ブラジルで病院・薬局を使うには|救急・SUS活用とFarmáciaの使い方を薬剤師が解説

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ブラジル現地医療事情の基礎知識

ブラジルは南米最大の国土を持ち、サンパウロやリオデジャネイロなどの大都市と地方部では医療水準に大きな差があります。日本人旅行者が多い都市部の医療施設は比較的充実していますが、事前の情報収集と準備が重要です。

医療体制の概要

ブラジルの医療は公的医療(SUS:ブラジル統一医療システム、Sistema Único de Saúde)と私立医療施設の二層構造になっています。SUSはブラジル憲法が保障する「すべての市民への無償医療」を担う制度であり、外国人旅行者もセーフティネットとして利用できる場合はありますが、言語障壁・待ち時間・医療資源の偏在という現実的な問題から、外国人旅行者には私立クリニック・病院の受診が一般的かつ現実的な選択肢です。

SUSの1次医療(UBS:基礎保健ユニット)は予防接種や慢性疾患管理を担い、2次・3次医療(入院・手術・専門外来)へのアクセスにはSUSの紹介状が必要です。旅行者が直接大病院のSUSに飛び込むことは制度上難しく、救急(Pronto Socorro)のみが直接受診できる窓口です。

医療施設の種類 特徴 外国人向け度
私立総合病院 診療科豊富、設備充実、英語対応が多い ★★★★★
私立クリニック 初診対応、診療時間が長い、費用は中程度 ★★★★☆
薬局(Farmácia) 市内に多数、医師の処方箋不要で医薬品販売 ★★★★☆
公立施設(SUS) 原則は国民向け、言語障壁が大、待ち時間が長い ★☆☆☆☆

薬剤師メモ:ブラジルの薬局では、一部の医薬品が医師の処方箋なしで購入できます。これは日本と大きく異なる点です。ただし自己判断での使用は避け、薬局スタッフ(Farmacêutico)に症状を説明して相談することをお勧めします。

感染症リスクと地域差

ブラジルは熱帯・亜熱帯気候の地域が多く、デング熱・ジカウイルス感染症・チクングニア熱などの蚊媒介感染症のリスクが存在します。アマゾン流域(アマゾナス州・パラー州など)ではマラリアのリスクもあり、渡航先の地域によって準備すべき予防策が大きく異なります。厚生労働省検疫所(FORTH)が提供する国別感染症情報を必ず事前に確認してください。

サンパウロ・リオデジャネイロなどの大都市部では感染症リスクは比較的低いものの、黄熱病ワクチンはアマゾン流域を含む地域への渡航時に必須とされており、トランジットでも入国を求められる場合があります。


ブラジルの薬局(ファルマシア)の利用方法

薬局の見つけ方と営業時間

ブラジルでは「Farmácia」や「Drogaria」と表示された薬局が街中に数多くあります。大手チェーンとしては以下が挙げられます(実在確認済み)。

  • Raia Drogasil:ブラジル最大規模の薬局チェーン。主要都市に広く展開
  • Drogaria São Paulo:サンパウロ発祥で都市部に多数展開
  • Farmácia de Manipulação:調剤・コンパウンディング薬局。医師の処方に基づいたオーダーメイド製剤を製造

営業時間は大都市では夜間営業や24時間営業の薬局も多く存在しますが、小規模な薬局は日曜・祝日に短縮営業または休業することがあります。Google Maps で「Farmácia 24 horas」と検索すると深夜対応薬局を絞り込めます。

症状の伝え方と医薬品購入プロセス

ポルトガル語での基本表現を以下に示します。英語で話しかけて通じない場合は、スマートフォンの翻訳アプリを活用するか、紙に症状を書いて見せる方法も有効です。

症状 ポルトガル語表現 発音の目安 補足
頭痛がある Tenho dor de cabeça テーニョ ドール ジ カベサ 最頻出
下痢をしている Tenho diarreia テーニョ ジアレイア 「ジアレイア」
吐き気がする Tenho náusea テーニョ ナウゼア 食あたり時に使用
風邪の症状 Tenho resfriado テーニョ ヘスフリアード 咳・鼻水・発熱
発熱がある Tenho febre テーニョ フェーブリ 体温計を見せると効果的
アレルギー反応 Tenho alergia テーニョ アレルジア 既往歴がある場合は事前に英語で記載
胃が痛い Tenho dor de estômago テーニョ ドール ジ エストーマゴ 胃痛・胃もたれ
咳が出る Tenho tosse テーニョ トッシ 乾性・湿性どちらも
眠れない Não consigo dormir ナウン コンシーゴ ドルミール 時差ぼけや不安時

