ペルーに薬を持ち込む手順|DIGEMID規制と麻向法・西語処方箋を薬剤師が解説

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ペルーの医薬品持ち込みルール概要

ペルーはアンデス共同体(CAN:Comunidad Andina)に加盟する南米の国で、医薬品の持ち込みに関する規制はラテンアメリカ諸国の中でも厳格です。個人使用目的であっても、成分や数量によっては没収や罰則の対象となる可能性があります。本記事では、薬剤師として渡航前に確認すべき重要な情報をお伝えします。

ペルーは観光地としてマチュピチュやクスコが有名ですが、首都リマの標高は約154mであるのに対し、クスコは約3,400m、マチュピチュは約2,430mと高地に位置します。高地では低酸素状態により薬物動態が変化することがあり、医薬品の選択・用量設定においても通常の旅行先とは異なる薬学的考慮が必要です。たとえば高山病予防薬として使用されるアセタゾラミドは、ペルーでも処方薬扱いとなるため、日本で処方を受けてから持参するか、現地医師に診てもらう必要があります。渡航先の地理的特性と医薬品規制を合わせて理解しておくことが、安全な旅行の第一歩です。

薬剤師メモ ペルーの医薬品規制はペルー健康省(Ministerio de Salud / MINSA)とペルー食品医薬品監督庁(DIGEMID:Dirección General de Medicamentos, Insumos y Drogas)が管轄しており、定期的に改正されるため、事前に日本大使館や外務省の最新情報確認が必須です。DIGEMIDは日本の厚生労働省・PMDAに相当する機関で、医薬品の承認・流通・品質管理を一元管理しています。2023年以降、輸入医薬品の個人持ち込みに関する通達が更新されているため、渡航直前に公式サイトの確認を怠らないようにしてください。

ペルーの医薬品規制体系:日本との比較

ペルーの医薬品分類はDIGEMIDの規則に基づき、大きく以下の3区分に分類されています。日本の医薬品分類と対比させると理解しやすくなります。

ペルーの分類 概要 日本の対応区分
Medicamento de Venta con Receta 処方箋必須医薬品 処方薬(医療用医薬品)
Medicamento de Venta sin Receta (OTC) 処方箋不要医薬品 一般用医薬品(OTC)
Sustancia Controlada 管理物質(麻薬・向精神薬) 麻薬・向精神薬・覚醒剤
Producto Natural de uso medicinal 医療用天然物 漢方薬・生薬製剤(一部相当)

この分類体系において重要なのは、「日本でOTCとして販売されている医薬品がペルーでは管理物質(Sustancia Controlada)に分類される場合がある」という点です。コデインリン酸塩を含む咳止め薬がその典型例であり、日本国内では第2類医薬品として薬局・ドラッグストアで購入できますが、ペルーでは処方箋が必要な管理物質として厳格に管理されています。


処方薬の持ち込み基本ルール

持ち込み可能な数量

ペルーでは、処方薬は以下の条件で個人使用目的として認められています:

  • 30日分相当量(使用予定期間分):90日以上の長期滞在予定の場合は事前にペルー大使館に相談
  • 元の医薬品容器に入っていること:ピルケースなどへの詰め替えは避ける
  • 医師の英文処方箋またはレター:医師の署名と発行日が明記されたもの
項目 要件
数量 30日分相当(目安)
容器 元の薬剤容器
医師証明 英文処方箋または医師レター
ラベル 英文患者名・用量・用法が確認できること

ここでいう「30日分」はあくまで目安であり、滞在日数や疾患の重篤度によって税関官の裁量が働く場合があります。慢性疾患を抱える渡航者が長期滞在する場合、日本の処方医に「長期処方が必要な医学的根拠」を英文で記載してもらうと、税関でのスムーズな対応が期待できます。また、インスリンや抗凝固薬(ワルファリンなど)のように中断が生命に関わる薬剤については、より詳細な医師レターを準備することが強く推奨されます。

必要な英文書類の準備

英文処方箋(Prescription in English)の取得方法:

  1. 処方医に英文の処方箋作成を依頼
  2. 日本語処方箋も念のため持参
  3. 病院から正式な書類として発行を受ける
  4. コピーも1部持参(予備用)

