ご質問
海外に滞在中、処方箋医薬品や一般用医薬品を複数ヶ月分購入して日本に持ち帰る計画をお立てですね。特に常用薬の場合、「どこまでが個人用として認められる数量か」「薬監証明は絶対に必要か」という判断に迷われる方が多いです。本回答では、数量基準を超えるときに何をするのかを中心に、薬剤師の視点から解説します。
薬剤師からの回答
3ヶ月分という数量は、区分によって「手続きなしで通る」場合と「手続きが要る」場合の両方がありえます。まず基準を確認します。
| 区分 | 手続きが不要な範囲 |
|---|---|
| 処方箋医薬品(毒薬・劇薬を含む。外用剤も同じ) | 用法用量からみて1ヶ月分以内 |
| 一般用医薬品(OTC)の内用薬 | 用法用量からみて2ヶ月分以内 |
| 外用剤(処方箋医薬品・毒薬・劇薬に該当しないもの) | 標準サイズで1品目24個以内 |
| 医薬部外品・化粧品 | 標準サイズで1品目24個以内 |
ご質問の「3ヶ月分」は、処方箋医薬品なら基準を超えます(1ヶ月分まで)。OTCの内用薬でも超えます(2ヶ月分まで)。したがって手続きが必要になります。
「1ヶ月分」は錠数ではなく日数です
ここを取り違えると、手続きの要否を丸ごと誤判断します。基準はその薬の用法用量から計算した日数です。
| 用法 | 1ヶ月分に相当する量 | 3ヶ月分に相当する量 |
|---|---|---|
| 1日1回1錠 | 30錠 | 90錠 |
| 1日2回1錠 | 60錠 | 180錠 |
| 1日3回1錠 | 90錠 | 270錠 |
同じ「90錠」でも、1日1錠の薬なら3ヶ月分なので基準超過、1日3錠の薬なら1ヶ月分なので基準内です。まず自分の薬の1日量を確認してください。
輸入確認証(薬監証明)とは何か
輸入確認証は、日本の地方厚生局が交付する確認書です。数量基準を超える医薬品を、商業目的ではなく自己使用のために輸入することを確認したという内容です。
流通している説明の中に「製造国の公的機関(FDAなど)が発行する、その国で適切に製造されていることの証明」とするものがありますが、これは別の書類(医薬品証明書/CPP)との混同です。輸入確認証は日本側が出す書類です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 輸入確認証(通称「薬監証明」) |
| 交付する機関 | 地方厚生局(関東信越・近畿・東海北陸など)の薬事監視専門官 |
| 提出するもの | 医薬品等輸入報告書 |
| 主な添付書類 | 処方箋の写しまたは医師の指示書(診断書)、製品の成分がわかる資料、パスポートの写し |
| 手数料 | なし |
| 前提条件 | 自己使用目的であること。販売・譲渡は不可 |
管轄は、郵送で取り寄せる場合は住所地を、自分で携帯して持ち帰る場合は到着空港を管轄する地方厚生局です。様式と提出方法は各地方厚生局のサイトで案内されているため、最新の手順はそこで確認してください。
3ヶ月分を持ち帰る前に検討したい選択肢
手続きそのものは難しくありませんが、ほかの方法の方が現実的なこともあります。
- 日本の主治医に長期処方を相談する — 薬剤によって投与日数の上限が法令で決まっていますが、多くの慢性疾患薬は最大90日分の処方が可能です。日本で処方を受けて持って行く方が、成分も規格も確実です
- 帰国のタイミングで量を分ける — 一時帰国が複数回あるなら、1回あたり基準内に収める方が手続きが要りません
- 現地で継続処方を受ける — 長期滞在なら、現地の医療機関で同等薬の処方を受ける方が安定します。英文の診療情報提供書(一般名で記載)を日本から持って行きます
- 未承認薬は慎重に — 日本で未承認の成分は、数量内でも副作用被害救済制度の対象外です。健康被害が起きても救済を受けられない点を理解した上で判断してください
判断の手順
- 薬の区分を確認する(処方箋医薬品/OTC内用薬/外用剤/医薬部外品)
- 用法用量から、持ち帰る量が何日分になるかを計算する
- 基準(処方箋医薬品1ヶ月/OTC内用薬2ヶ月/外用剤・医薬部外品24個)と比べる
- 基準内なら手続きは不要。元の容器のまま持ち帰る
- 超えるなら、到着空港または住所地を管轄する地方厚生局に問い合わせ、輸入報告書の様式と添付書類を確認する
- 処方箋の写しまたは医師の指示書を用意する
まとめ
数量基準は、処方箋医薬品が用法用量からみて1ヶ月分以内、OTCの内用薬が2ヶ月分以内、外用剤・医薬部外品が1品目24個以内です。この範囲内なら処方薬でも薬監証明は必要ありません。
3ヶ月分は基準を超えるため、輸入確認証(薬監証明)の交付を受けることになります。窓口は地方厚生局の薬事監視専門官で、PMDAでも税関でもありません。処方箋または医師の指示書がそろっていれば、通常の事務手続きとして進みます。
ただし、日本の主治医に長期処方を相談する、一時帰国ごとに量を分ける、現地で継続処方を受けるといった選択肢の方が現実的な場合もあります。手続きの可否より先に、どの方法が続けやすいかを主治医・薬剤師と相談してください。
本回答は一般的な情報提供であり、個別の医学的判断は主治医または薬剤師にご相談ください。