デンマークの医療システム概要
デンマークはスカンジナビア半島に位置し、北欧の中でも医療水準が極めて高い国です。国民皆保険制度が充実しており、現地の医療施設は近代的で清潔です。しかし、渡航者にとっては言語や制度の違いが課題となります。本記事では、薬剤師視点から実践的な対応方法をご説明します。
薬剤師メモ デンマークの医療制度はGP(General Practitioner)制度が主流です。症状があれば、まずかかりつけの診療所を受診し、必要に応じて専門医や病院に紹介される仕組みになっています。旅行者は緊急性がなければ薬局で相談することも有効です。
デンマークの医療レベルと特徴
- 医療水準: WHO評価で世界上位
- 主要言語: デンマーク語(英語も広く通じる)
- 医療施設: 公立・私立ともに充実
- 処方箋制度: EU同等の厳密な管理体制
デンマークの医療は5つの地域(Region)によって運営されており、それぞれが病院ネットワークを管轄しています。公立病院は無料で受診できるのはデンマーク国民と長期居住者に限られ、旅行者は原則として費用が発生します。ただし、EU市民はEHIC(European Health Insurance Card)を提示することで一部カバーされますが、日本人旅行者はこれに該当しないため、旅行保険の事前加入が不可欠です。
また、デンマークは電子化が進んだ医療インフラを持ち、患者情報は電子データベース「Sundhed.dk」で一元管理されています。処方箋もほぼ100%電子化されており、全国どの薬局でも処方情報を照合して調剤できる仕組みです。医師とのコミュニケーションでは英語が広く通じるため、日本人旅行者でも比較的スムーズな受診が期待できます。
救急番号と夜間医療相談の使い分け
デンマークで体調異変が生じた際、まず知っておくべきは以下の2つの番号です。
| 番号 | 用途 | 対応 |
|---|---|---|
| 112 | 生命に関わる緊急救急(心停止・大量出血・意識消失など) | 救急車・消防・警察 24時間対応 |
| 1813 | 夜間・休日の医療相談(緊急性は低いが早急に医師に相談したいとき) | 看護師・医師が電話トリアージ、コペンハーゲン首都圏エリア向け |
1813はコペンハーゲンを含むRegion Hovedstadenが提供する医療相談ダイヤルです。看護師または医師が電話口でトリアージ(症状の重篤度判断)を行い、「受診不要・薬局対応で十分」「GP診療所を受診」「ERへ行くべき」などをアドバイスしてくれます。英語での対応も可能なケースが多く、旅行者にとっても非常に有用です。地方在住の場合は各地域のホットラインが別途設けられている場合があるため、宿泊先のスタッフに確認を推奨します。
デンマークの薬局(Apotek)利用ガイド
薬局の探し方と基本情報
デンマーク語で薬局は「Apotek(アポテーク)」と呼ばれます。街中では緑色の十字マーク(+)を目印に探すことができます。日本のドラッグストアとは異なり、医薬品の販売は専門資格を持つ薬剤師(Farmaceut)または薬局助手(Apoteksassistent)が担当するため、専門的な相談が可能です。
薬局の探し方
- Google Mapsで「Apotek」と検索(現在地周辺が一覧表示される)
- デンマーク薬局協会の公式サイト(apotek.dk)で検索(営業時間・夜間対応の確認が可能)
- ホテルのフロントに最寄り薬局を確認(最も確実)
主要薬局の特徴と営業時間の目安
| 薬局の種別 | 特徴 | 一般的な営業時間の目安 |
|---|---|---|
| 一般薬局(Apotek) | 処方箋医薬品・OTC両対応、薬剤師常駐 | 平日 9:00〜17:30、土 9:00〜14:00(店舗により異なる) |
| 夜間対応薬局 | 緊急処方箋対応、夜間割増料金あり | 24時間または延長営業 |
| 薬局兼美容用品店(Matas等) | OTC・美容・衛生用品の販売が中心。薬剤師常駐でない店舗あり | 平日〜日曜 8:00〜20:00(店舗による) |
薬剤師メモ コペンハーゲン中心部(Vesterbrogade周辺)には夜間対応薬局が存在します。夜間や休日に急な処方箋が必要になった場合、apotek.dkの「Vagtapotek(夜間薬局)」検索機能が役立ちます。夜間は通常の薬局料金に加えて夜間手数料(目安: 50〜100DKK程度)が上乗せされる場合があります。
薬局での購入・相談方法
デンマークの薬局では、一般用医薬品(OTC)と処方箋医薬品の両方を取り扱っています。OTC医薬品は処方箋なしで購入でき、薬剤師への相談も無料で受けられます。旅行中の軽症であれば、まず薬局に立ち寄り薬剤師に相談するのが最も手軽な対処法です。
デンマークで入手できる主なOTC医薬品(成分名ベース)
| 症状 | 主な有効成分 | 薬学的補足 |
|---|---|---|
