デンマーク渡航時の医薬品持ち込みルール概要
EU加盟国であるデンマークは、シェンゲン協定加盟国としての統一規制と、デンマーク独自の医薬品規制(Danish Medicines Agency / Lægemiddelstyrelsen、通称 DKMA)の両方に従っています。日本からの旅行者・長期滞在者にとって注意すべきは「日本では普通に購入できる医薬品でも、EU域内では規制物質に該当する成分が含まれているケースがある」という点です。
デンマークの医薬品規制は、EU指令 2001/83/EC(ヒト用医薬品に関する共同体規則)を国内法に転換した形で運用されており、処方薬(Receptpligtig medicin)と一般用医薬品(Håndkøbsmedicin)の区分はおおむねEU標準に準拠しています。一方で、麻薬・向精神薬については国連の「麻薬に関する単一条約(1961年)」および「向精神物質に関する条約(1971年)」を批准した国内法(Lov om euforiserende stoffer)によりさらに厳格に管理されています。
本記事では薬剤師(博士(薬学))の視点から、実際の渡航に役立つ具体的な持ち込みルール・必要書類・薬学的根拠を体系的に解説します。特に精神神経用薬・睡眠薬・コデイン含有薬については薬物動態や規制背景も含めて詳しく述べます。
本記事で解説する主な内容:
- シェンゲン医療証明書(Schengen Medical Certificate)の取得と活用法
- 処方薬・市販薬の種類別持ち込みルール
- 持ち込み禁止成分と薬学的根拠
- 税関申告の具体的手順と現場英語フレーズ
- コペンハーゲン到着後の医薬品入手方法
関連情報:[[schengen-medical-certificate]] / [[eu-medication-rules]] / [[airport-medication-tips]]
シェンゲン医療証明書とは何か:DKMA規制との関係
シェンゲン医療証明書の概要
シェンゲン協定加盟国間では、麻薬・向精神薬を旅行者が個人使用目的で携帯する際に「シェンゲン医療証明書(Schengen Medical Certificate)」の携帯が推奨または必須とされています。デンマークを含む全シェンゲン加盟国において、この証明書は税関でのスムーズな通関をサポートする重要書類です。
シェンゲン医療証明書は各国の保健機関または指定機関が発行する統一フォームで、以下の情報を英語(および発行国語)で記載します:
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 患者氏名・生年月日 | パスポートと一致していること |
| 診断名(英語) | ICD-10コードを添付すると明確 |
| 医薬品名(国際一般名/INN) | 商品名ではなくINNが望ましい |
| 剤形・用量・用法 | 例: "Diazepam 5mg tablet, once daily at bedtime" |
| 処方期間・渡航期間 | 持参量が渡航期間に見合うことを証明 |
| 発行医師の署名・スタンプ | 医師資格番号があれば記載 |
| 発行日 | 渡航3ヶ月以内のもの推奨 |
DKMAが定める個人輸入の範囲
デンマーク医薬品庁(DKMA)の規定では、旅行者が個人使用目的で医薬品を持ち込む場合、原則として「治療期間に対応した量」が許容されます。これは一般的には最大3ヶ月分とされていますが、麻薬・向精神薬については個別判断が必要です。
麻薬(Schedule I–III相当の物質)については、デンマーク保健庁(Styrelsen for Patientsikkerhed)への事前申請が必要なケースがあります。渡航前に DKMA の公式ウェブサイト( www.lmst.dk)または在デンマーク日本大使館に問い合わせることを強く推奨します。
処方薬の持ち込みルール
基本ルール
デンマークへの処方薬持ち込みは以下の原則に従います:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 持参上限 | 個人使用量(原則1ヶ月分、麻薬・向精神薬は要個別確認) |
| 必須書類 | 英文診断書または処方箋のコピー(シェンゲン医療証明書が理想) |
| パッケージ | 元の処方箋ラベル付き容器のまま持参 |
| 税関申告 | 医薬品に該当する場合は申告を推奨 |
| 言語 | 英語での説明準備が必須 |
薬学的観点から重要なのは「一般名(INN: International Nonproprietary Name)で記載された書類を準備する」ことです。日本の商品名(例: マイスリー)はデンマーク税関では通じない場合があります。一般名(例: zolpidem tartrate)で記載されていれば、世界共通で内容物を特定できます。
特に注意が必要な処方薬
以下の医薬品は事前確認が必須です:
| 薬効分類 | 成分名(INN) | 日本での代表的分類 | デンマークでの規制 |
|---|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン系抗不安薬 | diazepam, alprazolam, lorazepam | 向精神薬(処方箋医薬品) | EU Schedule IV相当、シェンゲン証明書推奨 |
| ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | nitrazepam, flunitrazepam, triazolam | 向精神薬(処方箋医薬品) | 規制強化品目、事前許可が必要な場合あり |
| 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z薬) | zolpidem, zopiclone | 向精神薬(処方箋医薬品) | EU規制対象、処方箋・証明書必須 |
| 中枢神経刺激薬(ADHD治療薬) | methylphenidate, lisdexamfetamine | 麻薬(処方箋医薬品) | 事前申請が必要な可能性あり |
| オピオイド系鎮痛薬 | tramadol, morphine, oxycodone | 麻薬・向精神薬 | 量・種類により事前申請必須 |
| 甲状腺ホルモン製剤 | levothyroxine sodium | 処方箋医薬品 | 診断書があれば通常問題なし |
| ステロイド外用薬 | betamethasone valerate(外用) | 処方箋医薬品 | 一般的に持参可能 |
| 抗てんかん薬 | valproate, levetiracetam | 処方箋医薬品 | 診断書必須、量は適切に |
| 抗凝固薬 | warfarin, apixaban | 処方箋医薬品 | 診断書+INR管理記録の携帯推奨 |
ベンゾジアゼピン系薬剤の薬学的背景
ベンゾジアゼピン系(BZD)薬剤は、GABA-A受容体への正のアロステリック修飾作用を持ち、中枢神経抑制作用を発揮します。日本では抗不安薬・睡眠薬として広く使用されていますが、依存性・乱用リスクが高く、EUでは国連「向精神物質に関する条約(1971年)」のSchedule IVに該当する物質が多く含まれます。
特にフルニトラゼパム(triazolam等の一部)は規制が最も厳しいBZD系の一つです。デンマーク国内法(Bekendtgørelse om euforiserende stoffer)でも規制対象として明記されており、医師の処方証明書なしの持ち込みは規制違反となる可能性があります。
半減期の観点からも注意が必要で、長時間作用型(diazepam: 半減期20–100時間)と短時間作用型(triazolam: 半減期2–4時間)で依存性・離脱症状の強度が異なります。長期服用者は渡航前に主治医と「渡航中の服薬管理計画」を立てることが重要です。
Z薬(非BZD系睡眠薬)の規制状況
ゾルピデム(zolpidem)やゾピクロン(zopiclone)はベンゾジアゼピン骨格を持たないものの、GABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用するため「Z薬」とも呼ばれます。作用機序的にBZD系と近似しており、EU・デンマークでも同様に処方箋必須の規制対象です。
日本では短期の不眠症治療に広く処方されますが、デンマークでは乱用防止の観点から短期処方(原則2–4週間)が推奨されており、長期渡航での大量持参は医学的必要性の説明が必要になります。
市販薬の持ち込みルール
OTC医薬品の持参基準
一般的な市販薬(総合感冒薬、消化薬など)は1ヶ月分程度であれば問題ありませんが、成分によっては注意が必要です。日本の市販薬の成分がEUでは規制対象となるケースがあり、特に「プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)」「コデイン(codeine)」「エフェドリン(ephedrine)」を含む製品には注意が必要です。
| 市販薬カテゴリ | 持参可否 | 薬学的注記 |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン配合解熱鎮痛薬 | ◎ 可 | 500mg製剤等、用量確認を |
| イブプロフェン・ロキソプロフェン配合鎮痛薬 | ◎ 可 | NSAIDs、成分名で確認を |
| 総合感冒薬(コデイン・エフェドリン無配合) | ◎ 可 | 成分表を必ず確認 |
| 総合感冒薬(プソイドエフェドリン配合) | ✕ 不可 | EU規制成分含有 |
| 消化薬・胃腸薬(H2ブロッカー等) | ◎ 可 | famotidine、ranitidine等 |
| 便秘薬(ビサコジル、センノシド配合) | △ 要相談 | 医薬品分類により注意 |
| 目薬(人工涙液・抗菌薬なし) | ◎ 可 | 防腐剤成分の基準差に注意 |
| 抗ヒスタミン薬配合の鼻炎薬 | ◎ 可 | diphenhydramine、fexofenadine等 |
| ステロイド外用薬(弱~中程度) | △ 少量なら可 | hydrocortisone含有の軽度品 |
| ビタミン剤・ミネラル補助食品 | ◎ 可 | 通常問題なし |
| 湿布・経皮吸収型鎮痛薬 | ◎ 可 | ケトプロフェン配合品は光線過敏症に注意 |
