中国渡航前ワクチン|日本脳炎・狂犬病と接種スケジュールを薬剤師が解説

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中国渡航者必読!渡航前に確認すべき予防接種ガイド

中国への渡航は、東アジアの経済大国を体験する素晴らしい機会です。しかし、感染症のリスクから身を守るには、事前の予防接種が重要です。本記事では、薬剤師の視点から、中国渡航に必要・推奨される予防接種、接種スケジュール、費用について詳しく解説します。渡航の4〜8週間前には必ず医療機関に相談し、個別のリスク評価に基づいた接種計画を立てましょう。

中国は国土が広大で、都市部と農村部・辺境地域では感染症リスクが大きく異なります。上海・北京などの大都市への短期ビジネス渡航と、雲南省・貴州省・チベット自治区などの農村・山岳地帯への長期滞在では、必要なワクチンの種類も変わります。また、季節によって蚊媒介感染症(日本脳炎、マラリア等)のリスクが変動します。渡航前の医療機関受診では、「いつ、どこへ、どのくらいの期間」という情報を必ず伝えてください。


中国渡航時に推奨される予防接種一覧

中国の感染症流行状況は、渡航地域・季節・滞在期間によって異なります。以下は、厚生労働省(FORTH)および米国CDCが推奨する接種です。

予防接種 推奨度 対象地域・渡航者 主な備考
A型肝炎 ★★★ 全渡航者(特に衛生状況が不確実な地域) 加熱されていない食べ物、飲料水のリスク
B型肝炎 ★★★ 全渡航者 血液・体液接触リスク
腸チフス ★★☆ 農村部・辺境地域への渡航者 汚染された水・食物が主な感染経路
破傷風 ★★★ 全渡航者(不明な場合) 定期接種の確認必須
麻しん(MMR) ★★☆ 1歳以上で未接種または不明な者 散発例あり
インフルエンザ ★★☆ 冬季渡航、高リスク者 特に11〜3月の渡航推奨
新型コロナウイルス ★★★ 全渡航者 最新の流行状況で判断
黄熱 ☆☆☆ 中国では不要だが、経由地の要件を確認 黄熱汚染国からの入国者に要求する場合あり
狂犬病 ★★☆ 辺境地域、動物接触リスク高い者 咬傷・引き傷リスク
日本脳炎 ★★☆ 長期滞在者、農村部への渡航 夏季流行、蚊媒介

薬剤師メモ:各予防接種の効果判定(抗体検査)を渡航前に実施することで、追加接種の必要性を判断できます。特にB型肝炎は、接種後の抗体産生確認が重要です。既往感染や過去の接種歴があれば、不要な重複接種を避けられます。

渡航リスク分類の考え方

日本の感染症情報サービス(FORTH)では、渡航先を感染症リスク別に評価しており、中国は感染症ごとにリスクレベルが異なります。ワクチンの選択に際しては「必須(required)」「推奨(recommended)」「任意(optional)」という3段階で整理すると判断しやすくなります。

リスク分類 主な該当ワクチン(中国渡航)
必須 破傷風(追加接種未実施の場合)、B型肝炎
推奨 A型肝炎、日本脳炎(農村部・夏季)、狂犬病(辺境・動物接触)
任意 腸チフス(短期都市滞在)、インフルエンザ(冬季以外・健康成人)

絶対確認すべき定期接種:破傷風・ジフテリア

**破傷風(tetanus)およびジフテリア(diphtheria)**は、日本の定期接種に含まれていますが、成人では追加接種を忘れている人が大多数です。

破傷風の再確認ポイント

  • 幼少期の初回シリーズ:生後3ヶ月〜1歳6ヶ月に3回接種
  • 追加接種:1歳6ヶ月〜2歳で1回、小学6年生で1回
  • 成人の推奨:10年ごとに追加接種(特に海外渡航予定者)
  • 中国渡航の重要性:破傷風菌(Clostridium tetani)は土壌に広く分布。切り傷・打ち傷・動物咬傷のリスク

渡航予定がある方は、少なくとも渡航前10年以内に破傷風追加接種を受けているか確認してください。不明な場合は、医療機関で抗体検査またはブースター接種(破傷風トキソイド0.5mL筋肉内注射)を受けましょう。

