スイスの医療制度概要
スイスは世界的に高い水準の医療システムを持つ国で、WHO健康寿命ランキングでも常に上位に位置しています。しかし、日本とは異なる医療体制のため、事前の情報収集が重要です。
スイスの医療体制の特徴
スイスの医療制度はカントン(州)単位の自治が強く、連邦レベルの統一制度と各カントンの規制が並立する複層構造です。全住民は強制医療保険(KVG/LAMal)への加入が義務付けられており、保険者は複数の民間保険会社から選択できます。訪問者(旅行者・短期滞在者)はこの強制保険の対象外であるため、海外旅行保険または滞在国の民間保険で医療費をカバーする必要があります。
スイスの医療の特徴として、「ゲートキーパー制度(Hausarztmodell)」が浸透していることが挙げられます。かかりつけ医(Hausarzt)が最初の相談窓口となり、必要に応じて専門医や病院へ紹介状を発行する仕組みです。日本の大病院への直接受診に慣れた旅行者にとっては戸惑う場面もありますが、緊急外来(Notfall)は紹介状なしで受診できます。
スイスは主に以下の医療施設で構成されています:
| 施設種別 | 特徴 | 利用シーン |
|---|---|---|
| 開業医(Arzt/Médecin) | 予約制。地域のかかりつけ医的存在 | 初期対応・軽症 |
| 緊急外来(Notfall/Urgences) | 予約なし。各病院が24時間対応 | 急病・怪我 |
| 総合病院(Kantonsspital) | 高度な医療対応 | 入院・複雑な症状 |
| 薬局(Apotheke/Pharmacie) | 処方箋医薬品と一般用医薬品を販売 | 処方箋受け取り・OTC医薬品 |
| テレメディシン | 電話・ビデオ診療 | 軽症・相談 |
なお、スイスの公用語はドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つです。チューリッヒ・ベルンなどドイツ語圏では薬局を「Apotheke(アポテーケ)」、ジュネーブ・ローザンヌなどフランス語圏では「Pharmacie(ファルマシー)」と表記します。旅行先のカントンに応じて使い分けましょう。
スイスでの薬局利用方法
薬局の営業形態と特徴
スイスの薬局(Apotheke/Pharmacie)は、以下のような特徴があります:
- 営業時間:平日8時~18時30分(地域による)、土曜日は午前のみ
- 日祝対応:夜間・日祝は「交代薬局」(Notfallapotheke)を利用
- 保険対応:スイス国民は強制保険加入;訪問者は現金払い
- 言語対応:英語対応が可能な薬局が多いが、独語圏では限定的
スイスの薬局は、日本と異なり薬剤師が相当広い裁量を持つ「ファーストコンタクト」機関として機能しています。EUに準じたセルフメディケーション推進の考え方が根付いており、軽微な症状であれば受診せず薬局で完結させることが奨励されています。医薬品はスイス独自の分類(A~E)に基づき管理されており、AおよびB分類は処方箋が必要、C・D・E分類はOTCとして購入できます。旅行者にとって実用的なのはC〜E分類の医薬品で、薬剤師や薬局補助者に症状を伝えるだけで購入可能です。
交代薬局(Notfallapotheke)の所在は、最寄りの薬局ドアや地域の薬剤師会ウェブサイト(例:薬剤師会のカントン別ページ)に掲示されています。大都市では深夜まで営業する薬局が存在することもありますが、地方では翌朝まで待つケースもあります。事前にホテルで最寄りの交代薬局を確認しておくと安心です。
薬局での医薬品購入手順
処方箋がある場合:
- 医師から処方箋(Rezept/Ordonnance)を受け取る
- 薬局に処方箋を提示
- 薬剤師が医薬品を調剤・交付
- 現金またはカード決済(VisaやMastercardが一般的)
- 投与方法・注意点を薬剤師から説明される
処方箋を受け取った際は、医薬品名・用量・用法・使用期間が明記されているか必ず確認しましょう。スイスの処方箋は原則として発行日から一定期間(通常は数ヶ月)有効ですが、麻薬・向精神薬などの管理薬物は期間制限が厳しく設定されています。
処方箋がない場合(一般用医薬品):
症状を薬剤師に説明すると、適切な医薬品を推奨してくれます。スイス薬局では薬剤師が相談窓口として機能し、軽症であれば受診の必要がないと判断してくれることもあります。英語が通じない場面では、以下のフレーズを活用してください。
薬局で使える英語フレーズ例:
-
I have a headache. Do you have any painkillers?(アイ ハヴ ア ヘッドエイク。ドゥ ユー ハヴ エニー ペインキラーズ?) -
I feel nauseous and have diarrhea.(アイ フィール ノーシャス アンド ハヴ ダイアリーア) -
I am allergic to aspirin.(アイ アム アラージック トゥ アスピリン) -
Is this safe to take with my current medication?(イズ ディス セーフ トゥ テイク ウィズ マイ カレント メディケイション?) -
Can I have the instructions in English?(キャン アイ ハヴ ジ インストラクションズ イン イングリッシュ?)
