • I need to see a doctor.(アイ ニード トゥ スィー ア ドクター)
  • I have travel insurance.(アイ ハヴ トラヴェル インシュアランス)
  • I am allergic to penicillin.(アイ アム アレルジック トゥ ペニシリン)
  • I take medication for ___.(アイ テイク メディケーション フォー ___)
  • Please write a detailed receipt in English including medication names and doses.(プリーズ ライト ア ディテイルド リシート イン イングリッシュ インクルーディング メディケーション ネームズ アンド ドーゼズ)

処方箋(Recept)の取り扱いと薬局での利用

医師が処方箋(Recept)を発行した場合、薬局(Gyógyszertár)でそのまま提示して調剤を受けられます。ハンガリーの処方箋は原則ハンガリー語表記ですが、薬局の薬剤師は成分名(国際名)で理解するため、処方箋があれば言語の問題はほとんど生じません。

注意点として、ハンガリーで処方された薬は日本への持ち帰りに制限がある場合があります。特に向精神薬・麻薬系鎮痛薬(オピオイド)は日本の「麻薬及び向精神薬取締法」の管理下にあり、輸入手続きが必要です。帰国前に在ハンガリー日本大使館または厚生労働省に確認してください。


緊急時の対応|119相当サービスと救急車

ハンガリーの緊急連絡先

状況 連絡先 対応内容
医療上の緊急(救急車) 104 医療緊急・救急車手配(Mentők)
一般的な緊急事態 112(EU統一番号) 警察・消防・医療の総合調整
警察 107 犯罪・事故対応
消防 105 火災・救助
中毒・医薬品相談 +36-1-476-6464(目安) 中毒情報センター(Mérgezési Információs Központ)

薬剤師注意:中毒情報センターの電話番号は変更の可能性があります。渡航前に在ハンガリー日本大使館のウェブサイトで最新番号を確認してください。

ハンガリーの救急医療(Mentők)は緊急処置・搬送は原則無料ですが、その後の診断・治療・入院は有料となります。外国人も緊急搬送を拒否されることはなく、生命に関わる緊急事態であれば即座に対応を受けられます。

薬剤師メモ:「107」は警察、「105」は消防、医療系の緊急は104が最優先です。112はEU統一番号でいずれにも接続可能ですが、医療緊急であることを明確に伝えてください。英語での対応が100%保証されないため、可能なら在ハンガリー日本大使館の緊急連絡先(+36-1-398-8297)に連絡して言語サポートを求めることをお勧めします。

救急搬送時に備えるMedicAlert情報の準備

意識を失った状態や重篤な状態で搬送される可能性に備え、以下の情報を英語・ハンガリー語両方でカードや携帯端末のロック画面に設定しておくことを推奨します。

  • 氏名・生年月日・血液型(目安として。緊急輸血時は改めて型検査を行う)
  • 既往症(例:糖尿病 / Cukorbetegség、高血圧 / Magas vérnyomás、心疾患 / Szívbetegség)
  • アレルギー(例:ペニシリンアレルギー / Penicillin allergia)
  • 常用薬名と用量(一般名で記載)
  • 緊急連絡先(日本の家族・宿泊ホテル・旅行保険会社)

スマートフォンのiOSでは「メディカルID」機能、Androidでは緊急情報機能を活用することで、ロック画面から医療情報を参照できます。


旅行保険の医療サービス活用マニュアル

旅行保険の医療サービス内容確認

渡航前に以下を確認してください:

確認項目 詳細
医療費の補償額上限 通常100〜300万円(目安)。補償額の低い保険は要注意
医療機関の提携ネットワーク ハンガリー内の提携医療機関リスト確認
24時間サポートセンター 電話番号・日本語対応可否
キャッシュレス診療対応 事前承認で患者自己負担なしで診療できるか
日本への移送費(メディカルエバキュエーション) 重症時の帰国費用補償の有無
持病・既往症の取り扱い 旅行前から存在する疾患の補償制限
薬局での購入費用 処方薬・OTC医薬品の補償範囲

実際の受診手続き(キャッシュレス)

パターン1:提携医療機関での受診

  1. 保険証券に記載の24時間サポート番号に電話
  2. I am a policyholder and need medical care.(アイ アム ア ポリシーホルダー アンド ニード メディカル ケア) と伝える
  3. 保険会社指定の提携医療機関を紹介される
  4. その医療機関に直接予約(保険会社が仲介する場合あり)
  5. 医療機関に保険証券番号を提示
  6. 保険会社に直請求(患者負担なし)

