スイスに薬を持ち込む手順|Swissmedic規制と麻向法・処方箋持参を薬剤師が解説

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スイスへの薬持ち込み|基本ルールを薬剤師が解説

スイスへの渡航を予定されている方が最初に確認すべきは、持参する医薬品がスイスの法律で許可されているかという点です。EUと異なる独立した医薬品規制を有するスイスでは、想定外の薬品が没収されるケースも少なくありません。本記事では、処方薬・市販薬の持ち込みルール、禁止成分、必要書類を薬剤師の視点から詳しく解説します。

スイスはEU非加盟ながらシェンゲン協定加盟国であり、EU域内とは異なる独自の医薬品法体系(Heilmittelgesetz: HMG)を有しています。医薬品の承認・監視はSwissmedic(スイス医薬品・医療製品研究所)が担っており、日本の独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相当する機関です。EU各国で承認された医薬品であっても、Swissmedicの承認がなければスイスでは合法的に販売・使用できません。この「独自審査体制」が、日本からの持ち込みで最も注意が必要なポイントです。

スイスの医薬品持ち込みルールの概要

スイスでは、個人使用目的の医薬品に限り一定量の持ち込みが認められています。ただし、以下の条件を満たす必要があります:

  • 滞在期間に必要な量のみ(通常1ヶ月分程度が目安)
  • 医学的妥当性がある(医師の処方に基づく、または明確な個人使用の証拠がある)
  • スイスで許可されている医薬品である

スイスの医薬品法(HMG第20条および関連条文)では、個人使用に限り、商業的目的なく少量を持ち込む場合は特別な輸入許可が免除されます。ただしこの「少量」の定義は成分・規制区分によって異なり、麻薬・向精神薬については別途スイス連邦保健庁(FOPH: Federal Office of Public Health)の規制に従う必要があります。スイス連邦保健庁はBetäubungsmittelgesetz(BetmG:麻薬法)に基づき、規制物質の持ち込みに関する具体的な要件を定めています。

スイス入国時の医薬品チェックは、チューリッヒ・ジュネーブ・バーゼルなど主要空港の税関で実施されます。申告義務があるにもかかわらず申告しなかった場合、医薬品の没収のみならず行政罰の対象となる可能性があります。持ち込む医薬品の種類・量にかかわらず、「申告する・しない」を迷ったときは必ず申告するという原則を徹底してください。

薬剤師メモ

スイスはSwissmedic(スイス医薬品庁)によって医薬品が厳密に審査されています。日本で市販されている風邪薬や消化薬の一部も、スイスでは医療用医薬品に分類されるか、成分が異なる場合があります。事前確認が必須です。また、スイス連邦の公用語はドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4言語であり、地域によって使用言語が異なります。薬の成分表示や説明書が英語に対応していない場合もあるため、英文の書類を自分で用意することが不可欠です。


処方薬の持ち込みで必要な書類

英文処方箋(Prescription)の取得

処方薬を持ち込む場合、以下の書類を日本で用意してください:

書類名 詳細 取得場所 注記
英文処方箋 医師署名・医療機関名・連絡先入り 処方医の病院・診療所 複数枚用意推奨
医学証明書(Letter of Medical Necessity) 疾患名・服用理由を英文で 医師に依頼 不要な場合もあるが用意推奨
薬剤師記載の英文説明書 成分名(一般名)・用量・用法 薬局カウンター 薬剤師に相談
パスポートコピー 持参者の身分確認用 自身で準備 スイス滞在中も常時携帯

処方箋取得時のコツ

  1. 渡航予定を医師・薬剤師に早期(渡航1ヶ月前程度)に伝える
  2. 「スイス渡航」であることを明記してもらう
  3. 成分名(一般名:INN名)を優先的に記載してもらう(商品名のみは避ける)
  4. 有効期間を確認する(通常3ヶ月程度が多いが、医療機関によって異なる)