英文処方箋に記載すべき必須項目は以下の通りです。処方医への依頼時にこのリストを提示すると、漏れなく記載してもらいやすくなります。

記載項目 英語表記例
患者氏名 Patient Name: Taro Yamada
生年月日 Date of Birth: 1980/04/15
薬剤名(一般名) Drug Name: Metformin hydrochloride
用量・用法 Dosage: 500mg, twice daily
処方日数 Days Supply: 30 days
医師氏名・署名 Prescriber: Dr. Hanako Suzuki (Signature)
医療機関名・住所 Clinic: Tokyo Medical Center, 1-1-1 Shinjuku
診断名(疾患名) Diagnosis: Type 2 Diabetes Mellitus

薬剤師メモ 英文書類がない場合、ペルー到着後に医師に相談することになり、追加費用や時間的なロスが生じます。日本の医師に「ペルーへの持ち込み用」と明示して依頼することがポイントです。また、スペイン語圏への渡航であるため、英文処方箋に加えてスペイン語訳を添付しておくと、現地税関官や薬剤師とのコミュニケーションが格段にスムーズになります。スペイン語での「処方箋」は"receta médica"(レセタ・メディカ)、「医師証明書」は"certificado médico"(セルティフィカード・メディコ)と表現します。

処方薬の薬学的管理:渡航中に注意すべき薬物動態の変化

長距離フライトや高地への渡航は、医薬品の体内動態に影響を及ぼすことがあります。薬剤師の視点から以下の点を渡航前に確認しておきましょう。

時差と服薬タイミング ペルーはJST(日本標準時)より14時間遅れています(サマータイム期間は異なる場合あり)。1日1回服用の薬剤(特に半減期の短い降圧薬、抗てんかん薬、免疫抑制薬)は、服薬間隔の乱れが治療効果や副作用に影響する可能性があります。フライト前に処方医または薬剤師に「時差調整時の服薬スケジュール」を確認しておくことを強く推奨します。

高地環境と薬物動態 標高3,000m超では大気中の酸素分圧が低下し、肝臓のCYP酵素系(特にCYP3A4)の活性が変化することが動物実験レベルで示唆されています。ただし、ヒトでの臨床的意義はまだ十分に確立されていないため、高地滞在中に薬の効き目に変化を感じた場合は自己判断で増減せず、現地医師に相談することが原則です。また、高地では脱水を起こしやすく、腎排泄型の薬剤(メトホルミン、リチウムなど)では血中濃度が上昇するリスクがあります。


市販薬(OTC医薬品)の持ち込みルール

ペルーで持ち込み可能な市販薬

ペルーの規制で比較的受け入れやすい市販薬は以下の通りです:

薬のカテゴリ 成分例 持ち込み可能性 注意点
風邪薬(解熱鎮痛) アセトアミノフェン、イブプロフェン ◎可 30日分まで
胃腸薬 制酸薬(炭酸水素ナトリウム等)、消化酵素 ◎可 ロペラミドは慎重(後述)
皮膚薬 ステロイド軟膏(弱~中程度) ◎可 処方箋不要の外用薬
ビタミン剤 マルチビタミン、ビタミンC ◎可 サプリメント扱い
湿布・外用薬 ジクロフェナクナトリウム含有外用薬 △要注意 医師指示書推奨
抗生物質含有薬 アモキシシリン等 ✕原則禁止 処方箋必須
コデイン含有咳止め ジヒドロコデインリン酸塩 ✕厳禁 管理物質に該当
睡眠導入薬・抗不安薬 トリアゾラム、ジアゼパム ✕厳禁 向精神薬規制対象

ロペラミドについての薬学的補足 ロペラミド塩酸塩は日本ではOTCとして広く使われている止瀉薬ですが、オピオイド受容体(μ受容体)に作用するオピオイド系薬剤の一種です。通常用量では腸管のみに作用し中枢移行性は低いとされていますが、規制分類においては「オピオイド関連物質」として管理対象となる国も存在します。ペルーでの持ち込みについては明確な禁止規定の確認は難しいですが、医師の指示書を添えておくことが安全策です。

ジクロフェナクナトリウム外用薬(湿布・ゲル)について ジクロフェナクナトリウムを含む外用消炎鎮痛薬は、日本では第2類医薬品として広く流通していますが、ペルーを含む多くのラテンアメリカ諸国では処方薬扱いとなる場合があります。持参する場合は処方医に英文指示書を用意してもらうと安心です。