パターン2:自由選択医療機関での受診

  1. 自分で医療機関を選定し診察・治療を受ける
  2. 領収書(Receipt / Számla)をすべて保管
  3. 明細書(診断名・治療内容・医薬品名・用量)を取得
  4. 帰国後、保険会社に書類一式を提出
  5. 保険会社審査後、指定口座に振込

薬剤師メモ:ハンガリーの医療機関は英語の診断書作成に応じます。帰国後の保険請求を考えると、 Please write a detailed receipt in English including medication names and doses.(プリーズ ライト ア ディテイルド リシート イン イングリッシュ インクルーディング メディケーション ネームズ アンド ドーゼズ) と明確に依頼することが重要です。ハンガリー語のみの領収書は日本の保険会社が内容を判断できないことがあります。薬局で処方薬を購入した際も、成分名・規格・数量の記載された領収書を必ず受け取ってください。

旅行保険請求時の必要書類

  • 保険証券のコピー
  • 医療機関の領収書(原本)
  • 診断書(英語・ハンガリー語+医師署名・医療機関スタンプ)
  • 医療費の明細(処方薬・検査費用を含む)
  • 治療内容の説明文(Discharge Summary等)
  • パスポートのコピー
  • 薬局の領収書(処方薬購入分)

請求期限は通常帰国後3年以内ですが、保険会社によって異なります。旅行から帰国後はできるだけ速やかに請求することを推奨します。書類の整備が不十分な場合、審査が長期化したり補償が認められないケースがあります。


ハンガリー渡航時に日本から持参すべき医薬品

常用薬がある場合

処方薬は個人使用分に限り、一定量の携帯が認められます(目安として数週間〜1カ月分程度;実際の上限は薬剤の種類や入国先の規制によって異なるため、事前確認が必要です)。以下のルールを守ってください:

  • 当該人物の処方箋・医師指示書を英訳して携帯
  • ジェネリック名(一般名)と1回用量・1日服用回数を明記した医薬品リストを用意
  • 元の処方箋用紙か医師からの英文書類(医師レターヘッド付き)を常携
  • 薬は元の容器(ラベル付き)のまま持参することが望ましい

薬剤師メモ:向精神薬(睡眠薬・精神安定剤・抗不安薬)、麻薬系鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)、一部の気管支拡張薬(β₂刺激薬含有吸入薬)などは、入国時に申告が必要な場合があります。ハンガリーを含む多くの国では国際的な麻薬規制条約(ウィーン条約)に基づく規制が適用されており、医師の証明書類なしでの携帯が問題となる可能性があります。詳細は渡航予定日の2〜4週間前に在ハンガリー日本大使館と厚生労働省医薬・生活衛生局に確認してください。

薬学的解説つきの持参推奨OTC医薬品

用途 有効成分(一般名) 備考・薬学的注意点
風邪・発熱・痛み イブプロフェン、アセトアミノフェン配合薬 ハンガリーでも類似成分品が購入可能。ただし日本の複合感冒薬の配合は独自のため、慣れた製品を持参するメリットあり
胃腸症状(整腸) ビフィズス菌・乳酸菌配合整腸薬 旅行中の腸内環境変化に対応。ハンガリーでは同等品の入手が難しい場合あり
下痢止め ロペラミド塩酸塩 前述のとおり発熱・血便時は使用不可。感染性下痢との鑑別が重要
便秘薬 ビサコジル、センノシド配合薬 旅行中の生活リズム変化・食事内容変化による便秘対策
乗り物酔い ジフェンヒドラミン、スコポラミン配合薬 眠気の副作用あり。長距離バス・電車移動の多い旅行に有用
胸焼け・胃酸過多 H₂受容体拮抗薬(ファモチジン等)、炭酸水素ナトリウム系制酸薬 ハンガリー料理は脂肪分・スパイスが多く、消化器症状が起きやすい
アレルギー(花粉・ほこり) セチリジン塩酸塩、ロラタジン 春季の花粉(特にポプラ綿毛)に備える
目の乾燥・かゆみ 人工涙液(ヒアルロン酸ナトリウム点眼液等) 機内乾燥・花粉対策。開封後の使い切り期限に注意
虫刺され・かぶれ ジフェンヒドラミン・リドカイン配合外用薬 夏季は蚊・アブが多い地域あり
小さな傷の応急処置 抗菌外用薬(バシトラシン、ムピロシン等) + 絆創膏 日本製品のほうが使い慣れている場合が多い