英文処方箋に記載すべき項目として、患者フルネーム・生年月日・発行医師名・医療機関住所・電話番号・薬品の一般名(INN)・規格・用量・用法・日数分が最低限必要です。これはSwissmedicが定める個人輸入の要件に沿ったものであり、記載が不十分な場合は税関で書類として認められないことがあります。医師に作成を依頼する際には、「International Nonproprietary Name(INN)での記載をお願いしたい」と伝えると、海外での通用性が高まります。

処方箋はPDFで発行してもらいスマートフォンに保存する方法も便利ですが、税関ではプリントアウトした紙媒体の方が確実に認識されます。原本1部+コピー2部の計3部を持参することを薬剤師としてお勧めします。

スイス大使館への事前照会

医療用麻薬(鎮痛薬、睡眠薬)や特殊な成分を含む場合、事前にスイス大使館に照会することを強く推奨します。

  • 在日スイス大使館 領事部(東京)
  • メール照会が一般的(書簡での回答まで1〜2週間程度を目安に)
  • 医薬品の成分名(INN)・用量・処方理由を英文で記載して問い合わせる

スイスでは麻薬法(BetmG)に基づき、規制薬物の個人所持・携行には厳格な管理が求められます。スイス連邦保健庁(FOPH)が公開する「Travelling with Medicinal Products」のガイドラインでは、麻薬・向精神薬を携行する場合は医師による証明書を携帯することが明示されています。なお、スイスはシェンゲン協定加盟国であるため、他のシェンゲン加盟国を経由してスイスに入国する場合でも、スイスの規制が独立して適用されます。「EU入国時に問題なかった=スイスでも問題ない」という認識は誤りであるため注意が必要です。


市販薬の持ち込みルールと注意点

持ち込み可能な市販薬の目安

一般用医薬品(OTC医薬品)でも、スイスで販売されていない成分や分類が異なる場合があります:

医薬品カテゴリ 持ち込み可否 留意点
総合感冒薬(アセトアミノフェン配合) ◎ 可能 成分確認が必須。日本での一般名を書類に記載
制酸薬(H2ブロッカー含有) ◎ 可能 一般用医薬品扱いなら可。医療用は要事前申告
下痢止め薬(ロペラミド配合) ✓ 要確認 スイスでも販売されているが念のため書類用意
抗ヒスタミン薬 ✓ 要確認 特定成分は処方薬扱い。薬剤師に確認必須
湿布・軟膏類 ◎ 可能 量が少なければ通常問題なし
サプリメント・栄養補助食品 △ 注意 スイスでは医薬品扱いとされる場合あり

薬剤師メモ

日本の一般用医薬品でも「第1類医薬品」に分類される商品(例:ロキソプロフェンナトリウム配合の解熱鎮痛薬)は、スイスでは医療用医薬品に相当することがあります。持ち込み前に薬局で必ず相談してください。

市販薬の薬学的注意点:成分別解説

アセトアミノフェン(Paracetamolパラセタモール)配合の感冒薬・解熱鎮痛薬

アセトアミノフェンはWHO必須医薬品リストにも掲載されている世界的に普及した解熱鎮痛薬で、スイスでもOTCで広く販売されています。作用機序はシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害を介した中枢性の解熱・鎮痛と考えられており(末梢性抗炎症作用は弱い)、胃腸障害リスクが低い点が特徴です。日本の配合感冒薬に含まれるアセトアミノフェンはスイスでも問題なく持ち込めますが、1日最大投与量(成人で通常4,000mg以下)を超えないよう注意が必要です。アルコールとの併用は肝毒性リスクを高めるため、スイス渡航中の飲酒と服薬には慎重を要します。

抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、セチリジン等)

第1世代抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン等)は中枢性鎮静作用(眠気)が強く、フライト中・運転時の使用に注意が必要です。スイスでは第2世代抗ヒスタミン薬(セチリジン、ロラタジン等)の方がOTCとして普及しており、第1世代のOTC販売は一部国で制限される傾向があります。日本の花粉症薬・アレルギー薬を持参する場合、成分名(INN)を書類に明記することで税関対応がスムーズになります。