スイスでよく利用される市販医薬品(薬学的解説付き)
| 症状 | 一般名(成分名) | 形状・用法 | 薬剤師メモ |
|---|---|---|---|
| 頭痛・発熱 | パラセタモール(Paracetamol) | 錠剤・坐剤 | 日本のアセトアミノフェンと同等。最大1日4g |
| 頭痛・発熱・炎症 | イブプロフェン(Ibuprofen) | 錠剤・液剤 | 処方箋不要。食後服用推奨 |
| 胃痛・消化不良 | オメプラゾール(Omeprazole) | 錠剤 | 胸焼け・逆流症状に有効 |
| 下痢 | ロペラミド(Loperamide) | 錠剤 | 感染性下痢は使用禁忌に注意 |
| 便秘 | ビサコジル(Bisacodyl) | 坐剤・錠剤 | 刺激性下剤。依存のリスク注意 |
| 風邪・ビタミン補給 | アスコルビン酸(Vitamin C) | 錠剤・発泡錠 | 発泡錠タイプが薬局で広く流通 |
| 鼻づまり(局所) | キシロメタゾリン(Xylometazoline) | 点鼻スプレー | 連続使用は3〜5日まで。反跳性充血に注意 |
| 皮膚かゆみ | ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone) 0.5〜1% | 軟膏 | 低力価ステロイド。虫刺されに推奨 |
| 乗り物酔い | ジメンヒドリナート(Dimenhydrinate) | 錠剤 | 眠気に注意。運転時は避ける |
| 口腔内・咽頭痛 | アンブロキソール(Ambroxol)またはベンジダミン(Benzydamine) | トローチ・スプレー | 炎症緩和。抗生物質ではない |
薬学的解説:主要成分の機序と注意点
パラセタモール(アセトアミノフェン) 中枢神経系のCOX-3阻害および視床下部の体温調節中枢への作用により解熱・鎮痛効果を発揮します。抗炎症作用はほとんどなく、胃腸障害リスクが低いため高齢者・小児・妊婦に第一選択となりやすい薬剤です。重要な注意点として、アルコール多飲者・肝機能障害患者では最大投与量を1日2g程度に減量する必要があります。1日4g(短時間への集中服用を含む)を絶対に超えないようにしてください。スイスで販売されているパラセタモール製品は500mgまたは1,000mg規格が主流です。
イブプロフェン 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)として、COX-1・COX-2の両酵素を阻害しプロスタグランジン産生を抑制します。解熱・鎮痛・抗炎症の三作用を持ちます。胃粘膜保護作用のあるプロスタグランジンも同時に抑制するため、空腹時服用で消化器症状(悪心・胃痛)が出やすくなります。食後服用を徹底してください。また、腎機能低下者・喘息患者(アスピリン喘息)・消化性潰瘍の既往者には禁忌または慎重投与となります。アルコールとの併用は消化管出血リスクを高めます。
ロペラミド 末梢性μオピオイド受容体アゴニストとして腸管蠕動を抑制し、腸内容物の通過時間を延長します。血液脳関門をほとんど通過しないため中枢性の副作用は少ない薬剤です。重要な使用上の注意として、細菌性赤痢・腸チフス・出血性大腸炎など感染性下痢には禁忌です。発熱・血便・粘液便を伴う下痢では使用を避け、医師受診を優先してください。
ビサコジル 大腸粘膜神経叢の直接刺激による蠕動亢進と、腸内水分・電解質吸収の抑制により排便を促します。連続使用7日を超えると「怠薬性大腸(cathartic colon)」のリスクがあるため、短期使用に限定してください。旅行中の一時的な便秘への対応として適切です。
キシロメタゾリン(点鼻薬) α1アドレナリン受容体の刺激により鼻粘膜血管を収縮させ、速やかな鼻閉解消をもたらします。効果は速やかですが、連続3〜5日以上の使用で反跳性充血(薬剤性鼻炎)が生じやすくなります。旅行中の一時的な使用にとどめ、帰国後も鼻閉が続く場合は耳鼻科受診を検討してください。
薬剤師メモ
スイスの薬局ではGenerika(ジェネリック医薬品)の利用が推進されています。医師から先発医薬品が処方されても、薬剤師がジェネリックへの変更を提案することは珍しくありません。医療費節減が目的ですが、有効成分・効能効果・生物学的同等性は同等です。変更不可を希望する場合は「Please keep the original brand.(プリーズ キープ ジ オリジナル ブランド)」と明確に伝えましょう。また、スイスでは薬局が独自に「フォーミュラリー(推奨薬リスト)」を持つ場合があり、医師処方と異なるブランドを提案されることがあります。成分名を確認して判断するのが安心です。