薬学的補足:トキソイドと免疫グロブリン

破傷風ワクチンは「トキソイド(不活化毒素)」です。接種後、体内でトキシンに対する中和抗体が産生されます。血清中の抗破傷風トキシン抗体価が0.1 IU/mL以上で防御レベルとされています。受傷後の暴露後予防(PEP)では、接種歴が不明・未接種の場合は破傷風トキソイドと破傷風免疫グロブリン(TIG)の同時投与が原則で、これらは「アナトキシン(能動免疫)」と「免疫グロブリン(受動免疫)」を組み合わせる点が重要です。投与部位を分けることで相互干渉を防ぎます。


A型肝炎とB型肝炎:必須の2本柱

A型肝炎(Hepatitis A)

感染経路:汚染された飲料水・氷・生の食べ物(生ガキ、サラダなど)

項目 詳細
ワクチン種類 不活性化ワクチン(A型肝炎ウイルス粒子を不活化したもの)
接種スケジュール 初回 → 6〜12ヶ月後に2回目
効果持続期間 2回接種で20年以上(ほぼ生涯)と推定
費用目安 1回 6,000〜8,000円(税込)×2回
推奨開始時期 渡航の4〜8週間

中国はA型肝炎の中リスク国です。特に農村部での飲食や、水道水への不安がある場合は必須です。なお、初回接種から2〜4週間後に抗体が産生されますが、2回接種完了後のほうが長期保護が得られます。渡航まで時間がない場合でも、初回接種だけでも短期的な防御効果が期待できます。

薬学的解説:HAVワクチンの免疫応答

A型肝炎ウイルス(HAV)はピコルナウイルス科に属する非エンベロープウイルスです。不活性化ワクチンはアルミニウム塩をアジュバントとして使用し、Th2優位の液性免疫を誘導します。抗体産生には通常2〜4週間を要し、初回接種後の血清陽転率は約94〜100%とされています。2回目接種後は抗体価が大幅に上昇し(ブースト効果)、長期的な免疫記憶が形成されます。ウイルス性疾患のため抗ウイルス薬による治療法は限定的であり、ワクチン予防が最も有効な手段です。

B型肝炎(Hepatitis B)

感染経路:血液・体液接触(医療現場、性的接触、刺青など)

項目 詳細
ワクチン種類 組換え型B型肝炎ワクチン(HBs抗原を酵母で産生)
接種スケジュール 通常:0日 → 1ヶ月後 → 6ヶ月後(3回)
短期スケジュール 0日 → 1週間後 → 2週間後 → 1年後(4回)
効果持続期間 接種後の抗体検査で確認;通常5〜10年
費用目安 1回 5,000〜6,500円(目安)×3回
推奨開始時期 渡航の8〜12週間

B型肝炎ワクチン接種後は、**接種完了1〜2ヶ月後に抗体検査(抗HBs抗体)**を実施し、保護レベル(10 mIU/mL以上)に達しているか確認することが重要です。

薬剤師メモ:B型肝炎ワクチンの反応が不十分な場合(特に高齢者、免疫低下者、肥満者)は、追加接種や高用量ワクチンの使用を検討します。日本赤十字社の献血スクリーニングで「B型肝炎抗体あり」と判定されたことがあれば、既感染または既免疫の可能性があり、医師と相談のうえ追加接種の要否を判断してください。

薬学的解説:HBVワクチンと応答不良者(Non-responder)

B型肝炎ワクチンは遺伝子組換え技術を用いてHBs抗原を酵母(Saccharomyces cerevisiae)で産生しています。通常の3回接種後に抗体産生率は成人で約85〜95%とされますが、一部では応答不良(Non-responder)が発生します。応答不良のリスク因子としては、高齢(60歳以上)、BMI高値、喫煙、免疫抑制状態(HIV感染、透析など)があります。3回接種後に抗HBs抗体が10 mIU/mL未満の場合は、追加で3回のシリーズを再接種し、それでも応答がなければ「Non-responder」と判定されます。この場合、暴露後予防ではB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)の投与が必要になります。


腸チフスと狂犬病:渡航地域による選択

腸チフス(Typhoid Fever)

感染経路Salmonella enterica serovar Typhi による汚染水・食物

  • 推奨対象:農村部・衛生状況が不確実な地域への渡航、長期滞在(1ヶ月以上)
  • ワクチン種類
    • 不活性化注射ワクチン(Vi莢膜多糖体ワクチン):1回注射、2〜3年有効、費用 5,000〜7,000円(目安)
    • 経口生ワクチン(Ty21a株):日本国内では流通が限られているため、渡航外来での確認が必要
  • 接種時期:渡航の1〜4週間
  • 注意:Vi莢膜多糖体ワクチンは2歳未満には使用できません。抗菌薬(特にキノロン系・アジスロマイシン)の予防的内服との組み合わせは通常行いませんが、高リスク渡航では医師の判断で対応が変わることがあります。

