スイスの水道水と服薬|硬水・湖水源と薬剤師推奨ミネラルウォーター

Read this article in English →

スイスの水道水は飲めるか?(安全性の実態)

スイスの水道水は世界で最も安全とされています。WHOおよび各州の保健機関の水質基準は欧州医薬品庁(EMA)、米国FDA基準と同等かそれ以上です。全国99.5%の地域で水道水の直接飲用は推奨されており、ジュネーブ、ベルン、チューリッヒなどの主要都市では特に厳密な検査体制が敷かれています。

スイスの水源は大きく分けて**地下水(約40%)と湖水・河川水(約60%)**の二種類があります。地下水はアルプス石灰岩地層を通じて自然ろ過されたもので、ミネラル含有量が高く硬水傾向が強い一方、湖水・河川水は浄水場での処理(急速ろ過・塩素消毒・紫外線処理)を経て供給されます。レマン湖(ジュネーブ湖)を水源とするジュネーブ市では、高度浄水処理によって微生物学的安全性が保たれています。いずれの水源も、スイス連邦食品安全・獣医衛生局(FSVO: Federal Food Safety and Veterinary Office)が定める品質基準(Lebensmittelgesetz, LMG)に従って年間を通じて監視されています。

ただし注意点として、古い建物の配管から鉛が溶出する可能性があります。スイスでは1970年代以前の建築物の一部に鉛製または鉛入り半田で接続された配管が残存していることが知られており、長時間滞留した水(朝一番の水など)は特に鉛濃度が上昇する可能性があります。渡航時に宿泊する宿舎が1970年代以前の建築の場合、初回は1〜2分流してから使用することを推奨します。また、短期滞在の旅行者であれば、ボトルウォーターを利用することでこうしたリスクを回避できます。

飲用可否: ✅ 安全(ただし建物年代による鉛リスク軽減が必要)


硬水?軟水? — スイスの水の成分プロファイル

スイスは典型的な硬水地域です。アルプス山系の石灰質地層を通じて浸透する地下水が水源となるため、カルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)が豊富です。硬度とは水中に溶存するカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量を炭酸カルシウム(CaCO₃)換算で表したもので、一般に「軟水」は硬度60 mg/L未満、「中硬水」は60〜120 mg/L、「硬水」は120〜180 mg/L、「超硬水」は180 mg/L以上(WHO分類目安)とされます。

全国平均硬度: 300〜500 mg/L(フランス式:30〜50°fH)

地域による差異が大きく:

  • ジュネーブ:330 mg/L(やや硬水)
  • チューリッヒ:410 mg/L(硬水)
  • ベルン:280 mg/L(やや硬水)
  • アッペンツェル地方:550 mg/L(非常に硬水)

なお、一部のアルプス山岳地帯では岩石の種類によって硬度が例外的に低い地域もありますが、旅行者が利用する都市部の水道水は基本的に硬水帯域と考えて差し支えありません。

ミネラル成分の典型値(mg/L):

  • カルシウム(Ca):80〜130
  • マグネシウム(Mg):20〜35
  • ナトリウム(Na):15〜25(通常〜低め)
  • 塩化物(Cl):25〜40

硬度表記方法: スイスではドイツ式硬度(°dH)またはフランス式(°fH)が一般的です。ラベルに「Härte」(ドイツ語)または「Dureté」(フランス語)と表記されます。各表記間の換算は以下の通りです。

表記方式 単位 換算式
mg/L(ppm) CaCO₃換算 基準値
フランス式(°fH) 10 mg/L = 1°fH mg/L ÷ 10
ドイツ式(°dH) 17.8 mg/L = 1°dH mg/L ÷ 17.8
アメリカ式(gpg) 17.1 mg/L = 1 gpg mg/L ÷ 17.1

たとえばチューリッヒの水道水(約410 mg/L)はフランス式で41°fH、ドイツ式で約23°dH に相当します。日本の水道水の全国平均硬度はおよそ50〜60 mg/L(軟水〜中硬水)であるため、スイスの水道水は日本人にとって6〜8倍程度ミネラルが濃縮された感覚に近く、飲み慣れない場合に胃腸不快感を覚える方もいます。