重要:上記は「予備」と位置づけてください。ハンガリーの薬局でも同等成分の医薬品は購入可能です。ただし、日本特有の複合薬(複数成分配合の感冒薬など)は現地で完全に同じ製品を購入することは困難なため、愛用品がある場合は持参することを推奨します。

持参薬リスト(英文)の作成方法

薬剤師または主治医に依頼し、以下の情報を英語で記載したリストを作成してください。

Medication List (English)
1. Medication name (Generic): [一般名]
   Brand name (Japan): [日本での商品名]
   Dose: [1回用量, 例: 500mg]
   Frequency: [用法, 例: twice daily after meals]
   Indication: [使用目的, 例: hypertension / migraine]
2. ...

このリストはハンガリーの医師・薬剤師との情報共有、税関での申告書類、旅行保険請求時の補足書類としても役立ちます。


ハンガリー特有の医療リスクと対策

季節性の医療リスク

冬季(11月〜3月)

  • インフルエンザ(influenza)が流行。日本出発前にインフルエンザワクチンを接種することを推奨します。インフルエンザウイルスは飛沫感染が主経路であり、公共交通機関の密閉空間では特にリスクが高まります。
  • 室内の暖房による乾燥で、鼻粘膜・気道粘膜が乾燥しやすく感染防御機能が低下します。加湿と十分な水分摂取が予防に有効です。

春季(4月〜5月)

  • 花粉症・アレルギー性鼻炎が多発。特にポプラの綿毛(5月頃)は大量に飛散し、アレルギー症状を引き起こしやすいです。
  • 抗ヒスタミン薬(セチリジン塩酸塩、ロラタジンなど)を携帯することを推奨します。第二世代抗ヒスタミン薬は第一世代(ジフェンヒドラミンなど)と比べて鎮静作用が少なく、日中の活動への影響が小さい点で優れています。

夏季(6月〜8月)

  • 熱中症・脱水リスク。ブダペストの夏は気温35℃以上になることがあります。
  • 経口補水塩(ORS:Oral Rehydration Solution)またはスポーツ飲料を活用し、こまめな水分・電解質補給を心がけてください。薬局でも経口補水塩製品を購入できます。

食事由来のリスクと薬学的対策

ハンガリー料理は豚肉・牛肉の脂肪分が多く、パプリカ・サワークリームを多用した濃厚な料理が多いのが特徴です。日本人の消化器系に負担がかかる場合があります。

  • 消化不良・胃もたれ:消化酵素配合薬(リパーゼ・アミラーゼ・プロテアーゼ含有)が有効。脂肪分の多い食事では特に消化酵素の補助が効果的です。
  • 過剰なカフェイン摂取:ハンガリーのエスプレッソは濃度が高く、カフェイン含有量が多い傾向があります。頭痛・動悸・不眠を感じたら摂取を控えてください。カフェインは肝臓CYP1A2酵素で代謝されるため、一部の薬剤(テオフィリン、シプロフロキサシン等)との相互作用に注意が必要です。

薬剤師メモ:ハンガリーの水道水は石灰質(硬水)が多く含まれており、水道水に慣れない旅行者が一時的な下痢・軟便を経験することがあります(適応性下痢)。渡航初日から2〜3日はミネラルウォーター(Ásványvíz)の購入を推奨します。軟水系の製品を選ぶか、普段から硬水を飲まない方はまず少量から慣らすことも方法のひとつです。

旅行者下痢症(Travelers' Diarrhea)への対処

旅行者下痢症は最も一般的な旅行関連感染症のひとつで、細菌(主に腸管毒素原性大腸菌:ETEC)、ウイルス(ノロウイルス等)、原虫(ジアルジア等)が原因となります。ハンガリーのリスクは西欧諸国と同程度ですが、屋台や衛生管理の不十分な飲食店では注意が必要です。

対処の原則(薬学的観点)

