ドイツ渡航前ワクチン|ダニ脳炎・基本ワクチンと接種スケジュールを薬剤師が解説

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ドイツ渡航者必読!予防接種ガイド|事前準備から接種スケジュールまで

ドイツは医療水準が高く、感染症のリスクは西欧の他国と同程度ですが、渡航前の予防接種は重要な感染症・衛生対策です。特に長期滞在や医療機関との接触が予想される場合、予め適切な免疫を確保することで、現地でのトラブルを未然に防げます。本記事では、薬剤師の視点からドイツ渡航時に必要・推奨される予防接種、接種タイミング、費用相場を詳しく解説します。

ドイツを含む中欧・東欧の森林地帯ではダニ媒介性脳炎(TBE: Tick-Borne Encephalitis)のリスクが存在し、日本国内ではあまり知られていないため特に注意が必要です。また、麻疹については2019年以降も欧州各国で散発的なアウトブレイクが報告されており、接種歴の確認が不可欠です。渡航の目的・期間・季節・活動内容によってリスクプロファイルが異なるため、本記事を参考に、出発前にかかりつけ医またはトラベルクリニックで個別の接種計画を立てることを強くお勧めします。

ドイツ渡航時の必須・推奨予防接種一覧

必須級:出発前に必ず確認すべき接種

以下の表は、ドイツへの一般的な観光・出張・長期滞在における推奨接種をまとめたものです。滞在期間や活動内容によって優先度が変わる点にご注意ください。

予防接種名 必須度 対象者 推奨スケジュール
麻疹・風疹・おたふく風邪(MMR) 1988年以降生まれで2回接種歴がない者 出発4週間前まで
破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap/Td) 10年以上接種していない成人 出発2週間前まで
ダニ脳炎(TBEワクチン) 高(森林活動予定者) 春〜秋にバイエルン州・南部で野外活動予定の者 出発6週間前まで(初回2回)
B型肝炎 医療従事者、長期滞在者 出発6ヶ月前から
帯状疱疹(組換えサブユニットワクチン) 推奨 50歳以上 出発2ヶ月前まで
ポリオ 確認 接種歴未確認者 出発4週間前まで
水痘(水ぼうそう) 確認 罹患歴・接種歴がない成人 出発6週間前まで(2回接種)

薬剤師メモ ドイツの医療記録(Impfpass/インプファス)と日本の予防接種記録は互いに認められない場合があります。渡航前に、ご自身の既往接種歴を日本語+英語で記録した「予防接種記録」を取得しておくと、現地での追加接種判定がスムーズです。また、日本で接種可能な生ワクチン(麻疹・風疹など)は、ドイツで再度接種される可能性もあるため、事前に渡航先の医療機関に確認するとよいでしょう。


ダニ脳炎(TBE)ワクチン:ドイツ渡航特有の重要接種

ダニ脳炎(Tick-Borne Encephalitis、TBE)は、Flaviviridae科に属するTBEウイルスをマダニ(主にIxodes ricinus)が媒介して引き起こす中枢神経系感染症です。ドイツ南部——特にバイエルン州(Bayern)、バーデン=ヴュルテンベルク州(Baden-Württemberg)——は欧州でも有数のTBE高リスク地域として、ドイツ連邦疾病予防管理センター(RKI: Robert Koch-Institut)が毎年リスクマップを更新・公表しています。

感染経路と症状の薬学的背景

TBEウイルスはRNAウイルスであり、感染後の潜伏期間はおよそ2〜28日。臨床経過は二相性を示すことが特徴的で、初期の発熱・倦怠感(インフルエンザ様症状)の後、一部の症例では第二相として髄膜炎・脳炎・脊髄炎へと進行します。有効な抗ウイルス薬は現時点で存在せず(支持療法のみ)、予防ワクチン接種が唯一の確実な防御手段です。後遺症として記憶障害・疲労・集中力低下が長期持続するケースも報告されており、その重篤性から予防の重要性は極めて高いといえます。

TBEワクチンの薬学的特性

現在日本で使用可能なTBEワクチン(不活化全粒子ワクチン)は筋肉内注射で投与され、基本免疫スケジュールは以下の通りです。

スケジュール 第1回 第2回 第3回 ブースター
標準(成人) 0日目 1〜3ヶ月 5〜12ヶ月後(第2回から) 3〜5年後
急速(成人) 0日目 14日後 5〜12ヶ月後(第2回から) 3〜5年後