医療施設の探し方と受診手順
開業医(プライマリ・ケア医)の探し方
スイスでは、まず開業医(GP: General Practitioner、独語圏:Hausarzt、仏語圏:Médecin généraliste)に診てもらうのが一般的です。予約なしでの受診は難しいことが多く、当日診察の空きがない場合には緊急外来(Notfall)へ誘導されることもあります。
探す方法:
- ホテルコンシェルジュに相談(英語対応可能な医師を紹介してくれます)
- Google Mapsで「Arzt」「Médecin」などと検索し、レビュー・営業時間を確認
- スイス医師会ウェブサイト( www.fmh.ch)で医師検索
- 当該地域の病院ウェブサイト→外来診療部門へ問い合わせ
- 駐スイス日本大使館ウェブサイトで公開されている医療機関リストを事前確認
開業医予約時には Do you have any availability today for an international patient?(ドゥ ユー ハヴ エニー アベイラビリティ トゥデイ フォー アン インターナショナル ペイシェント?)と電話またはメールで問い合わせるとスムーズです。
緊急時の対応
重症・急病の場合:
- 救急車呼び出し:「144」に電話(スイス全土統一番号)
- 警察:「117」、消防:「118」(火災・救助)
- 欧州共通緊急番号:「112」もスイスで有効
- 緊急外来(Notfall/Urgences):各病院の救急部門へ直行
- 英語対応:大都市(チューリッヒ、ベルン、ジュネーブ)の大型病院ではほぼ対応可能
144に電話した際は、以下の情報をできるだけ明確に伝えましょう。オペレーターはドイツ語・フランス語が主ですが、英語対応も可能なことが多いです。
- 現在地(住所・建物名・ランドマーク)
- 患者の症状(意識状態・呼吸状態)
- 発症時刻
軽症・時間外の場合:
- テレメディシン利用:24時間対応。スイスではMedgate社のテレメディシンサービスなど複数のプロバイダーが存在します(要事前登録・料金は保険の種類により異なる)
- 交代薬局(Notfallapotheke):夜間・日祝営業。薬局ドアや薬剤師会サイトで所在地を確認
受診時に必要な情報
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| パスポート | 身分確認・保険照合 |
| 保険証券 | 民間旅行保険の証券(キャッシュレス対応確認) |
| 症状メモ | 英語で症状を簡潔に記入(発症日時・経過も) |
| 医薬品履歴 | 持参している常用薬のリスト(成分名・用量・用法) |
| アレルギー情報 | 医薬品・食物アレルギーを英語でメモ |
| 既往歴メモ | 手術歴・重篤な疾患歴(英語で) |
受診時に使える英語フレーズ:
-
I have chest pain and difficulty breathing.(アイ ハヴ チェスト ペイン アンド ディフィカルティ ブリージング) -
I have been vomiting since this morning.(アイ ハヴ ビーン ヴォミティング シンス ディス モーニング) -
I am taking blood pressure medication.(アイ アム テイキング ブラッド プレッシャー メディケイション) -
I am allergic to penicillin.(アイ アム アラージック トゥ ペニシリン)
薬剤師メモ
スイスでは医療行為と薬学領域の役割分担が明確です。薬局では医師でなくても症状相談に応じますが、診断・処方は医師の独占業務です。「診断してほしい」場合は必ず医師の診察が必要という点を理解しておきましょう。一方、薬剤師は医薬品の選択・用量調整・相互作用チェックについて高度な専門知識を持っており、「今飲んでいる薬と一緒に使えますか?」という相談は薬局で積極的に行うべきです。
旅行保険の活用と医療費請求
スイスの医療費水準
スイスは世界的に医療費が高い国です。参考費用は以下の通り(目安、1 CHF ≈ 165〜170円換算):
