エジプト渡航時の医薬品持ち込みルール|薬剤師が解説する必要書類と禁止成分
エジプトへの旅行や出張は、古代遺跡やナイル川クルーズなど魅力的な体験が待っていますが、医薬品の持ち込みは想定外のトラブルの原因になりやすいです。エジプト医薬品庁(Egyptian Drug Authority: EDA)および税関当局の運用は近年厳格化の方向にあり、不適切な医薬品の持ち込みは没収や罰則の対象となる可能性があります。
本記事では、薬剤師(博士(薬学))の視点から、エジプト渡航時に必要な医薬品持ち込みルール、禁止成分の薬学的背景、準備すべき書類の具体的な書き方を詳しく解説します。渡航前に必ず在エジプト日本大使館および最新の外務省海外安全情報も合わせてご確認ください。
この記事で分かること
- エジプト(EDA)の医薬品規制の仕組みと自己使用目的の持ち込み基準
- 絶対に持ち込めない成分・制限される成分の薬学的理由
- 英文診断書・処方箋コピーの具体的な記載方法
- 税関申告の実際の流れと機内持ち込みルール
- 現地での医療機関・薬局利用の注意点
エジプトの医薬品持ち込みルールの基本
エジプト医薬品庁(EDA)とは
エジプトの医薬品規制を所管するのは**Egyptian Drug Authority(EDA)**です。EDAは医薬品の製造・輸入・流通・品質管理を統括しており、2021年に従来のEDAMP(Egyptian Drug Authority for Medicines and Pharmaceutical Control)から改編された組織です。個人が渡航目的で医薬品を携帯する場合も、EDAが定めた分類と規制対象リストが税関審査の基準として機能します。
日本でいうPMDA(医薬品医療機器総合機構)や厚生労働省に相当する機関ですが、規制の対象範囲や運用の厳格さは国ごとに大きく異なります。日本で適法に処方・使用されている医薬品であっても、エジプトの法令体系では禁止・制限物質に該当するケースが少なくない点を強く認識してください。
持ち込み可能な医薬品の基準
エジプトへの医薬品持ち込みは、**自分の使用目的・用量に限定される「自己医療目的(Personal Medical Use)」**という前提のもとで許可されています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 持ち込み可能な量 | 1ヶ月分程度(滞在期間に相応する量) |
| 対象医薬品 | 処方薬・市販薬(一般用医薬品) |
| 容器要件 | 元の医薬品箱・ボトルのまま(英語表記が望ましい) |
| 書類要件 | 処方箋コピー、医師の英文診断書が推奨(向精神薬等は必須) |
| 申告義務 | 規制物質に該当する薬を携帯する場合は税関申告が原則 |
「1ヶ月分」という基準は目安であり、実際の審査では滞在日数との整合性が確認されます。たとえば5日間の旅行に3ヶ月分の薬を持ち込めば、商業目的と疑われる可能性があります。持ち込む数量は渡航期間+数日分の予備を原則としてください。
最新情報は大使館・外務省で確認してください。エジプト政府は予告なく規制内容を変更する場合があります。
薬剤師メモ エジプトは中東・北アフリカ地域の中でも医薬品規制が厳格な国です。特に向精神薬(睡眠薬、抗不安薬)に関しては、処方箋なしでの持ち込みは極めて困難です。事前に在エジプト日本大使館(Cairo)に確認するか、現地で医療を受けることをお勧めします。
エジプトで禁止・制限される医薬品成分
絶対に持ち込めない成分
エジプトはイスラム法(シャリーア)の影響を受けた法律体系を基礎としており、特定の成分に対する規制が厳しいです。以下の成分を含む医薬品は税関で没収される可能性が高く、場合によっては罰則の対象となります。
| 禁止成分・医薬品 | 理由・備考 |
|---|---|
| 向精神薬全般 | EDA規制法で医師の処方なしでの持ち込み禁止 |
| トラマドール | 鎮痛薬だが依存性物質として規制対象(後述) |
| アルコール含有医薬品 | 高濃度エタノール配合の液剤等は原則禁止 |
| 女性ホルモン関連医薬品 | 事前許可が必要な場合あり |
| 高力価ステロイド外用薬 | 超強力(strongest)クラスは医師診断書が必須 |
特に注意が必要な医薬品カテゴリと薬学的解説
1. 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系)
代表的な規制対象薬としては以下が挙げられます。
- トリアゾラム(triazolam)
- ジアゼパム(diazepam)