| 頭痛・発熱 | パラセタモール(アセトアミノフェン)500mg | 解熱鎮痛薬の第一選択。胃への刺激が少なく空腹時投与も可。最大用量は成人1回1,000mg、1日4,000mgを超えない |
| 風邪の諸症状 | ビタミンC・亜鉛配合の免疫サポート系OTC | 治癒を短縮するエビデンスは限定的だが安全性が高い |
| 胃痛・胃酸過多 | 炭酸カルシウム・水酸化マグネシウム(制酸薬) | 即効性あり。長期連用で「酸リバウンド」に注意 |
| 下痢 | ロペラミド塩酸塩 | 腸管のμオピオイド受容体に作用し蠕動を抑制。発熱・血便がある場合は使用禁忌。成人1回2mg |
| アレルギー・花粉症 | セチリジン塩酸塩(第二世代抗ヒスタミン薬) | H1受容体拮抗。第一世代に比べ中枢神経抑制(眠気)が少ない。1日1回10mg |
| 皮膚真菌症 | クロトリマゾール(外用抗真菌薬) | エルゴステロール合成阻害。水虫・カンジダ症に有効。1日2〜3回患部に塗布 |
| 目の充血・アレルギー性結膜炎 | ケトチフェン点眼など | 抗ヒスタミン+肥満細胞安定化作用 |
薬局での相談フレーズ(英語)
-
I have a headache. Can you recommend a painkiller?(アイ ハヴ ア ヘッドエイク。 キャン ユー レコメンド ア ペインキラー?) -
I have diarrhea since this morning.(アイ ハヴ ダイアリーア シンス ディス モーニング) -
I am allergic to aspirin.(アイ アム アレルジック トゥ アスピリン) -
Do you have something for an upset stomach?(ドゥ ユー ハヴ サムシング フォー アン アップセット スタマック?) -
Is this safe to take with my current medication?(イズ ディス セーフ トゥ テイク ウィズ マイ カレント メディケーション?)
薬剤師への相談時は「いつから・どんな症状か・現在飲んでいる薬・アレルギー歴」の4点を伝えると、より適切な薬を選んでもらえます。
OTC医薬品の薬学的解説:特に注意すべき相互作用と副作用
旅行者が現地で入手しやすいOTC医薬品の中でも、薬学的に注意が必要なポイントをまとめます。
パラセタモール(アセトアミノフェン) 肝臓で代謝されるため、アルコール多飲者や肝疾患患者では過剰摂取リスクが高まります。旅行中に飲酒量が増える場合は1日3,000mg以下に制限することを推奨します。他の総合感冒薬と重複摂取にも注意(多くの感冒薬にパラセタモールが含有)。
ロペラミド塩酸塩 腸管の蠕動抑制により下痢を止めますが、感染性腸炎(細菌性・出血性)での使用は病原体の排出を妨げるため原則禁忌です。旅行者下痢症の場合、まず水分・電解質補給を優先し、発熱・血便がなければ症状緩和として使用可。抗不整脈薬(キニジン)との併用でロペラミドの血中濃度が上昇することがあるため、心疾患治療中の旅行者は注意が必要です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:イブプロフェン等) 解熱鎮痛目的で広く使用されますが、空腹時の胃粘膜刺激・消化管出血リスクがあります。ワルファリンなど抗凝固薬との相互作用(出血リスク増大)、ACE阻害薬との腎機能低下リスクも重要です。デンマークではイブプロフェン含有OTC製品も多く販売されています。飲酒中・絶食状態での服用は避け、食後に服用することを推奨します。
抗ヒスタミン薬(セチリジン・ロラタジン等) 第二世代は比較的眠気が少ないですが、個人差があります。運転・機械操作前の服用には注意が必要です。アルコールとの併用で中枢神経抑制が増強することがあります。
処方箋医薬品の取得方法
医師の診察を受けた際に処方箋(Recept:レセプト)を受け取ります。デンマークの処方箋には以下の特徴があります:
- 電子処方箋(FMK: Fælles Medicinkort): ほぼ100%電子化。患者のCPR番号(市民番号)に紐付けられており、全国どの薬局でも調剤可能
- 旅行者向け: CPR番号を持たない外国人への処方は紙の処方箋(または電子でも別途出力)が交付される
- 有効期限: 通常1年以内(急性症状の処方は短期)
- ジェネリック医薬品: デフォルトで代替品が調剤される傾向あり。先発品を希望する場合は「I want the brand name version.(アイ ウォント ザ ブランド ネーム バージョン)」と申し出る
- 価格: 旅行者は補助なしの全額自己負担が基本。医薬品によって価格差が大きい
医師の受診方法と医療施設の探し方
受診先の選択フロー
症状発生
↓
軽症・OTC対応可能? → はい → 薬局(Apotek)で相談
↓ いいえ
↓
緊急性がある?(意識障害・胸痛・呼吸困難・大量出血など)
→ はい → 112に電話(救急車)またはER(緊急外来)直接受診
↓ いいえ
↓
夜間・休日?
