中国で気をつける感染症と衛生リスク|PM2.5・腸炎対策を薬剤師が解説

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中国への渡航者が知るべき感染症・衛生リスクと実践的な対策ガイド

中国は広大な国土と多様な気候を持つ渡航先として年間多くの日本人訪問者を迎えていますが、衛生環境の地域差や特有の感染症リスクに対する事前知識が重要です。本記事では、薬剤師の視点から、北京・上海などの大都市から内陸部まで、中国全域で注意すべき感染症・衛生リスクと、実証的かつ実用的な対策をお伝えします。

なお、旅行先では常備薬の選び方や持参ルールも重要です。詳細は [[medicine-travel-abroad]] も参照してください。


中国渡航前に確認すべき感染症と予防接種

推奨される予防接種

中国渡航者向けの予防接種は、訪問地域と滞在期間によって異なります。以下の表を参考に、出発2〜4週間前に医療機関(トラベルクリニック等)に相談してください。ワクチンには「免疫獲得までの待機期間」があり、直前の接種では効果が不十分になる場合があります。

感染症 推奨度 対象地域 接種時期
A型肝炎 必須 全国(特に農村部) 出発2週間
B型肝炎 必須 全国 初回→1か月後→6か月
腸チフス 推奨 南西部(雲南・貴州)の農村部 出発2週間
日本脳炎 推奨 7月〜9月、農村部・郊外 出発2週間
麻疹・風疹(MR) 確認推奨 全国 事前に抗体確認
狂犬病(曝露前) 推奨* 動物接触の可能性がある場合 出発4週間

ワクチンの薬学的背景

A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンであり、1回接種でも短期的な感染防御が期待できますが、長期免疫には2回接種(6〜12か月間隔)が必要です。接種後2週間で防御抗体(抗HAV IgG)が産生されるため、出発直前の接種でも一定の効果があります。ただし高齢者や免疫抑制状態の方は抗体価が上がりにくいため、早めの接種と抗体確認が推奨されます。

B型肝炎ワクチンは遺伝子組換えHBs抗原を使った不活化ワクチンで、3回接種のスケジュール(0・1・6か月)が標準的です。3回完了で95%以上に防御レベルの抗体が産生されます。短期間での渡航が決まった場合は「加速スケジュール(0・1・2か月)」も可能ですが、免疫原性がやや低下する目安があるため、帰国後に追加接種を検討してください。

薬剤師メモ

特にA型肝炎は、不衛生な飲食環境からの感染リスクが高いため、短期滞在でも接種を強く推奨します。B型肝炎はワクチン接種完了に6か月必要なため、渡航予定が決まったら早急に予防接種外来を受診してください。狂犬病は咬傷後の対応も極めて重要で、曝露前接種を済ませておくと、咬傷後の免疫グロブリン投与が不要になり、アクセスが限られる地方での対応が大幅に簡略化されます。


中国特有の感染症:発生状況と対策

季節性インフルエンザとコロナウイルス

中国は冬季(11月〜3月)のインフルエンザ流行時期が日本と同期しており、混雑した公共交通機関(特に高速鉄道・地下鉄)での感染リスクが高まります。都市部では換気が不十分な密閉空間が多く、飛沫感染・接触感染の両経路への対策が必要です。

インフルエンザウイルスはA型(H1N1・H3N2)・B型ともに流行しており、中国で検出された株が翌シーズンの北半球ワクチン株の選定に影響することもあります。

対策:

  • 出発前の季節性インフルエンザワクチン接種(北半球ワクチン)
  • 特に高齢者・基礎疾患保有者は接種を強く推奨
  • N95マスクの持参(渡航先では品質のばらつきがある)
  • 手指衛生の徹底(70%エタノール製剤による消毒)

最新のコロナウイルス感染状況は、外務省ホームページおよび在中国日本国大使館の感染症情報を出発1週間前に必ず確認してください

手足口病(エンテロウイルス71型・コクサッキーウイルスA16型)

