こんにちは、編集長の薬剤師(博士(薬学))です。2026年7月第2週(7/5〜7/11)は、WHOによる中長期的ながん警告に加え、日本人渡航者が実際にトラブルに巻き込まれやすい「海外市販薬の規制差」に関する話題が集中した1週間でした。夏休みシーズンを目前に控え、豪州・タイ・中東・高地・熱波エリアなど、行き先別に押さえておくべき薬学ポイントを整理してお届けします。
本号では既存の速報に加え、各トピックの薬学的機序・薬物動態・副作用プロファイル・渡航者が直面しやすい具体的リスクをさらに掘り下げます。7,000字超の長文ですが、目次代わりに各見出しを活用して、自分の渡航先に関係するセクションから読み進めてください。
1. 今週の重大アラート3つ
① WHO:2050年までにがん新規患者数が倍近く増加へ(2026-07-08)
WHOは7月8日、2050年までに世界のがん新規患者数が現在の約2倍近くに達し、年間で大幅な死亡数増加が見込まれるとして緊急対応を呼びかけました。喫煙・アルコール・肥満・大気汚染・HPV/HBVなどのウイルス性要因が主要ドライバーとして明示されています。詳細は WHOがん警告アラート にまとめています。
日本人渡航者との関係
短期的リスクではありませんが、長期滞在・駐在者は「渡航先の大気汚染」「B型肝炎ワクチン未接種のまま医療曝露(点滴・注射・輸血)を受けるリスク」「HPVワクチン未完了での長期海外生活」といった予防可能因子に直結します。
薬学的補足:ウイルス性発がん因子と予防ワクチンの位置づけ
HBVは肝細胞がんの主要原因のひとつです。B型肝炎ワクチン(組換えHBs抗原製剤)は3回接種(0・1・6か月スケジュールが標準)で抗体獲得率が成人で95%前後とされており、抗体が確認できれば長期免疫が期待できます。HPVワクチン(2価・4価・9価)は接種前に感染していない型に対して有効で、特に9価は子宮頸がんの原因型カバー率が高い製剤です。いずれも「発症後」には効果がなく、渡航前の予防接種完了が鉄則です。
備え方
出発前にB型肝炎・HPVの接種歴を母子手帳や予防接種記録で確認し、未完了なら渡航外来で追加接種スケジュールを組んでおきましょう。B型肝炎の場合、抗体価(HBs抗体)を測定してから追加接種の要否を判断するのがより確実です。
② オーストラリア:擬似エフェドリン含有市販薬の販売規制強化(2026-07-06)
豪州では鼻づまり薬の主要成分「擬似エフェドリン(pseudoephedrine)」が、覚醒剤原料への転用防止のため薬局店頭から事実上姿を消しつつあります。代替として販売されているフェニレフリン(phenylephrine)は、経口では初回通過効果(first-pass effect)により生物学的利用率が著しく低く、鼻閉への効果が限定的との批判が続いています。
薬学的補足:擬似エフェドリンとフェニレフリンの薬物動態比較
| 項目 | 擬似エフェドリン | フェニレフリン(経口) |
|---|---|---|
| 作用機序 | α・β受容体刺激+ノルエピネフリン放出促進 | 主にα1受容体直接刺激 |
| 生物学的利用率(経口) | 90%前後(高い) | 1〜10%程度(非常に低い) |
| 鼻粘膜血管収縮効果 | 明確なエビデンスあり | 経口では限定的との報告多数 |
| 覚醒剤原料としての規制 | 多くの国で購入制限・記録義務 | 規制なし |
| 主な副作用 | 血圧上昇・頻脈・不眠・排尿困難 | 高用量で血圧上昇 |
フェニレフリンは点鼻薬(nasal spray)として使用する場合は、局所作用のため初回通過効果を回避でき、ある程度の効果が期待できます。日本から現地に持参する市販の鼻炎スプレーは、成分名を確認した上で選択してください。なお、フェニレフリン点鼻薬の連用(目安として5〜7日超)は「薬剤性鼻炎(rhinitis medicamentosa)」を引き起こすリスクがあるため、長期使用は推奨されません。
日本人渡航者との関係
南半球は7月が真冬です。花粉症・慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎持ちの方が日本の市販薬感覚で現地薬局に行っても、期待した効き目が得られない可能性が高いです。
備え方
- アレルギー性鼻炎には、日本国内で処方される第2世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン、セチリジン、ビラスチン等)が海外でも比較的入手しやすい成分ですが、国によってはOTCと処方箋必要が分かれます。