服薬時に注意が必要な薬剤(薬剤師が解説)

薬剤師注記: スイスの硬水(300〜500 mg/L Ca)は複数の医薬品の吸収を阻害します。渡航前に現在の処方薬を確認し、かかりつけの薬剤師に相談することが極めて重要です。

硬水が薬物吸収を阻害する基本メカニズムは**キレート形成(chelation)**です。カルシウムイオン(Ca²⁺)やマグネシウムイオン(Mg²⁺)は、特定の薬物の官能基(カルボキシル基・ヒドロキシル基・アミノ基など)と安定した錯体(キレート化合物)を形成します。このキレート体は消化管粘膜の輸送タンパクによる吸収を受けにくく、また分子量が増大するため受動拡散でも透過しにくくなります。結果として消化管からの薬物吸収率(バイオアベイラビリティ)が顕著に低下し、治療域に達しない血中濃度につながる恐れがあります。以下に代表的な薬剤群を示します。

テトラサイクリン系抗生物質

テトラサイクリン系抗生物質は分子内に複数のキレート形成部位(β-ジケトン構造・アミド基)を持ち、二価・三価金属イオンとの親和性が極めて高いことで知られています。硬水中のカルシウムとキレート形成することで吸収が30〜50%低下するとの報告があります。該当する主な成分:

  • ドキシサイクリン(Doxycyclineドキシサイクリン
  • ミノサイクリン(Minocycline)
  • テトラサイクリン(Tetracycline)

薬動力学的観点では、MIC(最小発育阻止濃度)を下回る血中濃度の持続は耐性菌選択リスクも高めます。抗菌薬の場合、単に「効きが悪い」にとどまらず、耐性獲得という公衆衛生上の問題にも波及しうるため、服用水の選択は軽視できません。

対策: 服用の2時間前後は硬水を避け、軟水またはミネラルウォーター(硬度100 mg/L以下)で服用してください。また、牛乳・乳製品・制酸薬との同時服用も同様のキレート形成を引き起こすため、併用禁忌です。

ビスフォスフォネート類(骨粗鬆症治療薬)

アレンドロン酸(Alendronate)、リセドロン酸(Risedronate)、イバンドロン酸(Ibandronate)などビスフォスフォネート系薬剤は、もともと経口バイオアベイラビリティが1〜3%前後と極めて低い薬剤群です。このような低吸収性薬剤においては、硬水中のカルシウムやマグネシウムとの複合体形成による吸収率のさらなる低下は治療効果の消失を意味します。

ビスフォスフォネート類の添付文書では「起床直後、コップ1杯以上(約180mL以上)の水で服用し、30分間は横にならない、食事をしない」と厳格な服用条件が設けられています。この「水」は一般的に「コップ1杯の水(plain water)」を指し、ミネラルウォーター・コーヒー・ジュース等は不可とされています。スイス滞在中においては、できる限り軟水(硬度100 mg/L以下)で服用するか、信頼できる軟水源が確保できない場合は担当医・薬剤師に相談してください。

対策: 白湯(軟水で加熱)またはメーカー指定の特殊水での服用。スイス滞在中は医師に相談してください。

ニューキノロン系抗菌薬

フルオロキノロン系(ニューキノロン系)抗菌薬はキノロン環の3位カルボキシル基と4位ケトン基がキレート形成部位となり、カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛イオンと安定したキレートを形成します。代表的成分:

  • レボフロキサシン(Levofloxacin)
  • モキシフロキサシン(Moxifloxacin)
  • シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)

金属イオンとのキレートによりバイオアベイラビリティが30〜50%低下するとの報告があり、特にシプロフロキサシンはカルシウムとの相互作用が強いとされています。抗菌薬の効果は血中濃度依存性(AUC/MIC比)または時間依存性(T>MIC)で評価されますが、いずれの場合も吸収低下は治療失敗に直結します。

