オーストラリアへの薬の持ち込みルール完全ガイド:処方薬・市販薬の申告から禁止成分まで
オーストラリア渡航時、持参する医療用医薬品の取り扱いは日本とは異なります。厳格な入国検査制度により、申告不足や禁止成分の持ち込みは没収・罰金・起訴の対象となる可能性があります。本記事では、薬剤師の視点から渡航前の準備から入国時の手続きまでを詳解します。
オーストラリアの薬物規制の基本方針
オーストラリア政府は**Therapeutic Goods Administration(TGA)**により医薬品を厳格に管理しています。TGAは日本の「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に相当する連邦政府機関であり、医薬品の製造・輸入・流通・品質・安全性・有効性のすべてに法的権限を持ちます。持ち込める薬の量、種類、そして必要書類は日本の常識では通用しません。
重要な原則:
- 処方薬であっても、個人使用目的でもすべての医薬品は申告義務がある
- オーストラリア国内で承認されていない医薬品の持ち込みは禁止
- 麻薬性鎮痛薬や向精神薬は特に厳格審査対象
オーストラリアへの医薬品持ち込みは、Biosecurity Act 2015およびTherapeutic Goods Act 1989を根拠法とします。税関での審査を担うのは**Australian Border Force(ABF)**であり、医薬品についてはTGAの基準を適用します。申告義務違反は行政処分にとどまらず、刑事訴追の可能性もあるため、「少量だから大丈夫」という判断は危険です。
TGAによる医薬品分類体系
TGAは医薬品を以下のスケジュール(Schedule)に分類して規制強度を決定しています。日本の処方薬・市販薬の区分とは体系が異なるため、日本では市販されている薬がオーストラリアでは厳しく規制されるケースが存在します。
| スケジュール | 分類の内容 | 日本との対応例 |
|---|---|---|
| Schedule 2(S2) | 薬剤師が監督する一般薬 | 一部のOTC医薬品 |
| Schedule 3(S3) | 薬剤師のみ販売可能 | 要指導医薬品に近い |
| Schedule 4(S4) | 処方箋が必要な医薬品 | 処方薬全般 |
| Schedule 8(S8) | 管理薬物(麻薬・向精神薬) | コデイン・オキシコドン等 |
薬剤師メモ TGA未承認でも日本で処方されている医薬品(例:一部の胃腸薬、ビタミン剤)は持ち込み可能な場合もありますが、事前確認が必須です。「個人使用量」の明確な定義がないため、3ヶ月分程度が目安とされていますが、判断は入国官による裁量で変わります。特に初めてオーストラリアへ渡航する場合は、TGAの「Travelling with Medicines」ページ( www.tga.gov.au)で最新情報を確認することを強く推奨します。
持ち込み可能な医薬品の条件と数量制限
処方薬(医師から処方された医薬品)
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 持ち込み量 | 個人3ヶ月分まで |
| 必須書類 | 英文の医師の処方箋または診断書 |
| 医師からの手紙 | 医学的必要性を説明する英文レター(医師印鑑付き) |
| 医薬品パッケージ | 元の容器に医師からのラベルが付いていること |
| 事前申請 | 必須(TGA Importation Scheme参照) |
実例:
- 高血圧薬(アムロジピン):毎日1錠、90日分→OK(英文処方箋・医師レター添付)
- 糖尿病インスリン:医師からの英文手紙+処方箋で1年分の申請可能(長期滞在の場合はTGA事前承認が推奨)
3ヶ月分という上限の薬学的根拠
「3ヶ月分」という数量制限は、TGAが定める個人輸入の原則的な上限ガイドラインです。これは慢性疾患の一般的な治療継続期間や、薬剤の安定性(品質保証期間内であること)とも関係しています。たとえば、インスリン製剤は開封後28日以内に使用することが多く、3ヶ月分相当を持参する場合は未開封品であることが前提となります。また、抗凝固薬(ワルファリンなど)は渡航先の食事変化によりINR(国際標準化比)が変動するため、現地での血液検査計画も含めた医師との相談が欠かせません。