| ドリンク剤(医薬品分類のもの) | △ 限定的 | 医薬品・部外品の区分による |
プソイドエフェドリン・エフェドリン含有薬の薬学的解説
プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)はアドレナリン受容体に作用する交感神経刺激薬で、鼻粘膜血管の収縮による鼻閉改善効果を持ちます。一方でメタンフェタミン(覚醒剤)の前駆物質となり得るため、EU指令(Regulation (EC) No 273/2004)により厳格な管理下に置かれています。
日本の市販総合感冒薬のうち、プソイドエフェドリン塩酸塩または塩酸エフェドリンを含む製品をデンマークへ持ち込む場合は原則として持ち込み不可または厳重な申告が必要です。購入時に成分表示を確認し、これらの成分が含まれていないことを確認してください。
麻黄(まおう)エキスを含む漢方薬・和漢製剤も同様に天然エフェドリンを含む可能性があるため、注意が必要です(後述)。
絶対に持ち込めない医薬品・禁止成分
EU・デンマーク規制の厳しい成分
以下の成分を含む医薬品は持ち込み禁止またはきわめて困難です:
麻薬系成分(Narkotika):
- コデイン(codeine)リン酸塩配合の咳止め薬・鎮痛薬
- ジヒドロコデイン(dihydrocodeine)配合の鎮咳薬
- アヘン由来製剤全般(morphine、oxycodone、fentanyl等)
- ブプレノルフィン(buprenorphine)含有製剤
向精神薬(Psykotrope stoffer):
- フェノバルビタール(phenobarbital)、ペントバルビタール(pentobarbital)を含むバルビツール酸系薬剤
- メプロバメート(meprobamate)
- 高容量のトリアゾラム(triazolam)配合製剤
規制刺激薬(Stimulantia):
- エフェドリン(ephedrine)配合製剤
- プソイドエフェドリン(pseudoephedrine)配合製剤
- メチルフェニデート(methylphenidate)(事前申請なしの場合)
植物由来規制成分:
- 麻黄(Ephedra sinensis)を含む漢方薬・生薬製剤(エフェドリン含有のため)
- コカ葉・コカインを含む製品
- カート(Khat、cathinone含有)
日本で一般的だが成分に注意が必要な市販薬
以下は具体的な成分名で注意すべき事例を示します(商品名ではなく成分名で判断してください):
| 注意すべき成分 | 主な配合カテゴリ | デンマークでの扱い | 代替手段 |
|---|---|---|---|
| pseudoephedrine(プソイドエフェドリン) | 鼻炎・総合感冒薬 | EU規制物質 | 同成分なし製品に変更 |
| codeine phosphate(コデインリン酸塩) | 咳止め・鎮痛薬 | 麻薬規制対象 | デキストロメトルファン配合品等 |
| dihydrocodeine(ジヒドロコデイン) | 鎮咳薬 | 麻薬規制対象 | 成分変更要 |
| ephedrine(エフェドリン) | 漢方(麻黄含有)、気管支拡張 | EU規制物質 | 注意要 |
| flunitrazepam(フルニトラゼパム) | 睡眠薬 | 厳格規制品 | 事前申請必須 |
| phenobarbital(フェノバルビタール) | 抗てんかん薬、鎮静薬 | 麻薬相当規制 | 事前申請必須 |
漢方薬・生薬製剤の取り扱い
漢方薬・和漢製剤は「伝統医薬品」として日本では一般的ですが、デンマーク(EU)では成分の規制状況が異なります。特に注意が必要な生薬成分:
| 生薬成分 | 含有が問題となる理由 | 主な配合処方 |
|---|---|---|
| 麻黄(ephedra herb) | エフェドリン・プソイドエフェドリン含有 | 葛根湯 🛒、麻黄附子細辛湯など |
| 附子(aconite root) | アコニチン(aconitine)含有、毒性成分 | 八味地黄丸など |
| 大黄(rhubarb root) | センノシド含有、下剤成分 | 大柴胡湯など |
麻黄を含む漢方薬の持ち込みは、EU規制により「エフェドリン含有医薬品」として扱われる可能性があります。持参する場合は主治医・薬剤師に英語の成分リストを作成してもらい、税関で提示できるよう準備してください。
必要書類と持参方法
推奨される持参書類の詳細
1. シェンゲン医療証明書(Schengen Medical Certificate)
最も信頼性が高い書類です。EU加盟国の医療機関が発行する統一フォームを模した形で、日本の医師が英文で作成することも認められています。
【記載必須事項】
患者情報:
- 氏名: パスポート記載と完全一致
- 生年月日: 西暦表記
- パスポート番号
医療情報:
- 診断名(英語、ICD-10コード推奨)
- 処方医薬品の国際一般名(INN)
- 剤形・規格(例: zolpidem tartrate 5mg tablet)
- 用量・用法(例: 1 tablet at bedtime)
- 治療期間・処方理由
渡航情報:
- 渡航先(デンマーク、またはシェンゲン加盟国)
- 渡航期間
