LCC機内に薬は持ち込める?ピーチ・ジェットスター・エアアジア等10社ルール比較

TL;DR

  • LCC10社いずれも「処方薬・医療必需品」は手荷物の個数・重量制限の例外として扱う運用が一般的だが、申告方法と必要書類は会社ごとに差がある。
  • 国際線の液体物100mL制限は航空会社ではなく出発空港の保安規則に従う。処方薬であれば例外申請が可能で、英文の処方箋コピーや薬剤情報書を携行するのが安全。
  • インスリン・GLP-1受容体作動薬・自己注射器・生物学的製剤は機内持ち込みが原則。冷蔵保管はLCCではほぼ不可と考え、保冷剤入りクールバッグを自前で準備する。
  • バファリンA・ロキソニンS・正露丸などのOTC(市販薬)は個人使用量であれば数量無制限扱いが基本。ただし渡航先の規制が別途かかる。
  • 預け荷物に薬を入れるのは「凍結」「温度変化」「紛失」「税関での開封」リスクがあり、すべて手荷物が原則。
  • 各社のルールは予告なく変わる。搭乗前に必ず公式サイトの最新情報を確認すること。

LCCとFSCで「薬の扱い」はどう違うか

フルサービスキャリア(FSC)とLCC(格安航空会社)は、薬そのものの扱い基準は大きく変わりません。国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)の指針、各国保安規則に沿って「医療必需品は手荷物個数・液体量の例外」として運用されているためです。

差が出るのは次の点です。

項目 FSC(例: ANA/JAL/SQ) LCC10社全般
機内持込手荷物の重量上限 10kg前後 7kg前後(厳格)
個数 1個+身の回り品 1個+身の回り品(合計重量で判定)
医療必需品の重量加算 比較的柔軟 「申告必須」の傾向
機内冷蔵リクエスト 一部対応可 原則不可
英文書類の要求 任意 任意〜推奨

LCCは重量管理が厳しく、薬を「身の回り品」扱いにできるかどうかが現場でのトラブルになりやすい点に注意します。

10社の機内持込ルール早見表

国内線・国際線で異なる場合があります。下表は国際線の代表的な値で、2026年6月時点の公式情報を参照しました。最新の数値は必ず各社公式で確認してください。

航空会社 個数 サイズ(cm 3辺合計または各辺) 重量 液体薬例外 インスリン受入
Peach Aviation 2個(手荷物+身の回り品) 50×40×25 合計7kg 申告で可 可(要申告)
Jetstar Japan 2個 56×36×23 合計7kg 申告で可 可(要申告)
ZIPAIR Tokyo 2個 55×40×25 合計7kg 申告で可 可(要申告)
Spring Japan 2個 3辺計115以内 合計7kg 申告で可 可(要申告)
AirAsia 2個 56×36×23 合計7kg 申告で可 可(要申告)
Scoot 2個 54×38×23 合計10kg 申告で可 可(要申告)
Cebu Pacific 1個+身の回り品 56×36×23 合計7kg 申告で可 可(要申告)
VietJet 1個+身の回り品 56×36×23 合計7kg 申告で可 可(要申告)
T'way Air 1個+身の回り品 3辺計115以内 合計10kg 申告で可 可(要申告)
Jeju Air 1個+身の回り品 55×40×20 合計10kg 申告で可 可(要申告)

「液体薬例外」「インスリン受入」はいずれも「医療上必要であることを事前または保安検査時に申告し、根拠書類(処方箋・診断書・薬剤情報提供書など)を提示できる」前提です。

国際線の液体100mLルールと薬の扱い

国際線の保安検査では、機内持込の液体物は「1容器100mL以下」「合計1L以下」「透明再封可能袋」という共通ルール(いわゆる「Liquid Aerosol Gel: LAG規制」)が運用されています。これは航空会社ではなく出発空港の保安当局が管理するため、LCCかFSCかに関係ありません。

医薬品は例外として認められますが、「医療必需品である」と説明できる必要があります。

例外として通すための実務

  • 容器のラベル(薬局のシール・処方箋情報)を残しておく
  • 英文の薬剤情報書または処方箋コピーを携行する
  • 100mLを超えるシロップ・点眼液・吸入液はジッパー袋とは別に出して提示する
  • 保安検査員に「This is my prescription medicine.(ディス イズ マイ プレスクリプション メディスン)」と伝える