薬学的補足:腸チフスの抗菌薬耐性

近年、アジア地域ではフルオロキノロン系抗菌薬に対する耐性を持つ腸チフス菌が増加しています。万が一発症した場合の治療薬の選択肢が限られる可能性があるため、発症前予防(ワクチン)の重要性はむしろ高まっています。また、コレラとの合併リスクがある地域では、生活衛生の徹底(飲料水の煮沸、生食回避)がワクチンと並んで重要です。

狂犬病(Rabies)

感染経路:咬傷、引き傷、粘膜への唾液接触

項目 詳細
推奨対象 辺境地域への渡航、洞窟探検、動物調査等の予定者
ワクチン種類 不活性化ワクチン(Vero細胞由来または鶏胚細胞由来)
プレ・エクスポージャー接種 0日 → 7日 → 21日(または28日)の3回
費用目安 1回 10,000〜15,000円(目安)×3回
有効期間 初回シリーズ後は抗体価を確認しながら追加接種を判断

中国では野犬が多い地域があり、特に雲南省・広西壮族自治区などの南部農村地帯での咬傷リスクが報告されています。**辺境地への渡航予定者、動物との接触リスクがある職種(獣医師、野外調査員等)**は事前接種を強く推奨します。

薬剤師メモ:狂犬病は発症後の**治療法が事実上存在せず、致死率はほぼ100%**という極めて危険な疾患です。咬傷を受けた場合、現地で直ちに傷口の洗浄(石けんと流水で15分以上)を行い、狂犬病ワクチンと狂犬病免疫グロブリン(RIG)による暴露後予防(PEP)を受ける必要があります。プレ・エクスポージャー接種(3回完了)を受けていると、PEPのレジメンが簡略化され(ワクチン2回のみ、免疫グロブリン不要)、辺境地で免疫グロブリンが入手できない状況でも対応できるメリットがあります。

薬学的解説:狂犬病ウイルスの神経親和性と免疫応答

狂犬病ウイルス(Lyssavirus 属)は末梢神経を逆行性に移動し、最終的に中枢神経系に到達します。ウイルスの移動速度は1日あたり約50〜100mm程度とされており、咬傷部位が脳から遠いほど発症まで時間的余裕があります。不活性化ワクチンはウイルス表面の糖タンパク質(G蛋白)に対する中和抗体を誘導し、抗体価0.5 IU/mL以上で防御的とされています。プレ・エクスポージャー接種で免疫記憶が形成されると、暴露後の追加2回接種で迅速なアナムネスティック反応(ブースト)が期待できます。


麻しん(MMR)と日本脳炎:追加検討項目

麻しん(Measles)

  • 確認事項:1966年以降生まれの方で、2回の予防接種歴(または罹患歴)が不明な場合
  • 中国のリスク:都市部では低いが、散発例あり、集団流行の可能性
  • ワクチン:麻しん・風しん混合(MRワクチン)または麻しん・おたふくかぜ・風しん混合(MMRワクチン)
    • 国内定期接種では主にMRワクチンが使用されます
  • 費用:約5,000〜9,000円(目安。医療機関・地域により異なる)
  • 接種時期:生ワクチンのため、他の生ワクチンとの間隔(4週間以上)に注意が必要

薬学的補足:生ワクチン間の接種間隔の根拠

麻しんワクチンは「生ワクチン」に分類されます。生ワクチンを複数接種する場合、先行の生ワクチンがインターフェロン等の非特異的免疫抑制を引き起こし、後続の生ワクチンの免疫原性を低下させる可能性があります。このため、異なる生ワクチン間は最低4週間(27日以上)の間隔を設けることが国内外のガイドラインで定められています(例外:黄熱と麻しんワクチンの同日接種は可能とする国もあり、渡航医学専門家に確認を)。不活性化ワクチンとの間には制限はなく、同日に異なる部位へ接種することが可能です。

日本脳炎(Japanese Encephalitis)

