カナダ渡航前の予防接種完全ガイド:必須ワクチンと接種スケジュール
カナダは先進国で医療水準も高いため、予防接種の必須要件は比較的少ないのが特徴です。しかし、滞在期間や地域、年齢によって推奨される予防接種は異なります。本記事では、薬剤師の視点から渡航前に準備すべきワクチンと、実践的な接種スケジュール、費用の目安をお伝えします。
カナダはその広大な国土から気候帯・環境が多様であり、大都市圏への短期観光とロッキー山脈での野外活動、あるいはトロント大学やUBC(ブリティッシュコロンビア大学)への留学では、感染リスクのプロファイルが大きく異なります。渡航目的・滞在先・滞在期間の3軸を整理したうえでワクチン計画を立てることが、薬学的にも合理的なアプローチです。
カナダへの主要な関連情報として、海外旅行保険や現地での医薬品入手については [[travel-insurance-guide]] および [[overseas-medicine-guide]] も併せてご参照ください。また、北米圏での感染症全般の概要は [[north-america-infectious-disease]] でまとめています。
カナダ渡航時に必須・推奨される予防接種一覧
必須接種ワクチン
カナダへの入国に法的に義務付けられているワクチンはありません。ただし、以下のワクチンは「渡航前に確認」が強く推奨されます。
| ワクチン名 | 対象者 | 推奨度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 麻疹・風疹・おたふく風邪(MMR) | 全年齢 | ★★★★★ | 1970年以降生まれで2回接種が標準 |
| 新型コロナウイルス(COVID-19) | 全年齢 | ★★★★★ | 搭乗時の要件は国による。最新情報を確認 |
| インフルエンザ | 全年齢 | ★★★★ | 9月〜11月の接種推奨(カナダは北半球) |
| 破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap) | 全年齢 | ★★★★ | 10年ごと、または最後の接種から10年以内に確認 |
薬剤師メモ カナダ政府(Public Health Agency of Canada)の最新情報では、2026年現在、COVID-19ワクチンの接種証明提示の要件は廃止されている地域がほとんどです。ただし搭乗する航空会社や経由地の国によっては要件がある場合があります。必ず出発の4週間前に確認してください。
「確認」が必要な理由:日本の免疫ギャップ
「確認が強く推奨」という表現には重要な意味があります。日本では過去のワクチン定期接種プログラムの変遷により、1979年〜1987年生まれの世代はMMRワクチンを1回しか接種していない可能性があります。また、1990年代以前生まれの成人では、麻疹に対する免疫が不十分なケースが報告されています。カナダを含む北米では麻疹の輸入例が散発的に報告されており、日本人渡航者が感染源となった事例も過去に指摘されています。
抗体価の確認方法としては、かかりつけ医または旅行外来で「麻疹IgG抗体価(EIA法またはPA法)」の血液検査を受けることができます。陰性または低値であれば接種を検討します。費用は医療機関により異なりますが、1項目あたり2,000〜5,000円程度(保険適用外の場合)が目安です。
環境・活動に応じた推奨接種
| ワクチン名 | 対象者 | 接種時期の目安 |
|---|---|---|
| A型肝炎 | 農村部滞在、野営活動予定 | 出発2週間前 |
| B型肝炎 | 長期滞在(6ヶ月以上)、医療従事者 | 出発6ヶ月前がベスト |
| 髄膜炎菌 | 学生寮での生活予定 | 出発2週間前 |
| 水痘(水ぼうそう) | 過去に未感染・未接種の場合 | 出発4週間前 |
| 百日咳 | Tdapの最終接種から10年経過 | 出発4週間前 |
薬剤師メモ カナダの農村部や先住民族コミュニティではライム病のリスクがあります(ダニ媒介)。森林活動予定の場合は虫よけ(DEET 20〜30%配合)の携帯も検討してください。予防接種ではなく、物理的防御が優先です。
活動別リスクマトリクス
| 渡航タイプ | 特に注意すべき疾患 | 対策優先度 |
|---|---|---|
| 都市圏短期観光(バンクーバー・トロント等) | 麻疹、インフルエンザ、COVID-19 | MMR確認・Tdap更新 |