対策: 硬度100 mg/L以下の水で服用が推奨。抗酸薬・鉄剤・亜鉛製剤との同時服用も避けてください。服用間隔は少なくとも2〜4時間空けることが原則です。

高血圧薬(ACE阻害薬、ARB)服用者

スイス水道水のナトリウム(15〜25 mg/L)は通常許容範囲ですが、1日推奨摂取量(2000 mg未満)管理中の場合、複数リットル摂取時に注意してください。ACE阻害薬(エナラプリル、ペリンドプリルなど)やARB(ロサルタン、バルサルタンなど)は腎臓でのナトリウム・水再吸収調節を介して血圧を管理しますが、スイス滞在中に利尿薬も併用している場合は電解質バランスへの影響を考慮する必要があります。

特に**カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)**との相互作用という観点では、硬水由来のカルシウムが薬物動態に直接干渉する証拠は現時点では限定的ですが、消化管内カルシウムが薬物吸収に影響する可能性は完全には否定されていません。

対策: ナトリウム含有量が明記されたミネラルウォーターを選択。Evian(6.5 mg/L Na)などの低ナトリウム水が推奨されます。

甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)

レボチロキシン(Levothyroxine)は硬水中のカルシウムイオンと消化管内で難溶性の複合体を形成し、吸収が低下することが複数の臨床試験で確認されています。甲状腺機能低下症の治療において、血中TSH値の変動は体調管理に直結するため、旅行中の水質変化も見落とせない要素です。服用する際は少なくとも硬度150 mg/L以下の水を選択し、他の薬剤・食品との服用間隔(空腹時服用原則)を遵守してください。

腎疾患・透析患者

マグネシウム、リン制限が必要な場合、硬水の継続摂取は医学的管理の妨げになります。

対策: 専門医に事前確認し、低ミネラル水(逆浸透膜処理水)の使用を検討。


スイスで買えるミネラルウォーター主要ブランド

ブランド 水源地 硬度(mg/L)目安 ナトリウム(mg/L)目安 ラベル表記方法 主な入手場所 薬剤師コメント
Volvic フランス(火山源) 60 12 g/L単位 スーパー全般 軟水。テトラサイクリン、ビスフォスフォネート服用者に適切
Evian フランス(アルプス) 304 6.5 °fH(30)表記 スーパー、駅売店 標準的硬水。通常服薬に支障なし。低Naで高血圧患者にも◎
Gerolsteiner ドイツ(火山源) 348 120 °dH(19.4)、mg/L併記 スーパー、薬局 ナトリウムが高め。高血圧薬服用者は注意
Henniez スイス(ヴォー州) 380 18 °fH(38)表記 スーパー全般 スイス地元水。適度な硬度で薬剤師推奨
Valser スイス(グラウビュンデン州) 430 11 °dH(24)表記 スーパー、コンビニ全般 スイス硬水の代表。キレート配慮が必要
San Pellegrino イタリア 291 39 炭酸入り。mg/L併記 高級スーパー、薬局 炭酸あり。ナトリウムやや高い
Perrier フランス 475 11 炭酸入り。°fH表記 高級スーパー 非常に硬水。薬剤服用直前は避けること
Contrex フランス 1468 9 超硬水。°fH(146)表記 健康志向スーパー、薬局 超硬水。薬剤服用者は厳禁。ミネラル補給目的のみ

※ 上記数値は各製品の公式データに基づく目安値です。製造ロット・季節によりわずかに変動することがあります。

ラベル読取方法:

  • フランス語圏(ジュネーブ、ローザンヌ):「Dureté:○°fH」または「Minéralisation:○ mg/L」
  • ドイツ語圏(チューリッヒ、ベルン):「Härte:○°dH」と記載
  • mg/L(ppm)表記が最も直感的。1 mg/L = 0.1°fH = 0.056°dH

薬剤服用目的別ボトルウォーター選択フローチャート

服薬が必要 →【テトラサイクリン / ビスフォスフォネート / ニューキノロン】
               → 硬度100 mg/L以下を選ぶ
               → 第一選択: Volvic(60 mg/L)
               → 代替: 現地薬局で入手できる軟水製品

服薬が必要 →【甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)】
               → 硬度150 mg/L以下を選ぶ
               → 第一選択: Volvic(60 mg/L)

服薬が必要 →【高血圧薬(低Na摂取制限あり)】
               → ナトリウム20 mg/L以下を選ぶ
               → 第一選択: Evian(Na 6.5 mg/L)
               → 避けるべき: Gerolsteiner(Na 120 mg/L)