液体扱いになる主な剤形は、シロップ剤、点眼液、点鼻液、外用ローション、ゲル製剤、吸入液、自己注射の溶液(インスリン、GLP-1製剤、バイオ製剤など)です。

インスリン・自己注射器の取り扱い

インスリンや自己注射デバイスは、すべてのLCCで機内持込が原則です。預け荷物に入れると貨物室の温度低下で凍結し、変性するリスクがあるためです。

項目 一般的な運用
インスリン製剤本体 機内持込(原則)
注射針・ペン型注射器 機内持込可(要申告)
使用済み針(シャープスコンテナ) 機内持込可
保冷剤付きクールバッグ 持込可。ただし保安検査で中身確認あり
ドライアイス 各社条件あり(重量制限)
機内冷蔵保管リクエスト LCCでは原則不可

針の同伴については、本人の医療目的であることが確認できれば認められます。英文診断書または「Diabetes Travel Letter」のような形式の書類を持参すると保安検査がスムーズです。

機内ではインスリンの保管温度(多くの製品で2〜30℃の範囲)を超える可能性があるため、保冷剤入りバッグを用意し、フライト時間と気候を踏まえて設計します。

体温調節が必要な薬(GLP-1・生物学的製剤)

セマグルチド、デュラグルチドなどのGLP-1受容体作動薬や、アダリムマブ・エタネルセプトなど自己注射の生物学的製剤も、要冷蔵(多くは2〜8℃)の製剤が中心です。

LCCでは機内冷蔵庫の借用ができないと考えるのが安全です。次の準備を推奨します。

  • 医療用クールバッグ(保冷時間表示のあるもの)
  • 保冷剤(凍結状態でも保安検査で液体扱いされない場合が多いが、各社で確認)
  • 温度ロガー(往復で薬の温度逸脱がなかったかを確認)
  • 到着先のホテル冷蔵庫(最低温度を事前確認、製品によっては凍結NG)

到着空港から宿泊先までの移動時間も、保冷時間の試算に含めます。

OTC(市販薬)と処方薬の違い

バファリンA、ロキソニンS、正露丸、パブロンゴールドA、アネトンせき止め顆粒など、処方箋なしで購入できる日本のOTC医薬品は、個人使用に必要な範囲であれば機内持込個数の制限はかかりません。航空会社が量を指定するのではなく、渡航先の税関規制が制約となります。

区分 機内持込 注意点
処方薬(内服・外用) 可。要申告で液体例外 英文薬剤情報書が安全
OTC内服薬 可。個人量 渡航先の成分規制を別途確認
自己注射薬 可。要申告 針同伴可、保冷必須
漢方・サプリメント 国により植物成分が規制対象になる
医療機器(CPAP等) 多くは身の回り品扱い 各社事前申請窓口あり

OTCであっても、コデイン類・プソイドエフェドリン・ジヒドロコデインリン酸塩などを含む製剤は、渡航先で規制対象になるケースがあります。各国規制は[[airport-confiscated-medicines-top10]]を参照してください。

預け荷物に薬を入れてはいけない4つの理由

  1. 貨物室は気圧・温度変化が大きく、冬季の長距離便では氷点下になる便もある。インスリン・坐剤・軟膏は変性する。
  2. 荷物紛失(lost baggage)が発生すると、現地で同じ薬を即時入手できる保証がない。
  3. 預け入れ時の取り扱いで衝撃を受け、ガラスアンプル等が破損するリスクがある。
  4. 税関で抜き取り検査になった場合、本人不在で開封されることがある。

すべての薬は、原則として機内持込(手荷物)に入れます。

持ち物リスト雛形(コピペ用)

旅行前のチェックリストとして使ってください。

区分 内容
薬本体 旅程+予備3〜5日分。元の容器・ラベルのまま
処方箋コピー 一般名(INN)入りの英文。主治医に依頼
薬剤情報提供書 薬局発行のもの。英訳または併記
診断書 自己注射・麻薬性鎮痛薬・向精神薬がある場合は必須
Yellow Card 黄熱予防接種証明(該当国渡航時)
緊急連絡先 主治医・かかりつけ薬局・現地大使館
保険証券 海外旅行保険の連絡先と証券番号
保冷バッグ 要冷蔵薬がある場合
お薬手帳 紙+電子版両方