薬局スタッフは薬学的知識を持っているため(ブラジルでは薬局に薬学士 Farmacêutico の常駐が義務づけられています)、症状や既往歴、現在服用中の医薬品があれば伝えることで、適切な医薬品を勧めてくれます。英語が通じることも多いです。

英語フレーズ例:

  • I have a stomachache.(アイ ハヴ ア ストマックエイク)
  • Do you have anything for diarrhea?(ドゥ ユー ハヴ エニシング フォー ダイアリア?)
  • I am allergic to aspirin.(アイ アム アラージック トゥ アスピリン)
  • I am currently taking this medicine.(アイ アム カレントリー テイキング ディス メディスン)

ブラジルで入手しやすい医薬品

用途 医薬品名(主成分) 薬理分類 備考
解熱鎮痛 ジピロン(メタミゾール) ピリゾロン系非オピオイド鎮痛薬 ブラジルで広く使用。日本・EU・米国では未承認または販売停止
解熱鎮痛 パラセタモール(アセトアミノフェン)配合製剤 非オピオイド中枢性鎮痛薬 国際的に最も安全性データが豊富
整腸 バシルス・クラウジイ含有製剤(生菌製剤) プロバイオティクス 下痢時に有効。日本のビオフェルミンに類似
胃食道逆流 アルギン酸ナトリウム配合制酸薬 制酸薬 胃酸逆流・胸焼けに対応
抗ヒスタミン ロラタジン 第2世代抗ヒスタミン薬(非鎮静性) アレルギー症状に。眠気が少ない
抗ヒスタミン セチリジン 第2世代抗ヒスタミン薬 アレルギー性鼻炎・蕁麻疹
下痢止め ロペラミド μオピオイド受容体作動薬(末梢性) 軽症時の使用に限定
消化器症状 ジメチコン(シメチコン) 消泡剤 腹部膨満・ガスに
鼻炎・風邪 塩酸フェニレフリン+抗ヒスタミン配合 交感神経作動薬+抗ヒスタミン薬 日本の総合感冒薬に相当する複合製品が多い

薬剤師メモ:ジピロン(dipirona / metamizole)はブラジルで最も一般的な解熱鎮痛薬ですが、日本・アメリカ・英国では無顆粒球症リスク(白血球が急減する重篤な副作用)のため販売が禁止または停止されています。ブラジル国内での使用は問題ありませんが、日本への持ち帰りは行わないでください。旅行者が短期間使用する場合のリスクは比較的低いとされていますが、既往疾患がある方・アスピリン過敏症の方は使用前に薬局スタッフへ必ず相談してください。

ブラジルの薬局で処方箋が必要な医薬品カテゴリ

ブラジルの医薬品規制当局 ANVISA(国家衛生監督庁、Agência Nacional de Vigilância Sanitária) は、医薬品を以下のカテゴリに分類しています。

ANVISAカテゴリ 概要 処方箋要否
OTC(Isentos de Prescrição) 一般用医薬品。市販で購入可能 不要
Tarja Vermelha(赤帯) 処方箋が必要な医薬品(抗生物質・睡眠薬など) 必要
Tarja Preta(黒帯) 向精神薬・麻薬・厳格管理薬 必要+特別管理

抗生物質は原則として「Tarja Vermelha(赤帯)」に分類され、処方箋なしでの販売は違法です。旅行者が現地で処方箋なしに抗生物質を求めても、正規の薬局では応じることができません。感染症が疑われる症状がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。


医療施設への受診方法

医師の診察が必要な場合

以下の症状がある場合は、自己判断での市販医薬品使用を避け、医師の診察を受けてください。

  • 38°C以上の発熱が3日以上続く(または40°C以上の高熱)
  • 激しい腹痛・血便・持続する嘔吐
  • 呼吸困難・胸痛・動悸
  • 意識障害・激しい頭痛(くも膜下出血のような突然発症)
  • けが・外傷による出血が止まらない
  • 蚊に刺された後に発熱・関節痛・皮疹が出現(デング熱・ジカウイルス・チクングニア熱を疑う)
  • 動物(犬・コウモリ等)に噛まれた(狂犬病曝露後予防が必要)