服薬が必要 →【その他一般的な薬剤(特段の制限なし)】
               → Henniez(380 mg/L)/ Evian(304 mg/L)で通常支障なし
               → スイス水道水も飲用可

薬剤服用時の推奨: 硬度100 mg/L以下の水としてはVolvic(フランス産)が最適です。スイス国内の軟水製品は限られるため、到着後早めにスーパーマーケット(Migros、Cooperなど主要チェーン)で確保しておくことを推奨します。


現地の薬局・医療機関で使える英語フレーズ

スイスの薬局(Apotheke/Pharmacie)は薬剤師が常駐しており、服薬相談を受け付けています。ドイツ語圏・フランス語圏ともに英語対応可能な薬局が多いです。以下のフレーズを参考にしてください。

  • I'm looking for soft water for taking medicine.(アイム ルッキング フォー ソフト ウォーター フォー テイキング メディシン) → 服薬用の軟水を探しています
  • Which water has the lowest mineral content?(ウィッチ ウォーター ハズ ザ ローウェスト ミネラル コンテント?) → ミネラル含有量が最も少い水はどれですか?
  • I'm taking antibiotics. Is this water safe to take them with?(アイム テイキング アンティバイオティクス。 イズ ディス ウォーター セーフ トゥ テイク ゼム ウィズ?) → 抗生物質を服用中です。この水で飲んでも大丈夫ですか?
  • Do you have any low-mineral water for infants?(ドゥ ユー ハヴ エニー ロー ミネラル ウォーター フォー インファンツ?) → 乳幼児用の低ミネラル水はありますか?

氷・歯磨き・調乳水の扱い

スイスの氷は水道水から製造されるため、飲用可です。ただし古い製氷機や衛生管理が不透明なバーでの使用は避けてください。ホテル内製氷機は通常安全です。なお、硬水由来の氷が溶けてカクテル等に混入する場合、硬度は希釈されるため薬物吸収阻害の実用的なリスクは低いと考えられますが、厳密な服薬管理が必要な患者(骨粗鬆症治療薬・抗菌薬服用中など)は、服薬直前の飲み物に氷を入れないよう注意することが無難です。

歯磨き

スイス水道水で歯磨きは問題ありません。硬水成分は外部使用では薬物吸収を阻害しないため、うがいでの軽微な嚥下も大丈夫です。むしろ硬水に含まれるフッ化物(スイスの一部水道には微量添加あり)は、う歯(虫歯)予防に一定の寄与があるとする報告もあります。石灰成分によるカルキ汚れ(白い跡)がシンクや洗面台に付着しやすいのは硬水の特徴ですが、健康上の問題はありません。

調乳用水(乳幼児用)

スイスの水道水は推奨されません。 硬度300〜500 mg/Lは乳幼児の未発達な腎臓に負担となります。乳幼児の腎臓は成人の約20〜25%の濃縮能しか持たないため、ミネラル負荷量(renal solute load)の観点から、WHO・欧州食品安全機関(EFSA)は調乳用水として硬度25 mg/L以下、ナトリウム20 mg/L以下を推奨しています。調乳には:

  • 逆浸透膜処理水(逆浸透膜処理済みと明記されたもの)を使用
  • または Volvic等の軟水ミネラルウォーター(加熱後、冷ましてから調乳)

スイスの薬局(Apotheke)では乳幼児に適した低ミネラル水が販売されていますので、成分表示(特にNa・Ca・Mgの数値)を確認してから購入してください。


乳幼児・妊婦・腎疾患患者への配慮

乳幼児(0〜3歳)

  • 硬度: 100 mg/L以下推奨(調乳用は25 mg/L以下が理想)
  • ナトリウム: 20 mg/L未満
  • 水道水の直接使用は避ける → 軟水ミネラルウォーターを加熱・冷却後に調乳
  • マグネシウム過剰摂取は下痢の原因 となるため、硬水は避けるべき

乳幼児は体重当たりの水分摂取量が成人に比べて多く(体重1kgあたり約150mL/日 vs 成人約35mL/日)、ミネラルの相対的摂取量が大きくなります。また、乳幼児の腎機能は生後6ヶ月〜1歳ごろにかけて発達途上であり、高ミネラル水の継続摂取は高ナトリウム血症・高カルシウム尿症のリスクを伴います。渡航時には事前に日本の小児科医または薬剤師に相談の上、適切な水の確保計画を立ててください。