市販薬(一般用医薬品)
| 品目 | 持ち込み可否 | 備考 |
|---|---|---|
| ビタミン・ミネラルサプリメント | ✅ | 一般的なマルチビタミン(3ヶ月分) |
| アセトアミノフェン配合鎮痛薬 | ✅ | 市販されている通常用量 |
| 総合感冒薬 | ⚠️ | 成分による(下記参照) |
| 胃腸薬 | ⚠️ | ラニチジン含有製品は禁止 |
| イブプロフェン・ナプロキセン配合鎮痛薬 | ✅ | 通常用量の範囲内で |
| 漢方薬・生薬 | ⚠️ | 成分の事前確認必須 |
| プソイドエフェドリン含有薬 | ❌ | 詳細は後述 |
プソイドエフェドリン規制:日本の鼻炎薬・風邪薬で最も注意すべき成分
プソイドエフェドリンとは何か
プソイドエフェドリン(pseudoephedrine、偽エフェドリン)は、鼻粘膜の血管収縮作用を持つ交感神経刺激薬であり、日本では鼻炎用内服薬や一部の総合感冒薬に配合されています。化学構造的にはエフェドリン(麻黄の主成分)と類似しており、覚せい剤原料としてメタンフェタミン(覚醒剤)の合成前駆体となることから、国際的に厳格な規制が設けられています。
作用機序としては、α1・β1アドレナリン受容体を刺激し、鼻粘膜・副鼻腔の血管を収縮させることで鼻づまりを改善します。消化管からの吸収は良好で、バイオアベイラビリティは約90%、半減期は5〜8時間です。
オーストラリアにおけるプソイドエフェドリンの位置づけ
オーストラリアでは、プソイドエフェドリンはTGAの**Schedule 3(薬剤師管理医薬品)**に分類されており、国内では薬剤師のみが販売できる規制薬物です。外国から持ち込む場合には、以下の点に注意が必要です。
- 少量(標準的な旅行用数量)であっても申告が必要
- 医師の処方箋または医師レターが強く推奨される
- 申告なしで大量に持ち込んだ場合、薬物密輸と判断されるリスクがある
日本でプソイドエフェドリンが含まれる代表的なOTC製品の成分系統は、「塩酸プソイドエフェドリン」として配合されている鼻炎用内服薬です。成分表示を必ず確認し、含まれている場合は渡航前に医師・薬剤師へ相談してください。
薬剤師メモ プソイドエフェドリンを含む製品を申告せず持ち込んだ場合、規制薬物の不正持ち込みとみなされる可能性があります。必ず「含まれているか」を成分表で確認し、含まれている場合は当該薬を持参せず現地対応を検討するか、医師の英文証明書を取得してください。現地ではイプラトロピウム点鼻薬やモメタゾン点鼻薬(ステロイド系鼻炎薬)などの代替薬が薬局で入手できます。
オーストラリアで禁止・制限される医薬品成分
完全に禁止またはTGA未承認の成分
| 成分名 | 含まれる製品の種類 | 規制理由・背景 |
|---|---|---|
| ラニチジン | H2受容体拮抗薬(胃酸分泌抑制薬) | NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)混入問題により2020年にTGAが市場撤退を勧告 |
| プソイドエフェドリン | 鼻炎用内服薬・一部の風邪薬 | 覚醒剤前駆体のため厳格な管理対象(S3指定) |
| フェナセチン | 古い鎮痛薬 | 腎障害・発がんリスクのため各国で廃止 |
| エフェドリン(高用量) | 麻黄配合製品 | 覚醒剤前駆体として管理、漢方薬への影響あり |
ラニチジン問題の薬学的背景
ラニチジンはH2受容体拮抗薬として胃酸分泌を抑制し、胃潰瘍・逆流性食道炎に広く使われていましたが、2019〜2020年にかけてNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)という発がん性物質が製品中に検出されました。NDMAはラニチジン分子自体が不安定なために生成される内因性の不純物であることが判明し、TGA・FDA・EMAが相次いで販売中止・回収を実施しました。日本でも2021年に製造販売が中止されています。オーストラリアではラニチジンを含む製品は完全に市場から撤退しており、持ち込みも禁止されています。代替薬として、ファモチジン(H2受容体拮抗薬)やオメプラゾール・エソメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬)が現地薬局で入手可能です。