特にデング熱は発熱・頭痛・眼窩後部痛・筋肉痛・皮疹を特徴とし、重症化すると出血傾向・ショックを来します。解熱目的でのアスピリンやイブプロフェン(NSAIDs)の使用は出血リスクを高めるため禁忌です。解熱が必要な場合はアセトアミノフェン(パラセタモール)を選択してください。

受診施設の選択肢

主要都市の私立医療施設(参考)

都市 施設名(例) 特徴 問い合わせ方法
サンパウロ Hospital Sírio-Libanês 中東系財団運営の私立総合病院、国際基準の設備 公式サイトまたは電話で事前確認
サンパウロ Hospital Israelita Albert Einstein JCI(国際医療評価機構)認定。世界トップレベルの私立病院 国際患者窓口あり
リオデジャネイロ Hospital Barra D'Or コパカバーナ周辺のリゾートエリアにも対応 英語対応窓口あり
ブラジリア Hospital Santa Lúcia 首都の主要私立病院 要事前確認

薬剤師メモ:施設情報は変更される場合があります。渡航前に公式サイトまたは旅行保険会社の提携病院リストで最新情報を確認してください。特にHospital Israelita Albert Einsteinは国際患者対応部門(Centro Internacional de Pacientes)を持ち、英語・日本語通訳サービスへの対応実績があります。

薬剤師メモ:ブラジルの私立医療施設での診療は自費となります。初診時に500~2,000 BRL(目安として数万円規模)の費用が発生することを想定し、旅行保険の加入は必須です。なお、為替レートは変動するため、現地での最新レートを確認してください。

医療施設への行き方

  1. ホテルのコンシェルジュに依頼:言語サポートと信頼できる施設への紹介が得られます(最も推奨)
  2. Google Maps で検索:「Clínica」や「Hospital Particular(私立病院)」で周辺施設を検索
  3. 旅行保険会社の緊急連絡先に電話:医療施設の紹介と手配が可能(保険証券に番号が記載)
  4. Uber / タクシーの運転手に相談:地元の医療施設に詳しい場合が多い

受診時に役立つポルトガル語フレーズ

受付・診察室での基本フレーズも覚えておくと安心です。

場面 ポルトガル語 発音の目安
診察を受けたい Preciso consultar um médico プレシーゾ コンスルタール ウン メジコ
旅行保険があります Tenho seguro de viagem テーニョ セグーロ ジ ヴィアージェン
アレルギーがあります Tenho alergia a medicamentos テーニョ アレルジア ア メジカメントス
処方箋をください Pode me dar a receita? ポジ ミ ダール ア ヘセイタ?
薬の使い方を教えて Como devo tomar este remédio? コーモ デーヴォ トマール エステ ヘメジオ?

ブラジル渡航時の旅行保険活用方法

必ず加入すべき理由

ブラジルでの医療費は非常に高額です。私立医療施設での診療は診察料のほか、検査費用や医薬品代が別途請求されます。また、重篤な疾患の場合は日本への緊急搬送(医療搬送)が必要となるケースもあり、その費用は数百万円に及ぶ場合があります。

医療処置内容 概算自費額(BRL・目安) 備考
初診料(私立クリニック) 500~1,500 専門科・施設規模により変動
内科一般検査 300~800 目安。施設差が大きい
血液検査(基本項目) 200~500 デング熱検査は別途
X線撮影 400~1,000 部位により異なる
薬局での医薬品(1処方) 50~300 種類・日数により変動
緊急入院(1日・目安) 3,000~8,000 ICUは倍以上になることも
医療搬送(日本まで) 数百万円以上 医療スタッフ同伴の場合

(金額はいずれも目安。為替・施設・状態により大幅に変動します)

旅行保険の選び方

ブラジル向け旅行保険を選ぶ際のチェックポイント:

  1. 医療費補償額:最低でも300万円以上を推奨(緊急搬送を含む場合は1,000万円以上が安心)
  2. 携帯品損害補償:盗難対策として重要(ブラジルの大都市では観光客を狙ったスリ・強盗に注意)
  3. 24時間日本語ホットライン:緊急時の対応に必須。英語のみのサービスは要注意
  4. 提携医療施設ネットワーク:主要都市にキャッシュレスで受診できるネットワークがあるか確認
  5. 既往症・持病の取り扱い:慢性疾患がある場合は補償範囲を事前確認
  6. 感染症対応:デング熱・マラリアなどの熱帯感染症も補償されるか確認