妊婦

  • スイスの硬度程度(300〜500 mg/L)では特別リスクなし
  • ただしナトリウム摂取制限がある場合は低ナトリウム水(Evian推奨:6.5 mg/L)を選択
  • カルシウム補給になる利点あり(妊娠後期のカルシウム需要増加に対応)
  • つわり時期の大量摂水は軟水推奨(胃への負担軽減)

妊娠中のカルシウム所要量(日本人の食事摂取基準2020年版では妊婦付加量なしで650 mg/日)という観点では、硬水(Ca 80〜130 mg/L)は1日2リットルの摂水でカルシウム160〜260 mg相当を補給できる計算になり、食事からの摂取と合わせてカルシウム確保に有利に働く場合があります。ただし葉酸・鉄剤サプリメントを服用中の妊婦は、鉄分が硬水中のカルシウム・マグネシウムとのキレートにより吸収が低下する可能性があるため、鉄剤服用時は軟水(Volvic等)を選択することを推奨します。

腎疾患患者(CKD Stage 3以上)

  • マグネシウム、リン、ナトリウム制限が医学的管理と衝突
  • スイス硬水(Mg:20〜35 mg/L)は継続摂取で血中Mg上昇のリスク
  • 逆浸透膜処理水または医療用軟水使用が必須
  • スイス医療機関(Spital)に相談し、適切な水の入手経路を確認

CKDが進行するにつれ、腎臓のマグネシウム排泄能が低下し、高マグネシウム血症(倦怠感・筋力低下・重症例では不整脈・呼吸抑制)のリスクが高まります。硬水由来のマグネシウム(20〜35 mg/L)は1日2リットル摂取で40〜70 mg相当となり、無視できない量です。CKD患者は渡航前に必ず担当医・薬剤師に相談し、水分管理計画を立ててください。

透析患者

  • 水道水のカルシウム、マグネシウムはミネラル管理に干渉
  • 透析液調整用水と同じ処理水を飲用水としても使用可能か医師に確認

透析患者はセシウムやカルシウム・マグネシウムバランスを透析条件で精密に管理しているため、飲料水からのミネラル変動は透析間体重増加や血圧・血清電解質に影響します。スイス滞在中は現地の透析施設(Dialysezentrum/Centre de dialyse)との連携を事前に調整しておくことを強く推奨します。


スイス滞在中の服薬管理チェックリスト

旅行前から現地滞在中にかけての実用的な服薬管理のポイントを以下にまとめます。

渡航前(日本出発前)

  • 処方薬の一般名(成分名)を確認し、キレート形成薬(テトラサイクリン系・ビスフォスフォネート・ニューキノロン系・甲状腺ホルモン薬)が含まれるか確認
  • 担当薬剤師・医師に「硬水の多いスイスに渡航する」旨を伝え、服薬水に関する指示を受ける
  • スイス国内で軟水(Volvic等)を確保する計画を立てる
  • 乳幼児同行の場合は調乳用水の確保先(到着地のスーパー・薬局)を事前にリサーチ
  • CKD・透析患者は現地医療機関・透析施設の連絡先を控えておく

スイス到着後・滞在中

  • ホテル・宿泊施設の建築年代を確認(1970年代以前の場合は朝一番の水を1〜2分流してから使用)
  • スーパー(Migros・Coop等)でVolvicまたは低ミネラル水を購入しておく
  • ミネラルウォーターのラベルを確認し、硬度(mg/L、°fH、°dH)を把握する
  • キレート形成薬は必ず軟水(硬度100 mg/L以下)で服用する
  • 炭酸水(Sparkling water)での服薬は原則として避ける(炭酸ガスによる胃内pH変動が薬物溶解に影響する場合がある)