麻薬性医薬品・向精神薬(要・特別許可書)
| 成分 | TGA分類 | 持ち込み上限 | 必要書類 |
|---|---|---|---|
| コデインリン酸塩 | Schedule 8 | 3ヶ月分以下 | 英文処方箋+医師の手紙 |
| トラマドール塩酸塩 | Schedule 8 | 3ヶ月分以下 | 英文処方箋+医師の手紙 |
| モルヒネ塩酸塩・硫酸塩 | Schedule 8 | 特別申請 | 医師手紙+処方箋+TGA事前承認 |
| オキシコドン塩酸塩 | Schedule 8 | 特別申請 | 医師手紙+処方箋+TGA事前承認 |
| ジアゼパム・アルプラゾラム等(ベンゾジアゼピン系) | Schedule 4 | 3ヶ月分以下 | 英文処方箋+医師の手紙 |
| 抗精神病薬・SSRI等 | Schedule 4 | 3ヶ月分以下 | 英文処方箋+医師の手紙+専門医の診断書 |
コデイン含有薬の注意点(薬学的解説)
コデインはオピオイド系鎮痛薬であり、体内でCYP2D6酵素によりモルヒネに代謝されて鎮痛作用を発揮します。日本では以前はコデインリン酸塩を含む咳止め薬がOTCで販売されていましたが、厚生労働省は2019年以降、12歳未満へのコデイン含有製剤を禁止し、OTC品においても規制が強化されました。
オーストラリアでは、コデインは2018年よりOTC販売が禁止され、Schedule 8(医師処方が必要な管理薬物)に格上げされています。これはコデインの依存性・乱用リスクへの対応です。日本で処方されたコデイン含有製剤(内服錠・シロップ・顆粒)を持ち込む場合は、必ず英文処方箋と医師の手紙を準備し、入国時に申告してください。
薬剤師メモ ベンゾジアゼピン系薬(睡眠薬・抗不安薬)は渡航時のジェットラグ対策として持参するケースがありますが、オーストラリアではSchedule 4(処方箋必須)に分類されます。無申告での持ち込みは没収対象となる可能性があります。また、ベンゾジアゼピン系は急な中断で離脱症状(不眠・けいれん・不安増悪)が起きる危険があるため、持参できなかった場合は現地GPへの早期受診を強く推奨します。
入国時に必要な書類の準備方法
事前準備チェックリスト(出国2週間前から)
□ 1. 医師に相談:処方薬の英文処方箋取得
□ 2. 医師に依頼:「Medical Practitioner's Letter」(英文)作成
※医師印鑑・医療免許番号・連絡先が必須
□ 3. 薬剤師に相談:医薬品名の英語正式名(INN:国際一般名)を確認
□ 4. TGAウェブサイトで成分確認(www.tga.gov.au)
□ 5. TGAオンラインシステム:必要に応じて事前申請
□ 6. 英文書類すべてのコピー:2部作成(1部携帯、1部預託)
□ 7. 医薬品リスト(英語)の作成:成分名・用量・用法・日数を記載
□ 8. 液体医薬品は機内持ち込み規定(100ml以下)の確認
医師の手紙(Medical Practitioner's Letter)のテンプレート
オーストラリア大使館推奨の形式:
[医院・病院の公式レターヘッド]
To the Australian Border Force
Re: [患者名] / DOB: [生年月日]
Intended visit: [訪問予定期間]
I certify that the following medications are necessary for the
ongoing medical treatment of the above-named patient:
- [医薬品名(英語正式名/INN)] [用量] [用法] [数量]
(日本での医薬品名も併記)
These medications are not available in Australia / are required to
maintain continuity of care.