- 花粉症・慢性副鼻腔炎の方は、日本から処方薬(ステロイド点鼻薬を含む)を持参し、必要なら英文薬剤証明書を添付することを強く推奨します。
- 豪州への医薬品持ち込みは「Australian Border Force(オーストラリア国境警備軍)」の規則に従い、処方薬は処方箋または医師証明書の英文コピーを携帯するのが安全です。
③ 熱中症・脱水シーズン本格化:医薬品では防げない生理的リスク(2026-07-04)
北半球は7月がピーク。欧州・北米・東南アジアで熱波が続く中、渡航者の脱水症状は「薬で予防」できるものではなく、水分と電解質のバランス管理が本質です。
薬学的補足:経口補水液(ORS)の組成と作用機序
WHO・UNICEFが推奨するORS(Oral Rehydration Salts)の標準組成は、1リットルの安全な水に対してナトリウム75mEq/L・ブドウ糖75mmol/L・カリウム20mEq/L・クロール65mEq/L・クエン酸塩10mEq/L(浸透圧245mOsm/L)です。この組成の根拠は「ナトリウム共役ブドウ糖輸送体(SGLT1)を介した小腸吸収」で、ナトリウムとブドウ糖が共存することで輸送効率が最大化されます。
一般的なスポーツドリンクと比較するとナトリウム濃度が高く・糖濃度が低く設計されており、発汗や下痢による電解質喪失の補正に適しています。スポーツドリンクは運動中の継続補給を想定した組成であり、重度の脱水や発熱を伴う場合のファーストチョイスにはなりにくい点を理解しておきましょう。
| 比較項目 | WHO ORS | 一般的なスポーツドリンク(目安) |
|---|---|---|
| ナトリウム濃度(mEq/L) | 75 | 10〜25(製品による) |
| ブドウ糖/糖濃度(g/L) | 約13.5 | 50〜60(高め) |
| 浸透圧(mOsm/L) | 245(低張) | 270〜350(製品による) |
| 主な用途 | 脱水・下痢による電解質補正 | 運動時の水分補給 |
日本人渡航者との関係
時差ボケでの水分摂取忘れ、機内乾燥(機内の相対湿度は目安として10〜20%台)、空港移動時の炎天下曝露が重なると、渡航初日から脱水状態に陥りやすくなります。詳しくは 時差ボケ対策ハブ も参照ください。
備え方
ORS粉末スティックを数本、機内持ち込み手荷物に入れておくのが最善策です。現地でORSが手に入らない場合の即席代替として、「水1リットル+食塩小さじ1/2(約3g)+砂糖大さじ6(約30g)」が目安として紹介されることがありますが、あくまで応急処置であり、重症脱水では医療機関受診が優先です。
2. 薬学的視点の補足:今週の"効かない・買えない・違う"を整理
今週のトピックは、いずれも「海外の市販薬は日本と同じに見えて別物」という共通テーマを持っていました。薬剤師の視点で機序・薬物動態・副作用プロファイルの両面から補足します。
タイの胃薬:同じ成分でも用量・剤形が違う(2026-07-10)
タイのドラッグストアで売られている制酸薬(アルミニウム・マグネシウム系)は、日本と主成分が同一でも、1回投与量・製剤中の各成分比率・添加剤(甘味料・懸濁化剤・保存料)が異なることがあります。
薬学的補足:制酸薬の成分別特徴と消化管への影響
| 成分 | 制酸作用 | 注意すべき副作用 | 腎機能低下時 |
|---|---|---|---|
| 水酸化マグネシウム | 速効性あり | 下痢・高マグネシウム血症(大量・長期) | 蓄積リスクあり、慎重使用 |
| 水酸化アルミニウム | 持続性あり | 便秘・低リン血症(長期) | 蓄積リスクあり、慎重使用 |
| 炭酸カルシウム | 速効性あり | 便秘・酸リバウンド・高カルシウム血症(大量) | 比較的安全だが注意 |
| 炭酸水素ナトリウム | 即効性高い | ガス産生・代謝性アルカローシス(大量) | ナトリウム負荷に注意 |
マグネシウム含有量が多い製剤は下痢を誘発しやすく、旅行者下痢症と区別がつきにくくなる点が渡航中の落とし穴です。また、アルミニウム製剤は他薬(抗菌薬の一部、ビスフォスフォネートなど)の吸収を阻害するため、複数の薬を服用している場合は2時間程度の服用間隔を空けることが原則です。詳しくは 食中毒・胃腸トラブルハブ へ。
H2ブロッカー(ファモチジン、シメチジン等)はタイでも一部薬局で購入可能ですが、規格(mg数)が日本のOTC規格と異なる場合があります。プロトンポンプ阻害薬(PPI:オメプラゾール等)は多くの国で処方箋が必要です。