項目 詳細
感染経路 ブタ・水鳥を増幅動物とし、コガタアカイエカが媒介
流行季節 5〜10月(特に7〜9月が高リスク)、熱帯地域では通年
推奨対象 1ヶ月以上の長期滞在、農村部・稲作地帯への滞在
ワクチン 不活性化ワクチン(Vero細胞由来:イメバックスJEなど)
接種スケジュール(標準) 0日 → 7〜28日後 → さらに1〜1.5年後(3回で基礎免疫完成)
接種スケジュール(短期) 渡航前に0日 → 7日の2回接種で一定の防御
費用目安 1回 6,000〜8,000円(目安)×2〜3回
有効期間 3回接種完了後は定期的な追加接種が推奨

中国における流行地域:江蘇省、浙江省、山東省、河南省など東部・中部地域で散発例が報告されています。雲南省・四川省でも発生が確認されています。

薬学的解説:日本脳炎ウイルスと蚊対策の相乗効果

日本脳炎ウイルス(JEV)はフラビウイルス科に属するRNAウイルスで、コガタアカイエカが媒介します。同属のウイルスにはデング熱ウイルスやウエストナイルウイルスがあります。ワクチンによる抗体はウイルスエンベロープのE(envelope)タンパク質に対して産生され、中和抗体価と防御効果が相関します。ワクチン接種と蚊対策(DEETディート含有虫よけ剤の使用、長袖・長ズボン着用、防虫ネット使用)は相補的な関係にあります。特に夕暮れ〜夜間の野外活動を避けることが有効です。なお、DEETディート(ジエチルトルアミド)含有の虫よけ剤は30%前後の濃度が推奨されており、子どもへの使用については年齢制限や使用回数制限があるため、製品添付文書を確認してください。


新型コロナウイルスとインフルエンザ:現在の推奨状況

新型コロナウイルス(COVID-19)

  • 最新情報は外務省・大使館・WHOで確認してください
  • 現在、中国入国時のワクチン接種要件は撤廃されていますが、状況は変わる可能性があります
  • 推奨:渡航前に最新の流行状況、変異株情報をWHO・CDCで確認し、抗体検査またはブースター接種の必要性を判断
  • 薬学的観点:mRNAワクチンは接種後数ヶ月で中和抗体価が低下しますが、T細胞免疫(細胞性免疫)は比較的持続します。前回接種から6ヶ月以上経過した高リスク者(高齢者・基礎疾患あり)は、追加接種(ブースター)の検討が推奨されます。

インフルエンザ

時期 推奨度
冬季(11月〜3月) ★★★ 強く推奨
その他の季節 ★☆☆ 基礎疾患・高リスク者のみ
  • ワクチン種類:4価不活性化ワクチン(A型2株、B型2株)
  • 費用目安:約3,000〜4,500円(目安。高齢者は自治体補助あり)
  • 接種時期:渡航の2〜4週間前に実施(効果発現まで1〜2週間

薬学的補足:インフルエンザワクチンの抗原性変異と株一致率

インフルエンザウイルスは抗原性変異(antigenic drift)が速く、毎年ワクチン株が更新されます。北半球(日本)と南半球では流行シーズンが約半年ずれており、中国は北半球に属します。中国ではH3N2亜型やB型ウイルスの流行が報告されており、日本のワクチンと株が一致する年は防御効果が高まります。一方、株が一致しない年でも交差免疫による重症化予防効果は期待できます。また、抗インフルエンザ薬(オセルタミビルなど)は発症後48時間以内の投与が効果的とされているため、渡航中に症状が出た場合の対応を事前に確認しておくことも重要です。


渡航前予防接種の実践スケジュール例

渡航日が3ヶ月先と仮定した場合のモデルスケジュール:

時期 実施項目
渡航12週間 医療機関に相談、抗体検査(既往感染の有無)、渡航地域の確認
渡航10〜8週間 B型肝炎 初回接種、腸チフス接種(必要な場合)、日本脳炎 初回接種
渡航8〜6週間 B型肝炎 2回目接種、A型肝炎 初回接種、日本脳炎 2回目接種
渡航4〜2週間 A型肝炎 2回目接種、インフルエンザ接種(冬季)、狂犬病3回目(辺境渡航者)
渡航1週間 破傷風抗体検査結果確認、各ワクチン副反応のモニタリング
渡航中・帰国後 必要に応じてB型肝炎 3回目接種(6ヶ月後)、A型肝炎 6〜12ヶ月後の2回目、抗体検査