Yours faithfully,
[医師署名] / [医師名] / [医療免許番号] / [印鑑] / [連絡先]
英文書類準備に関する薬学的アドバイス
医薬品の英語正式名は**INN(International Nonproprietary Name:国際一般名)**を使用することが最も正確です。日本の先発品名(商品名)では入国審査官に通じない場合があります。たとえば、「ロキソニン」はINNで「ロキソプロフェンナトリウム水和物」ですが、英文ではloxoprofen sodiumと記載します。
薬剤師は調剤記録やインタビューフォーム(添付文書の詳細版)をもとに、INN・用量・剤形・用法・薬効分類を英語で確認することができます。渡航前にかかりつけ薬局に相談すると、英語の薬剤情報提供書の作成を支援してもらえる場合があります(費用は薬局により異なります)。
薬剤師メモ 日本語の処方箋はほぼ無効です。必ず英文での準備を。医師が英文作成に難色を示す場合は、薬剤師が医師の指示内容をもとにドラフトを作成し、医師に内容確認・署名をもらう方法があります。外国語翻訳に対応している調剤薬局や、医療翻訳専門業者を利用する方法もあります(料金は業者・内容による)。
漢方薬・サプリメント・生薬の持ち込みルール
漢方薬の取り扱いと薬学的注意点
オーストラリアでは漢方薬も医薬品扱い(Complementary Medicine)です。TGAは植物由来成分を「Listed Medicine」として登録管理しており、未登録の植物成分を含む製品は没収対象となる可能性があります。
| 医薬品(代表的な漢方薬) | 主成分・特徴 | 持ち込み可否 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 葛根湯 🛒(カッコントウ) | マオウ・カッコン等 | ⚠️ | マオウ(エフェドリン含有)があるため要確認 |
| 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ) | 芍薬・甘草 | ✅目安 | 筋肉けいれん用、エフェドリン非含有 |
| 小柴胡湯(ショウサイコトウ) | 柴胡・半夏等 | ⚠️ | 間質性肺炎リスクで一部制限の可能性あり |
| 麻黄湯(マオウトウ) | マオウ大量含有 | ❌ | エフェドリン・メチルエフェドリン含有で規制対象 |
| 防風通聖散(ボウフウツウショウサン) | マオウ含有 | ⚠️ | エフェドリン含有量を確認 |
麻黄(マオウ)の薬学的背景
麻黄(Ephedra sinica)の主要アルカロイドはエフェドリン・プソイドエフェドリン・メチルエフェドリンです。これらはすべて交感神経刺激作用を持ち、気管支拡張・鼻粘膜血管収縮・中枢神経興奮作用があります。覚醒剤の前駆体となるため、オーストラリアでは麻黄含有製品の輸入・所持に規制が設けられています。
葛根湯にはマオウが含まれますが、配合量は1日量として2〜3g程度(エフェドリン換算で数十mg)です。TGAは植物原料中の有効成分量によって判断するため、少量の漢方薬1〜2週間分であれば通過するケースもありますが、「大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。確実に問題を避けるには、麻黄含有製品は持参せず、現地で入手できる代替薬(鼻炎ならステロイド点鼻薬、解熱ならアセトアミノフェン配合製剤)を利用することを検討してください。
サプリメント・栄養補助食品
一般的にOK(3ヶ月分を目安に):
- マルチビタミン・ミネラル
- オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
- ビタミンD3
- 葉酸
- コラーゲンペプチド(動物由来の場合は申告推奨)
事前確認必須・または持ち込み禁止:
- CBD製品(カンナビジオール)→絶対禁止(大麻由来成分としてSchedule 4管理)
- 高麗人参(朝鮮人参)→少量なら可が多いが要申告
- プロポリス・ローヤルゼリー→動物由来成分として申告対象
- アガリクス・霊芝等のキノコ類→植物由来規制の対象となりうる
薬剤師メモ サプリメントは「Complementary Medicines」に分類されますが、医学的根拠が乏しい製品や規制成分を含む製品は没収される場合があります。TGAの「Australian Register of Therapeutic Goods(ARTG)」データベースで検索し、登録の有無を事前に確認しましょう。また、動物由来・植物由来製品はバイオセキュリティ(生物検疫)の観点から別途農業省(DAFF)の規制も受けます。