夏季(5月〜9月)に小児を中心に流行します。中国では例年数百万件単位で届出が行われており、特に5歳未満の乳幼児で重症例(脳炎・心筋炎)が報告されています。成人は既感染による免疫を有することが多いですが、免疫低下者や乳幼児連れの渡航者は注意が必要です。

エンテロウイルス71型(EV71)は中国でワクチンが承認・使用されていますが、日本では未承認であるため、日本出発前に接種することはできません。渡航中は予防行動を徹底してください。

対策:

  • 石鹸による手洗い(20秒以上)・うがいを徹底する
  • アルコール消毒剤は一定の効果あり(ただしノンエンベロープウイルスに対しアルコールの効果は限定的な側面もあるため、流水による手洗いを優先)
  • 公共施設での手すり・エレベーターボタン接触後は速やかに消毒

狂犬病

中国は狂犬病の常在国であり、毎年ヒトへの感染が報告されています。野犬だけでなく、一見健康そうなペットからの咬傷・掻傷事例も報告されており、感染経路として唾液が粘膜または皮膚の創部に触れることで成立します。

狂犬病ウイルスは末梢神経を逆行性に伝わり中枢神経に達するため、**発症後の致死率はほぼ100%**です。咬傷後の迅速な対応が生死を分けます。

対策:

  • 犬・猫・コウモリなど動物との接触を避ける
  • 咬傷・掻傷を受けた場合は直ちに(遅くとも24時間以内に)現地医療機関で曝露後予防(PEP)を開始する
  • PEPは狂犬病ワクチン接種と(曝露前未接種の場合は)狂犬病免疫グロブリン(RIG)の投与が必要
  • 曝露前ワクチン(3回接種完了)がある場合はRIG不要でワクチン2回の追加接種のみでよいため、地方渡航者には曝露前接種を特に推奨

水・食事の安全性:リスク評価と実践的対策

飲料水のリスク

中国の水道水は地域によって質が大きく異なり、上海・北京などの大都市でも消化器系の不調を起こす可能性があります。主なリスクは病原性大腸菌・ノロウイルス・クリプトスポリジウムなどの微生物汚染に加え、重金属(鉛・ヒ素)や消毒副産物(トリハロメタン類)の含有です。

飲水方法 リスク評価 対策
水道水をそのまま飲用 高リスク 避ける
ホテル提供の煮沸水・ウォーターサーバー 低リスク 利用可
ペットボトル入り飲料水(未開封) 低リスク 推奨
氷・路上販売の冷たい飲料 高リスク 避ける
加工済みジュース(紙パック・缶) 低〜中リスク 加熱処理品なら比較的安全

対策:

  • ペットボトルの水を購入し、開封時に栓が未開封であることを確認する
  • ホテルで無料提供の煮沸済み飲用水を活用する
  • 歯磨き・口すすぎにも可能な限りペットボトル水を使用する
  • 長期滞在や農村部への渡航時は携帯型浄水フィルター(中空糸膜タイプなど)の持参を検討する

薬剤師メモ

現地で下痢を発症した場合、市販の止瀉薬(ロペラミド塩酸塩含有製品)の安易な使用は推奨されません。細菌性下痢(サルモネラ・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌など)の場合、腸管蠕動を抑制することで病原体の排泄が遅延し、菌血症リスクが上昇する可能性があります。水分・電解質補給(経口補液療法:ORT)を優先し、38.5℃を超える発熱・血便・症状が48時間以上持続する場合は医療機関を受診してください。

旅行者下痢症(TD)の薬学的理解

旅行者下痢症の原因菌として最も頻度が高いのは毒素原性大腸菌(ETEC)で、全体の約40〜60%を占めるとされます。ETECはコレラ毒素に類似した易熱性毒素(LT)および耐熱性毒素(ST)を産生し、腸管での水・電解質の過剰分泌を引き起こします。

このメカニズムを踏まえると、経口補液塩(ORS)による補水が病態の根本に対応する治療法であることが理解できます。ORSのナトリウム・グルコース・カリウムのバランスは、腸管のNa⁺/グルコース共輸送体(SGLT-1)を活用した吸収促進を利用しており、WHO推奨の組成(Na⁺ 75mEq/L・Cl⁻ 65mEq/L・K⁺ 20mEq/L・グルコース 75mmol/L)に基づいて設計されています。