ペルーで持ち込み禁止・制限される医薬品

厳禁:違反時は没収・罰則の対象となる可能性があります

  • 麻薬関連物質:コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩含有医薬品(市販の咳止め薬)、モルヒネ系鎮痛薬
  • 向精神薬:ベンゾジアゼピン系睡眠薬(トリアゾラム、ニトラゼパム等)、抗不安薬(ジアゼパム等)、Z薬(ゾルピデム等)
  • 医療用医薬品(処方箋なし):抗生物質全般、ステロイド注射薬
  • 交感神経刺激薬:エフェドリン塩酸塩含有製品(日本でも規制強化済み)

持ち込みに医師証明が必須な医薬品

  • 免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス等:臓器移植後患者が使用)
  • 抗悪性腫瘍薬(分子標的薬含む)
  • 特定の循環器系薬(抗凝固薬ワルファリン、直接作用型経口抗凝固薬など)
  • インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬(注射薬全般)
  • 高山病予防・治療薬(アセタゾラミド)

薬剤師メモ 日本の一般的な風邪薬に含まれる「コデイン」(ジヒドロコデインリン酸塩)には特に注意が必要です。日本では第2類医薬品として市販されていますが、ペルーではコントロール対象物質(Sustancia Controlada)に該当します。コデインはオピオイド系麻薬に分類されるアルカロイドであり、肝臓のCYP2D6によりモルヒネに代謝されます(約10%がモルヒネに変換)。依存性・乱用リスクの観点から国際的に厳格な管理対象となっており、処方箋がない場合は医薬品として認識されません。咳止めとしてコデイン含有製品を常用している方は、出国前に処方医に相談し、デキストロメトルファン臭化水素酸塩やグアイフェネシンを主成分とする代替薬への変更を検討してください。

向精神薬・睡眠薬の薬学的解説

ベンゾジアゼピン系薬剤(トリアゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパムなど)やZ薬(ゾルピデム酒石酸塩)は、GABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、抑制性神経伝達を増強することで催眠・抗不安・抗けいれん作用を発揮します。これらは国際条約「向精神薬に関する条約(1971年条約)」のスケジュールIV物質に指定されており、ペルーも同条約の締約国として厳格な管理を実施しています。

長距離フライトで睡眠薬を使用したいと考える方は多いですが、これらの薬剤をペルーに持ち込む際は以下の点に注意が必要です。

向精神薬の種類 国際条約スケジュール ペルーへの持ち込み
トリアゾラム(ハルシオン等) Schedule IV 処方箋+医師証明書が必須
ニトラゼパム Schedule IV 同上
ジアゼパム Schedule IV 同上
ゾルピデム酒石酸塩 Schedule IV 同上
フルニトラゼパム Schedule III/IV(国により異なる) 持ち込みに際し大使館への事前確認を強く推奨

フルニトラゼパム(ロヒプノール)は日本では向精神薬第3種として処方されていますが、乱用リスクが高く国際的に特に厳しく規制されている薬剤です。渡航前に在ペルー日本大使館またはペルー大使館に直接確認することを強く推奨します。


処方薬・市販薬共通の持ち込み手続き

出国前の準備チェックリスト

□ 英文処方箋/医師レターの取得(医師の署名・捺印入り)
□ 医薬品の元々の容器と英文ラベルの確認
□ 医薬品の効能・効果をメモにまとめて英文化(スペイン語訳も推奨)
□ ペルー大使館への事前相談(90日以上の滞在予定者・管理薬物持参者)
□ 海外旅行保険への加入確認(医療用医薬品が必要な基礎疾患を持つ場合)
□ 薬剤師による旅行前相談(処方医に英文書類依頼時など)
□ 持参薬の一覧表(Medication List)の作成(日本語・英語・スペイン語)
□ 冷所保存薬の保冷対策確認(インスリン、生物学的製剤等)
□ 予備薬の準備(紛失・没収に備えて日数の1.2〜1.5倍を推奨)

「Medication List(メディケーション リスト)」(持参薬一覧表)は、万一緊急搬送された際に現地医師への情報提供として非常に重要です。薬剤名(一般名・商品名)、用量、服用目的、アレルギー情報をA4一枚にまとめ、パスポートと一緒に携帯することをお勧めします。

税関で求められる可能性のある書類

  1. パスポート:個人確認用
  2. 英文医師診断書/処方箋:医師署名・発行日必記
  3. 医薬品の元の箱・ラベル:成分表示が確認できるもの
  4. 滞在日程表:医薬品使用期間の説明用
  5. 海外旅行保険証券(任意):補助資料
  6. 持参薬一覧表(Medication List):スペイン語・英語併記が望ましい