薬剤師メモ:渡航先の感染症リスクに応じたワクチン接種(黄熱病・A型肝炎・腸チフス等)と旅行保険のセットで準備することが重要です。ワクチン接種に伴う副反応補償の有無も加入前に確認してください。また、クレジットカード付帯の海外旅行保険は補償限度額が低い場合が多く、別途専用保険への加入を検討してください。

保険請求時の手続き

必要な書類

  • 医療機関発行の領収書(英語またはポルトガル語)
  • 医師の診断書(診療内容と処方医薬品を記載)
  • 処方箋の原本または写し
  • 薬局の領収書(購入した薬品名・金額が明記されたもの)
  • パスポートの写し(渡航期間の確認用)

請求プロセス

  1. 診察時に受付で「For Insurance(フォー インシュアランス)」または「Tenho seguro de viagem(テーニョ セグーロ ジ ヴィアージェン)」と伝える(医療機関が適切な書類を用意してくれる)
  2. すべての領収書・診断書・処方箋をその場でスマートフォンで撮影してバックアップ
  3. 帰国後、保険会社に書類を提出(多くの会社はオンライン申請対応。処理期間は会社によって異なります)

保険会社によって対応が異なるため、渡航前に必ずコールセンターで補償範囲・提出書類・申請方法を確認してください。


事前準備:ブラジル渡航者が持参すべき医薬品

常備薬チェックリスト

ブラジル到着前に以下の医薬品を日本で用意しておくことをお勧めします。旅行先でも入手できる医薬品は多いですが、成分・規格・剤形が日本製品と異なる場合や、言語の壁で適切な製品を選べないリスクがあるため、使い慣れた日本製品を持参することが最善策です。

医薬品・医療用品 主成分(一般名) 用途 持参量(目安) 備考
アセトアミノフェン製剤 アセトアミノフェン(パラセタモール) 解熱鎮痛 10~15錠 タイレノールA 🛒等。OTCで購入可。最も安全性データが豊富
ロペラミド製剤 ロペラミド塩酸塩 下痢止め 6~10錠 感染性下痢(血便・高熱を伴う場合)への単独使用は避ける
整腸薬 各種生菌・ビフィズス菌製剤 整腸・下痢 1週間分 腸内環境の急変対応
総合感冒薬 成分により異なる(各製品の添付文書確認) 風邪症状 1箱 使い慣れた日本製品
ロラタジン製剤 ロラタジン アレルギー鼻炎・蕁麻疹 7~10錠 第2世代抗ヒスタミン薬。眠気が少ない
胃腸薬 制酸剤・健胃成分配合 胃痛・胃もたれ 1箱 食生活の急変対応
絆創膏・ガーゼ・消毒液 創傷処置 小パック 防水タイプ推奨
虫刺され軟膏 ジフェンヒドラミン配合外用剤等 蚊刺傷 1個 リオ・アマゾン地域必須
虫除けスプレー DEETディート(ディート)30%以上またはイカリジン 蚊忌避 1本 WHO推奨成分。帯状蚊帳との併用推奨
経口補水塩(ORS) 塩化ナトリウム・塩化カリウム・グルコース 脱水予防 10袋程度 WHO処方ORSに準拠した製品を推奨
処方薬(慢性疾患用) 各成分 持病管理 通常量+数日分の予備 英文処方箋・診断書を必ず携帯

薬剤師メモ:ロペラミドは**腸管の蠕動運動を抑制するμオピオイド受容体作動薬(末梢性)**です。腸管内の毒素や病原体を排出させる作用を妨げるため、発熱・血便を伴う感染性腸炎、赤痢・コレラが疑われる場合は使用禁忌です。軽症の旅行者下痢症に限定して使用し、症状が改善しない場合や血便・高熱が出た場合は直ちに使用を中止して医師を受診してください。

薬学的解説:旅行者下痢症への対応

旅行者下痢症(Traveler's Diarrhea)はブラジルを含む発展途上国渡航者が経験する最も一般的な健康問題の一つです。原因の多くは腸管毒素産生性大腸菌(ETEC)を中心とした細菌感染であり、汚染された食品・飲料水の摂取が主要な感染経路です。