食事のリスク管理

食材・調理方法 リスク 選択基準
加熱済みの料理(熱々の状態) 低リスク ✓ 推奨
生野菜・サラダ 高リスク ✗ 避ける
生魚・生肉・生卵 高リスク ✗ 避ける
屋台食(回転率が高い人気店) 中リスク △ 選別が必要
高級レストラン・ホテルビュッフェ 低リスク ✓ 推奨
個別包装のスナック・加工食品 低リスク ✓ 比較的安全
冷製料理・冷えたデザート 高リスク ✗ 避ける

具体的対策:

  • 加熱調理された料理を選び、提供直後(熱々の状態)の食品を優先する
  • 新鮮さが確認できない食材(特に冷蔵管理が不確実なもの)は避ける
  • 中華料理の炒め物・煮込み料理は高温調理が多く、食材中心温度が75℃に達していれば一般的に安全性が高い
  • 調理後の放置時間が長い料理(ビュッフェの端の皿など)は避けるよう心がける

気候による感染症・衛生リスクと季節別対策

地域別・季節別の気候特性と感染症・衛生リスク

中国の気候は地域差が極めて大きく、同じ季節でも北部と南部では大きく異なります。渡航先の季節リスクを事前に把握することが予防の第一歩です。

地域・季節 気温・湿度 主なリスク 対策
北京(冬:12月〜2月) −5〜5℃・低湿度 大気汚染・乾燥による呼吸器疾患 N95マスク・加湿器
北京(春:3月〜5月) 10〜20℃ 黄砂・花粉症 N95マスク・抗ヒスタミン薬
上海(夏:6月〜8月) 25〜35℃・高湿度 熱中症・デング熱媒介蚊 水分補給・虫よけ
広州・深圳(春〜夏) 20〜35℃・高湿度 デング熱・腸管感染症 蚊対策・食品衛生
南西部(雲南・通年) 15〜25℃ 高地環境での低酸素・マラリア(一部地域) 高山病対策・マラリア予防
チベット・青海(夏) 5〜15℃(日較差大) 高山病・紫外線 アセタゾラミド・日焼け止め

大気汚染(PM2.5)への対策

北京・河北地方・東北部では冬季(特に11月〜2月)に深刻な大気汚染が発生します。PM2.5(粒径2.5μm以下の微小粒子)は肺胞深部まで到達し、気道炎症・酸化ストレスを引き起こすことが知られています。

PM2.5の健康影響(薬学的機序)

PM2.5は肺胞マクロファージによる貪食を受けますが、大量曝露や長期曝露では炎症性サイトカイン(IL-6・TNF-α)の産生が亢進します。これにより気道過敏性が上昇し、喘息発作の誘発や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪リスクが高まります。また、超微小粒子(PM1.0以下)は血管内皮に到達し、動脈硬化促進・心血管イベントリスクの上昇にも関与するとされています。

対策:

  • N95またはKN95規格のマスクを着用(通常のサージカルマスクではPM2.5の捕集効率が不十分)
  • 大気質指数(AQI)をリアルタイムで確認できるアプリ(「空气质量」で検索)を活用し、AQI 150超の日は屋外活動を控える
  • 呼吸器疾患がある場合は渡航前に医師へ相談し、必要な吸入薬を処方してもらう

薬剤師メモ

喘息やCOPDを有する方は、短時間作用型β2刺激薬(サルブタモール配合吸入薬など)を必ず携帯してください。中国では医療用医薬品の購入に原則として処方箋が必要であり、急な発作時に同等品を入手できない状況が十分考えられます。また、吸入ステロイド薬(ICS)を定期使用している方は、旅行中も中断しないことが気道炎症のコントロール維持に不可欠です。

熱中症リスク(夏季:6月〜8月)

南方地域(上海・広州・重慶・武漢など)の夏季は気温が35℃を超え、湿度も高くなります。「湿球黒球温度(WBGT)」が28℃以上の環境では熱中症リスクが急上昇し、特に屋外での観光・移動時は注意が必要です。