→ はい → 1813(コペンハーゲン首都圏)または各地域の夜間診療窓口
↓ いいえ
↓
GP診療所(予約優先)またはウォークイン受診
GP(一般医)診療所の探し方
デンマークの一次医療はGP(Praktiserende Læge:プラクティセレンデ レーイェ)が担います。旅行者はかかりつけ登録がないため、ウォークイン(予約なし)または電話予約での受診となります。多くのGP診療所では当日の急患対応枠(akut tid)を設けています。
受診先の検索方法
- Google Maps:
Læge(医師)またはLaegevagt(夜間救急診療所)で検索 - 旅行保険会社のコールセンター: 英語対応のネットワーク医療機関を紹介してもらえることが多い
- ホテル・宿泊施設のスタッフに最寄り診療所を案内してもらう(最も確実かつ迅速)
- 旅行者向けプライベートクリニック: コペンハーゲンのような観光都市では英語対応クリニックが存在する
主要都市の夜間緊急診療(Laegevagt)連絡先の目安
| 都市 | エリア | 問い合わせ番号(目安) |
|---|---|---|
| コペンハーゲン | Region Hovedstaden | 1813(夜間医療相談) |
| オーフス | Region Midtjylland | 70 11 31 31(目安) |
| オーデンセ | Region Syddanmark | 70 11 07 07(目安) |
※電話番号は変更の可能性があるため、旅行前に現地大使館または保険会社に最新情報を確認してください。
受診時の準備物と流れ
必ず持参するもの
- パスポート(身分確認用)
- 旅行保険証書(英文)および保険会社の緊急連絡先
- クレジットカード(Visa/Mastercardが広く使用可能)と現金
- 現在服用中の薬のリスト(一般名・用量・服用目的を英語で記載)
- 既往歴・アレルギー歴を英語で簡潔にまとめたメモ
- 症状の経過メモ(いつから・どんな症状・増悪因子など)
受診の流れ
- 受付でパスポートと保険書類を提示し、外国人旅行者であることを伝える
- 症状・既往歴・アレルギー・現在の投薬を英語で説明
- 医師による問診・診察(必要に応じて検査)
- 処方箋または紹介状の発行
- 会計:全額支払い後、英文診療明細書(Invoice)と領収書(Receipt)を必ず受け取る
- 薬局で処方箋を提出し調剤を受ける
薬剤師メモ 受診時に「常用薬リスト(Medication List)」を英語で用意しておくと、医師が薬物相互作用を確認しやすくなります。薬品名は商品名ではなく一般名(例: アムロジピン5mg、1日1回)で記載すると世界中で通じます。
緊急時の対応(救急車・ER)
救急車の呼び方
- 電話番号: 112(EU共通緊急番号)
- 英語での対応が可能
- 伝える内容: 現在地(住所またはランドマーク)、症状の概要、負傷者の人数、氏名
電話でのフレーズ例
-
I need an ambulance. My friend has collapsed.(アイ ニード アン アンビュランス。 マイ フレンド ハズ コラプスト) -
I am at [ホテル名・通り名]. My name is [名前].(アイ アム アット ○○。 マイ ネーム イズ ○○) -
He/She is unconscious.(ヒー/シー イズ アンコンシャス)
主要ER施設(コペンハーゲン周辺)
| 施設名 | 所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| Rigshospitalet | Blegdamsvej 9, Copenhagen | デンマーク最大の国立大学病院・最重症対応 |
| Bispebjerg Hospital | Bispebjerg Bakke 23, Copenhagen | 北西部エリアの主要ER |
| Herlev Hospital | Herlev, 首都圏西部 | 外傷・救急に対応 |
旅行保険の使い方と請求手続き
保険選択時のポイント
デンマークは物価水準が高く、医療費も例外ではありません。外来診察だけでも数百DKK(1DKK=約20円)が発生し、入院・手術になれば数十万円規模に及ぶことも珍しくありません。旅行前に適切な保険を選択し、補償内容を把握しておくことが重要です。
医療保険に含むべき項目
| 項目 | 推奨補償額の目安 | 重要度 |
|---|---|---|
| 医療費(外来・入院) | 1,000万円以上を推奨 | 必須 |
| 処方薬費用 | 医療費に含まれるか確認 | 必須 |
| 救急車・搬送費用 | フルカバー | 必須 |