シンガポールのタイガーバーム vs 日本の湿布(2026-07-08)
タイガーバームはカンフル(樟脳)・メントール・ハッカ油・クローブ油などの精油ブレンドで、末梢血管への作用と冷感/温感の対比刺激により「効いている感(温感・清涼感)」を生み出す製品です。これらの成分は主に感覚受容体(TRPV1・TRPM8等の一過性受容体電位チャネル)を刺激することで温感・冷感を誘発しますが、組織の炎症そのものを抑制する作用とは機序が異なります。
一方、日本の外用消炎鎮痛剤(貼付剤・ゲル・クリーム)はサリチル酸メチルやNSAIDs(ロキソプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、フェルビナク等)を経皮吸収させ、局所のプロスタグランジン合成を阻害することで実際の抗炎症作用を発揮する剤形です。
ケトプロフェン貼付剤と光線過敏症:南国渡航では特に注意
ケトプロフェン含有外用剤は、光線過敏性接触皮膚炎を起こすことが知られており、日本のPMDAも使用上の注意に「使用中および使用後も当分の間、貼付部位を遮光すること」と記載しています。赤道直下・低緯度地域(タイ・シンガポール・バリ等)では紫外線量が日本の数倍に達することもあり、半袖・短パンで観光しながらケトプロフェン製剤を使用することは皮膚トラブルのリスクが非常に高いと言えます。
外用NSAIDsの使い分け(渡航先別目安)
| 製剤 | 抗炎症効果 | 光線過敏リスク | 南国渡航での使用 |
|---|---|---|---|
| ケトプロフェン貼付剤 | 高い | 高い(要遮光) | 推奨しない |
| ロキソプロフェン貼付剤 | 高い | 比較的低い | 遮光に注意しつつ可 |
| ジクロフェナク外用ゲル | 高い | 低い | 比較的使いやすい |
| フェルビナク外用製剤 | 中程度 | 低い | 使いやすい |
| インドメタシン外用 | 中程度 | 低い | 使いやすい |
南国渡航時はジクロフェナク外用ゲルまたはフェルビナク製剤への切り替えを検討してください。
高地順応:赤血球増加は数日で始まる(2026-07-09)
ラパス(ボリビア、約3,600m)、クスコ(ペルー、約3,400m)、チベット高原(3,500〜5,000m超)など3,000m超の高地では、低酸素環境への生理的適応が複数のメカニズムで起動します。
薬学的補足:高地順応の生理学と薬剤の作用点
低酸素環境に曝露されると、腎臓の傍糸球体装置からEPO(エリスロポエチン)分泌が増加し、骨髄での赤血球産生促進・ヘモグロビン増加が起こります。この反応は数時間〜数日以内に始まりますが、赤血球の成熟・放出・機能的な酸素運搬能の向上には2〜3週間以上を要するとされています。初日〜3日目は最も代償機能が未発達な「危険ウィンドウ」です。
アセタゾラミド(炭酸脱水酵素阻害薬)は、腎尿細管での炭酸水素イオン(HCO₃⁻)再吸収を阻害し、軽度の代謝性アシドーシスを誘発します。これにより「アシドーシスを補正しようとする過換気反応」が呼吸中枢で促進され、動脈血酸素分圧の上昇と順応の加速につながります。
| 高山病予防薬 | 主な作用機序 | 主な副作用・注意事項 |
|---|---|---|
| アセタゾラミド(ダイアモックス) | 炭酸脱水酵素阻害→代謝性アシドーシス誘導→換気促進 | 利尿作用・多尿・手足のしびれ・視力一時的変化・スルファ系アレルギーに注意 |
| デキサメタゾン | 抗炎症・脳浮腫軽減(急性高山病の治療用) | 予防的長期使用は推奨されない・副腎抑制リスク |
| イブプロフェン(NSAIDs) | 頭痛の対症療法 | 胃腸障害・腎機能への影響(脱水時は特に注意) |
アセタゾラミド はスルフォンアミド系薬剤に分類されるため、スルファ系薬剤アレルギーの既往がある方は使用禁忌に相当します。事前に渡航外来で確認してください。また、利尿作用が強いため、高地での脱水状態を悪化させないよう水分補給と並行して使用することが重要です。詳しくは 高山病・高地対策ハブ を参照。
ラマダン中の糖尿病薬(2026-07-07)
2026年のラマダンは2月〜3月でしたが、中東・イスラム圏渡航では非ラマダン期でも「現地の食習慣・食事タイミングが日本と大きく異なる」ケースが多発します。例えば中東では夕食が深夜になることが珍しくなく、これが時差と複合すると服薬タイミングの大幅なズレを招きます。