| 農村部・キャンプ・ハイキング | ライム病、A型肝炎、レプトスピラ症 | 物理的防御+A型肝炎 |
| 大学・学生寮生活 | 髄膜炎菌感染症、百日咳 | 髄膜炎菌ワクチン追加 |
| 長期滞在(ワーキングホリデー等) | B型肝炎、結核(TB)スクリーニング | B型肝炎フルシリーズ |
| 医療・介護系ボランティア | 上記すべて+B型肝炎優先 | 渡航6ヶ月前から計画 |
各ワクチンの薬学的解説:機序・免疫応答・接種間隔の根拠
渡航ワクチンを「なんとなく接種する」のではなく、その薬学的背景を理解することで、副作用への不安を軽減し、適切なスケジュール管理が可能になります。
MMRワクチン(麻疹・風疹・流行性耳下腺炎混合)
MMRワクチンは生ワクチンに分類されます。弱毒化した生きたウイルスを接種することで、自然感染に近い免疫応答(細胞性免疫+液性免疫)を誘導します。
作用機序: 弱毒化ウイルスが体内で限定的に増殖し、抗原提示細胞(樹状細胞)に取り込まれてT細胞・B細胞を活性化。中和抗体(IgG)の産生とメモリーB細胞・T細胞の形成により、長期間の免疫記憶が成立します。
接種回数と間隔: 1回目接種後の抗体獲得率は約95%。2回目接種(通常1〜3ヶ月後以上の間隔)により、1回目で免疫獲得できなかった5%に対してもフォローアップが可能となり、集団全体での免疫獲得率が99%以上に達します。
生ワクチン特有の注意点:
- 妊娠中は禁忌。接種後少なくとも1ヶ月(国際的には28日以上)の避妊が推奨されます。
- 免疫抑制状態(ステロイド大量療法、抗がん剤治療中、HIV感染者でCD4数が低い場合)は原則禁忌。主治医への相談が必須です。
- 他の生ワクチン(水痘ワクチン、経口腸チフスワクチン等)と同時接種が原則。間隔をあける場合は最低28日の間隔が必要です。
- 血液製剤(免疫グロブリン製剤)を投与した後は、製剤の種類により3〜11ヶ月の間隔をあけてから接種します。
Tdap(破傷風・ジフテリア・百日咳混合)ワクチン
Tdapは不活化ワクチンです。3種の抗原(破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、百日咳抗原)を組み合わせた複合ワクチンで、生ワクチンの禁忌(妊娠中、免疫抑制状態)に関わらず幅広い対象者に接種できます。
破傷風トキソイドの免疫維持: 破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する神経毒素(テタノスパスミン)を無毒化した成分で免疫を誘導します。初回シリーズ完了後の免疫持続期間は約10年とされており、これが「10年ごとの更新」推奨の根拠です。外傷のリスクがある野外活動(キャンプ、ハイキング等)を予定している場合は、最終接種から5年以上経過していれば更新を検討します。
百日咳(Bordetella pertussis)成分について: 百日咳は成人では「長引く咳」として軽症化することが多く、気づかずに乳幼児に感染させるリスクがあります。Tdapに含まれる百日咳成分は**無細胞型百日咳抗原(acellular pertussis)**であり、かつての全菌体型に比べて副反応が軽減されています。日本では「三種混合ワクチン(DTP)」「四種混合ワクチン(DPT-IPV)」の小児期接種後、成人でのブースター接種機会が少ないため、渡航前に確認する意義は高いです。
A型肝炎ワクチン
A型肝炎ウイルス(HAV)は**経口感染(糞口感染)**するRNAウイルスです。カナダは衛生水準が高い国ですが、農村部の井戸水・アウトドア活動でのリスクはゼロではなく、また北米でも近年ホームレスコミュニティでのA型肝炎アウトブレイクが複数報告されています。
ワクチンの免疫原性: 不活化ワクチンで、1回接種後2〜4週で防御抗体(抗HAV IgG)が産生されます。ただし長期間の防御には2回接種(初回接種から6〜12ヶ月後)が必要です。2回シリーズ完了後の免疫持続期間は20年以上とも言われ、実質的に生涯免疫に近い可能性が示唆されています。
B型肝炎ワクチン
B型肝炎ウイルス(HBV)は血液・性感染で伝播するDNAウイルスです。長期滞在者、医療系ボランティア、現地でのスポーツ活動(外傷リスク)がある場合は特に重要です。