- 携帯量が渡航期間に対応していることの記載
発行者情報:
- 発行医師氏名・医療機関名
- 医師免許番号
- 医師の署名・医療機関スタンプ
- 発行日(渡航3ヶ月以内)
2. 英文処方箋・診断書のコピー
- カラーコピーまたは電子化(スキャン)したPDFをスマートフォンにも保存
- 日本語版と英文訳を両方携帯
- 薬局で発行された英文の「Medication Summary」があればさらに有用
3. 元のパッケージ・容器
- 患者氏名・用法用量が記載された処方ラベルが貼付された容器のまま持参
- ピルケースへの移し替えは税関でのトラブルリスクを高める可能性あり
- 複数の薬を持参する場合は薬ごとに書類を対応付けておく
4. 保険関連書類(参考)
- 海外旅行傷害保険証書(医薬品補償が含まれるもの)
- EU Blue Card(EHIC)を持つ場合は持参(日本人は通常該当しない)
書類準備の薬学的チェックポイント
処方医に書類を依頼する際、薬剤師として以下の確認を推奨します:
- INN(国際一般名)での記載依頼: 商品名(例: マイスリー)ではなくzolpidem tartrate で記載を
- 用量単位の明記: mg単位で明記(例: 5mg, 1 tablet)
- 規制物質の明示: 「This medication is under international controlled substances regulation...」等の記載が有用
- 治療の継続性の証明: 長期服用薬は「chronic treatment since YYYY/MM」等の記載を
税関申告の具体的手順と現場対応
コペンハーゲン空港(カストループ空港)での申告手順
コペンハーゲン・カストループ国際空港(Copenhagen Airport, Kastrup)は北欧最大級のハブ空港で、EUからの入国はシェンゲン域内扱い(申告不要が基本)ですが、日本からの直行便入国ではEU域外からの入国として扱われます。
申告の流れ:
-
申告が必要かの確認
- 麻薬・向精神薬に該当する薬剤を持参 → 必ず申告
- 処方薬(一般)を1ヶ月分以内で持参 → 申告を推奨
- 一般市販薬のみ → 申告不要(任意)
-
「申告ありレーン(Red Channel)」の利用
- 申告が必要な物品がある場合は赤レーンを利用
- 申告フォームに「Prescription medicines」と記載
-
税関官への申告フレーズ(英語)
最初の申告:
I have prescription medications to declare.(アイ ハヴ プリスクリプション メディケーションズ トゥ ディクレア)書類提示:
Here are my doctor's certificate and prescriptions.(ヒア アー マイ ドクターズ サーティフィケート アンド プリスクリプションズ)個人使用の説明:
These are for my personal use during my stay in Denmark.(ジーズ アー フォー マイ パーソナル ユース デュアリング マイ ステイ イン デンマーク)医薬品の種類を説明:
This is a sleep medication prescribed by my doctor in Japan.(ディス イズ ア スリープ メディケーション プレスクライブド バイ マイ ドクター イン ジャパン)規制物質の申告:
This medication contains a controlled substance. I have a medical certificate.(ディス メディケーション コンテインズ ア コントロールド サブスタンス。アイ ハヴ ア メディカル サーティフィケート) -
書類チェック時のポイント
- 個人使用量の確認:持参量が渡航期間に見合っていることを落ち着いて説明
- 書類の整合性:処方箋・証明書の氏名が一致していることを確認
- 禁止成分の有無チェック:事前に禁止成分が含まれていないことを確認しておく
デンマーク到着後の医薬品入手方法
薬局(Apotek)での購入
デンマークの薬局(Apotek)は日本の薬局とは仕組みが異なり、すべての薬局がデンマーク薬局協会(Danmarks Apotekerforening)に登録された公的機関として運営されています。
- 営業時間:通常9:00–18:00(月–金)、土曜午前中、日曜定休。ただしコペンハーゲン中央駅近くや空港内に24時間薬局が存在します
- 処方システム:デンマークでは医師がAPK(det Fælles Medicinkort:共通薬歴カード)電子システムに処方を登録し、薬局がオンラインで受け取る仕組みになっています。外国人には適用されないため、医師から紙の処方箋を受け取る必要があります
- OTC医薬品:アセトアミノフェン、イブプロフェン、抗ヒスタミン薬等は処方箋なしで購入可能
- 費用:旅行者は医療保険の恩恵を受けられないため自費となります(目安: OTC薬50–200DKK程度)
薬局での英語フレーズ:
薬を探す時:
Do you have a painkiller without a prescription?