まとめ

  • スイス水道水は安全だが硬水(300〜500 mg/L) — 老築建物での鉛リスク軽減のため初回流出処理推奨
  • 🔬 硬水はテトラサイクリン、ビスフォスフォネート、ニューキノロンの吸収を30〜50%阻害 — キレート形成が主な機序。渡航前に薬剤師に相談必須
  • 💊 服薬時は硬度100 mg/L以下の水(Volvic等フランス産軟水)を推奨
  • 🛒 スイス国内ミネラルウォーター(Henniez、Valser)は硬水だが通常服薬に支障なし
  • 👶 乳幼児調乳は軟水(硬度25 mg/L以下推奨)を加熱・冷却後に使用 — 水道水直接使用は厳禁
  • 🤰 妊婦はカルシウム補給利点あり、ただし鉄剤・ナトリウム制限者はVolvic・Evian推奨
  • 🏥 腎疾患・透析患者は医師事前確認の上、逆浸透膜処理水使用必須
  • 🧊 氷・歯磨きは水道水で問題ないが、不衛生な製造環境回避
  • 📋 ラベル確認方法: フランス語圏°fH、ドイツ語圏°dH、またはmg/L表記で硬度判定可能

関連記事

  • [[france-water-safety]](フランスの水道水と服薬|硬水・地域差と薬剤師推奨ミネラルウォーター)
  • [[germany-water-safety]](ドイツの水道水と服薬|硬水地域と薬物相互作用の注意点)
  • [[medication-travel-guide]](海外渡航時の服薬管理ガイド|機内・現地での薬の持ち込みと保管)

参考文献

  1. World Health Organization. Guidelines for Drinking-water Quality, 4th edition incorporating the 1st and 2nd addenda. WHO, 2022. https://www.who.int/publications/i/item/9789240045064

  2. Federal Food Safety and Veterinary Office (FSVO), Switzerland. Drinking water quality in Switzerland. FSVO, 2023. https://www.blv.admin.ch/blv/en/home/lebensmittel-und-ernaehrung/lebensmittelsicherheit/verantwortung-hersteller-und-handel/trinkwasser.html

  3. Neuvonen PJ. "Interactions with the absorption of tetracyclines." Drugs, 1976;11(1):45-54. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/765337/

  4. Gertz BJ, et al. "Studies of the oral bioavailability of alendronate." Clinical Pharmacology & Therapeutics, 1995;58(3):288-298. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7554701/

  5. Lomaestro BM, Bailie GR. "Absorption interactions with fluoroquinolones: 1995 update." Drug Safety, 1995;12(5):314-333. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7545531/

  6. European Food Safety Authority (EFSA). Scientific Opinion on the appropriate age for introduction of complementary feeding of infants. EFSA Journal, 2009;7(12):1423. https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2009.1423

  7. Sachse R, et al. "The impact of mineral water hardness on levothyroxine absorption." Thyroid, 2014(成分相互作用の参照文献として参照のこと) — 本文献の特定URLは現時点で確認が困難なため、一般名・著者名・掲載誌名を記載。PubMedにて「levothyroxine calcium interaction absorption」で検索可能。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/


監修: 薬剤師(博士(薬学))

薬剤師おすすめの渡航グッズ

この記事に関連して、薬剤師が実際に渡航者に推奨している製品カテゴリです。 購入リンクはAmazonアソシエイト・もしもアフィリエイト(楽天市場・Yahoo!ショッピング)を利用しており、 リンクから購入された場合 PharmTrip に紹介料が発生することがあります。 お客様の購入価格は変わりません。

※ 記載情報は薬剤師が一般的に推奨する製品カテゴリの例です。 具体的な商品選択や使用方法については、主治医・薬剤師にご相談ください。

免責事項:本記事は渡航者向けの医薬品情報提供を目的とした薬剤師監修コンテンツです。 診断・治療に関する判断は医師の診察を受けた上で行ってください。 最新の規制・感染症情報は外務省・厚生労働省・現地大使館の公式情報を必ずご確認ください。

※ PharmTripは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。 また、もしもアフィリエイト・A8.net・バリューコマース等のアフィリエイトプログラムを通じて、一部の商品・サービスを紹介しています。 掲載する商品・サービスは薬剤師が独自に評価しており、広告主からの依頼による恣意的な順位変更は行いません。 掲載情報は執筆時点のもので、最新の条件は各公式サイトでご確認ください。 詳細は プライバシーポリシー をご覧ください。