| 緊急歯科治療 | 50万円程度 | 推奨 |
| 医療搬送・帰国費用 | 含まれるか確認 | 推奨 |
| キャッシュレス(直接支払い) | 対応病院の範囲確認 | 推奨 |
薬剤師メモ 処方医薬品はデンマーク市民向けの補助がない旅行者の場合、日本の数倍の価格になることがあります。1週間分の抗生物質で5,000〜10,000円程度になるケースもあります(薬の種類・規格による)。旅行保険で処方薬費用もカバーされているかを必ず事前確認してください。
保険請求の手続き
受診時に必ずすべきこと
- 受診前に可能であれば保険会社に連絡し、受診先の確認と事前承認を取得
- 英文の診療明細書(Invoice)を受診ごとに取得(症状・診断名・処置内容・費用が記載されたもの)
- 薬局での処方薬レシートも全て保管(薬品名・価格が記載されたもの)
- 会計領収書(Receipt)は英語表記であることを確認
帰国後の請求フロー
- 保険会社に請求書類一式を提出(郵送またはオンライン)
- 英文診療明細書・処方箋・領収書の確認
- 査定期間(通常2〜4週間)
- 承認・給付金振込
主要旅行保険会社のサポート体制(一般的な特徴)
| 保険会社 | 24時間日本語サポート | 現地直接支払い対応 |
|---|---|---|
| ジェイアイ傷害火災 | あり | 一部病院と提携 |
| AIG損保 | あり | 一部病院と提携 |
| 三井住友海上 | あり | 一部病院と提携 |
| 損保ジャパン | あり | 一部病院と提携 |
※各社の補償内容・提携病院は年度により変更があります。渡航前に必ず各社の最新情報を確認してください。
デンマークで入手しやすい常用医薬品
旅行時に持参すべき医薬品リスト
デンマークの薬局でも相応の医薬品は入手できますが、言語の壁・価格・製品の種類の違いを考慮すると、基本的な常備薬は日本から持参する方が安心です。
推奨持参品リスト
| カテゴリ | 推奨成分・製品例 | 備考 |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン配合OTC(例: カロナール錠等) | ロキソプロフェン・イブプロフェン配合品でも可 |
| 下痢止め | ロペラミド塩酸塩配合OTC | 感染性下痢では原則使用しない |
| 整腸薬 | 乳酸菌・ビフィズス菌配合OTC | 腸内環境の維持に |
| 胃薬 | ファモチジン・ランソプラゾール等のH2ブロッカー・PPI | 脂っこい食事での胃もたれ・逆流に |
| 抗アレルギー薬 | セチリジン・ロラタジン配合OTC | 花粉・環境アレルギーに |
| のど薬 | リドカイン・セチルピリジニウム塩化物含有トローチ等 | 咽頭炎予防・初期対応 |
| 傷薬・皮膚ケア | ポビドンヨード消毒薬、ヒドロコルチゾン外用薬(OTC) | 軽度の切り傷・虫刺され |
| 常用薬(処方薬) | 必ず2週間分以上を処方箋コピー付きで | 滞在日数+予備を持参 |
持参時の注意点(税関・携帯医薬品)
- 医師の処方箋がある医薬品は、英文処方箋コピーを薬と一緒に保管し、税関でスムーズに提示できるようにする
- 医薬品は元の容器・製品ラベルが貼付された状態で携行する(開封済みパッケージは税関で成分確認を求められる場合がある)
- 麻薬性鎮痛薬・向精神薬(コデイン配合薬・ベンゾジアゼピン系等) を携帯する場合は、出国前に厚生労働省地方厚生局への「麻薬・向精神薬の携帯輸出入手続き」が必要な場合がある(品目・量により異なるため、必ず事前確認)
- デンマーク税関では一般的な医薬品(3ヶ月分程度まで)は個人使用目的であれば通常問題なし。ただし、EU規制物質や麻薬指定薬物は別途申告が必要
- EUで規制されている成分を含む日本のOTC薬(例: コデイン含有咳止め、エフェドリン含有薬)は事前に厚生労働省および在デンマーク日本大使館に確認すること
デンマーク旅行者が知っておくべき感染症・健康リスク
渡航前の予防接種と感染症対策
デンマークは衛生水準が高く、特別なワクチン接種義務はありませんが、以下の点を確認しておくと安心です。
推奨される予防接種
| ワクチン | 理由 |
|---|---|
| 破傷風(Td/Tdap) | 10年ごとの追加接種推奨 |
| A型肝炎 | 欧州旅行全般に推奨 |
| 麻疹・風疹(MMR) | 免疫が不確かな場合に確認 |
| 新型コロナウイルス | 最新のガイドラインに従う |
- ダニ媒介脳炎(TBE): デンマークでは低リスクですが、スカンジナビアの森林地帯でのアウトドア活動が長期にわたる場合はTBEワクチンを検討する