ロペラミド配合の下痢止め薬

ロペラミド塩酸塩は腸管μ(ミュー)オピオイド受容体に作用して腸管運動を抑制し、下痢症状を改善します。通常量(成人1回2mg)では血液脳関門を通過しにくく中枢性のオピオイド様作用は現れませんが、過剰摂取では不整脈リスクが報告されているため、添付文書の用法・用量を厳守してください。スイスでも同成分製品が市販されているため、持ち込み自体は通常問題ありませんが、規格は製品によって異なります。

H2受容体拮抗薬(ファモチジン、ラニチジン等)・プロトンポンプ阻害薬(PPI)

ファモチジン等のH2ブロッカーはOTCとして持ち込み可能なケースが多いですが、PPIの一部(オメプラゾール等)はスイスでの分類が製品によって異なります。長期使用中のPPIがある場合は英文処方箋を用意しておくと安心です。

おすすめ持参薬品リスト

比較的スイスでも入手困難で、持ち込みが認められやすいもの:

  • 絆創膏・ガーゼ:日本製の質が評価される
  • 酔い止め薬(ジメンヒドリナート配合)
  • 整腸薬(乳酸菌製剤、生菌製剤)
  • 目薬(防腐剤無添加のもの、特にソフトコンタクトレンズ対応品)
  • 保湿性軟膏(ワセリン等の基剤、皮膚保護用品)
  • 虫刺され・かぶれ用外用薬(ステロイド外用薬の弱〜中程度のもの+処方箋)
  • 常用の胃腸薬・整腸薬(スイスで同等品が見つけにくい場合があるため)

禁止・規制されている成分と医薬品

特に注意が必要な成分

成分・医薬品 規制状況 理由・備考
コデイン含有医薬品 ✗ 厳禁(個人持ち込み原則不可) 麻薬法(BetmG)規制物質
トラマドール ✗ 厳禁(個人持ち込み原則不可) 麻薬法(BetmG)規制物質
フェノバルビタール ✗ 厳禁(個人持ち込み原則不可) 規制物質。抗てんかん薬でも不可
ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬 △ 要事前申告・医師証明書必須 向精神薬法規制。FOP事前確認推奨
Z薬(ゾルピデム、エスゾピクロン等) △ 要事前申告・医師証明書必須 向精神薬規制対象
向精神薬全般(SSRI、抗精神病薬等) △ 要事前申告・英文処方箋必須 一部はSwissmedic未承認の場合あり
アドレナリン自己注射器(エピペン) ◎ 条件付き可 医学証明書+事前申告推奨
医療用ステロイド(中〜高力価外用・全身) △ 要確認 用量・用途の英文証明が必要
インスリン製剤 ◎ 条件付き可 英文処方箋・医師証明書・注射針の処分計画書が必要な場合あり

薬剤師メモ

コデインを含む鎮咳薬・鎮痛薬は日本では市販品にも配合されている場合があります(2019年以降、12歳未満への使用は禁忌となりましたが成人向け製品には依然含まれるものがあります)。スイスでは麻薬法(BetmG)の規制物質であり、個人使用目的であっても原則として単独での持ち込みはできません。処方医から「コデイン含有薬を処方されている」という方は、渡航前に必ずスイス大使館および在日スイス大使館に詳細を照会してください。

禁止成分チェックリスト

以下の成分が含まれていないか、薬局で必ず確認してください:

  • コデイン(Codeineコデイン
  • ジヒドロコデイン(Dihydrocodeine)
  • トラマドール(Tramadol)
  • フェノバルビタール(Phenobarbital)
  • ペチジン(Pethidine)
  • モルヒネ(Morphine)
  • オキシコドン(Oxycodone)
  • ブプレノルフィン(Buprenorphine)
  • ゾルピデム(Zolpidem)※事前申告で条件付き可の場合あり
  • トリアゾラム(Triazolam)※事前申告で条件付き可の場合あり