(ドゥ ユー ハヴ ア ペインキラー ウィズアウト ア プリスクリプション?)
薬が切れた場合:
I ran out of my prescription medication. Can you help me?
(アイ ラン アウト オブ マイ プリスクリプション メディケーション。キャン ユー ヘルプ ミー?)
アレルギー確認:
I am allergic to penicillin. Is this medicine safe for me?
(アイ アム アレルジック トゥ ペニシリン。イズ ディス メディスン セーフ フォー ミー?)
医師の受診(Læge)
デンマークの一般開業医(Praktiserende læge / GP)は予約制が原則です。旅行者が緊急受診する場合は以下が選択肢となります:
| 受診先 | 特徴 | 費用目安(自費) |
|---|---|---|
| Akutlægen(救急外来GP) | 時間外対応の一般医 | 500–1,500DKK程度 |
| 総合病院救急(Skadestue/AKM) | 重篤な症状向け | 無料〜1,000DKK(症状による) |
| 民間クリニック | 英語対応多い | 700–2,000DKK |
| オンライン診療(Docly等) | 軽症・処方更新向け | 200–500DKK |
処方薬が旅行中に不足した場合は、できる限り日本の主治医からの「Referral Letter(紹介状)」と現在の処方内容リストをメールやPDFで取得し、現地医師に提示するとスムーズです。
薬物相互作用・副作用の渡航中管理
渡航中に特に注意すべき薬物相互作用
長時間フライト・時差・環境変化は薬物動態に影響を与えることがあります。デンマーク渡航時(東京との時差は標準時-8時間、夏時間-7時間)における注意点を薬剤師の視点から解説します。
| 薬剤カテゴリ | 渡航中の注意事項 | 薬学的根拠 |
|---|---|---|
| ワルファリン(抗凝固薬) | 食事内容・運動量の変化でINRが変動 | ビタミンK摂取量の変化で薬効変動 |
| インスリン製剤 | 時差による投与タイミング調整が必要 | 血糖値の日内変動リズムが乱れる |
| BZD系・Z薬 | アルコールとの併用で中枢神経抑制増強 | CYP3A4阻害による血中濃度上昇 |
| テオフィリン(気管支拡張薬) | 時差・食事変化で血中濃度変動 | 治療域が狭く個体差大きい |
| リチウム(双極性障害治療薬) | 脱水・食塩摂取変化で濃度変動 | 分布容積・腎排泄への影響 |
| 抗てんかん薬(バルプロ酸等) | 服用スケジュールのずれに注意 | 服薬間隔の乱れで血中濃度不安定化 |
時差への対応(服薬タイミング): 日本とデンマークの時差は約7–8時間(夏時間期間)。1日1回服用の薬剤は渡航前後の数日間、服薬時刻を徐々にずらしていく「段階的調整法」が一般的に推奨されています。ただし、具体的な調整方法は薬剤の種類・半減期によって異なるため、渡航前に必ず主治医・担当薬剤師に相談してください。
機内での医薬品管理
エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症:DVT)予防のために抗凝固薬を使用している方、ステロイド薬で免疫が低下している方は特に機内での管理に注意が必要です。
- 機内持ち込み: 液体薬(注射液含む)は100mL制限の例外とされる場合がありますが、医師の証明書(英語)の携帯が必須です
- インスリン自己注射: 機内での自己注射は多くの航空会社で可能ですが、事前に航空会社に申告が必要です
- 温度管理が必要な薬剤: インスリン、一部の生物製剤は専用の保冷ケースを使用してください
デンマーク渡航前のチェックリスト
渡航前に必ず確認すべき事項を薬学的観点から整理しました:
書類準備(渡航4週間前から):
- □ 持参医薬品の成分名(INN)をすべてリストアップする
- □ 禁止成分・規制成分が含まれていないか確認する
- □ 処方薬について医師に英文診断書・シェンゲン医療証明書を依頼する
- □ 処方箋のカラーコピーを複数枚準備する
- □ 麻薬・向精神薬については在デンマーク日本大使館に相談する
医薬品の準備(渡航2週間前から):
- □ 医薬品は元の処方ラベル付き容器のまま準備する
- □ 渡航期間分の薬量を確認し、不足がないか確認する
- □ スーツケースと手荷物の両方に薬を分散して入れる(紛失リスク分散)
- □ 海外旅行傷害保険で医薬品補償が含まれるか確認する
薬理・服薬管理(渡航1週間前から):
- □ 時差を考慮した服薬スケジュールを主治医・薬剤師と確認する
- □ ワルファリン・インスリン等の調整が必要な薬剤は渡航前に採血等で状態確認を
- □ アルコールとの相互作用がある薬剤の確認をする