  1. 水分・電解質補給を最優先:経口補水療法(ORT)が基本。成人で1日最低1.5〜2L(症状に応じてさらに多く)を目安に摂取
  2. ロペラミドは蠕動抑制のみ:感染源の排出を遅らせる可能性があるため、発熱や血便がない軽〜中等症の場合のみ使用を検討
  3. 抗菌薬の自己投与は禁止:医師の診断なしに抗菌薬を服用することは耐性菌増加の観点から推奨されません
  4. 症状が48時間以上改善しない・発熱を伴う場合は医療機関受診

日本大使館の医療サポート体制

在ハンガリー日本大使館の緊急連絡先

  • 住所:Budapest, Szabadság tér 12., 1054 Hungary
  • 一般電話:+36-1-398-8200
  • 緊急時専用(24時間:+36-1-398-8297
  • ウェブサイト:外務省の在ハンガリー日本国大使館ページで最新情報を確認

医療機関の紹介、言語支援、家族への連絡サポートを提供します。日本語でのコミュニケーションが可能であり、緊急入院・重篤な状態のご家族への連絡調整も行ってくれます。

在外公館への相談と「感染症危険情報」の確認

外務省「海外安全情報」では、ハンガリーを含む各国の医療・感染症情報が公開されています。渡航前に「たびレジ」(外務省の海外旅行者登録システム)への登録を行うことで、現地での緊急情報や最新の医療情報を受け取ることができます。

登録は無料で、スマートフォンからも行えます。緊急時に大使館側が日本人旅行者の所在を把握するためにも有効です。

日本語医療通訳サービスの活用

一部の旅行保険(クレジットカード付帯のものを含む)では、24時間日本語対応の医療通訳サービスが付帯しています。電話で保険会社に接続し、医療機関のスタッフと三者通話で通訳してもらえるサービスです。英語が不安な方は、渡航前に保険契約の特約内容を必ず確認してください。


まとめ

  • 軽症は薬局で相談可。ハンガリーの薬剤師は知識豊富で、英語での症状説明に対応。成分名(一般名)で薬を申し出ると通じやすい
  • 中等症以上は国際医療センター(FirstMedまたはMedicover等)を直接受診。ブダペスト市内は英語対応が比較的良好
  • 旅行保険は必須。ハンガリーでの医療費は自費全額負担となり、高額になる場合が多い。キャッシュレス対応医療機関を事前確認
  • 緊急時は104(医療救急)または112(EU統一番号)。言語対応が不十分な場合は在ハンガリー日本大使館(+36-1-398-8297)に連絡
  • 処方箋の必要性を確認。ハンガリーでは日本と異なり、多くの医薬品が処方箋必須(Recepty)
  • 領収書は英語記載を明確に依頼。成分名・用量・医療機関スタンプが必須。帰国後の保険請求に直結する
  • 常用薬は英文書類と共に携帯。向精神薬・オピオイド系薬は特に事前確認が必要
  • 薬学的な持参薬選択:ロペラミド(下痢)・アセトアミノフェンまたはイブプロフェン(解熱鎮痛)・抗ヒスタミン薬(アレルギー)・整腸薬の4種は特に有用
  • ハンガリー料理は脂肪分・スパイスが多い。消化酵素配合薬・制酸薬の携帯推奨
  • 硬水による消化器症状を避けるため、渡航初日からミネラルウォーターを使用
  • 「たびレジ」登録と旅行保険の24時間サポート番号の事前確認を渡航準備の必須事項とする
  • 最新情報は在ハンガリー日本大使館・外務省海外安全情報で確認してください

参考文献

  1. 厚生労働省「医薬品の個人輸入について」
    https://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0301-3.html

  2. 外務省「海外安全情報 ハンガリー」(たびレジ・感染症危険情報)
    https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_135.html

  3. WHO「International Travel and Health – Hungary」
    https://www.who.int/ith/en/

  4. CDC「Travelers' Health – Europe」
    https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/hungary

  5. PMDA(医薬品医療機器総合機構)「海外渡航時の医薬品取り扱いに関する情報」
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html

  6. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC)「Seasonal Influenza」
    https://www.ecdc.europa.eu/en/seasonal-influenza

  7. 外務省在ハンガリー日本国大使館「緊急連絡先」
    https://www.hu.emb-japan.go.jp/itpr_ja/emergency.html


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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