コデイン・オピオイド系成分の薬学的解説

コデイン(Codeineコデイン)はモルヒネのプロドラッグであり、体内でCYP2D6酵素によってモルヒネへと代謝されて鎮痛・鎮咳効果を発揮します。日本ではOTCの鎮咳薬にジヒドロコデインリン酸塩として配合されているものがあります(例:ジヒドロコデインリン酸塩配合のOTC咳止め)。スイスを含む多くの欧州諸国ではコデインは麻薬規制対象であり、医師の処方なしでの販売・所持は違法です。CYP2D6の遺伝多型により「ウルトララピッドメタボライザー(超高速代謝型)」では血中モルヒネ濃度が異常上昇するリスクがあるため、欧州医薬品庁(EMA)は2013年にコデインの小児・授乳婦への使用制限を勧告しています。

トラマドール(Tramadol)はμオピオイド受容体への弱い親和性とノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害を組み合わせた中枢性鎮痛薬で、日本では「非麻薬性オピオイド鎮痛薬」として処方されますが、スイスでは麻薬法上の規制物質に該当します。国際的な麻薬規制(単一条約1961年)の附表には現在掲載されていませんが、スイス国内法での規制が適用されるため、スイスへの個人持ち込みは許可されていません。

ベンゾジアゼピン系薬・Z薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)については、GABAₐ受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用して鎮静・催眠・抗不安効果を発揮します。身体依存・精神依存を形成しやすく、急激な中断は離脱症状を引き起こすため、渡航中であっても急な服用中止は禁物です。スイスでは向精神薬法(麻薬法BetmGに準ずる規制)の対象であり、医師の証明書と英文処方箋を携帯したうえでの申告持ち込みが前提となります。


スイスでの医薬品購入と医療制度

スイスでの医薬品入手方法

もし持ち込み予定の医薬品が持ち込めない場合、またはスイス到着後に医薬品が必要になった場合:

1. Apotheke(薬局)での購入

  • スイスの薬局では薬剤師の判断で多くの医薬品が処方箋なしで販売される
  • 一般的な風邪薬・消化薬はほぼ入手可能
  • 英語対応が一般的(特にチューリッヒ・ジュネーブ・ベルン等の大都市)
  • スイスではドラッグストアよりも薬局(Apotheke)が地域医療の窓口として機能しており、薬剤師によるトリアージが広く行われている

2. 医師の診療

  • 旅行者向け診療所が都市部に複数存在
  • 料金は高額(目安として1回の診療で150〜300CHF程度ですが、施設・診療内容により異なります)
  • 旅行保険の確認が必須(スイスの公的医療保険は居住者向けのため、旅行者は適用外)

3. 緊急時の入手

  • 緊急を要する場合は救急外来(Notaufnahme / Urgences)を受診する
  • スイスの救急医療水準は高いが、費用も非常に高額になる可能性がある
  • 旅行傷害保険のキャッシュレス対応可否を事前に確認しておくこと

薬剤師メモ

スイスの医薬品価格は日本より高いことが多いです(生活費・物価水準がヨーロッパでも最高水準であるため)。持ち込む医薬品の量は「必要最小限かつ滞在分」とし、1ヶ月分を超える場合は事前に処方医と相談してください。一方でスイスの薬局(Apotheke)は質が高く、薬剤師への相談は英語で対応してもらえることが多いため、軽微な症状はスイスで対処することも選択肢に入ります。

スイス薬局での英語コミュニケーション例

現地薬局で役立つ基本フレーズをご紹介します:

場面 英語フレーズ 発音の目安
薬を探すとき I'm looking for a painkiller.(アイム ルッキング フォー ア ペインキラー) 薬剤師に成分名も伝えると確実
処方箋を見せるとき I have a prescription from my doctor in Japan.(アイ ハヴ ア プレスクリプション フロム マイ ドクター イン ジャパン) 書面を一緒に提示
アレルギーを伝えるとき I'm allergic to penicillin.(アイム アラージック トゥ ペニシリン) アレルゲン名を一般名で伝える
子どもへの使用確認 Is this medicine safe for a 5-year-old?(イズ ディス メディスン セーフ フォー ア ファイブ イヤー オールド?) 年齢・体重を伝えると正確
副作用を確認するとき What are the possible side effects?(ワット アー ザ ポッシブル サイド イフェクツ?) 薬局で必ず確認