税関でのスペイン語対応:実用フレーズ

ペルーの公用語はスペイン語です。税関や薬局でのコミュニケーションに備えて、以下のフレーズを覚えておくと役立ちます。

状況 スペイン語フレーズ 発音(カタカナ)
申告する Tengo medicamentos para uso personal.(テンゴ メディカメントス パラ ウソ ペルソナル) 「個人使用の薬があります」
処方箋を見せる Aquí está mi receta médica.(アキ エスタ ミ レセタ メディカ) 「これが私の処方箋です」
医師の証明書 Tengo un certificado médico.(テンゴ ウン セルティフィカード メディコ) 「医師の証明書があります」
薬局で相談 ¿Tiene un medicamento para el dolor de cabeza?(ティエネ ウン メディカメント パラ エル ドロル デ カベサ?) 「頭痛薬はありますか?」
薬局で処方薬を求める Necesito este medicamento con receta.(ネセシト エステ メディカメント コン レセタ) 「これは処方箋が必要な薬です」

特定疾患別:持ち込み注意が必要な薬剤の薬学解説

糖尿病治療薬

インスリン製剤は持ち込みに医師英文診断書が必須であることに加え、保管条件への対応が不可欠です。インスリンは蛋白質製剤であり、凍結または高温(一般的に30〜37℃超)により変性・失活します。ペルーのリマは沿岸部で気候が比較的温和ですが、アマゾン地域や夏季(12〜3月)は高温多湿となります。

  • 未開封品:冷蔵保管(2〜8℃)が原則
  • 開封後使用中のもの:室温保管可能(製品により異なる、通常28日以内に使用)
  • フライト中:機内持ち込み必須、手荷物として管理
  • 注射針(インスリン注射用注射器・ペン型デバイス):医師の処方箋または証明書と共に申告

メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド系経口血糖降下薬)は日本でも汎用される経口薬であり、高地での腎機能低下時に乳酸アシドーシスリスクが上昇することが知られています。高地滞在中は水分補給を十分に行い、腎機能検査値の変動に注意することが重要です。

循環器系薬

ワルファリンカリウム(抗凝固薬)は、渡航中の食事変化(ビタミンK含有量の変動)や現地の消炎鎮痛薬との相互作用によりINR(国際標準化比)が大きく変動するリスクがあります。持参量は余裕を持ち、現地でも可能であればINRモニタリングを継続することが望ましいです。

β遮断薬(プロプラノロール塩酸塩、ビソプロロールフマル酸塩等)は急な中断により反跳現象(リバウンド効果)として狭心症発作や高血圧クリーゼを誘発するリスクがあります。現地でも継続服用できるよう十分量を持参してください。

アレルギー・喘息治療薬

吸入ステロイド薬(フルチカゾンプロピオン酸エステル、ブデソニド等)および気管支拡張薬(サルブタモール硫酸塩の吸入薬)は、ペルーでの持ち込みにおいて医師証明書があれば比較的対応しやすい部類に入ります。ただし高地では気圧が低いため、定量噴霧式吸入器(pMDI)の噴霧量や吸入効率が変化することがあり、吸入手技の再確認が推奨されます。

エピネフリン自己注射器(アドレナリン自己注射製剤)を携帯するアナフィラキシー既往患者は、注射薬の持ち込みとして医師証明書が必須です。現地緊急時に英語またはスペイン語で説明できるよう、疾患名と使用方法のカードを同梱しておくことを強く推奨します。


ペルー到着後の医薬品調達方法

現地での医薬品購入

もし医薬品が没収されたり、追加購入が必要な場合は現地調達を検討します。

薬局(Farmacia / Botica)での購入 ペルーには全国展開する複数の薬局チェーンが存在します。リマ市内の主要なショッピングモールや住宅街には薬局が充実しており、深夜営業店も多く見られます。一般的なOTC医薬品(アセトアミノフェン配合の解熱鎮痛薬、制酸薬、外用消炎薬等)は比較的容易に入手可能です。ただし、薬剤の品質管理や偽造医薬品のリスクを避けるため、正規の店舗外や路上での購入は絶対に避けてください。

現地医師の診察

  • 私立クリニック(Clínica privada):観光客・外国人対応可能な施設が多い
  • 英語対応医師の情報:在ペルー日本大使館ウェブサイトに医療機関リストが掲載されています
  • 診察費用は施設により大きく異なるため、海外旅行保険の適用条件を事前に確認してください