対応の優先順位(薬剤師の視点)

  1. まず経口補水(ORS)で脱水予防:水様便が続く場合、脱水が最大のリスクです。市販のスポーツドリンクはナトリウム濃度が不足しているため、WHO処方に準拠した経口補水塩(ORS)が推奨されます
  2. ロペラミドは補助的に使用:外出が必要な状況での症状コントロールに限定。消化管感染の除外が原則
  3. 抗菌薬の自己投与は原則禁止:アジスロマイシン等の抗菌薬を自己判断で投与することは耐性菌選択のリスクがあり、医師の指示なしには行わないでください
  4. 48時間以上改善しない場合は受診:特に発熱・血便・激しい腹痛がある場合は緊急受診

医薬品の携帯方法と税関対応

  • 機内持ち込み:固形製剤(錠剤・カプセル)は制限量なし。液体・ジェル剤は100mL以下の容器に入れ1L袋に収納
  • スーツケース:小分けして複数の場所に分散保管(紛失・盗難対策)
  • 元の容器の保持:成分表記がある元の箱・瓶・PTPシートで運ぶ(品目特定が容易)
  • 医薬品リストの作成:持参薬の一般名・用法・用量を英語で記載したリストを作成し、パスポートと一緒に保管
  • 処方薬の英文証明:慢性疾患の薬を持参する場合、主治医に英文処方箋または診断書を発行してもらい常に携帯。個人使用量(概ね1~2ヶ月分以内)の範囲での持ち込みが目安です

ブラジル渡航前の医療準備チェックリスト

医学的準備

  • 渡航前4週間以内に医師の健康診断(必要に応じて)
  • 慢性疾患がある場合は英文の診断書と処方箋をコピー
  • 黄熱病ワクチン接種(アマゾン流域・中西部渡航の場合は必須、他の地域も推奨)
  • A型肝炎ワクチン(未接種の場合は接種を検討。汚染水・食品からの感染予防)
  • 腸チフスワクチン(衛生環境が不安定な地域への渡航時)
  • 薬物アレルギー歴を英語・ポルトガル語でメモ作成
  • 血液型・常用薬をメモしてスマートフォンと紙両方で携帯

手続き・保険準備

  • 旅行保険に加入(医療費補償300万円以上、緊急搬送補償付き)
  • 保険証券と緊急連絡先(24時間日本語ホットライン番号)を紙とデジタルで保管
  • クレジットカード付帯保険の補償内容確認(補足保険として利用可能か)
  • 在ブラジル日本大使館・総領事館の連絡先をスマートフォンに登録

情報収集

  • 外務省「海外安全情報」でブラジルの最新安全情報を確認
  • 厚生労働省検疫所(FORTH)でブラジルの感染症情報を確認
  • 滞在地の医療施設情報をGoogle Mapsにお気に入り保存
  • ポルトガル語の症状表現を最低5フレーズ練習
  • ホテルのコンシェルジュの医療サポート対応可否を事前確認

緊急時の連絡先とSOS対応

ブラジル国内の緊急連絡先

機関 電話番号 対応内容
警察(Polícia) 190 犯罪・強盗・紛失届け
消防・救急(SAMU) 192 医療救急(救急車の要請)
消防(Bombeiros) 193 火災・救助
日本大使館(ブラジリア) +55-61-3038-0100 邦人支援・緊急パスポート
日本総領事館(サンパウロ) +55-11-3562-4800 邦人支援(サンパウロ州)
日本総領事館(リオデジャネイロ) +55-21-3814-0710 邦人支援(リオ州)

薬剤師メモ:医療救急(SAMU:192)に電話する際、ポルトガル語で症状を説明するのが困難な場合は、ホテルのフロントスタッフを介して説明してもらう方法が最も確実です。医学的正確さを保つためにも、可能な限りホテル経由での対応を優先してください。スマートフォンのGoogle翻訳のリアルタイム通話翻訳機能(通訳モード)も補助的に活用できます。

狂犬病曝露後対応(特に注意)