薬剤師メモ:複数のワクチンを同時接種する場合、「生ワクチン」と「不活性化ワクチン」の組み合わせに注意が必要です。生ワクチン(麻しん、水痘等)は同日か4週間以上の間隔を空けて接種します。不活性化ワクチン同士は同日に異なる部位へ接種可能です。ただし、接種部位の局所反応が複数生じた場合に原因の特定が困難になることから、1日に接種するワクチンの数は医療機関と相談して決定してください。


ワクチン副反応と薬学的管理

予防接種後に生じうる副反応を事前に理解しておくと、渡航前の不安が軽減されます。

主な局所反応と全身反応

副反応の種類 主な発生ワクチン 頻度 対処法
注射部位の発赤・腫脹・疼痛 全ワクチン共通 非常に多い(20〜50%) 冷罨法、安静
発熱(37.5℃以上) B型肝炎、A型肝炎、日本脳炎 5〜10%程度 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)で対症療法
頭痛・倦怠感 全ワクチン共通 10〜20%程度 安静・水分補給
アナフィラキシー 全ワクチン(まれ) 1〜10万接種に1件程度 接種後30分間は医療機関に待機

アセトアミノフェンとNSAIDsの使い分け

発熱・疼痛への対処として解熱鎮痛薬を使用する場合、アセトアミノフェンが第一選択です。イブプロフェン等のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)もワクチン副反応への使用は可能ですが、ワクチン接種前の予防的投与は抗体価を低下させる可能性があるという研究報告があるため、事前の予防服用は推奨されていません。解熱鎮痛薬は症状が出てから服用するようにしてください。また、小児ではアスピリンの使用は禁忌(ライ症候群のリスク)であり、アセトアミノフェンを使用します。

アナフィラキシーへの注意

ワクチン接種後のアナフィラキシーは、通常接種後30分以内に発症します。このため、接種後は必ず医療機関内で30分待機することが推奨されています。過去にワクチン接種後にアレルギー反応が出たことがある方、卵アレルギー(一部のワクチンは鶏卵で製造)がある方は、接種前に必ず医師に申告してください。


妊婦・授乳中・小児・免疫低下者への注意事項

妊婦・授乳中の方

ワクチン種類 妊娠中 授乳中
不活性化ワクチン(A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ等) 一般的に使用可能(利益がリスクを上回る場合) 使用可能
生ワクチン(麻しん等) 原則禁忌 一般的に使用可能(医師判断)
狂犬病ワクチン(暴露後) 必要性が高ければ使用可能 使用可能

妊娠中の渡航は、渡航時期・目的地について産科医と十分に相談してください。特に生ワクチンは妊娠中に原則として接種できないため、渡航前に計画的に完了させることが重要です。

小児の渡航

  • 日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月以上で使用可能(定期接種は3歳から)
  • 狂犬病ワクチンは年齢制限なし(医師判断)
  • A型肝炎ワクチンは1歳以上で使用可能
  • 小児は動物に興味を持って近づくことが多く、狂犬病暴露リスクに注意

免疫低下者(HIV感染者、免疫抑制剤使用者等)

  • 生ワクチンの接種は原則として禁忌または要慎重
  • 不活性化ワクチンは使用可能だが、抗体産生が低下している可能性がある
  • 渡航前に担当医と感染症リスクの評価、接種可能なワクチンの確認を必ず行う

渡航中・帰国後のフォローアップ

渡航中の感染症予防の基本

ワクチン接種は感染症予防の重要な柱ですが、すべての感染症に対応できるわけではありません。以下の行動予防策も徹底してください。

  • 食品・水の安全:飲料水は市販のペットボトル水または煮沸水を使用。生野菜・生食に注意
  • 手指衛生:アルコール手指消毒剤(60%以上のエタノール配合)を常時携帯
  • 蚊対策DEETディート含有虫よけ剤(日本国外ではDEET30〜50%製品が入手可能)の使用、肌の露出を減らす
  • 動物回避:犬・猫・コウモリ等の野生動物には絶対に近づかない

帰国後の注意事項

中国からの帰国後、以下の症状がある場合は医療機関(できれば渡航外来・感染症専門医)を受診し、渡航歴を必ず申告してください。

症状 疑われる感染症 目安の受診時期
発熱・頭痛・悪寒 インフルエンザ、腸チフス、デング熱等 症状出現後速やかに
黄疸・倦怠感・食欲不振 A型肝炎、B型肝炎等 症状出現後速やかに
動物咬傷後の発熱・麻痺 狂犬病(帰国後は時間的余裕なし) 即時(狂犬病の場合は帰国を待たず現地で処置)
下痢・嘔吐・腹痛 腸チフス、細菌性腸炎、寄生虫感染 症状が24〜48時間以上続く場合