第2回接種完了後から防御免疫が得られるとされており、春〜初夏(3〜6月)の渡航前に少なくとも2回の接種を完了することが推奨されます。なお、ダニの活動期は気温5℃以上になると始まり、日本のヒグマ同様に気温が上がる春先から秋にかけて特に注意が必要です。

森林・ハイキング予定者への実践的アドバイス

バイエルン・アルプス周辺でのハイキング、キャンプ、森林散策を計画している場合は、ワクチン接種に加え以下の物理的予防策も組み合わせることが重要です。

  • 長袖・長ズボン着用(明るい色の衣類でダニを視認しやすくする)
  • ディート(DEETディート)またはイカリジン(Icaridin)配合の虫除け忌避剤を露出部位に塗布
  • 帰宅後は全身をくまなくチェックし、マダニの早期除去(噛まれてから24時間以内の除去で感染リスクが低減)
  • ダニを素手でつぶさない(ピンセットで皮膚面に平行に引き抜く)

麻疹・風疹・おたふく風邪(MMR)

ドイツは麻疹排除国ですが、毎年少数の輸入例が報告されています。欧州疾病予防管理センター(ECDC)のサーベイランスデータによると、ドイツを含む欧州では2017〜2019年にかけて大規模な麻疹アウトブレイクが発生しており、1988年以降に生まれた日本人は、MMR 2回接種歴の確認が必須です。

薬学的背景:麻疹ウイルスの感染力と免疫記憶

麻疹ウイルスは基本再生産数(R₀)が12〜18と極めて高く、空気感染・飛沫核感染で伝播します。MMRワクチンは弱毒生ワクチンであり、接種後にB細胞・T細胞両方が活性化され、長期的な免疫記憶が形成されます。1回接種での血清転換率は約93〜95%、2回接種では97〜99%に達します。

  • 接種方法:皮下注射、0.5mL
  • 必要回数:2回(4週間以上間隔)
  • 接種効果:97〜99%の感染予防効果(2回接種時)
  • 推奨時期:出発4週間前までに第2回接種を完了

生ワクチンの同時接種ルール(薬学的重要事項)

MMRは弱毒生ワクチンであるため、他の生ワクチン(水痘ワクチン、黄熱ワクチン等)との同時接種、または接種間隔に関して以下の原則があります。

  • 同日投与:異なる部位であれば可能(免疫干渉は最小限)
  • 非同日投与:生ワクチン同士の間隔は原則28日(4週間)以上空ける
  • 不活化ワクチンとの間隔制限:なし(前後いつでも可)

これは生ワクチン接種後に生じるインターフェロン産生が他の生ワクチンのウイルス複製を抑制し、免疫応答を減弱させる可能性があるためです。


破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap/Td)

欧米での破傷風・ジフテリア・百日咳の発生は稀ですが、医療先進国でも自然感染のリスクはゼロではありません。日本の定期接種(DPTシリーズ)後、成人で10年以上接種していない場合は追加接種が推奨されます。

各成分の薬学的解説

  • 破傷風(Tetanus):Clostridium tetaniが産生するテタノスパスミンという神経毒素が、脊髄・脳幹の抑制性シナプスを遮断し、痙縮・開口障害を引き起こします。土壌中に広く存在し、屋外活動中の外傷(切り傷・擦り傷)から感染します。ワクチンは毒素を無毒化したトキソイドであり、中和抗体産生を誘導します。

  • ジフテリア(Diphtheria):Corynebacterium diphtheriae産生の外毒素が心筋・末梢神経を傷害します。近年の欧州での発生は非常に稀ですが、輸入例は報告されています。

  • 百日咳(Pertussis):Bordetella pertussisによる気道感染症で、成人では軽症・遷延性咳嗽として現れることが多く、ワクチン未接種の乳幼児への感染源となります。

項目 内容
接種方法 筋肉内注射(三角筋)、0.5mL
有効期限(破傷風・ジフテリア) 10年(追加接種で維持)
百日咳成分の持続期間 5〜10年(個人差あり)
主な副反応 接種部位の発赤・腫脹・疼痛(24〜48時間で自然消退が多い)
全身性副反応 発熱(37.5℃以上):約10〜15%の頻度