薬剤師メモ ペルーでは一部の薬局において、本来処方箋が必要な医薬品が処方箋なしで販売されているケースがあります。しかしこれは現地の規制遵守の問題であり、旅行者が意図的に処方箋なしで処方薬を購入した場合、現地法令違反となる可能性があります。また、偽造医薬品・品質不正品のリスクも実在します。必要な薬剤は日本で十分量を準備して持参することが最善策であり、やむを得ず現地調達する場合は医師の診察を受けて処方箋を取得してから薬局で購入することを強くお勧めします。

現地薬局での実用スペイン語

薬局で使えるスペイン語フレーズを以下に示します。

  • Tengo fiebre y dolor de cabeza.(テンゴ フィエブレ イ ドロル デ カベサ)→「熱と頭痛があります」
  • ¿Tiene algo para la tos?(ティエネ アルゴ パラ ラ トス?)→「咳に効く薬はありますか?」
  • ¿Cuál es la dosis para adultos?(クアル エス ラ ドシス パラ アドゥルトス?)→「大人の用量はどのくらいですか?」
  • Soy alérgico/a a la aspirina.(ソイ アレルヒコ/ア ア ラ アスピリナ)→「アスピリンにアレルギーがあります」
  • Necesito un recibo para el seguro.(ネセシト ウン レシボ パラ エル セグロ)→「保険用の領収書が必要です」

高山病対策薬の特別解説:ペルー渡航特有の問題

ペルーへの渡航で特有の問題として高山病(Soroche / Acute Mountain Sickness)への対応があります。クスコ・マチュピチュ・チチカカ湖周辺を訪れる際には高山病予防・治療薬の知識が不可欠です。

アセタゾラミド(炭酸脱水酵素阻害薬)

アセタゾラミドは腎臓の炭酸脱水酵素を阻害することで重炭酸イオンの再吸収を抑制し、代謝性アシドーシスを誘発して呼吸を促進します。これにより動脈血酸素分圧を上昇させ、高山病の予防・治療に有効とされています。

  • 日本での分類:処方薬(医療用医薬品)
  • 一般的な予防用量:125〜250mg(製品により異なる)を高地到着24時間前から開始(医師の指示に従うこと)
  • 主な副作用:手足のしびれ・多尿・炭酸飲料の味覚変化(無味に感じる)・まれに低カリウム血症
  • 禁忌:スルファ薬アレルギー、重篤な腎機能障害、ナトリウム・カリウム低下状態
  • ペルーでの入手:現地薬局でも入手可能な場合がありますが、日本で事前に処方を受けて持参することを推奨

コカ茶(Mate de Coca)について クスコなどの高地では、高山病対策として宿泊先でコカ茶が提供されることがあります。コカ茶にはコカイン前駆体(エカゴニンメチルエステル等)が微量含まれており、日本に持ち帰ることは麻薬及び向精神薬取締法違反となります。また、コカ茶を飲んだ後に薬物検査を受けると陽性反応が出る場合があります。渡航中の飲用については各自の判断となりますが、帰国時の持ち帰りは絶対に行わないでください。


Q&A:よくある質問

Q1. 漢方薬や生薬は持ち込めますか? A. 医薬品以外のサプリメント扱いであれば可能ですが、医薬品として承認されているものは要医師証明です。 葛根湯 🛒などの医療用漢方製剤(ツムラ・コタロー等)は処方薬扱いとなるため処方箋が必須です。また、一部の生薬成分(エフェドラ(麻黄)含有製品等)はペルーでは管理物質の原料として厳格に規制されているため、特別な注意が必要です。

Q2. 妊婦です。つわり止めの薬を持ち込みたいのですが? A. 妊婦用の医薬品は必ず医師英文証明書を準備してください。日本でつわり治療に使われるドキシラミンコハク酸塩・ピリドキシン塩酸塩配合薬(Diclegis等)は国際的にCategory Aとして安全性が高いとされていますが、持ち込みには医師証明書が推奨されます。ペルーでも医師の相談を推奨します。

Q3. コンタクトレンズ用の目薬は大丈夫ですか? A. 防腐剤不含の人工涙液等は医薬品ではなく医療用具扱いのため、通常は問題ありません。ただし医薬品成分配合の処方目薬(ステロイド点眼薬、抗菌点眼薬等)は処方薬として医師証明書が必須です。