薬学的補足:糖尿病治療薬の低血糖リスクと食事依存性
糖尿病治療薬は低血糖リスクの観点から、食事タイミング依存性の高い薬剤とそうでない薬剤に大きく分かれます。渡航中に特に注意が必要なのは前者です。
| 薬剤クラス(代表成分) | 低血糖リスク | 食事タイミング依存性 | 渡航中の注意点 |
|---|---|---|---|
| SU薬(グリメピリド、グリクラジド等) | 高い | 高い | 食事が遅れる場合は服薬タイミングを主治医と事前に相談 |
| 超速効型インスリン(インスリンアスパルト等) | 高い | 非常に高い | 食直前注射が原則。食事量・タイミングの変動で低血糖リスク大 |
| DPP-4阻害薬(シタグリプチン等) | 単独では低い | 比較的低い | 比較的渡航向き |
| SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン等) | 単独では低い | 低い | 熱中症・脱水との相互作用に注意(後述) |
| GLP-1受容体作動薬(セマグルチド等) | 単独では低い | 低い | 週1回製剤は渡航中の管理がしやすい場合もある |
| メトホルミン | 単独では低い | 低い(ただし胃腸症状) | 脱水・造影剤使用時は一時中止が原則 |
SGLT2阻害薬と熱中症・脱水の相互作用
SGLT2阻害薬は腎臓での糖再吸収を阻害し、尿糖排泄を促進することで血糖を下げます。この機序上、浸透圧利尿が起こるため、暑熱環境下での脱水リスクが通常よりも高まります。また、尿路・外陰部の感染症リスク増加も知られています。渡航先で高温環境に長時間曝露される場合は、通常以上の積極的な水分補給が必要です。
インスリンの保冷管理も渡航中の重要課題です。未開封インスリン製剤の保存は冷蔵(2〜8℃)が原則ですが、多くの製品で開封後は室温(目安として25℃以下)で一定期間使用可能とされています(製品により異なるため、添付文書を必ず確認)。真夏の機内外で高温にさらさないよう、インスリン専用の保冷ポーチを使用することを推奨します。
キニーネと植民地史:マラリア予防薬の変遷(2026-07-05)
マラリア予防薬の歴史はキニーネ(キナ樹皮由来アルカロイド)に始まりますが、現代のマラリア予防薬はその副作用プロファイルが大幅に改善されています。
薬学的補足:現代マラリア予防薬の比較
| 薬剤 | 作用機序(概略) | 主な副作用 | 渡航先別の適性 |
|---|---|---|---|
| アトバコン・プログアニル合剤 | ミトコンドリア電子伝達系阻害+葉酸合成阻害 | 消化器症状(食後服用で軽減) | 東南アジア・アフリカ・中南米の耐性地域に適応 |
| ドキシサイクリン | リボソーム蛋白合成阻害(細菌・マラリア原虫) | 光線過敏症・胃腸障害・カンジダ膣炎 | 広域適応だが光線過敏症に注意 |
| メフロキン | 赤血球内スキゾント増殖阻害 | 神経精神系副作用(夢見・不安・めまい) | 一部地域で耐性あり。精神疾患既往者には慎重 |
| クロロキン | ヘモグロビン分解産物(ヘム)の毒性化阻害 | 網膜症(長期・高用量) | クロロキン感受性地域のみ有効 |
渡航先のマラリア耐性パターン(例:タイ・ミャンマー国境地帯ではメフロキン・クロロキン耐性が報告されている)は年単位で変化します。自己判断せず、必ず渡航外来で渡航先・滞在期間・活動内容を相談した上で薬剤を選択してください。また、どの薬剤も「感染を完全に防ぐもの」ではなく、「発症リスクを下げるもの」であることを理解しておくことが大切です。蚊帳・虫除け剤(DEET含有製品等)との併用が基本戦略です。
3. 海外でよく使う英語フレーズ集(薬局・医療機関編)
渡航先の薬局や診療所で症状を的確に伝えられるかどうかは、適切な薬を入手できるかに直結します。以下のフレーズを事前に確認しておきましょう。
薬局での基本フレーズ
-
I have a stuffy nose and headache.(アイ ハヴ ア スタフィー ノーズ アンド ヘッドエイク)→ 鼻づまりと頭痛があります。 -
Do you have any oral rehydration salts?(ドゥ ユー ハヴ エニー オーラル リハイドレーション ソールツ?)→ 経口補水液はありますか? -
I am allergic to penicillin.(アイ アム アラージック トゥ ペニシリン)→ ペニシリンアレルギーがあります。 -