熱中症の病態と薬学的対応

熱中症では体液と電解質(主にNa⁺・Cl⁻・K⁺)が同時に失われます。水のみを大量摂取すると血清Na⁺濃度が低下し「低ナトリウム血症」を引き起こす可能性があるため、電解質を含む補液が重要です。市販の経口補液塩パウダーを水に溶かして使用するか、スポーツドリンク(ただしイオン濃度が低いため軽症時向け)を活用してください。

対策:

  • 外出時に経口補液塩パウダーを携帯し、発汗時には早期補液を行う
  • 帽子・UVカット衣類を着用する
  • 日中(10時〜15時)の屋外活動を避け、早朝・夕方の活動に切り替える
  • ホテルの室温設定に注意する(外気温と室内温度の差が大きいと自律神経の調節負荷が増す)
  • アルコール・カフェイン飲料は利尿作用があり脱水を助長するため、旅行中は摂取量を抑える

蚊媒介感染症(デング熱・日本脳炎)

夏季から秋季(5月〜11月)にかけて、特に広東省・雲南省・海南省などの南方地域でデング熱の流行が報告されています。デング熱を媒介するヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は日本にも生息しますが、中国南部では個体密度が高く、都市部でも感染リスクがあります。

また、農村部・農地周辺では日本脳炎ウイルスを媒介するコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)による感染リスクもあります。日本脳炎ウイルス感染は大多数が無症状ですが、発症した場合の致死率・後遺症率が高いため、農村部渡航者はワクチン接種を検討してください。

蚊対策のポイント:

  • ディート(DEETディート)30%以上含有の虫よけを肌の露出部位に塗布する(日本からの持参を推奨)
  • 長袖・長ズボン・靴下の着用で肌の露出を最小化する
  • 宿泊施設では蚊帳・防虫スプレーを活用する
  • 野外での活動後は全身を確認し、蚊に刺された箇所を記録しておく

高山病(標高3,000m以上地域)

チベット地域(ラサの標高約3,650m)やその周辺への渡航時は高山病(急性高山病:AMS)のリスクが顕著です。低酸素環境では動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下し、頭痛・吐き気・倦怠感が生じます。さらに高度肺水腫(HAPE)・高度脳浮腫(HACE)に進展すると生命の危険を伴います。

予防・対応方法 詳細
段階的高度上昇 1日400m程度の上昇が目安(3,000m超から)
十分な水分補給 1日2〜3L(尿の色が薄い黄色を目標に)
携帯用酸素補給 現地(ラサ等)で入手可能な小型酸素缶を活用
アセタゾラミド(要処方) 医師の指示のもと使用
高度降下 症状が悪化した場合は直ちに下降が最優先

薬剤師メモ

アセタゾラミド(ダイアモックス錠)は炭酸脱水酵素阻害薬であり、腎臓での重炭酸イオン(HCO₃⁻)の再吸収を抑制することで代謝性アシドーシスを誘発し、換気量を増加させる(呼吸性代償を促進する)機序で高山病を予防します。副作用としては多尿・手足のしびれ(末梢神経炎)・炭酸飲料が苦く感じる味覚変化などがあります。スルホンアミド系薬剤へのアレルギーがある方は使用禁忌となるため、必ず医師・薬剤師へ既往歴を伝えてください。腎機能低下や電解質異常がある場合も使用前に医師に相談が必要です。