接種スケジュールの根拠: 標準スケジュール(0・1・6ヶ月)は、B細胞の一次・二次免疫応答の時間的特性に基づいています。1回目と2回目(1ヶ月後)で初回の抗体産生を誘導し、3回目(6ヶ月後)で記憶B細胞を強力にブーストすることで、高い抗体価(anti-HBs ≥10 mIU/mL)の長期維持が期待できます。時間的余裕がない場合には**加速スケジュール(0・1・2ヶ月+12ヶ月にブースター)**も選択肢の一つですが、医師との相談が必要です。
髄膜炎菌ワクチン
**Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)**は、細菌性髄膜炎の主要原因菌の一つで、特に学生寮のような密集環境での飛沫感染リスクが高いことが知られています。カナダの多くの大学では、学生寮入居の条件としてMCV4(四価髄膜炎菌結合型ワクチン、血清群A・C・W・Y対応)の接種を求めているケースがあります。
免疫原性の年齢依存性: 結合型ワクチン(conjugate vaccine)は多糖体抗原をタンパク質キャリアに結合させることで、T細胞依存性の免疫応答を誘導します。これにより2歳未満の乳幼児でも免疫応答が得られ、かつ記憶免疫が成立します。従来の多糖体ワクチン(polysaccharide vaccine)では誘導できなかった免疫記憶が形成される点が薬学的に重要な進歩です。
実践的な接種スケジュール例
パターン1:短期観光(1〜2週間)
【出発6ヶ月前】
- 予防接種外来を受診
- 麻疹・風疹・おたふく風邪(MMR)の確認
- Tdap(破傷風・ジフテリア・百日咳)の確認
【出発4週間前】
- インフルエンザワクチン接種
- 必要に応じてA型肝炎接種1回目
【出発1週間前】
- 黄熱病リスク国経由の場合は確認
- 接種証明書のコピーを用意
短期観光の最小限チェックリスト:
- MMRの接種歴(2回)または抗体価確認 → 不足なら接種
- Tdapの最終接種年を確認 → 10年以上経過なら更新
- 渡航シーズンがインフルエンザ流行期(10月〜4月)であれば接種
- 現地での緊急連絡先(在カナダ日本大使館・領事館)をメモ
パターン2:長期滞在・留学(6ヶ月以上)
【出発6ヶ月前】
- 予防接種外来を受診
- MMR、Tdap確認
- B型肝炎初回接種(0ヶ月)
【出発4ヶ月前】
- B型肝炎2回目接種
- A型肝炎初回接種
【出発2ヶ月前】
- A型肝炎2回目接種
- B型肝炎3回目接種
【出発1ヶ月前】
- インフルエンザワクチン接種
- 接種記録をまとめる
薬剤師メモ B型肝炎ワクチンは「0ヶ月、1ヶ月、6ヶ月」のスケジュールが標準です。6ヶ月までに3回接種が完了しない場合は、渡航後にカナダの医療機関で続行することも可能です。
留学・長期滞在の追加確認事項:
| 確認項目 | タイミング | 備考 |
|---|---|---|
| 大学の入寮要件(髄膜炎菌等)の確認 | 出発6ヶ月前 | 大学のHealth Services HPを確認 |
| 結核(TB)スクリーニング | 出発前 | カナダ入国後に求められる場合あり |
| 水痘抗体確認または接種 | 出発4週間前 | 生ワクチンのため他ワクチンとの間隔に注意 |
| 国際学生保険への加入 | 出発前 | 接種費用カバーを確認 |
パターン3:ワーキングホリデー(農業・アウトドア業務含む)
カナダのワーキングホリデービザで農業・林業・観光業に従事する場合は、長期留学に加えて以下を検討します。
- 狂犬病ワクチン: 野生動物(コウモリ、アライグマ、スカンク等)との接触リスクがある業務の場合。接種前曝露(PrEP)として3回シリーズ(0・7・21〜28日)を渡航前に完了することが推奨されます。北米のコウモリはRabies V virus(狂犬病ウイルス)の主要な野生動物リザーバーです。
- ダニ媒介脳炎(TBE): カナダ東部(オンタリオ州・ケベック州)では分布域が拡大中ですが、現時点でカナダ向けのTBEワクチン接種は日本では積極的には推奨されていません。渡航エリアと活動内容を専門外来に相談してください。
カナダ国内での予防接種追加情報
現地の医療機関での接種
カナダの主要都市(トロント、バンクーバー、モントリオール)では、Travel Clinicや薬局チェーン(Shoppers Drug Mart、Rexall)でワクチン接種が可能です。
- Shoppers Drug Mart Pharmacy: 全国に多数の店舗があり、インフルエンザを中心に各種ワクチンの接種に対応しています。
- 各都市のTravel Clinic: 渡航前後の感染症相談・追加接種が可能。医師または専門ナースが対応します。