禁止・規制されている成分と医薬品(補足:インスリン・注射薬の取り扱い)

インスリン製剤・注射薬を持ち込む場合の特別注意

インスリン製剤や自己注射薬(エピペン等)を持ち込む際には、一般の錠剤・カプセル剤とは異なる注意点があります。

必要書類(インスリン・注射薬):

  1. 英文処方箋(疾患名・インスリン種類・用量・使用頻度を記載)
  2. 英文医師証明書(糖尿病等の診断と注射の医学的必要性を証明)
  3. 注射針(ランセット含む)の廃棄方法を説明した書類(機内への注射針持ち込みには航空会社の事前確認も必要)

保管上の注意: インスリン製剤は温度管理が重要です。未開封品は2〜8℃の冷蔵保存が基本ですが、開封後は室温(25〜30℃以下)保管が可能な製品が多いです(規格・製品により異なりますので、お手持ちの添付文書を必ず確認してください)。長距離フライト中は機内温度変化に注意し、保冷ケースを活用してください。機内の手荷物にインスリンを含む注射薬を入れる場合は、TSAやスイス税関のルールに従い、液体類の申告を正確に行ってください。


空港・税関での持ち込み時の対応

チェック時のポイント

  1. 医薬品は手荷物で持参

    • 預け荷物に入れると取り出せない場合がある
    • 手荷物検査時に「医薬品を持参している」と事前申告推奨
    • 液体薬(シロップ剤等)はセキュリティチェックでの液体規制(100ml以下)の対象になる場合があるが、医療上必要な場合は免除規定あり(医師証明書持参が必要)
  2. 英文書類は常時携帯

    • 処方箋・医学証明書は複数枚コピーして携帯
    • スマートフォンへの写真保存も有効だが、紙の原本が優先される
  3. 医薬品の認識がない場合

    • サプリメント・栄養補助食品も医薬品に相当する可能性がある
    • 「何か健康補助食品を持っている」場合も正直に申告する
  4. 医薬品の識別表示

    • 薬は元の容器・パッケージのまま持参し、成分表示が外側から見えるようにする
    • 取り出しやすい場所(手荷物の上部)にまとめておく

税関申告の実際の流れ

チューリッヒ国際空港(ZRH)を例にとると、入国時には赤チャンネル(申告あり)と緑チャンネル(申告なし)に分かれています。医薬品を持参している場合(特に処方薬・管理薬物)は赤チャンネルを通ることが安全策です。税関職員から質問された場合は以下の対応が有効です:

  • 「I have prescription medications.(アイ ハヴ プレスクリプション メディケーションズ)」と申告し、英文処方箋を提示する
  • 成分名・用量・処方理由を英語で説明できるようにしておく
  • 薬品リスト(英語)を1枚にまとめて携帯すると非常にスムーズ

薬品リストの例(携帯用):

薬品一般名(INN) 用量 用法 処方理由(疾患) 数量(日数分)
Amlodipine(アムロジピン) 5mg 1日1回朝食後 高血圧症 30日分
Metformin(メトホルミン) 500mg 1日2回食後 2型糖尿病 30日分
Cetirizineセチリジン(セチリジン) 10mg 1日1回就寝前 アレルギー性鼻炎 30日分

このような一覧表を医師・薬剤師と協力して英文で作成しておくと、税関だけでなくスイス現地での医療機関受診時にも非常に役立ちます。

問題が生じた場合

医薬品が没収されたり、持ち込み拒否された場合:

  • 在スイス日本大使館(ベルン)に連絡(緊急時)
  • 税関職員の判断は覆りにくいため、事前防止が最重要
  • 没収時は受取証(Quittung)を要求する(旅行保険・海外旅行保険の請求時に必要な場合あり)
  • 治療継続が必要な処方薬を没収された場合は、現地のスイス人医師に処方を依頼することが現実的な次善策