- フルニトラゼパム(flunitrazepam)
- ゾルピデム(zolpidem)
- エスゾピクロン(eszopiclone)
薬学的背景: ベンゾジアゼピン系薬はGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、Cl⁻チャネルの開口頻度を増加させることで中枢神経抑制作用を発揮します。依存形成・離脱症状・乱用ポテンシャルが高く、国連麻薬統制委員会(INCB)の向精神薬条約(1971年条約)の附表IVに多くの品目が収載されています。エジプトはこの条約の締約国であり、国内法でも厳格に規制しています。
これらはエジプトの規制分類で最も制限の厳しいカテゴリに指定されており、処方箋があっても持ち込みが認められないケースがあります。渡航前に必ず在エジプト日本大使館に個別確認を行ってください。
2. ADHD・ナルコレプシー治療薬
- メチルフェニデート(methylphenidate)
- リスデキサンフェタミン(lisdexamfetamine)
- モダフィニル(modafinil)
薬学的背景: メチルフェニデートはドパミントランスポーター(DAT)およびノルエピネフリントランスポーター(NET)を阻害し、シナプス間隙のカテコールアミン濃度を上昇させます。アンフェタミン類似の作用機序を持つため、各国で厳しく管理されており、エジプトでも規制薬物扱いです。これらを渡航先で持続的に必要とする患者は、渡航前に主治医・専門医と十分に協議する必要があります。
3. トラマドール(tramadol)― エジプトで特別に問題となる薬
トラマドールはオピオイド受容体への弱い作動薬としての作用に加え、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害作用を併せ持つ中枢性鎮痛薬です。日本では「トラムセット®配合錠」などの製品名で処方されます。
エジプトにおける特別な規制背景: エジプトでは若年層を中心にトラマドールの乱用が深刻な社会問題として報告されており、当局の取り締まりが他国と比較して特に厳格です。正規の医療目的であっても、トラマドールを携帯して入国しようとする場合は没収・罰則の対象となる可能性が高く、事前に在エジプト日本大使館を通じた確認と書面による許可取得が不可欠です。
4. 抗結核薬・特殊感染症治療薬
- リファンピシン(rifampicin)
- イソニアジド(isoniazid)
- エタンブトール(ethambutol)
これらは医師の診断書と、場合によっては別途書面による許可が必要となるケースがあります。特にリファンピシンは薬物代謝酵素(CYP3A4など)の強力な誘導薬であり、他の持参薬との相互作用も含めて主治医に確認してから渡航してください。
薬剤師メモ 多くの日本人は「処方箋をもらった医薬品なら大丈夫」と考えがちですが、エジプトではこの論理が通用しません。日本で合法の向精神薬でも、エジプト法では禁止・制限されているケースが大半です。渡航前に必ず在エジプト日本大使館に相談し、書面で対応を確認してください。
持ち込み可能な一般用医薬品リスト
比較的安全に持ち込める医薬品
以下の医薬品は、自己医療目的で1ヶ月分以内であれば持ち込み可能性が高いです。ただし、必ず元の箱に入った状態で、明確に個人用であることを示す必要があります。
| 医薬品カテゴリ | 成分名(一般名)の例 | 持ち込み時の注意 |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン、イブプロフェン | 元の箱のまま、用量表示がある状態で |
| 整腸薬 | ビフィズス菌製剤、酪酸菌製剤 | 常温保管可能なものを選ぶ |
| 下痢止め | ロペラミド塩酸塩 | エジプトの衛生環境に備えて有用 |
| 胃酸分泌抑制薬 | ファモチジン、オメプラゾール | H2ブロッカー・PPIともに問題なし |
| 制酸薬 | 炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム | 持ち込み量は少なめに |
| 抗アレルギー薬 | セチリジン塩酸塩、ロラタジン、フェキソフェナジン塩酸塩 | 非鎮静性H1拮抗薬を選ぶ(後述) |
| 外用ステロイド薬 | ヒドロコルチゾン酢酸エステル(弱〜中程度) | 処方箋コピーがあると安全 |
| 目薬 | ヒアルロン酸ナトリウム(人工涙液)、塩酸テトラヒドロゾリン | 容量は製品の元容器のまま |