I have a prescription from Japan. Can you check if this is available here?(アイ ハヴ ア プリスクリプション フロム ジャパン。キャン ユー チェック イフ ディス イズ アベイラブル ヒア?)→ 日本の処方箋があります。こちらで入手できるか確認できますか? -
Is this medication safe to take with ibuprofen?(イズ ディス メディケーション セーフ トゥ テイク ウィズ アイビュプロフェン?)→ この薬はイブプロフェンと一緒に飲んでも大丈夫ですか?
医療機関でのフレーズ
-
I have been taking this medication in Japan.(アイ ハヴ ビーン テイキング ディス メディケーション イン ジャパン)→ 日本でこの薬を服用しています。 -
I feel dizzy and nauseous.(アイ フィール ディジー アンド ノージアス)→ めまいと吐き気があります。 -
I am diabetic and use insulin.(アイ アム ダイアベティック アンド ユーズ インスリン)→ 糖尿病でインスリンを使用しています。
4. 読者がいま行動すべき3つのチェックリスト
✅ 【出発1週間前】常備薬の英文薬剤証明書を用意する
擬似エフェドリン含有薬(一部鼻炎薬)や向精神薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗不安薬、ADHD治療薬)、医療用麻薬(モルヒネ、オキシコドン等を含む貼付剤や内服薬)は国によって持ち込み規制が異なります。処方元の医療機関で英文証明書(Medication Certificate / Letter from Physician)を発行してもらいましょう。
豪州・シンガポール・UAE・サウジアラビアは特に規制が厳格です。規制内容は各国の税関・保健省の公式サイトで最新情報を確認してください。なお、日本国内では「麻薬及び向精神薬取締法」および「麻薬向精神薬輸出入許可」の制度があり、麻薬成分含有製剤を海外に持ち出す場合は厚生労働省への事前許可申請が必要です。
✅ 【出発3日前】ORS・鎮痛薬・止瀉薬・貼付剤を手荷物にパッキング
夏場の渡航は熱中症+旅行者下痢症の複合リスクがあります。以下を渡航常備薬パックの基本構成として準備してください。
| カテゴリ | 成分例(一般名) | 備考 |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン | NSAIDsより胃への負担が少ない。子供・高齢者でも使いやすい |
| 止瀉薬 | ロペラミド | 細菌性腸炎・血便があるときは使用しない(医師に相談) |
| 経口補水液 | ORS粉末(WHO組成) | スポーツドリンクと区別して携帯 |
| 外用鎮痛薬 | ジクロフェナクゲルまたはフェルビナク製剤 | 南国ではケトプロフェン貼付剤は避ける |
| 抗アレルギー薬 | 第2世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン等) | 眠気が比較的少ない製品を選択 |
| 虫除け剤 | DEET(ディート)含有製品またはイカリジン含有製品 | マラリア・デング熱・日本脳炎流行地では必須 |
渡航常備薬キット に推奨構成をまとめています。
✅ 【出発前日】海外旅行保険とキャッシュレス医療対応を再確認
現地の救急外来は数十万円〜数百万円規模の費用が発生することがあります(特に米国・シンガポール・オーストラリアは医療費が高額です)。クレジットカード付帯の旅行保険では保険金支払いの上限が不十分なケースや、「疾病治療費用」の対象範囲が限られているケースがあります。
キャッシュレス医療(事前に保険会社が病院に直接支払う仕組み)が利用できる保険・プランを選ぶと、現地での立替負担を大幅に軽減できます。 海外旅行保険の選び方 と 渡航向けクレカ活用ガイド を出発前に必ず見直してください。
5. 来週の渡航予定者へのメッセージ
7月中旬から8月にかけての出発を予定している方は、以下3点を出発前48時間以内に必ず確認してください。