英文証明書は、各国の入国時にも使えるよう、薬の一般名(例: ibuprofenイブプロフェン, loperamideロペラミド, semaglutide)と用量・1日服用回数を明記してもらいます。

機内・空港で使える英語フレーズ

保安検査・搭乗時の申告で使う表現です。

  • I have prescription medicines in my bag.(アイ ハヴ プレスクリプション メディスンズ イン マイ バッグ)
  • This is insulin. I need to keep it cool.(ディス イズ インスリン アイ ニード トゥ キープ イット クール)
  • Here is my doctor's letter.(ヒア イズ マイ ドクターズ レター)
  • May I keep my medicine with me?(メイ アイ キープ マイ メディスン ウィズ ミー?)
  • I need to use the bathroom for an injection.(アイ ニード トゥ ユーズ ザ バスルーム フォー アン インジェクション)

到着空港の税関で別チェックがある

機内持込が認められても、到着国の税関で没収・申告必須となるケースがあります。とくに以下の国は規制が厳しめに運用されている点が知られています。

  • アラブ首長国連邦・サウジアラビア(向精神薬・コデイン製剤の事前申請)
  • シンガポール(一定量を超える処方薬の事前申告)
  • 韓国(向精神薬の自己使用申告)
  • 米国(アンフェタミン類の制限)

詳しくは関連記事[[airport-confiscated-medicines-top10]]を参照してください。

各社公式の最新情報を必ず確認

LCCの規定は予告なく変わります。とくに次の項目は搭乗前に再確認することを推奨します。

  • 機内持込手荷物の個数・サイズ・重量
  • 医療機器(CPAP・酸素濃縮器)の事前申請窓口
  • 液体医薬品の例外申請の手続き
  • 自己注射針の機内持込条件

各社の医療事情に関する問い合わせ窓口(メディカルデスク/アクセシビリティセンター)が設置されている会社もあります。長距離便で要冷蔵薬を運ぶ場合は、出発の1〜2週間前に問い合わせると安心です。

まとめ

LCC10社いずれも、薬は「医療必需品」として機内持込ルールの例外を認める運用が基本です。ただし重量管理は厳格で、申告と書類提示の手間はFSCより大きい傾向があります。

  • 薬は必ず手荷物(機内持込)へ
  • 英文の処方箋コピー・薬剤情報書を1セット用意
  • 要冷蔵薬は自前のクールバッグで温度を確保
  • OTCでも渡航先の成分規制を別途チェック
  • 出発前に各社公式サイトで最新の手荷物ルールと医療必需品の取り扱いを再確認

旅程に応じてチェックリストをカスタマイズし、安心してフライトに臨んでください。

免責事項

本記事は2026年6月時点で公開されている各航空会社・各国保安当局の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の症状や持参薬の可否、特定便での対応については、医師・薬剤師および各航空会社の医療相談窓口にご相談ください。航空会社の規定および各国の規制は予告なく変更されるため、搭乗前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。妊娠中・授乳中・小児・高齢者・基礎疾患のある方は、渡航前に主治医・薬剤師へご相談ください。

参考文献

  • Peach Aviation 公式サイト「お手荷物について」
  • Jetstar Japan 公式サイト「Carry-on baggage / 機内持込手荷物」
  • ZIPAIR Tokyo 公式サイト「Baggage」
  • Spring Japan 公式サイト「お手荷物」
  • AirAsia 公式サイト「Baggage」「Special Baggage」
  • Scoot 公式サイト「Cabin Baggage」「Travelling with medication」
  • Cebu Pacific 公式サイト「Baggage Allowance」「Special Assistance」
  • VietJet 公式サイト「Baggage」
  • T'way Air 公式サイト「Baggage Information」
  • Jeju Air 公式サイト「Baggage」
  • 国土交通省航空局「機内持込制限品(液体物)」
  • IATA Medical Manual 最新版
  • ICAO Doc 9284「Technical Instructions for the Safe Transport of Dangerous Goods by Air」
  • 各製薬メーカー インスリン・GLP-1製剤・生物学的製剤の保管温度に関する添付文書

監修: 薬剤師(博士(薬学))

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