B型肝炎

医療従事者、長期滞在者(3ヶ月以上)、複数の性的パートナーを持つ者に推奨されます。ドイツにおけるB型肝炎の流行は限定的ですが、予防的接種は健康保険の給付対象となることもあります。

HBVの感染経路と免疫機序

B型肝炎ウイルス(HBV)はDNAウイルスであり、血液・体液(性行為、医療行為時の針刺し、輸血等)を介して感染します。B型肝炎ワクチンは組換えDNA技術で製造されたHBs抗原(表面抗原)を含む不活化ワクチンで、接種後にHBs抗体(anti-HBs)が産生されることで感染が防御されます。抗体価10 mIU/mL以上が防御の目安とされています。

  • 接種スケジュール(標準):0日、1ヶ月後、6ヶ月後(3回接種)
  • 加速スケジュール:0日、7日後、21日後(3回接種)+12ヶ月後にブースター
  • 効果測定:接種完了4週間後に抗体価測定(特にハイリスク者)

薬剤師メモ B型肝炎ワクチンの加速スケジュール(0-7-21日)は、出発まで時間がない場合に用いられます。ただし、標準スケジュール(0-1-6ヶ月)の方が長期的な抗体保持率が高いため、可能な限り早期から計画的な接種をお勧めします。また、ドイツの保険医療制度では、成人へのB型肝炎接種は自費となる場合があるため、事前に現地保険の適用範囲を確認してください。免疫不全者・透析患者では通常の2倍量接種が推奨されることがあり、医師との相談が必要です。


帯状疱疹ワクチン(組換えサブユニットワクチン)

50歳以上の渡航者に推奨されます。帯状疱疹ワクチンは不活化ワクチン(組換えサブユニット型)で、2回接種(0日目、2〜6ヶ月間隔)が必要です。

薬学的メカニズム:なぜ加齢とともにリスクが上がるのか

水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染(水痘)後、脊髄後根神経節・三叉神経節に潜伏します。加齢・免疫抑制・強いストレスによってVZV特異的細胞性免疫(主にCD4⁺T細胞)が低下すると、潜伏ウイルスが再活性化し帯状疱疹として発症します。旅行のストレス・時差・疲労も免疫低下の誘因となりうるため、渡航者においてもリスクは無視できません。

組換えサブユニットワクチンは、VZVの表面糖タンパク質E(gE)を抗原とし、AS01Bアジュバントシステムによって免疫応答が増強されます。生ワクチンと異なり免疫不全者にも比較的安全に使用できる点が大きな特徴です。

項目 内容
接種方法 三角筋への筋肉内注射、0.5mL
回数 2回(2〜6ヶ月間隔)
発症予防効果 70歳以上で約90%(臨床試験データ)
帯状疱疹後神経痛予防効果 約89%
主な副反応 注射部位疼痛・筋肉痛・疲労感(Grade 3以上:約17%)、通常2〜3日で消退
免疫不全者への使用 医師の判断のもと使用可(生ワクチンより安全性高い)

予防接種スケジュール計画:出発までのロードマップ

理想的な接種時期の逆算

ドイツ渡航まで6ヶ月以上ある場合の推奨スケジュール:

出発6ヶ月前:医師に相談、接種歴の確認・血液検査(抗体価測定)
  ↓
出発5ヶ月前:B型肝炎(必要に応じて)第1回接種
         /TBEワクチン第1回(森林活動予定者)
  ↓
出発4ヶ月前:B型肝炎第2回接種
         /TBEワクチン第2回(第1回から1〜3ヶ月後)
  ↓
出発3ヶ月前:破傷風・ジフテリア(Td/Tdap)接種
         /帯状疱疹ワクチン第1回(50歳以上)
  ↓
出発2ヶ月前:帯状疱疹ワクチン第2回
         /水痘ワクチン(必要に応じて)
  ↓
出発4週間前:MMR(必要に応じて)最終回接種完了
         /ポリオ確認・追加
  ↓
出発当日:接種証明書・英文接種記録を携帯

出発が1〜3ヶ月以内の場合

時間が限られている場合でも、以下の優先順位で接種を進めます:

  1. 破傷風・ジフテリア・百日咳(Tdap/Td):最優先(出発2週間前まで可)
  2. 麻疹・風疹(MMR):第2回未接種者(出発4週間前まで)
  3. TBEワクチン:森林活動予定者は少なくとも2回(急速スケジュールで2週間間隔)
  4. B型肝炎:医療職や長期滞在予定者は加速スケジュール検討
  5. 帯状疱疹:出発までに第1回接種のみ行い、第2回は現地または帰国後に完了することも可能

薬剤師メモ 多数の不活化ワクチンの同時接種は安全性が確認されています。TBEワクチン・Tdap・B型肝炎などの不活化ワクチンは原則として同日・異部位接種が可能です。通院回数を減らすためにも積極的に同日接種を検討しましょう。ただし、MMRなどの生ワクチンを接種した場合、次の生ワクチン接種までは原則4週間の間隔が必要となる点に注意してください。また、複数ワクチンを同日接種する場合は、どの副反応がどのワクチンに由来するか判断が難しくなるため、接種後の体調変化を記録しておくことを推奨します。


ドイツ渡航時の予防接種費用相場

日本国内での接種費用

以下は、自費接種の目安価格です。実際の費用は医療機関・地域によって異なるため、事前に各医療機関にお問い合わせください。なお、一部の自治体では65歳以上の高齢者に対してインフルエンザ・帯状疱疹ワクチンの公費助成がある場合があります。

ワクチン名 1回分の費用目安 接種回数 総額目安
MMR 8,000〜10,000円 2回 16,000〜20,000円
Tdap/Td 5,000〜8,000円 1回 5,000〜8,000円
TBEワクチン(ダニ脳炎) 8,000〜12,000円 3回(基本免疫) 24,000〜36,000円
B型肝炎 5,000〜7,000円 3回 15,000〜21,000円
ポリオ 8,000〜10,000円 1回(追加) 8,000〜10,000円
帯状疱疹(組換えサブユニット型) 20,000〜22,000円 2回 40,000〜44,000円
水痘(必要に応じて) 5,000〜8,000円 2回 10,000〜16,000円
合計(全て必要な場合の概算) 約118,000〜155,000円

※上記は全ての接種が必要な場合の概算です。既往接種歴・抗体価検査結果により実際の費用は減額されます。まず抗体価を確認してから不足分のみ接種するアプローチが費用対効果的です。

ドイツ国内での接種費用

ドイツの法定健康保険(Gesetzliche Krankenversicherung、GKV)加入者は、ドイツ常設予防接種委員会(STIKO: Ständige Impfkommission)が推奨する定期接種・推奨接種の多くが給付対象です。ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 条件:保険加入から一定期間経過後、医師の指示で接種
  • 自費の可能性:渡航前の予防的接種や、標準スケジュール外での接種
  • 費用目安:1回あたり50〜150ユーロ(自費時、目安)
  • TBEワクチン:GKVではリスク地域居住者・職業上の必要性がある場合に給付対象となることがある

長期滞在予定者は、ドイツの医療保険加入手続きと並行して、接種計画を立てることをお勧めします。


ドイツ渡航前の予防接種チェックリスト

実行に移すための確認項目を以下にまとめました。

渡航前3ヶ月6ヶ月

  • 過去の予防接種記録を集める(母子健康手帳、予防接種済証など)
  • かかりつけ医またはトラベルクリニックに相談予約
  • 渡航期間・滞在先・予定されている活動(森林活動の有無を含む)を医師に伝える
  • 必要に応じて抗体価測定(麻疹・風疹・水痘・B型肝炎)
  • 必要な接種スケジュール案を医師と作成
  • 健康診断で健康状態を確認(免疫抑制状態の確認を含む)

渡航前4〜8週間

  • 第1段階の接種を実行
  • 接種後の体調変化を日付・症状・持続時間を含めて記録
  • TBEワクチン2回目(急速スケジュールの場合は14日後)を実施
  • 第2段階の接種日程を確定

渡航前1〜2週間

  • 最終接種から安全間隔を経過したか確認
  • 英語版の予防接種記録を取得(医療機関に英文作成を依頼)
  • 予防接種証明書をデジタル(PDF)・紙の両方で控えを用意
  • 旅行保険(医療補償付き)の加入確認