| 医療サービス | 目安費用(CHF) | 日本円換算(目安) |
|---|---|---|
| 開業医初診 | 150〜250 | 約25,000〜43,000円 |
| 病院救急外来 | 300〜500 | 約50,000〜85,000円 |
| CT検査 | 800〜1,200 | 約135,000〜205,000円 |
| 1泊入院 | 1,500〜3,000 | 約255,000〜510,000円 |
| 薬局での市販薬 | 5〜50 | 約850〜8,500円 |
為替は変動しますので、出発前に最新レートを確認してください。旅行保険への加入は必須です。無保険での渡航は経済的に非常に高リスクです。
キャッシュレス対応の確認
出発前にすること:
- 加入している旅行保険会社に電話
- 「スイスでのキャッシュレス医療対応」を確認
- 保険証券に記載の24時間サポート番号を控える
- 対応医療施設リストをダウンロード
- 保険証券は画像化してスマートフォンに保存(クラウドバックアップも推奨)
スイスの主要な国際病院ではキャッシュレス対応(保険会社へ直接請求)が可能なケースが増えていますが、すべての医療施設で対応しているわけではありません。特に開業医や小規模クリニックでは一旦自費払いのうえ帰国後請求となる場合が多いため、クレジットカードの利用限度額を事前に引き上げておくことを検討してください。
医療施設での支払い手順
キャッシュレス対応の場合:
- 受付で保険証券を提示
- 保険会社への確認を医療施設が実施
- 自己負担分のみ現地で支払い(または払わない)
- 領収書を受け取る
キャッシュレス非対応の場合:
- 医療費を全額現地払い(クレジットカード可能が多い)
- 領収書・医療明細書を受け取る
- 帰国後、保険会社に請求手続き
領収書請求時のポイント
- 医療明細書(Rechnung/Facture)を必ず受け取る
- 診療科目・治療内容・金額が詳細に記載されているか確認
- 医師の署名・病院印があるか確認
- 診断名(ICD-10コードが記載されていると保険請求がスムーズ)
- 英語版がない場合、独語版・仏語版でも多くの日本の保険会社は対応可能
薬局での医薬品購入についても領収書(Kassenbon/Reçu)を保管しておくと、処方薬の場合は保険対象になる可能性があります。
日本から持参する医薬品と入国規制
スイス入国時の医薬品規制
スイスはEU加盟国ではありませんが、シェンゲン協定には参加しています。医薬品の持ち込みについては比較的柔軟ですが、以下に注意が必要です:
| 医薬品カテゴリ | 持ち込み可否 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一般用医薬品(風邪薬など) | ○可 | 処方箋不要。個人使用量(目安3ヶ月分以内)まで |
| 処方箋医薬品(個人用) | ○可 | 英文医師証明書・処方箋のコピーがあると対応しやすい |
| 向精神薬(ベンゾジアゼピン系など) | △要注意 | 種類・量によりスイス保健省または現地税関への申告が推奨される |
| 麻薬・依存性医薬品(医療用麻薬など) | △要事前確認 | 国際麻薬統制委員会(INCB)の定めに従い、在外公館や税関への事前申告が必要なケースがある |
| 医療用注射製剤(インスリンなど) | ○可 | 医学的必要性の証明書(英文)と注射器等を機内持ち込みする場合は医師証明書を準備 |
| 動物由来・生物製剤(一部) | △要確認 | スイス検疫・税関規制に準拠 |
薬剤師メモ
日本の一般用医薬品でも、スイスでは処方箋医薬品に該当する成分が含まれている場合があります。たとえばコデインリン酸塩含有の咳止め薬やプソイドエフェドリン(偽麻黄鹼)含有の総合感冒薬は、スイス独自の医薬品分類制度(A〜E分類)において管理対象となりうる成分を含みます。持ち込む医薬品の成分を事前にリストアップし、不明な点はスイス連邦内務省保健局(FOPH:Federal Office of Public Health)または在日スイス大使館に照会することを推奨します。国際郵便・宅配便による医薬品の送付には別途規制が適用されます。
向精神薬(ベンゾジアゼピン系:ジアゼパム、アルプラゾラムなど)を処方されている方は、医師発行の英文証明書(使用目的・必要期間・1日投与量が明記されたもの)を必ず携帯し、機内・入国審査での提示に備えてください。
持ち込み推奨医薬品