特定疾患・特殊状況別のポイント

てんかん・神経疾患患者の渡航

フェノバルビタールはスイスの麻薬法規制対象であり、通常の個人持ち込みは認められていません。バルプロ酸(Valproate)やラモトリギン(Lamotrigine)、レベチラセタム(Levetiracetam)等の抗てんかん薬はSwissmedic承認品が存在し、英文処方箋があれば個人使用量の持ち込みは可能なケースが多いです(ただし最新情報をスイス大使館に要確認)。抗てんかん薬は絶対に自己判断で服用を中止・変更しないことが鉄則であり、渡航中の処方変更は帰国後に主治医と相談してください。

精神科・心療内科系の薬を服用中の方

SSRI(フルオキセチン、セルトラリン等)・SNRI(デュロキセチン、ベンラファキシン等)・非定型抗精神病薬(アリピプラゾール等)は、英文処方箋があれば1ヶ月分程度の持ち込みが可能なケースが多いです。ただし、一部はSwissmedic未承認品の可能性があるため、在日スイス大使館へ成分名・製品名を事前に照会することを強くお勧めします。なお、SSRI・SNRIは突然の中止により離脱症状(頭痛、めまい、電気ショック様感覚等)が生じることがあるため、旅行中であっても服薬を中断しないよう注意が必要です。

小児・乳幼児を連れた渡航

乳幼児向け医薬品は剤形・規格の違いにより現地調達が難しいことがあります。解熱薬(アセトアミノフェンシロップ剤など)や抗アレルギー薬(セチリジン小児用製剤等)は日本から持参することを推奨します。液体薬は100ml以下の容器に入れておくか、医療上必要な液体薬として申告すれば機内持ち込みも可能です(航空会社・空港のセキュリティルールを事前確認してください)。


まとめ

  • 処方薬は英文処方箋+医学証明書を必ず用意。医療用麻薬や向精神薬はスイス大使館への事前照会が必須
  • 市販薬は成分確認が鍵。日本の一般用医薬品でもスイスでは医療用に分類される場合がある。特にコデイン・ジヒドロコデイン配合のOTC鎮咳薬は「日本での市販品でも持ち込み禁止」となる
  • 禁止成分を絶対確認。コデイン・トラマドール・フェノバルビタール含有薬は麻薬法(BetmG)の規制対象であり、所持は罰則の対象となる可能性があります
  • 医薬品は手荷物持参で、英文書類は常時携帯。英文薬品リストを1枚にまとめておくと税関・医療機関双方で役立つ
  • 量は滞在期間分(目安1ヶ月)が原則。超過分は医師と相談のうえ適切な対応を検討する
  • インスリン・注射薬は別途管理が必要。温度管理・注射針の申告・航空会社への事前連絡を忘れずに
  • スイス現地の薬局(Apotheke)は高品質。軽微な症状は現地での相談・購入も有効な選択肢
  • 最新情報は在日スイス大使館・Swissmedic・外務省で確認。規制は変わる可能性があるため、渡航1ヶ月前に再確認を推奨

参考文献・外部リンク

  1. Swissmedic(スイス医薬品・医療製品研究所)- Importing medicines for personal use
    https://www.swissmedic.ch/swissmedic/en/home/humanarzneimittel/authorisation/import-export.html

  2. 連邦保健庁(FOPH)- Travelling with medicinal products
    https://www.bag.admin.ch/bag/en/home/medizin-und-forschung/heilmittel/reisen-mit-arzneimitteln.html

  3. 日本外務省 – スイス連邦 感染症危険情報・医療情報
    https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_137.html

  4. 厚生労働省 – 医薬品を海外へ持ち出す場合の注意事項
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html

  5. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)– 医薬品の適正使用情報
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html

  6. 欧州医薬品庁(EMA)– Codeineコデイン-containing medicines: PRAC review (2013)
    https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/codeine-containing-medicines

  7. WHO – Model List of Essential Medicines (23rd edition, 2023)
    https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.02


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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