出発当日

  • 予防接種記録を携帯(スマートフォン保存+印刷版の両方)
  • ドイツの医療保険関連書類も持参
  • 現地の医療相談窓口情報をスマートフォンに保存
  • 虫除け忌避剤(DEETディート配合またはイカリジン配合)を荷物に入れる

薬剤師メモ 日本で発行される予防接種済証は、英語版の取得が難しい場合があります。医療機関に英文での接種記録作成を依頼し、可能であればPDF化してクラウドストレージに保存しておくと、現地での問い合わせ時に便利です。また、ドイツの保健当局ウェブサイト(Robert Koch-Institut)では最新の推奨ワクチンリストが公開されているため、渡航直前に確認することをお勧めします。STIKOの最新勧告もRKIウェブサイトから無料で閲覧可能です。


ドイツ渡航中に接種が必要になった場合

ドイツでの医療アクセス

ドイツには多くの診療所(Praxis/プラクシス)と薬局(Apotheke/アポテーケ)があり、医療アクセスは良好です。

  • 言語:診療所では英語対応が多いが、事前に確認を推奨
  • 予約:オンライン予約プラットフォーム(複数存在)が利用可能
  • 費用:保険加入者は無料〜一部自己負担、未加入者は全額自費
  • 緊急時:救急外来(Notaufnahme/ノートアウフナーメ)または救急電話112番

医療機関での英語コミュニケーション例

現地の診療所でスムーズにやりとりするための基本フレーズです。

  • I need a TBE vaccination.(アイ ニード ア ティービーイー ヴァクシネーション)——「ダニ脳炎ワクチンを接種したい」
  • I have my vaccination record from Japan.(アイ ハヴ マイ ヴァクシネーション レコード フロム ジャパン)——「日本からの接種記録を持っています」
  • I am allergic to eggs.(アイ アム アレルジック トゥ エッグス)——「卵アレルギーがあります」
  • I am taking immunosuppressants.(アイ アム テイキング イミュノサプレサンツ)——「免疫抑制薬を服用しています」

トラベルワクチンの現地入手

予期しない接種が必要になった場合:

  1. **Apotheke(薬局)**でプライマリケア医(Hausarzt/ハウスアルツト)の紹介を依頼
  2. ホテルのフロントに近隣の診療所を紹介してもらう
  3. Notarzt(救急)は緊急時のみ——予防接種目的では使用しない

ドイツの医療専門家は一般的に高い英語スキルを持つため、コミュニケーション面での心配は少ないでしょう。


予防接種と他の薬剤・サプリメントの相互作用

予防接種前後での注意点

併用物質 薬学的背景 推奨対応
アスピリン・NSAIDs(イブプロフェン等) COX阻害による解熱・抗炎症作用。接種後の副反応緩和に使用可能。接種前の予防的服用は免疫応答を若干減弱させる可能性の報告あり 接種後の副反応(発熱・疼痛)対策として使用は許容されるが、予防的な接種前服用は避ける方が望ましい
免疫抑制薬(ステロイド・生物学的製剤等) T細胞・B細胞機能を抑制し、ワクチン誘導免疫応答を著明に低下させる。生ワクチンでは感染リスクも 接種前に処方医・専門医への相談が必須。不活化ワクチンは一般的に使用可だが効果が不十分な可能性あり
抗ヒスタミン薬(第1世代・第2世代) アナフィラキシー予防目的の予防的投与は推奨されない(過敏反応の初期症状をマスクする恐れ) 接種前の予防的服用は避ける。接種後のアナフィラキシーは接種施設での30分観察で対応
免疫グロブリン製剤(IVIG等) 受動免疫が生ワクチンの能動免疫応答を競合阻害する。MMR・水痘ワクチンに特に影響大 IVIG投与後3〜11ヶ月は生ワクチン接種を延期(製剤・用量による)。医師に確認
エキナセア等の免疫賦活サプリメント 科学的エビデンスは限定的。免疫機能への影響が不明確 接種前後1週間は服用を中止する選択肢もある(エビデンスレベルは低い)
処方薬全般 ワクチンの効果・安全性に影響しうる薬剤は多岐にわたる 接種前に服用中の全薬剤を担当医に申告する