| 虫よけ(外用) | ジエチルトルアミド(DEET)10%以下 | 液体は機内持ち込み禁止に注意 |
| 皮膚保護・傷薬 | ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウム | 少量・元容器で |
抗アレルギー薬の選択:鎮静性vs非鎮静性の薬学的ポイント
抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)には第1世代(鎮静性)と第2世代(非鎮静性)があります。エジプトへの持ち込みにあたって、この選択は安全性の面でも重要です。
| 世代 | 代表成分 | 鎮静性 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 第1世代 | ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン | 高い | 観光中の眠気・判断力低下に注意。抗コリン作用による口渇・尿閉リスクも |
| 第2世代 | セチリジン、ロラタジン、フェキソフェナジン | 低い | 日中の活動に適する。渡航時の選択として推奨 |
血液脳関門(BBB)への透過性が低い第2世代薬は、中枢神経抑制作用が少なく、観光・業務中の使用に適しています。ただし、セチリジンは第2世代の中では比較的BBB透過性があり、個人差で眠気が出る場合もあります。
エジプト持ち込み時に必須・推奨される書類
医師の英文診断書(Medical Certificate)
処方薬を持ち込む場合、医師による英文診断書は強く推奨されます。特に以下のケースでは事実上必須と考えてください。
- 複数の処方薬を持ち込む場合
- 慢性疾患(糖尿病・高血圧・喘息・てんかん等)の治療薬
- インスリンその他の注射薬を持ち込む場合
- 管理物質・規制物質に指定されている可能性がある薬を持ち込む場合
記載すべき内容:
Patient Name(患者氏名・英字):
Date of Birth(生年月日):
Passport Number(パスポート番号):
Diagnosis(診断病名・英語):
Prescribed Medication(処方薬一般名・商品名):
Dosage and Frequency(用法・用量):
Duration of Treatment(使用期間・治療期間):
Quantity Carried(携帯数量):
Physician Name & Signature(医師氏名・署名):
Hospital/Clinic Name & Stamp(医療機関名・医院印):
Date of Issue(発行日):
Contact Information of Physician(医師連絡先):
英文診断書は渡航の2〜4週間前には取得手続きを開始することを推奨します。かかりつけ医に英文書類の作成経験がない場合は、医療翻訳サービスを活用する方法もあります。また書類は原本とコピーを2部以上用意し、手荷物と預け荷物に分けて保管してください。
処方箋のコピー
- 元の処方箋(または調剤時の薬袋)をカラーコピー
- 日本語のみの場合は、薬剤師または翻訳者による英訳を別紙で用意
- 医師診断書・処方箋コピー・医薬品現物の三点セットで準備するのが最善
インスリン・注射薬を持ち込む場合の追加注意
糖尿病の方がインスリン製剤や血糖測定器具を持ち込む際は、以下の書類が追加で必要となる場合があります。
| 必要書類 | 内容 |
|---|---|
| 英文診断書 | 糖尿病の診断・インスリン使用の医学的必要性を明記 |
| 処方箋コピー | インスリン製品名・単位数・投与頻度 |
| 注射針使用許可の説明書 | 医療目的の注射針携帯である旨を医師に証明してもらう |
| 搭乗前航空会社への連絡 | 液体・注射器の機内持ち込みについて事前確認 |
インスリン製剤は温度管理(2〜8℃または室温保管)の点でも注意が必要です。長時間フライト中は保冷ケースを使用し、開封後の使用期限(多くの製品で室温保存28〜30日が目安)を超えないよう計画してください。
医薬品の元の容器・パッケージ
- 絶対に、小分けボトルへの移し替えをしない
- 元の箱・ボトルに以下の情報が必要:
- 医薬品名(英語表記があれば理想的)
- 含有成分・用量(例:500mg)
- ロット番号・有効期限
- 用法・用量
薬剤師メモ よくある失敗例として「小分けにすれば荷物が軽くなる」と考える旅行者がいますが、これは極めて危険です。医薬品の真正性・同一性を確認するために、元の容器は必須です。医薬品を識別できない状態で持ち込もうとすれば、正規品であっても没収のリスクが高まります。薬袋や添付文書も合わせて保管してください。