- 大学保健センター(University Health Services): 在学生向けに割安または無料の接種サービスを提供していることがあります。入学手続きと同時に確認することを推奨します。
カナダの公的医療とワクチン費用の仕組み
カナダには**州ごとの公的医療保険(Provincial Health Insurance)**があります。日本人の短期滞在者・留学生・ワーキングホリデー参加者は原則として公的保険の対象外となるため、接種費用は全額自己負担となります。
ただし、一部の州(ブリティッシュコロンビア州・オンタリオ州等)では、永住権申請者や特定の就労ビザ保持者に対して公的接種プログラムの適用範囲が異なります。長期滞在を計画している場合は、渡航前に州のHealth Authority(保健局)ウェブサイトで最新の対象条件を確認してください。
予防接種の費用目安
日本国内での接種費用
| ワクチン名 | 1回あたりの費用(税込)目安 | 合計回数 | 総額の目安 |
|---|---|---|---|
| MMR | 9,000〜12,000円 | 2回 | 18,000〜24,000円 |
| Tdap | 7,000〜10,000円 | 1回 | 7,000〜10,000円 |
| インフルエンザ | 2,500〜4,000円 | 1〜2回 | 2,500〜8,000円 |
| A型肝炎 | 8,000〜10,000円 | 2回 | 16,000〜20,000円 |
| B型肝炎 | 6,000〜9,000円 | 3回 | 18,000〜27,000円 |
| 髄膜炎菌(MCV4) | 25,000〜35,000円 | 1回 | 25,000〜35,000円 |
| 狂犬病(PrEP) | 10,000〜15,000円 | 3回 | 30,000〜45,000円 |
| 水痘 | 6,000〜8,000円 | 2回 | 12,000〜16,000円 |
短期観光の最小限セット: 27,500〜46,000円目安(MMR確認、Tdap確認、インフルエンザ)
薬剤師メモ 予防接種外来の初診料は別途2,000〜5,000円程度かかる場合があります。事前に電話確認を。また、一部のワクチンは医師の判断で保険診療対象になることもあります(例:Tdap更新、B型肝炎)。費用は医療機関・地域によって幅があり、上記はあくまで目安です。
カナダ国内での接種費用(目安)
| ワクチン種別 | カナダでの費用目安(CAD) |
|---|---|
| 単回の不活化ワクチン | $15〜30 |
| 複合ワクチン(Tdap等) | $20〜50 |
| 診察・相談料(Travel Clinic) | $30〜80 |
| MMR(2回シリーズ) | $60〜120(合計) |
カナダは私立医療機関での接種は自己負担です。多くの大学は留学生向けに保健サービス(Health Services)を提供しており、キャンパス内で無料または割安の接種が可能な場合があります。
薬物相互作用・免疫抑制薬使用者への注意事項
定期内服薬とワクチン接種の相互作用
渡航前に定期的に薬を服用している場合、ワクチンの効果や安全性に影響する可能性があります。必ず接種医に申告してください。
| 内服薬カテゴリー | 生ワクチンへの影響 | 不活化ワクチンへの影響 |
|---|---|---|
| 経口ステロイド(プレドニゾロン等) | 高用量・長期使用で禁忌。低用量(7.5mg/日未満)では接種可の場合あり | 免疫応答が低下する可能性あり |
| 生物学的製剤(TNF阻害薬等) | 原則禁忌(感染リスク) | 抗体産生が低下する可能性あり |
| メトトレキサート | 禁忌 | 免疫応答低下の可能性 |
| 抗マラリア薬(クロロキン等) | 経口チフスワクチン(生)との相互作用あり | 特筆すべき影響なし |
| 抗凝固薬(ワルファリン等) | 接種自体は可。INR確認後に細針(25G以下)で筋注、圧迫を十分に | 同左 |
薬剤師メモ 免疫抑制薬を服用している方は「接種前に薬を中止すればよいか」という疑問を持たれることがあります。これは原疾患の管理と密接に関係するため、主治医(処方医)と接種医の双方に相談したうえで判断してください。薬剤師は薬の相互作用情報の整理をサポートできますが、最終的な接種可否の判断は医師が行います。
アレルギー歴がある方へ