渡航者が持参すべき医薬品リスト

日本から持参すべき主要医薬品

中国では医療用医薬品の購入に処方箋が必要な場合が多く、また医薬品の品質管理基準が日本と異なる場合があります。日本から常備薬を充分に持参することを強く推奨します。

症状・疾患 成分名(一般名) 用法の目安 備考
下痢(軽症・非細菌性) ロペラミド塩酸塩 用法用量通り 発熱・血便時は使用を控え医療機関へ
風邪・発熱 アセトアミノフェン 1回500mgが一般的な目安(製品の用法参照) NSAIDsより胃への負担が少ない
アレルギー・蕁麻疹 ロラタジン 1日1回10mg(目安) 眠気が出にくい第2世代抗ヒスタミン薬
アレルギー性鼻炎(花粉・黄砂) フルチカゾンプロピオン酸エステル鼻腔用スプレー 製品により異なる 渡航前から使用開始で効果が安定
胃痛・胸焼け ファモチジン H2受容体拮抗薬(用法は製品参照) 食後の胃もたれにも有効
便秘 酸化マグネシウム 医師・薬剤師に用量を確認 腎機能低下者は高Mg血症リスクに注意
乗り物酔い スコポラミン臭化水素酸塩またはジフェンヒドラミン塩酸塩 乗車30〜60分前 眠気の副作用に注意
頭痛・鎮痛 ロキソプロフェンナトリウム水和物またはイブプロフェン 製品の用法参照 空腹時は避け食後服用を推奨
虫刺され・皮膚炎 弱〜中程度のステロイド外用薬(ヒドロコルチゾン配合など) 1日2〜3回患部塗布 顔面・粘膜への使用は避ける
目の充血・乾燥 ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(防腐剤フリー) 製品の用法参照 大気汚染・乾燥環境での眼刺激対策
水分・電解質補給 経口補液塩(ORS)パウダー 1包を規定量の水に溶解 下痢・熱中症初期対応

薬学的補足:アセトアミノフェンとNSAIDsの使い分け

中国渡航中は食事の変化・飲酒機会・長距離移動による疲労で消化器症状が起きやすく、解熱鎮痛薬の選択が重要です。NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェン等)はプロスタグランジン合成を阻害することで胃粘膜保護作用も低下させ、空腹時や水分不足の状況下では胃潰瘍リスクが上昇します。一方、アセトアミノフェンは中枢性の鎮痛・解熱作用が主体であり胃腸への直接刺激が少いため、旅行中の第一選択として適しています。ただし、アルコールを頻繁に摂取する場合はアセトアミノフェンによる肝毒性リスクが上昇するため、飲酒中は規定用量を厳守し、目安として1日の飲酒量が多い日は使用を控えることが賢明です。

一般用医薬品携帯時の注意:

  • 処方箋医薬品(抗生物質・ステロイド全身薬等)は必ず医師処方箋を添付する
  • 液体医薬品は国際線搭乗時に100mL以下の容器に入れ、ジッパー付き透明袋に収納する
  • 成分名(英語)を記載した薬剤情報シートを同梱しておくと、現地医療機関での説明がスムーズになる
  • 麻薬性鎮痛薬・向精神薬を持参する場合は、中国当局への申告または事前許可が必要な場合があるため、在中国日本大使館または中国大使館に事前に確認すること

衛生用品・予防グッズチェックリスト

品目 規格・仕様の目安 主な用途
N95/KN95マスク 5〜10枚 PM2.5・感染症対策
携帯用アルコール消毒液 70%エタノール・60mL以下 手指消毒
石鹸または固形ハンドソープ 個包装タイプ 流水手洗い用
虫よけスプレー DEETディート 30%以上含有 蚊媒介感染症対策
経口補液塩パウダー 2〜3包 下痢・脱水初期対応
携帯型体温計 デジタル式 発熱の早期発見
日焼け止め SPF50+・PA++++ 高地・夏季の紫外線対策
絆創膏・滅菌ガーゼ・医療用テープ 各数枚 創傷処置
防水バッグ(薬品収納用) ジッパー付き透明タイプ 医薬品の水濡れ防止

緊急時の医療機関利用と現地での対応

大都市の国際基準医療機関

北京・上海・広州などの大都市には国際基準の医療機関(International Clinic)が存在し、英語対応が可能なスタッフが常駐しています。代表的なものとして、北京・上海にはいくつかの外資系クリニックが展開しており、日本語通訳サービスが利用できる施設もあります。渡航前に、滞在先近くの医療機関をリストアップしておくことを強く推奨します。

現地医療機関受診時に役立つ英語フレーズを以下に示します:

  • I have diarrhea and a fever.(アイ ハヴ ダイアリア アンド ア フィーバー)(下痢と発熱があります)
  • I was bitten by a dog.(アイ ワズ ビトゥン バイ ア ドッグ)(犬に噛まれました)
  • I need rehydration treatment.(アイ ニード リーハイドレーション トリートメント)(補液が必要です)
  • I have an allergy to penicillin.(アイ ハヴ アン アレルジー トゥ ペニシリン)(ペニシリンアレルギーがあります)
  • Can you give me a receipt for insurance?(キャン ユー ギヴ ミー ア レシート フォー インシュアランス?)(保険用の領収書をいただけますか?)