エジプト入国時の手続きと注意点
税関申告の流れ
STEP 1:到着前の準備
- 持ち込む医薬品を全てリストアップし、英文で一覧表を作成する
- 医師診断書・処方箋のコピーは手荷物に入れる(預け荷物ではなく)
- 向精神薬・規制物質に該当する可能性がある薬については、在エジプト日本大使館に事前相談し、回答を書面・メールで保存しておく
STEP 2:入国時の申告
- 税関申告書に医薬品所持を記載する(該当欄がある場合)
- 税関官に質問された場合は以下のように対応する:
-
These are my personal medications for my own use.(ジーズ アー マイ パーソナル メディケーションズ フォー マイ オウン ユース) -
I have a doctor's letter here.(アイ ハヴ ア ドクターズ レター ヒア)
-
- 医師診断書を提示し、冷静に対応する
STEP 3:没収・検査時の対応
- 禁止成分の持ち込みと判定された場合、没収される可能性があります
- その場に留まり、落ち着いて対応することが重要です
- 異議申し立ては困難であることが多く、事前の準備が最大の対策となります
- 状況が深刻な場合は、在エジプト日本大使館(緊急連絡先)に連絡してください
飛行機への医薬品の積載ルール
医薬品の国際航空運送はIATA(国際航空運送協会)の規制に準拠します。また液体制限(100ml/容器、1L袋1つ)は医薬品にも原則として適用されますが、医療目的の申告により例外的扱いを受けられる場合があります(航空会社・路線により異なります)。
| 医薬品形態 | 機内持ち込み | 預け荷物 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 固形薬(錠剤・カプセル) | ✓ 可能 | ✓ 可能 | 基本的に制限なし |
| 液体医薬品(シロップ等) | △ 要確認 | ✓ 可能 | 医療目的を申告すれば100ml超でも可の場合あり。航空会社に事前確認を |
| ゲル・クリーム | △ 100g以下が目安 | ✓ 可能 | 医師診断書があると対応がスムーズ |
| 注射薬・注射器 | ✓ 医療目的なら可 | ✓ 可能 | 医師診断書必須。針先のキャップは必ず装着 |
| DEET配合虫よけ(液体) | × 原則不可 | ✓ 制限あり | DEET濃度・容量に制限。危険物規定を確認 |
| インスリン・生物製剤 | ✓ 推奨(温度管理のため) | △ 温度変化リスクあり | 保冷ケースを使用し手荷物として管理が望ましい |
現地での医薬品入手・医療機関の利用
エジプトで医薬品を入手する場合の注意
1ヶ月以上の滞在や、急な疾患で医薬品が必要になった場合、エジプト国内での医薬品入手も選択肢となりますが、以下の点に注意が必要です。
医薬品購入時の一般的な注意点:
- カイロ市内の主要病院(後述)の院内薬局や、国際ブランドの薬局チェーンに準じた店舗は比較的品質管理が良好とされています
- 路上の無許可業者からの購入は偽造医薬品・品質不良品のリスクがあるため、絶対に避けてください
- エジプトでは日本より処方箋なしで購入できる医薬品の範囲が広い場合がありますが、これが自己判断購入を正当化する理由にはなりません
医薬品の偽造問題: WHO(世界保健機関)のデータによると、低・中所得国における医薬品の偽造問題は深刻で、中東・アフリカ地域でも確認されています。特に抗生物質・抗マラリア薬・バイアグラ類似品等での偽造品報告が多く、外観が正規品と区別困難なケースもあります。信頼できる医療施設の薬局以外では購入しないことが賢明です。
抗生物質の安易な自己購入について: エジプトを含む多くの国で、抗生物質は比較的入手しやすい環境にあります。しかし抗生物質の不適切使用は薬剤耐性菌(AMR)を引き起こし、自身の治療を困難にするリスクがあります。必ず医師の診断を受けた上で服用してください。
現地の医療機関
| 施設 | 所在地 | 対応言語 | 備考 |
|---|---|---|---|
| As-Salam International Hospital | カイロ | 英語・アラビア語 | 国際基準、英語対応可 |
| Nile Badrawi Hospital | カイロ | 英語・アラビア語 | 高級医療施設 |
| Dar Al Fouad Hospital | カイロ(6th October地区) | 英語・アラビア語 | JCI認定取得施設 |