- 食品衛生: デンマークの水道水は安全に飲用可能。生魚・生肉を多量に摂取する場合は消化器症状(リステリア・カンピロバクター等)に注意
旅行者下痢症(Traveler's Diarrhea)への対応
デンマーク自体の衛生水準は高いですが、長距離フライト・食事の変化・時差ボケによる体調変化で消化器症状が出ることがあります。薬学的な対応ポイントを以下に示します。
- 水分・電解質補給を最優先: 経口補水液(ORS)または市販スポーツドリンクを薄めたものを少量ずつ頻繁に摂取
- ロペラミドの適正使用: 発熱・血便がなく、細菌性腸炎でないと判断される場合に限り使用。成人1回2mg、症状が落ち着くまで
- 抗生物質は医師の判断で: 自己判断での抗生物質使用は耐性菌リスクを高めるため、医師の診察なしでの使用は推奨しない
- 症状が48時間以上持続する場合: 医師受診を強く推奨
便利な医療用語・フレーズ集
症状説明(英語)
| 症状 | 英語フレーズ | カナ読み |
|---|---|---|
| 頭痛がある | I have a headache. |
アイ ハヴ ア ヘッドエイク |
| 発熱している | I have a fever. |
アイ ハヴ ア フィーバー |
| 下痢をしている | I have diarrhea. |
アイ ハヴ ダイアリーア |
| 吐き気がする | I feel nauseous. |
アイ フィール ノーシャス |
| アレルギーがある | I have an allergy to ○○. |
アイ ハヴ アン アレルジー トゥ ○○ |
| 薬の副作用が出た | I'm experiencing side effects from ○○. |
アイム イクスピアリエンシング サイド エフェクツ フロム ○○ |
| 既往歴がある | I have a history of ○○. |
アイ ハヴ ア ヒストリー オブ ○○ |
| 処方箋が必要です | I need a prescription. |
アイ ニード ア プリスクリプション |
| 英語の領収書をください | Can I get a receipt in English? |
キャン アイ ゲット ア リシート イン イングリッシュ? |
| 今、薬を飲んでいます | I'm currently taking medication. |
アイム カレントリー テイキング メディケーション |
医療機関でよく聞かれる表現
| 医療スタッフの言葉 | 意味 |
|---|---|
How long have you had this? |
どのくらい前から症状がありますか |
Do you take any medication? |
現在、薬を飲んでいますか |
Any allergies? |
アレルギーはありますか |
On a scale of 1 to 10, how bad is the pain? |
痛みの強さを1〜10で表すと? |
We need to run some tests. |
検査が必要です |
よくある質問と回答
Q: デンマークで日本の処方箋は使える? A: 使用できません。デンマークの薬局は現地の医師が発行した処方箋(またはEU/EEA域内の医師による処方箋)のみ調剤できます。常用薬がある場合は、成分一般名・用量・服用目的・処方医師名を英語で記載した「薬剤情報提供書(Medication Summary)」を日本の主治医に作成してもらい、持参することを強く推奨します。
Q: 処方箋医薬品は薬局で即日入手できる? A: 一般的な薬剤であれば在庫がある限り即日調剤が可能です。在庫がない場合は翌営業日の取り寄せになります。デンマークは電子処方箋が主流で、医師が発行するとほぼリアルタイムで薬局側のシステムに情報が届きます。なお、麻薬指定薬物(オピオイド系鎮痛薬など)は規制が厳しく、即日対応できない場合があります。
Q: 医療費が高額だった場合、全額請求できる? A: 旅行保険の契約内容によります。必ず「医療費の実費全額補償か」「免責金額の有無」「補償上限額」を渡航前に保険証書で確認してください。現地での支払い後に保険会社へ請求する「立替払い方式」が多く、英文の診療明細書・処方箋・領収書の保管が不可欠です。
Q: 英語が話せない場合はどうする? A: Google翻訳などの翻訳アプリ(テキスト・カメラ・音声翻訳)を事前にダウンロードしておくと役立ちます。ホテルスタッフに通訳をお願いするか、旅行保険会社によっては現地での電話通訳サービスを提供している場合もあります。大都市の主要病院では医療翻訳サービスが利用できることもあります。