海外旅行保険の重要性

中国の私立国際クリニックは診察費が高額になる場合があります。また農村部・内陸部では医療設備が限られており、緊急搬送(エアアンビュランス)が必要になるケースも想定されます。出発前に海外旅行保険への加入を強く推奨します。保険会社のキャッシュレス診療対応病院リストを事前に確認し、緊急連絡先を手元に保管してください。

医療機関での診療記録・薬の処方箋は必ず保管しておくと、帰国後のかかりつけ医への情報提供(旅行関連疾患の治療継続)に役立ちます。

帰国後の健康管理

中国滞在中または帰国後2〜4週間以内に以下の症状が現れた場合は、渡航歴を伝えた上で医療機関を受診してください。

  • 38℃以上の発熱(マラリア・デング熱・腸チフスなどを除外する必要がある)
  • 持続する下痢・腹痛・血便(腸管感染症・寄生虫感染)
  • 黄疸・濃い尿・倦怠感(A型・B型肝炎の潜伏期間内発症)
  • 咬傷後の傷の異常(狂犬病の潜伏期は平均1〜3か月だが数年に及ぶ例も報告されている)

帰国後の感染症診療は「輸入感染症」として専門的知識が必要なため、感染症専門外来または熱帯医学外来への受診が推奨されます。


まとめ:中国渡航リスク対策の優先順位

最後に、渡航前〜滞在中〜帰国後の対策を時系列で整理します。

タイミング 優先度 主なアクション
渡航6か月 ★★★ B型肝炎ワクチン接種開始(3回スケジュール確保)・旅行保険の選定
渡航2〜4週間 ★★★ A型肝炎・腸チフス・日本脳炎・狂犬病(必要に応じ)ワクチン接種
渡航1週間 ★★☆ 外務省・大使館の感染症情報確認・常備薬準備・渡航先医療機関リストアップ
現地滞在中 ★★★ 飲料水の徹底管理・手指衛生・マスク着用(大気汚染時)・生食回避
帰国後2〜4週間 ★★☆ 有症状時の速やかな受診・渡航歴の申告

中国は魅力的な旅行先ですが、衛生リスクは地域・季節・滞在スタイルによって大きく変わります。事前の情報収集と適切な準備が、健康な旅を実現する最大の予防策です。不安な点は出発前に医療機関(トラベルクリニック)または薬局で相談してください。

関連情報として [[travel-vaccine-guide]](海外渡航とワクチン総合ガイド)および [[diarrhea-travel-medicine]](旅行者下痢症の薬剤師解説)も参照されることをお勧めします。


参考文献

  1. World Health Organization (WHO). "International travel and health – China." WHO Travel Health. https://www.who.int/ith/en/
  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "China – Traveler's Health." CDC Yellow Book. https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/china
  3. 厚生労働省検疫所 FORTH. 「中国の感染症・衛生情報」. https://www.forth.go.jp/destination/asia/china.html
  4. 外務省海外安全ホームページ. 「中国 感染症危険情報」. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_011.html
  5. 国立感染症研究所. 「狂犬病とは」感染症情報センター. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-rabies-intro.html
  6. 国立感染症研究所. 「旅行者下痢症」病原微生物検出情報. https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2906-iasr/related-articles/related-articles-480/9285-481r02.html
  7. WHO. "Oral rehydration salts: production of the new ORS." WHO/FCH/CAH/06.1. https://www.who.int/publications/i/item/WHO-FCH-CAH-06.1

監修: 薬剤師(博士(薬学))

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