| 在エジプト日本大使館 | カイロ(コルニッシュ・エルナイル地区) | 日本語 | 医療機関紹介・緊急相談対応 |
JCI(Joint Commission International)認定は、医療施設の国際的品質基準を示す認証です。旅行保険の対象施設として認められていることも多く、渡航前に加入保険の対応医療機関リストを確認しておくと良いでしょう。
薬剤師メモ エジプトの薬局では処方箋なしで購入できる医薬品の範囲が広い場合がありますが、これは医療の質を保証するものではありません。特に抗生物質・ステロイドは濫用されやすく、薬剤耐性菌リスクの観点からも自己判断での購入は避け、可能な限り医師の診察を受けてください。
海外旅行保険と医薬品携帯のセット戦略
持ち込みルールの複雑さを考慮すると、海外旅行保険での医療サービス利用との組み合わせが実用的です。
| 対策 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 事前の医薬品持ち込み | 確実性、日本で使い慣れた薬を使える | ルール遵守の負担、書類準備の手間 |
| 海外旅行保険+現地受診 | 持ち込みルールの不安なし、現地の専門医 | 言語障壁、費用が高い場合も |
| 折衷案:最小限の持ち込み+保険 | バランス型、安心度が高い | 準備が若干複雑 |
おすすめの「折衷案」医薬品セット(1週間の渡航を想定)
エジプトは消化器疾患(旅行者下痢症)・日射病・砂漠気候による皮膚乾燥・蚊媒介感染症(マラリア・デング熱)のリスクがある地域です。現地環境を考慮した選択が重要です。
| カテゴリ | 成分名(一般名) | 目安量 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン | 3〜5日分 | 空腹時でも服用可能。NSAIDsより胃への負担少 |
| 胃酸分泌抑制 | ファモチジン | 7日分 | スパイシーな現地食対策 |
| 整腸薬 | ビフィズス菌・酪酸菌製剤 | 7日分 | 腸内環境維持 |
| 下痢止め | ロペラミド塩酸塩 | 5日分 | 旅行者下痢症対策(止瀉薬) |
| 抗アレルギー薬 | フェキソフェナジン塩酸塩またはロラタジン | 5日分 | 非鎮静性を選択 |
| 外用薬 | ヒドロコルチゾン酢酸エステル配合軟膏(弱〜中程度) | 1本 | 虫刺され・皮膚炎対応 |
| 救急セット | ポビドンヨード、絆創膏、滅菌ガーゼ | 適量 | 外傷対応 |
| 保湿剤 | 白色ワセリンまたはヘパリン類似物質配合クリーム | 1本 | 乾燥気候対策 |
マラリア予防薬について: エジプトは地域によりマラリア(Plasmodium vivax)のリスクがある国です(特にファイユームや一部農村部)。ナイルデルタや主要都市部のリスクは低いとされていますが、渡航先・季節によっては予防内服(アトバコン/プログアニル配合薬、ドキシサイクリン等)を検討してください。これらは処方薬であり、渡航前に感染症内科・トラベルクリニックへの受診が必要です。処方された予防薬の英文診断書も忘れず取得してください。
日本の「麻薬及び向精神薬取締法」との関係
エジプト渡航の文脈では、エジプト側の規制だけでなく、**日本の麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)**の規制も理解しておく必要があります。
「麻薬施用者」処方薬の海外持ち出し
日本で麻薬(モルヒネ、フェンタニル等)を処方されている患者が海外に持ち出す場合、厚生労働省への「麻薬携帯輸出許可証」の申請が必要です(麻向法第16条)。これはエジプト入国側の規制とは別に、出国時点で日本法上必要な手続きです。
| 薬剤分類 | 日本での手続き | エジプト入国側 |
|---|---|---|
| 麻薬(モルヒネ等) | 厚生労働省への輸出許可申請が必須 | 持ち込み禁止・極めて困難 |
| 向精神薬(ベンゾジアゼピン等) | 原則不要(ただし量に注意) | 持ち込み事実上禁止〜要事前許可 |
| 医療用麻薬以外の処方薬 | 特別な輸出許可不要 | 医師診断書・処方箋コピーが推奨 |
厚生労働省の「麻薬・向精神薬の携帯による輸出入」ページ(後述参考文献)を必ず事前に確認し、該当する場合は余裕をもって手続きを行ってください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本で処方された睡眠薬(ゾルピデム)を持って行っても大丈夫ですか?