長期滞在や持病がある方は以下を日本から持参しましょう:
- 常用薬(降圧薬・糖尿病薬・抗凝固薬など):英文処方箋または医師証明書のコピー付きで、予備分も含め十分な日数分を持参
- 総合感冒薬(アセトアミノフェン・抗ヒスタミン薬含有):日本製が安心な場合に
- 整腸薬(ビフィズス菌・乳酸菌製剤など):旅行者下痢症予防の観点からも有用
- 湿布薬・非ステロイド抗炎症薬外用剤(ジクロフェナク・ケトプロフェン含有貼付剤):スイスの薬局でも入手できますが、日本製の貼付剤形は少ない
- アレルギー性結膜炎用点眼液:花粉シーズン(春〜夏)に特に有用
- ワセリン等保湿剤:冬季・高標高地滞在時の乾燥対策
- 酔い止め薬(ジメンヒドリナート含有):山岳地帯の移動に
持参医薬品は元のパッケージのまま、薬の名称・用法・用量が確認できる状態で携帯するのが原則です。錠剤だけジッパーバッグに移して持ち込むと税関で問題になる可能性があります。
スイス主要都市の医療施設情報
チューリッヒ
スイス最大の都市で、ドイツ語圏に位置します。国際空港(チューリッヒ・クロッテン空港)を擁し、多くの日本人旅行者・ビジネス渡航者が利用します。
主要病院:
- Universitätsspital Zürich(チューリッヒ大学病院):スイス国内最高水準の三次医療機関。英語対応可
- Tel: +41 44 255 11 11
- 住所: Rämistrasse 100, 8091 Zürich
- Stadtspital Triemli:チューリッヒ市立病院。救急対応あり
- Tel: +41 44 416 11 11
薬局: チューリッヒ中央駅(HB)周辺には複数の薬局が集中しています。夜間・休日の交代薬局情報はチューリッヒ薬剤師会のウェブサイトや、最寄り薬局のドア掲示で確認できます。
ベルン
スイスの首都で、日本大使館が置かれています。ドイツ語圏に位置し、旧市街はユネスコ世界遺産に登録されています。
主要病院:
- Inselspital, Bern University Hospital(インゼルシュピタル):スイス有数の大学病院
- Tel: +41 31 632 21 11
- 住所: Freiburgstrasse 18, 3010 Bern
薬局: 旧市街地のアーケード沿いに複数の薬局があります。ドイツ語圏のため英語対応は店舗によって差がありますが、観光エリアでは英語対応可能なスタッフが常駐していることが多いです。
ジュネーブ
フランス語圏に位置し、WHO・国際赤十字など多くの国際機関が集まる国際都市です。日本総領事館も置かれており、医療機関の国際対応レベルは高いです。
主要病院:
- Hôpitaux Universitaires de Genève(HUG:ジュネーブ大学病院群):フランス語・英語・スペイン語等複数言語対応。多くの旅行者・外国人居住者が利用
- Tel: +41 22 372 33 11
- 住所: Rue Gabrielle-Perret-Gentil 4, 1205 Genève
薬局: ジュネーブ市内はフランス語圏ですが、観光地・繁華街周辺では英語対応可能な薬局が多いです。スイスとフランスの国境が近いため、フランスで市販されている一部医薬品がスイスでは処方箋が必要、またはその逆になる場合があります。
ローザンヌ
レマン湖畔に位置するフランス語圏の都市。IOC(国際オリンピック委員会)本部があります。
主要病院:
- Centre Hospitalier Universitaire Vaudois(CHUV:ヴォー大学病院):フランス語圏最大規模の大学病院
- Tel: +41 21 314 11 11
ルツェルン
観光都市として日本人旅行者に人気。ドイツ語圏に位置します。
主要病院:
- Luzerner Kantonsspital(ルツェルン州立病院)
- Tel: +41 41 205 11 11
トラブル時の連絡先
在スイス日本大使館・総領事館
| 施設 | 電話 | 所在地 |
|---|---|---|
| 駐スイス日本大使館(ベルン) | +41-31-300-7700 | Engestrasse 53, 3012 Bern |
| ジュネーブ総領事館 | +41-22-749-0100 | Chemin des Fins 3, 1218 Grand-Saconnex |