卵アレルギー: インフルエンザワクチンの一部は有精卵を使用した製法のため、重篤な卵アレルギー(アナフィラキシー既往)のある方は接種前に医師へ申告が必要です。現在は卵不使用の製法(細胞培養型・組換えタンパク型)のインフルエンザワクチンも存在しますが、日本での供給状況は年度により異なります。軽度の卵アレルギー(蕁麻疹のみ等)であれば、接種後30分の経過観察のもとで接種可能とされるケースが多いです。
ゼラチンアレルギー: MMRワクチンや水痘ワクチンにはゼラチンが安定剤として含まれる場合があります。ゼラチンアレルギーのある方は接種前に担当医に確認してください。
ネオマイシン(抗生物質)アレルギー: 一部のワクチン(MMR、水痘等)は製造過程でネオマイシンが使用されており、微量が含まれます。ネオマイシンによる接触皮膚炎の既往がある場合は申告してください。アナフィラキシーの既往がある場合は禁忌となります。
予防接種前後の注意点
接種前に確認すべき事項
- 既往歴: 卵アレルギー、鶏肉アレルギーがある場合は医師に報告(一部ワクチンは卵由来)
- 薬物アレルギー: 抗生物質アレルギーがある場合は医師に報告
- 妊娠予定: 生ワクチン(MMR・水痘)は接種後少なくとも1ヶ月(目安)の避妊が必要。妊娠中は禁忌
- 免疫抑制状態: HIV、がん治療中の場合は医師の指示を厳密に守る
- 海外渡航歴・過去の接種記録: 母子手帳・接種記録を持参し、医師・薬剤師に提示
接種後の副反応への対応
| 副反応 | 対応方法 |
|---|---|
| 局所反応(腫脹・発赤・痛み) | 冷湿布、アセトアミノフェン配合の解熱鎮痛薬(用法・用量は添付文書に従う) |
| 発熱(38℃未満) | 水分摂取、アセトアミノフェンまたはイブプロフェン配合の解熱鎮痛薬 |
| 全身倦怠感 | 24時間の安静推奨 |
| アナフィラキシー様反応(接種後数分〜30分以内) | 接種医療機関内でアドレナリン自己注射等の対応。接種後30分は医療機関に待機 |
副反応の発現タイミングの薬学的背景:
- 不活化ワクチン(Tdap、A型肝炎等)の局所反応は接種後数時間〜翌日がピーク
- 生ワクチン(MMR)では接種後7〜14日に発熱・発疹等の遅延型反応が現れることがあります。これはワクチン株が体内で限定的に増殖するためで、「ワクチンウイルスによる軽度の感染症状」と理解してください。他人への感染リスクは極めて低いとされています
カナダで購入可能な解熱鎮痛薬:
- アセトアミノフェン配合のOTC製品: 薬局(Pharmacy)で処方箋なしに購入できます(
Do you have acetaminophen?(ドゥ ユー ハヴ アセトアミノフェン?)と伝えると通じます) - イブプロフェン配合のOTC製品: 同様に薬局で入手可能です。空腹時は避け、食後に服用することを推奨します
- 用法・用量は製品の添付文書(Package Insert)に従い、日本と容量・規格が異なる場合があるため注意してください
接種記録の管理と提示方法
デジタル化の推奨
- International Certificate of Vaccination(黄熱病用の黄色いカード) は黄熱病流行地域への渡航・経由時に必要ですが、カナダ渡航のみであれば不要な場合がほとんどです
- 英文の接種記録: 日本の医療機関で発行を依頼(通常2〜3営業日)。「Vaccination Record(英文)」または「Certificate of Immunization」として発行してもらいましょう
- スマートフォン保存: 原本のコピーを複数保管(クラウドストレージへのアップロードも推奨)
- 英文の接種記録に記載すべき情報: 氏名(パスポート表記と一致)・生年月日・ワクチン名(英語)・接種日・ロット番号・接種医療機関名
英文接種記録の表記例(参考):
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| ワクチン名 | MMR (Measles, Mumps, Rubella) |
| 接種日 | 2025-03-15 |
| ロット番号 | (各自確認) |
| 接種機関 | ○○クリニック / ○○ Clinic, Tokyo, Japan |
紛失時の対応
カナダ到着後に記録紛失した場合:
- 滞在地域の Public Health Unit に連絡
- 医療記録照会(渡航前の日本の医療機関にも問い合わせ可)
- 必要に応じてカナダで改めて接種(費用自己負担)