入国検査での手続きフロー
飛行機内での申告書記入
入国前に配布される「旅行者申告書(Incoming Passenger Card)」には:
□ "Medicines and medical devices" の欄で「YES」にチェック
□ 医薬品の一般名(英語:INN)を記入
□ 用途(例:"For diabetes management")を記入
□ 量(例:"90 tablets, 3-month supply")を記入
申告することで罰則を受けるわけではありません。申告漏れの方が重大なリスクを招きます。「申告 = 疑われる」ではなく「申告 = 規則を守っている誠実な渡航者」という姿勢が審査官への好印象につながります。
国際空港での検査フロー
- 入国ゲート通過:旅行者申告書を提示
- 税関審査官による確認:医薬品カテゴリーを確認、書類提示を求められる場合あり
- 書類検査:英文処方箋・医師の手紙の提示
- ✅ 書類が完全→スムーズに通過
- ⚠️ 書類不足・不明確→詳細審査室へ案内
- 詳細審査室(Pharmaceutical/Medical Inspection)
- パッケージ・ラベルの確認
- 成分・数量の確認
- 最悪の場合:没収または任意返還
審査員への英語対応フレーズ
現地の審査官との会話で役立つ英語表現です(声に出して使う場面を想定してカタカナ発音を付記します):
-
I have prescription medications to declare.(アイ ハヴ プリスクリプション メディケーションズ トゥ ディクレア) →「申告すべき処方薬を持っています」 -
Here is my doctor's letter and prescription.(ヒア イズ マイ ドクターズ レター アンド プリスクリプション) →「医師の手紙と処方箋がここにあります」 -
These are for my personal use during my stay.(ジーズ アー フォー マイ パーソナル ユーズ デューリング マイ ステイ) →「これらは滞在中の個人使用のためのものです」 -
This is a 3-month supply for a chronic condition.(ディス イズ ア スリーマンス サプライ フォー ア クロニック コンディション) →「これは慢性疾患のための3ヶ月分です」
薬剤師メモ 書類不足で詳細審査室に案内された場合でも、冷静に対応することが重要です。審査官は医薬品の専門家ではない場合もあるため、薬効・成分名をシンプルな英語で説明できると審査がスムーズになります。英語に自信がない方は、薬剤情報を英語でまとめた「薬カード」を事前に準備することを強く推奨します。
よくある質問と回答
Q1: 日本で買った風邪薬はそのまま持ち込める?
A: 成分による。アセトアミノフェン(解熱鎮痛)+アスコルビン酸(ビタミンC)のみの構成なら持ち込み可能なケースが多い。ただし、プソイドエフェドリン・エフェドリン・コデイン・ジヒドロコデインが含まれていれば申告必須、または持参を避けることを推奨。総合感冒薬を持参する前に、必ず成分表示を全項目確認してください。英文ラベルがあれば審査がスムーズになります。
Q2: 眠気覚ましのカフェイン製剤は?
A: カフェイン製剤(1錠あたり100〜200mg程度のもの)は一般的に問題ありません。ただし、不自然に大量(数百錠など)の持ち込みは意図を疑われる可能性があります。旅行期間に対して合理的な数量にとどめてください。
Q3: 処方薬の有効期限が切れていたら?
A: 有効期限切れの医薬品は品質保証が担保されないとして没収対象となる可能性があります。渡航前に必ず医師に処方箋の更新を依頼し、有効期限内の製品を持参してください。
Q4: 子ども用医薬品は?
A: 大人と基本的に同じルールが適用されます。医師の手紙は子どもの名前・生年月日で作成し、保護者の名前も記載してもらいましょう。小児用液剤は容量に注意(機内持ち込み100ml制限)し、必要に応じて処方箋を添えてください。
Q5: インスリンや注射薬の持ち込みは?
A: インスリン・エピペン(アドレナリン自己注射)・成長ホルモン注射等は医師の英文証明書があれば持ち込み可能です。注射針(注射器・ペン針)も医療上の必要性を証明する書類があれば同伴できます。冷蔵が必要なインスリンは機内での保管方法(携帯用クーラーバッグ等)も事前に航空会社へ確認することを推奨します。
Q6: 3ヶ月を超える長期滞在の場合は?