- □ 現地の緊急連絡先・医療機関リストを手帳等に記録する
税関対応の準備:
- □ 医薬品一覧リスト(INN・用量・用法・適応症)を英語で作成する
- □ 税関申告のための英語フレーズを確認しておく
- □ 書類はデジタル(スマートフォン)とアナログ(紙)の両方で保持する
まとめ
- 基本ルール:処方薬は原則1ヶ月分、英文診断書・処方箋(シェンゲン医療証明書が理想)必須、元の容器で持参
- 要注意医薬品:ベンゾジアゼピン系(睡眠薬、抗不安薬)、Z薬(zolpidem等)、コデイン含有薬、エフェドリン・プソイドエフェドリン含有薬
- 市販薬:アセトアミノフェン・イブプロフェン配合の解熱鎮痛薬・消化薬はOK。成分に規制物質が含まれないか確認必須
- 禁止成分:麻薬(コデイン、モルヒネ等)、向精神薬(バルビツール酸系等)、規制刺激薬(エフェドリン系)、麻黄含有漢方薬
- 税関対応:申告が必要な場合は赤レーンで英語にて説明、個人使用量であることを書類で証明
- 事前準備:特に麻薬・向精神薬を含む薬剤は在デンマーク日本大使館(+45-3995-6200)への事前相談を強く推奨
- 到着後の対応:薬剤が不足した場合、薬局(Apotek)でOTC医薬品は購入可能。処方薬が必要な場合は現地医師(Akutlægen等)を受診
- 渡航中の薬物管理:時差・食事変化による薬物動態への影響を事前に主治医・薬剤師と確認する
重要な注記:本記事は2025年現在の一般的なガイダンスです。デンマークおよびEUの医薬品規制は予告なく変更される可能性があります。必ず最新情報について以下で確認してください:
- 在デンマーク日本大使館( https://www.denmark.emb-japan.go.jp/)
- デンマーク医薬品庁 DKMA( https://laegemiddelstyrelsen.dk/en/)
- 欧州医薬品庁 EMA( https://www.ema.europa.eu/)
- 日本外務省海外安全情報( https://www.anzen.mofa.go.jp/)
- 厚生労働省 海外渡航時の医薬品携帯について( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html)
参考文献・情報源
-
Danish Medicines Agency (Lægemiddelstyrelsen / DKMA). "Rules for travelling with medicines." https://laegemiddelstyrelsen.dk/en/pharmacies/citizens-and-medicines/travelling-with-medicines/ (2025年参照)
-
European Medicines Agency (EMA). "Human regulatory – Controlled substances." https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory/overview/public-health-threats/controlled-substances (2025年参照)
-
厚生労働省. 「海外への医薬品の携帯輸出について」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/keitai.pdf (2025年参照)
-
European Commission. "Regulation (EC) No 273/2004 on drug precursors." https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32004R0273 (2025年参照)
-
在デンマーク日本国大使館. 「医療・緊急連絡先情報」 https://www.denmark.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000399.html (2025年参照)
-
European Medicines Agency (EMA). "Codeine-containing medicines – CMDh agrees to restrict use in children." https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/codeine-containing-medicines (2025年参照)
-
日本外務省. 「海外安全情報 デンマーク(医療情報)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_073.html (2025年参照)
監修: 薬剤師(博士(薬学))