薬剤師メモ 2026年現在、一部の航空会社とカナダの州政府は「Digital Health Records」システムの構築を進めています。渡航前に世界保健機関(WHO)公式の「ICV(International Certificate of Vaccination)」のスマートフォン版アプリ化も検討されています。最新情報は外務省ウェブサイトで確認してください。
渡航前の総合的な健康確認チェックリスト
予防接種の準備と合わせて、以下の健康管理事項も渡航前に確認することを推奨します。
| 確認事項 | 推奨時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 予防接種記録の確認 | 出発6ヶ月前 | 母子手帳・接種記録を探す |
| 旅行外来・渡航外来の受診 | 出発6ヶ月前 | 接種計画の立案 |
| 常備薬の英文処方箋 | 出発1ヶ月前 | 向精神薬・麻薬性鎮痛薬は特に要注意 |
| 海外旅行保険の加入 | 出発前 | 医療費補償・救急搬送を含むもの |
| 英文の医師診断書 | 必要に応じて | 持病・アレルギーの英文サマリー |
| 歯科健診 | 出発3ヶ月前 | カナダの歯科治療費は高額 |
| 眼科・コンタクトレンズ | 出発1ヶ月前 | 十分なストックと予備メガネ |
最新情報の確認窓口
- 日本外務省: 海外安全ホームページ(カナダの感染症情報)
- CDC(米国疾病対策予防センター): 北米情報の信頼性が高い
- Public Health Agency of Canada: カナダ政府公式情報
- 在カナダ日本大使館: 緊急時の相談窓口
- 厚生労働省 検疫所(FORTH): 日本発の渡航者向け最新感染症情報
まとめ
- 必須ワクチン法的要件なしだが、MMR、Tdap、インフルエンザは強く推奨
- 短期観光(1〜2週間): 出発4週間前の接種外来受診で対応可能
- 長期滞在(6ヶ月以上): 出発6ヶ月前から計画的に接種スケジュール立案
- A型肝炎、B型肝炎は農村部滞在・留学予定なら推奨
- MMRは生ワクチンのため妊娠予定・免疫抑制薬使用者は接種医に事前相談が必須
- Tdapの百日咳成分は無細胞型であり、成人への副反応は比較的軽微
- 髄膜炎菌ワクチンは大学寮生活予定者に特に推奨(大学側が接種証明を求めるケースあり)
- 費用目安: 最小限セット27,500〜46,000円、フルセット60,000〜100,000円程度
- 接種記録は英文で複数保管し、デジタル化も推奨
- カナダ到着後の追加接種は私立医療機関で自己負担(留学生は大学保健サービス利用可能)
- 出発4週間前に外務省と公式情報源で最新要件を確認必須
安全で健康的なカナダ渡航のため、早めの準備をお勧めします。
参考文献・情報源
-
Public Health Agency of Canada. "Vaccine preventable diseases." Government of Canada. https://www.canada.ca/en/public-health/services/immunization/vaccine-preventable-diseases.html
-
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Canada – Traveler Health Information." https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/canada
-
World Health Organization (WHO). "International travel and health." https://www.who.int/ith/en/
-
厚生労働省 検疫所(FORTH). 「感染症情報:カナダ」. https://www.forth.go.jp/destination/country/canada.html
-
国立感染症研究所. 「予防接種に関する情報」. https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine.html
-
日本外務省. 「海外安全情報:カナダ」. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_012.html
監修: 薬剤師(博士(薬学))