Q: 市販の日本語解説アプリや医療情報はデンマークで使える? A: 外務省「海外安全情報」アプリや、各旅行保険会社のスマートフォンアプリは日本語で医療機関を案内してくれる機能を持つ場合があります。渡航前に各社アプリをインストールし、オフラインでも使えるよう設定しておくことを推奨します。
まとめ
-
緊急連絡先の使い分け: 生命に関わる緊急事態は112(救急車・EU共通番号)、夜間の軽〜中等症医療相談はコペンハーゲン首都圏の1813。渡航前に番号をメモしておくこと
-
薬局(Apotek)の利用: 緑の十字マークが目印。apotek.dkまたはGoogle Mapsで「Apotek」検索。軽症ならOTC医薬品で対応可能。薬剤師は英語対応が高確率。成分名(一般名)を伝えると確実
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OTC医薬品の薬学的注意点: パラセタモールは飲酒者・肝疾患者で上限用量に注意。ロペラミドは発熱・血便がある感染性下痢には禁忌。NSAIDsは空腹時・抗凝固薬服用者には注意が必要
-
処方箋医薬品: デンマークは電子処方箋(FMK)が主流。旅行者はCPR番号がないため紙の処方箋が交付されることが多い。日本の処方箋は現地では使用不可
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医師受診: GP診療所が基本。緊急性があればER直行。旅行保険会社経由で医療機関紹介を受けるのが最短ルートの一つ
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旅行保険: 医療補償1,000万円以上を推奨。処方薬費用が含まれるか事前確認必須。受診ごとに英文診療明細書・領収書を必ず取得・保管
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持参医薬品: 常用の処方薬は英文薬剤情報と一緒に元の容器で持参。麻薬性・向精神薬は出国前に厚生労働省に確認。コデイン・エフェドリン含有薬はEU規制に注意
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感染症対策: 渡航前に予防接種(破傷風・A型肝炎)を確認。旅行者下痢症は水分・電解質補給が最優先
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最新情報の確認: 医療制度・費用・連絡先は変更の可能性があります。外務省「世界の医療事情(デンマーク)」および在デンマーク日本大使館の最新情報を参照してください(本記事は2025年7月時点の情報をもとに作成)。
参考文献・情報源
-
外務省「世界の医療事情 デンマーク」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/europe/denmark.html -
厚生労働省「医薬品を持って海外へ行かれる方へ」(麻薬・向精神薬の携帯輸出入)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/kaigai/index.html -
WHO Essential Medicines and Health Products — Rational use of medicines
https://www.who.int/teams/health-product-policy-and-standards/medicines -
CDC Travelers' Health — Europe (Denmark)
https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/denmark -
European Medicines Agency (EMA) — Paracetamol product information
https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/paracetamol-containing-medicines -
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)「一般用医薬品の適正使用情報」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/index.html -
Sundhedsstyrelsen(デンマーク保健庁)公式情報
https://www.sst.dk/en
監修: 薬剤師(博士(薬学))