Q4. 糖尿病用インスリンを持ち込みたいです。 A. インスリンは要医師英文診断書です。冷蔵保管が必要なため、保冷機能付きのポーチやインスリン専用冷却デバイスの持参をお勧めします。税関では「Insulina para uso médico personal」(インスリナ パラ ウソ メディコ ペルソナル)と申告し、医師証明書・処方箋・注射器(デバイス)をセットで提示してください。

Q5. 花粉症の薬(第2世代抗ヒスタミン薬)は持ち込めますか? A. ロラタジン、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩などの第2世代抗ヒスタミン薬は日本・ペルー双方でOTCとして流通しており、持ち込みは比較的容易です。ただし第1世代抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩等)は一部の複合感冒薬に含まれており、エフェドリンやコデインとの合剤では問題になる場合があります。成分表示をよく確認してください。

Q6. 精神科の薬(抗うつ薬・抗精神病薬)を持参したい場合は? A. SSRI(フルボキサミンマレイン酸塩、パロキセチン塩酸塩水和物等)やSNRI(デュロキセチン塩酸塩等)は向精神薬条約のスケジュールには入っていませんが、医療用医薬品であるため処方箋・医師証明書が必要です。非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン等)も同様です。精神科主治医に渡航の旨を伝え、英文の処方箋と病状説明書を準備してください。


日本から持参する際の梱包方法

  1. 医薬品は手荷物(キャビンバゲージ)に:預け荷物は気圧・温度変化の影響を受け、破損や成分変性のリスクがあります。特にインスリン等の冷所保存薬・注射薬は必ず手荷物で携帯してください
  2. 元の容器のまま持参:処方薬は必ず元の医薬品容器(ボトル・PTPシート・外箱)に入れたまま持参してください。分包や詰め替えは管理薬物と誤認されるリスクを高めます
  3. 英文ラベルの貼付:元のラベルに加えて、薬剤名(一般名)・用量・患者名・医師名を英語で記載したラベルを追加で貼付しておくと安心です
  4. 医師証明書は複数部コピー:電子データ(スマートフォン)での保存に加え、紙のコピーを手荷物・預け荷物・別の保管場所の3か所に分散して持参することを推奨します
  5. 温度管理:ペルーの地域・季節によって気温が大きく異なります。冷所保存薬には保冷剤と断熱ポーチを組み合わせた保冷対策を行い、保冷剤の事前凍結や機内での管理方法を確認しておいてください
  6. 液体・ジェル類の機内持ち込み制限:外用ゲル、シロップ薬、点眼薬等は機内持ち込み時の液体制限(100ml/容器、合計1L以下のジップロック袋)の対象となります。ただし処方薬は申告により適用除外となる場合が多いため、処方箋・医師証明書と共に保安検査で申告してください

参考文献・情報源

  1. 外務省「海外安全情報 ペルー」- https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_209.html
  2. DIGEMID(Dirección General de Medicamentos, Insumos y Drogas)公式サイト - https://www.digemid.minsa.gob.pe/
  3. 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
  4. 国際麻薬統制委員会(INCB)「旅行者向け国際規制薬物の携帯ガイドライン」- https://www.incb.org/incb/en/travellers/index.html
  5. WHO「WHO Model List of Essential Medicines」- https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.02
  6. CDC「Travelers' Health - Peru」- https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/peru

まとめ

  • ペルーへの医薬品持ち込みは30日分相当量が原則。元の医薬品容器と英文医師証明書が必須です

  • 処方薬は医師の英文処方箋またはレターを、出国前に日本で必ず準備してください。スペイン語訳の添付も強く推奨されます

  • コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩含有OTC咳止め薬、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬、Z薬は向精神薬国際条約の管理対象であり、処方箋なしでの持ち込みは違反となる可能性があります

  • ペルーは高地目的地(クスコ・マチュピチュ等)が多く、高山病対策薬(アセタゾラミド)や時差・高度変化による薬物動態の変化についても渡航前に処方医・薬剤師に相談することが重要です

  • 90日以上の滞在予定の場合や管理薬物を持参する場合は、事前にペルー大使館に相談することをお勧めします

  • 現地調達の際は正規薬局で医師の処方箋を取得したうえで購入し、路上・非公式ルートでの医薬品購入は品質・安全性の観点から絶対に避けてください

  • 最新情報は外務省ウェブサイト・在ペルー日本大使館・ペルー保健省(MINSA)・DIGEMID公式情報で確認してください。規制は随時更新されます


監修:薬剤師(博士(薬学))

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