| チューリッヒ総領事館 | +41-43-268-6500 | Claridenstrasse 17, 8002 Zürich |
緊急時(24時間対応): 大使館総合ホットライン:+41-31-300-7700(自動音声案内で緊急番号が案内されます)
海外で日本人旅行者が重篤な状態に陥った場合、大使館・総領事館の領事部が医療機関との調整・家族への連絡・緊急帰国支援などのサービスを提供します。まず保険会社の24時間サポートに連絡し、必要に応じて大使館を通じた支援を依頼してください。
旅行保険の24時間サポート
加入時に受け取る書類に記載の番号に電話。以下の情報を事前に整理して手元に置いてください:
- 契約者名・保険証券番号
- 現在地の住所・ホテル名
- 症状の詳細・発症時刻
- すでに受診している場合は医療施設名・担当医師名
保険会社によっては、日本語対応の医療コーディネーターが現地に同行・電話通訳をしてくれるサービスがあります。緊急度が高い場合はまず144(救急)、安定した状況であれば保険会社サポートに相談というフローが実践的です。
まとめ
- スイスの医療レベルは高いが、医療費は高額。必ず旅行保険に加入し、キャッシュレス対応を事前確認する
- 薬局は薬剤師の相談窓口として機能する。軽症ならば受診前に薬局に相談してもOK。OTC医薬品の成分・副作用・相互作用も薬剤師に確認できる
- 初期対応は開業医(GP)から始まる。ホテルコンシェルジュや大使館で医師紹介を受ける。予約が取れない場合は緊急外来(Notfall)へ
- 常用薬は日本から持参し、英文処方箋または医師証明書を用意する。向精神薬・管理薬物は事前に規制を確認
- 緊急時は「144」に電話。言語不安な場合は旅行保険の24時間サポートに連絡し、医療施設への同行通訳を依頼する
- 最新の医療情報は駐スイス日本大使館ウェブサイトで確認する(渡航前・滞在中ともに)
- 領収書・医療明細書は必ず保管。帰国後の保険請求に必須。ICD-10コードが記載された明細書だと請求がスムーズ
- 薬局で医薬品を購入する際は一般名(成分名)を確認する習慣をつける。ブランド名が異なっても成分が同じであれば同等品として使用できる
参考文献
- World Health Organization. "Switzerland - Country Health Profile." WHO Global Health Observatory. https://www.who.int/countries/che/
- Federal Office of Public Health (FOPH/OFSP). "Health in Switzerland." Swiss Confederation. https://www.bag.admin.ch/bag/en/home.html
- 独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)・厚生労働省. 「海外渡航時の医薬品持参に関する情報」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html
- European Medicines Agency (EMA). "Ibuprofen-containing medicines: updated advice." https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/ibuprofen-dexibuprofen-containing-medicines
- 在スイス日本国大使館. 「スイスの医療事情」. https://www.ch.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00004.html
- Swissmedic(スイス医薬品・医療機器局). "Medicinal Products." https://www.swissmedic.ch/swissmedic/en/home/humanarzneimittel.html
- International Narcotics Control Board (INCB). "Travellers' regulations." United Nations. https://www.incb.org/incb/en/travellers/index.html
監修: 薬剤師(博士(薬学))