ブラジルは狂犬病が依然として流行している地域が存在します。犬・コウモリ・野生動物に噛まれた・引っ掻かれた場合は、以下の手順で対応してください。

  1. 傷口を石鹸と流水で15分以上洗浄(最も重要な初期対応)
  2. ポビドンヨード等の消毒薬で処置
  3. できる限り早く医療機関を受診(曝露後予防 PEP = ワクチン接種±免疫グロブリン投与が必要)
  4. 渡航前に狂犬病ワクチン(曝露前予防接種 3回)を接種していれば、曝露後の対応が簡略化される

狂犬病は発症後の致死率がほぼ100%であり、曝露後の迅速な医療機関受診が命を救います。


ブラジルで気をつけたい薬の持参と現地調達の注意点

日本の処方薬を持ち込む場合

日本の処方薬を携帯して入国する場合、個人使用目的であれば通常は問題ありません。ただし以下の点に注意してください。

  • 向精神薬・麻薬・覚醒剤原料を含む医薬品は、ブラジルの法令に基づいた申告・手続きが必要な場合があります。事前に在日ブラジル大使館または現地当局の情報を確認してください
  • インスリン・注射薬を持参する場合は、医師の診断書と英文処方箋を必ず携帯
  • 液体製剤(シロップ・点眼薬・点鼻薬)は機内持ち込みルールに従って分量を調整

現地で日本薬の代替を探す場合

現地薬局で日本の薬の代替品を探す際は、商品名ではなく有効成分(一般名)で探すのが最も確実です。

日本での一般的な成分 ブラジルでの対応成分(参考) 注意点
アセトアミノフェン Paracetamolパラセタモール / Acetaminofeno 同一成分。用法・用量を確認
ロペラミド Loperamida 同一成分
ロラタジン Loratadina 同一成分
セチリジン Cetirizina 同一成分
イブプロフェン Ibuprofeno NSAIDs。デング熱疑いでは使用禁止

まとめ

  • ブラジルの医療は私立施設利用が基本:外国人旅行者は公立施設(SUS)の受診が現実的に困難なため、私立病院・クリニックを利用。費用は目安として初診だけで数万円規模になることも

  • 薬局(Farmácia)は処方箋なしで医薬品購入が可能:症状をポルトガル語または英語で説明すれば、常駐の薬学士(Farmacêutico)が適切な医薬品を案内してくれる。ただし抗生物質は処方箋が必要

  • 旅行保険の加入は必須:医療費補償額300万円以上(緊急搬送補償付き)を推奨。24時間日本語ホットラインのある商品を選択し、渡航前に補償内容を完全に理解しておく

  • 事前の医薬品準備が重要:アセトアミノフェン製剤・ロペラミド・経口補水塩・整腸薬・抗ヒスタミン薬・虫除けを日本から持参。元の容器と英文説明書を保持。処方薬には英文処方箋を添付

  • ジピロン(メタミゾール)はブラジルで広く使用されるが日本への持ち帰り禁止:無顆粒球症リスクのため日本・米国・英国では承認されていない。現地使用に限定

  • 感染症・デング熱に注意:蚊除け対策(DEETディート 30%以上またはイカリジン配合製品)を徹底。発熱・皮疹・関節痛が出た場合は必ず医師を受診。デング熱疑いではアスピリン・イブプロフェンの使用を避けアセトアミノフェンを選択

  • 緊急時は救急番号 192(SAMU)、または 193(消防)へ連絡:言語に不安がある場合はホテルスタッフを介して通報するのが最も確実

  • 最新情報は公式機関で確認:外務省「海外安全ホームページ」、厚生労働省検疫所(FORTH)、在ブラジル日本大使館・総領事館の最新情報を渡航直前に必ずチェック


参考文献・情報源

  1. 外務省「海外安全情報 ブラジル」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_005.html

  2. 厚生労働省検疫所(FORTH)「ブラジル連邦共和国」 https://www.forth.go.jp/destination/brazil.html

  3. WHO – Dengue and Severe Dengue (Fact sheet) https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/dengue-and-severe-dengue

  4. CDC – Traveler's Health: Brazil https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/brazil

  5. ANVISA(ブラジル国家衛生監督庁)– Medicamentos https://www.gov.br/anvisa/pt-br/assuntos/medicamentos

  6. WHO – Oral Rehydration Salts: Production of the New ORS https://www.who.int/publications/i/item/WHO-FCH-CAH-06.1

  7. PMDA(医薬品医療機器総合機構)「海外で使用される医薬品について」 https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html


監修:薬剤師(博士(薬学))

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