A. ゾルピデムは日本では向精神薬(第三種)ですが、エジプトでは規制が厳しく、事前の確認・許可なしに持ち込もうとすることはお勧めできません。在エジプト日本大使館に書面で照会し、回答を得てから判断してください。代替として、渡航期間中の処方変更が可能か主治医に相談することも一つの選択肢です。
Q2. 花粉症の薬(ロラタジン)は持って行けますか?
A. ロラタジン(第2世代抗ヒスタミン薬)は規制物質には該当せず、個人使用目的・1ヶ月分以内であれば持ち込み可能と考えられます。元の容器に入った状態で携帯してください。
Q3. インスリンは問題なく持ち込めますか?
A. インスリンは医療上の必要性が明確であり、一般的に持ち込み可能ですが、英文診断書・処方箋コピーを必ず用意してください。注射針については別途確認が必要な場合があります。機内は手荷物として保冷ケースで管理することを推奨します。
Q4. 子どもの解熱薬(アセトアミノフェンシロップ)は機内持ち込みできますか?
A. 子どもの医薬品については、医療目的であることを申告すれば液体制限の例外として認められる場合が多いですが、航空会社により異なります。搭乗前に航空会社のカスタマーサービスに確認してください。エジプト入国側では、医療目的の子ども用薬として問題になることは少ないですが、英訳表記や医師診断書(小児科)があると安心です。
まとめ:エジプト渡航前の医薬品準備チェックリスト
エジプトへの医薬品持ち込みは、事前準備の徹底が全ての対策の基本です。以下のチェックリストを渡航2〜4週間前から活用してください。
【渡航4週間前まで】
- 主治医・かかりつけ薬剤師に渡航を伝え、持参薬の適否を確認
- 向精神薬・規制薬を処方されている場合は在エジプト日本大使館に照会
- 麻薬を処方されている場合は厚生労働省への輸出許可申請を開始
- トラベルクリニックを受診し、マラリア予防薬・感染症ワクチンの要否を確認
【渡航2週間前まで】
- 医師による英文診断書を取得
- 処方箋のカラーコピーと英訳を準備
- 海外旅行保険の加入・対応医療機関リストの確認
- 医薬品を元の容器・箱のまま整理
【渡航直前】
- 医薬品リスト(英文)を作成し、手荷物に入れる
- 診断書・処方箋コピーは原本とコピーを手荷物と預け荷物に分散保管
- 液体医薬品は機内持ち込みルールを航空会社に最終確認
- 在エジプト日本大使館の緊急連絡先をスマートフォンに登録
主なポイントの再確認:
- エジプト(EDA規制)では向精神薬・トラマドール等の持ち込みは原則禁止または厳格な事前許可が必要
- 処方薬はすべて元の容器のまま、英文診断書・処方箋コピーとセットで持参
- 自己医療目的・滞在日数に相応した量のみが許容される
- 不明な点は必ず在エジプト日本大使館と外務省海外安全情報で最新情報を確認
参考文献・公的情報源
-
厚生労働省「医薬品・医療機器等の海外持ち込みについて(麻薬・向精神薬の携帯輸出入)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index_00001.html
-
外務省「エジプト・アラブ共和国 安全情報」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_114.html
-
在エジプト日本大使館「医療・衛生情報」 https://www.eg.emb-japan.go.jp/itpr_ja/medical.html
-
WHO「INCB – International Narcotics Control Board: List of Psychotropic Substances under International Control」 https://www.incb.org/incb/en/psychotropics/green-list.html
-
CDC「Travelers' Health – Egypt」 https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/egypt
-
PMDA「医薬品情報データベース(添付文書検索)」 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
-
WHO「A study on the public health and socioeconomic impact of substandard and falsified medical products」 https://www.who.int/publications/i/item/9789241513432
監修: 薬剤師(博士(薬学))