卵アレルギーとワクチン接種

一部のインフルエンザワクチンは卵を使用した製法で製造されるため、重篤な卵アレルギーを持つ方は接種前に医師への申告が必要です。一方、MMRワクチンは鶏卵ではなく鶏胚線維芽細胞で製造されており、重篤な卵アレルギーがあっても多くの場合は接種可能とされています(アナフィラキシー既往者は経過観察体制の整った医療機関での接種を推奨)。TBEワクチンについても製品によって使用する基材が異なるため、アレルギー歴がある方は添付文書を確認の上、医師に相談してください。


ドイツ渡航特有の感染症リスク:TBE以外にも知っておきたいこと

ライム病(Lyme borreliosis)

TBEと同じマダニが媒介するBorrelia burgdorferiによる細菌感染症です。ドイツ南部はライム病の発生率が高い地域として知られており、ダニに咬まれた後に特徴的な遊走性紅斑(慢性遊走性紅斑、EM)が出現することがあります。現時点でライム病に対する予防ワクチンは日本・欧州では承認されていないため、前述の物理的予防策(虫除け・適切な衣類・ダニチェック)が唯一の予防手段です。ダニに咬まれた場合は早期に除去し、数週間後に紅斑・発熱・関節痛等の症状が出た場合は速やかに医療機関を受診してください。

ノロウイルス・食中毒

ドイツの食品衛生水準は高く、日本人旅行者が感染症で悩むリスクは限定的です。ただし、欧州旅行者下痢症(Traveler's diarrhea)は統計的に一定の頻度で発生します。生牡蠣・加熱不十分な肉類(特にビアガルテンでのジビエ料理)には注意が必要です。整腸剤(酪酸菌・乳酸菌配合製剤等)を携帯しておくことも実用的な準備のひとつです。

インフルエンザ

秋〜冬期(10月〜3月)のドイツ渡航者にはインフルエンザワクチン接種が推奨されます。ドイツのインフルエンザシーズンは日本とほぼ同時期ですが、流行株の構成が異なる場合もあります。毎年秋に最新ワクチンを接種することが最も有効な予防策です。渡航前の接種が難しい場合、ドイツ現地の診療所・薬局でも接種可能なケースがあります。


まとめ:ドイツ渡航前ワクチン対策の要点

ドイツ渡航においては、一般的な欧米渡航者への基本ワクチン(MMR・Td/Tdap・B型肝炎)に加え、ダニ脳炎(TBE)ワクチンが日本人渡航者にとって特有かつ重要な追加接種項目となります。以下に要点を整理します。

優先度 ワクチン 特に推奨される対象 最低限必要な準備期間
★★★ TBEワクチン 春〜秋の森林・野外活動予定者 6週間前(急速2回)
★★★ MMR 2回接種歴がない1988年以降生まれ 4週間
★★★ Td/Tdap 10年以上未接種の成人 2週間
★★ B型肝炎 医療従事者・長期滞在者 6ヶ月前(標準)
★★ 帯状疱疹 50歳以上 2ヶ月前(2回)
インフルエンザ 秋冬渡航者全般 2週間

予防接種は渡航準備の中でも最も早期から計画すべき項目の一つです。出発6ヶ月にはトラベルクリニックまたはかかりつけ医に相談を開始することを強く推奨します。渡航先・活動内容・健康状態によって最適なワクチンプランは異なるため、本記事の情報をもとに、必ず医師による個別評価を受けてください。


参考文献

  1. Robert Koch-Institut (RKI). "Empfehlungen der Ständigen Impfkommission (STIKO) beim Robert Koch-Institut." https://www.rki.de/DE/Content/Infekt/Impfen/Impfempfehlungen/Empfehlungen_node.html

  2. World Health Organization (WHO). "International Travel and Health – Germany." https://www.who.int/ith/en/

  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Health – Germany." https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/germany

  4. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC). "Tick-borne encephalitis." https://www.ecdc.europa.eu/en/tick-borne-encephalitis

  5. 厚生労働省. 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づく感染症発生動向調査」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html

  6. 国立感染症研究所. 「麻疹(はしか)とは」. https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html

  7. PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構). 「ワクチン製品情報」. https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/vaccines/0001.html


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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