薬剤師メモ:帰国後2〜3週間以内に発熱した場合は「渡航後感染症」として扱い、必ず渡航先・渡航期間を医師に伝えてください。一部の熱帯感染症(マラリア等)は帰国後に発症することがあります。


渡航外来・トラベルクリニックの活用

予防接種の計画や渡航前の健康相談には、**渡航外来(トラベルクリニック)**の受診が最も効率的です。渡航外来では医師による個別のリスク評価のうえ、一度に複数のワクチンを接種できることが多く、渡航スケジュールに合わせた最適な接種計画を立案してもらえます。

渡航外来で確認すべき事項チェックリスト

  • 渡航先(省・都市・農村部の別)の確認
  • 渡航期間と滞在予定場所(ホテル、農村、野外キャンプ等)
  • 渡航目的(観光、ビジネス、ボランティア、医療従事等)
  • 過去の予防接種歴(母子手帳があれば持参)
  • 既往歴・現在服用中の薬(免疫抑制剤、抗凝固薬等)
  • アレルギー歴(卵、ゼラチン、抗菌薬等)
  • 妊娠の可能性・授乳中かどうか

渡航外来は大学病院・国際医療機関・一部のクリニックで受けられます。FORTHの「予防接種実施医療機関検索」等を活用してください。


費用の目安と保険適用について

渡航前ワクチンの多くは**任意接種(自費)**であり、健康保険の適用外です。以下に費用の目安を整理します。

ワクチン 接種回数 1回あたりの費用目安 総費用目安
A型肝炎 2回 6,000〜8,000円 12,000〜16,000円
B型肝炎 3回 5,000〜6,500円 15,000〜19,500円
腸チフス 1回 5,000〜7,000円 5,000〜7,000円
狂犬病 3回 10,000〜15,000円 30,000〜45,000円
日本脳炎 2〜3回 6,000〜8,000円 12,000〜24,000円
インフルエンザ 1回 3,000〜4,500円 3,000〜4,500円

※上記はすべて目安です。医療機関・地域・時期によって大きく異なります。必ず事前に医療機関に確認してください。

一部の企業では海外赴任者へのワクチン接種費用を福利厚生として補助していることがあります。人事・健康管理部門に確認することをお勧めします。また、職業上の渡航(医療従事者、動物取扱者等)では、労働衛生上の必要性から医療機関が接種費用を負担するケースもあります。


まとめ:中国渡航前の予防接種アクションプラン

中国渡航に向けた予防接種の要点を最後に整理します。

  1. 渡航の8〜12週間には渡航外来を受診し、個別のリスク評価を受ける
  2. 全渡航者共通:破傷風の追加接種確認、B型肝炎・A型肝炎の接種完了
  3. 農村部・長期滞在者:日本脳炎(5〜10月渡航)、腸チフス、狂犬病を追加検討
  4. 辺境地・動物接触リスク高い者:狂犬病プレ・エクスポージャー接種を強く推奨
  5. 冬季渡航者:インフルエンザワクチンを渡航2〜4週間前に接種
  6. ワクチン以外の対策:食品・飲料水の安全確保、蚊対策を徹底
  7. 帰国後2〜3週間以内の発熱:渡航歴を医師に伝えて速やかに受診

予防接種は「費用対効果が最も高い感染症予防手段」のひとつです。旅行保険への加入(医療搬送費用をカバーするもの)と合わせて、万全の準備で渡航に臨んでください。


参考文献・情報源

  1. 厚生労働省検疫所 FORTH「中国の感染症・感染リスク情報」 https://www.forth.go.jp/destination/asia/china.html

  2. 世界保健機関(WHO)「International Travel and Health – China」 https://www.who.int/ith/en/

  3. 米国疾病管理予防センター(CDC)「Traveler's Health – China」 https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/china

  4. 外務省 海外安全情報「中国」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_005.html

  5. 国立感染症研究所「日本脳炎ワクチンに関するファクトシート」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/je-m/je-iasrtpc/2295-related-articles/related-articles-je/1312-je-factsheet.html

  6. 国立感染症研究所「狂犬病について」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-rabies-intro.html

  7. 日本渡航医学会「渡航前ワクチン接種ガイドライン」 https://jstah.umin.jp/


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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