A: 3ヶ月を超える分の医薬品を持ち込む場合は、TGAへの個人輸入申請(Personal Importation Scheme)が必要になります。または現地のGP(一般開業医)に相談して現地処方に切り替える方法もあります。渡航先が長期(ワーキングホリデー・留学等)の場合は、現地の医療体制・保険制度の確認も不可欠です。
出国前の最終チェック表
| 項目 | チェック内容 | 実行日 |
|---|---|---|
| 医学的必要性 | 医師の診断書・英文処方箋を取得 | ___月___日 |
| 成分確認 | TGAデータベースで禁止・制限成分を確認 | ___月___日 |
| 英文書類 | 医師の手紙(Medical Practitioner's Letter)を取得 | ___月___日 |
| INN確認 | 医薬品の国際一般名(INN)を薬剤師に確認 | ___月___日 |
| 元の容器 | 医薬品は必ず元の容器・ラベルで持ち込み | ___月___日 |
| コピー | 英文書類2部・薬剤リスト(英語)1部作成 | ___月___日 |
| 渡航期間確認 | 3ヶ月以内か、超える場合はTGA申請済みか | ___月___日 |
| 液剤確認 | 液体薬は機内持ち込み規定(100ml)を確認 | ___月___日 |
| 保険確認 | 海外旅行保険の医療特約・補償内容を確認 | ___月___日 |
| 薬カード作成 | 英語の薬剤情報カード(成分名・用量・目的)を作成 | ___月___日 |
現地での医薬品入手情報
もし医薬品を紛失・没収された場合、オーストラリア現地での入手方法:
- General Practitioner(GP):一般開業医。初診料の自己負担額は保険の有無・クリニックにより異なります(Medicare対象外の旅行者は全額自己負担)。緊急の場合はWalk-in clinicも利用可
- 薬局:Chemist Warehouseなど大手チェーンが各都市に多数あり、S2・S3医薬品は薬剤師から直接購入可能。S4(処方箋薬)は現地の処方箋が必要
- テレメディシン:オーストラリア国内ではオンライン診療(Telehealth)が発達しており、一部プラットフォームでは旅行者も利用可。日本語対応のオンライン診療も一部存在します
薬剤師メモ 日本の公的医療保険(健康保険・国民健康保険)は日本国内でのみ適用されるため、海外での医療費は全額自己負担が原則です。「海外旅行傷害保険の治療費補償」への加入を強く推奨します。長期滞在(ワーキングホリデー・留学・就労)の場合は、**Australian Private Health Insurance(民間医療保険)**の加入も検討してください。ビザの種類によっては加入義務が課される場合があります。
まとめ
オーストラリア渡航時の医薬品持ち込みに関する要点:
✅ 必須準備:
- すべての医薬品は申告義務(処方薬・市販薬・サプリメント)
- 英文の医師処方箋と「Medical Practitioner's Letter」を必ず取得
- 医薬品は元の容器・ラベルのまま持参
- 持ち込み量は原則3ヶ月分以内
⚠️ 特に注意が必要な成分:
- プソイドエフェドリン:鼻炎薬・一部風邪薬に含有。要申告・要証明書
- エフェドリン(麻黄含有漢方薬含む):規制対象となる可能性が高い
- コデイン・トラマドール:S8管理薬。英文処方箋必須
- ラニチジン:TGAが市場撤退を指示済み。持ち込み禁止
- CBD製品:絶対禁止
❌ やってはいけないこと:
- 申告欄で「NO」にチェックして通過しようとする
- 医師の手紙なしに処方薬(特に管理薬物)を持参する
- 日本語のみの処方箋に頼る
- 「少量だから大丈夫」と自己判断する
オーストラリアは入国検査が非常に厳格な国の一つです。しかし、適切な書類準備と正直な申告を行えば、必要な医薬品は問題なく持ち込むことができます。渡航前に時間的余裕をもって医師・薬剤師に相談し、安全で快適な渡航を実現してください。
参考文献・公式情報源
- Therapeutic Goods Administration (TGA). "Travelling with medicines and medical devices." Australian Government Department of Health. https://www.tga.gov.au/consumers/travelling-medicines-and-medical-devices
- Australian Border Force (ABF). "What you can bring into Australia." Australian Government. https://www.abf.gov.au/entering-and-leaving-australia/can-i-bring-it-in
- 厚生労働省. 「医薬品の個人輸入について」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
- PMDA(医薬品医療機器総合機構). 「医薬品情報データベース(添付文書情報)」. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuTop.do
- WHO. "International Nonproprietary Names (INN) for pharmaceutical substances." World Health Organization. https://www.who.int/teams/health-product-and-policy-standards/inn
- Therapeutic Goods Administration (TGA). "Australian Register of Therapeutic Goods (ARTG) search." https://www.tga.gov.au/resources/artg
- 外務省. 「オーストラリア(豪州)基本情報・安全情報」. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_012.html
監修: 薬剤師(博士(薬学))