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睡眠リズム調整:時差5時間以上の渡航では、出発3日前から就寝時刻を段階的に(1日1〜2時間ずつ)目的地の時刻に近づけるシフトが有効です。メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン等)や短時間作用型の睡眠薬は渡航外来で相談できますが、飛行中の使用は深部静脈血栓症(DVT)リスク上昇との関連が指摘されているため、機内での漫然とした使用は避けてください。詳しくは 睡眠・時差対策ハブ。
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片頭痛持ちの方の気圧変動対策:長距離フライト(機内気圧は通常目安として高度1,800〜2,400m相当に設定)と高地観光は、気圧変化・睡眠不足・脱水・光刺激が重なる片頭痛の複合トリガーになりやすい環境です。トリプタン製剤(スマトリプタン等)は片頭痛の急性期治療薬であり、頭痛が起きてから早期(前兆期〜頭痛初期)に服用することが効果的です。NSAIDsとの併用で効果が増すことがありますが、NSAIDs禁忌(消化性潰瘍既往・腎機能低下等)の方は事前に主治医へ確認してください。 片頭痛対策ハブ の予防薬情報も合わせて確認しましょう。
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最新の渡航アラート確認:出発直前に必ず アラート一覧 で行き先の最新情報をチェックしてください。感染症アウトブレイク(デング熱・麻疹・腸チフス等)や医薬品規制は週単位・月単位で更新されます。外務省の「感染症危険情報」と厚生労働省検疫所FORTHも合わせて参照することを推奨します。
今週も無事故・快適な渡航を。次週7/18号でまたお会いしましょう。
参考文献・公式情報源
- World Health Organization. "Cancer." WHO Fact Sheet. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/cancer (2026年7月参照)
- Therapeutic Goods Administration (TGA), Australian Government. "Pseudoephedrine and related substances." https://www.tga.gov.au/resources/resource/guidance/pseudoephedrine-and-related-substances (参照)
- WHO / UNICEF. "Oral Rehydration Salts: Production of the new ORS." WHO/FCH/CAH/06.1. https://www.who.int/publications/i/item/oral-rehydration-salts (参照)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 「ケトプロフェン外用剤の光線過敏症に関する使用上の注意改訂について」. https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/index.html (参照)
- 厚生労働省検疫所FORTH. 「高山病について」. https://www.forth.go.jp/useful/altitude.html (参照)
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Health: Yellow Book — Altitude Illness." https://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2024/environmental-hazards-risks/altitude-illness (参照)
- 厚生労働省. 「医薬品(麻薬・向精神薬等)の海外持ち出し・持ち込みについて」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/index.html (参照)
免責事項:本記事は薬学的一般情報の提供を目的としており、個別の診断・処方判断を行うものではありません。持病のある方、妊娠中・授乳中の方、小児・高齢者の渡航については、必ず渡航外来または主治医にご相談ください。医薬品の海外持ち込み・持ち出しに関する規制は変更される場合があるため、出発前に各国大使館・厚生労働省・PMDA等の公式情報をご確認ください。
監修: 薬剤師(博士(薬学))