ご質問
食物アレルギーがあり、緊急時用にエピペン(アドレナリン自動注射器)を海外に持ち込みたいのですが、どのような手続きが必要でしょうか?また、現地で医療関係者にアレルギー情報をしっかり伝えるには、どう準備すればよいのか教えてください。
薬剤師からの回答
エピペンは日本では処方箋医薬品ですが、これを持って日本を出るために官公庁の許可証や証明書は必要ありません。アドレナリンは麻薬・向精神薬・覚醒剤原料のいずれでもないため、麻薬携帯輸出許可のような手続きの対象外です。
必要なのは「自分に処方された薬であることを現地で英語で示せる状態」です。具体的には英文処方箋(または英文診断書)・英文アレルギーカード・元の箱と薬局ラベルの3点セット、それに機内持ち込みの段取りが要になります。
エピペン携行の基本ステップ
| ステップ | 対応内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 1. 医師の処方確認 | 医師に海外渡航予定を伝え、エピペンの処方と説明文書を受領 | 渡航の4〜6週間前 |
| 2. 英文処方箋取得 | 医師に英文処方箋(Original Prescription)または英文診断書を発行してもらう | 渡航の3〜4週間前 |
| 3. 英文アレルギーカード作成 | 医師に署名してもらい、アレルゲンと対応法を記載 | 英文処方箋と同時期 |
| 4. 渡航先の規制確認 | 中東・アジアの一部は医薬品持ち込みに申請が要る国がある(下表参照) | 渡航の3〜4週間前 |
| 5. 現地大使館確認 | 渡航国の日本大使館サイト、現地税関規制を最終確認 | 渡航の2週間前 |
| 6. 航空会社確認 | 国際線の搭乗ルール(機内・預け荷物の可否)を確認 | 渡航の1週間前 |
用意する書類
英文処方箋または英文診断書(医師に依頼)
- 患者氏名(パスポート表記と一致させる)
- 診断名(Anaphylaxis / food allergy)
- 薬剤名は一般名で(Adrenaline (epinephrine) auto-injector 0.3mg)
- 本数と携行の必要性、医師名・医療機関名・署名
あわせて携帯するもの
- 元の箱と薬局の調剤ラベル(中身と処方が一致していることを示せる)
- 英文アレルギーカード(下記)
- 旅行保険の連絡先
英文アレルギーカード(Medical Alert Card)の作成
エピペン携行と併せて、医師署名の英文カードを常時携帯することが強く推奨されます。
カード記載例 (医師に英訳・署名してもらう):
MEDICAL ALLERGY ALERT
Name: [Your Name]
Allergy: [具体的食物名、例: Peanuts, Shellfish]
Severity: Anaphylaxis Risk
Carrying: EpiPen (Epinephrine Auto-Injector, 0.3mg × 2 pens)
Emergency Contact: [電話番号]
Date of Issuance: [日付]
Physician's Signature and Stamp
作成方法:
- 日本語で作成したアレルギー説明を医師に渡す
- 医師に英訳・署名・捺印(clinic stamp)してもらう
- カラーコピー3〜4部を用意し、常時携帯用、ホテル保管用、予備に分ける
渡航国別・エピペンの入手可能性
| 国・地域 | 成分同等品 | 持ち込みハードル | 現地入手難度 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | EpiPen, Auvi-Q 等 | 低(英文処方箋があれば通常問題なし) | 容易(大学病院・ER) |
| 欧州(英・仏独) | EpiPen, Jext 等 | 中(EU医薬品許可証提示) | 容易(薬局・病院) |
| オーストラリア | EpiPen | 高(TGA登録確認必須) | 容易(薬局予約必要) |
| タイ・シンガポール | EpiPen | 高(医薬品許可確認) | 中程度(私立病院) |
| 中国・台湾 | 相異品或いは供給限定 | 非常に高い | 困難 |
実務的な補足
機内・空港での注意
エピペンはアドレナリン注射剤で、多くの国で規制対象医薬品です。
- 機内持ち込み: ほとんどの国際線で許可(英文処方箋と元の箱を提示できるようにしておく)
- 預け荷物: 気圧変化で製剤が変質するため推奨されない
- 税関申告: 機内配布の申告書に正確に記載
事前リスト
渡航2週間前に以下をチェックしてください:
- ✅ 医師に「海外渡航でエピペン持参」を伝え、処方箋発行の同意を得た
- ✅ 渡航先が医薬品持ち込みの事前申請を求める国かどうかを確認した
- ✅ 英文処方箋・英文アレルギーカード作成を医師に依頼した
- ✅ 渡航国の日本大使館サイトで最新の医薬品規制を確認した
- ✅ 航空会社に「処方医薬品の機内持ち込み」ルールを確認した
- ✅ 渡航先の私立病院・クリニック所在地と電話番号をメモした
現地で追加処方が必要な場合
渡航中にエピペンを使用した場合や、渡航期間が長引いた場合:
- 大使館の医療機関リスト から医師・病院を選定
- 英文アレルギーカード持参で受診
- 現地医師の診察が必要(医薬品の持ち込みルール再確認)
まとめ
エピペン携行の海外渡航で要るのは、英文処方箋(または英文診断書)・英文アレルギーカード・元の箱の3点です。日本側の許可証は不要で、薬監証明は帰国時に数量基準を超える場合の制度なので、この場面では関係しません。渡航先が持ち込み申請を求める国かどうかだけは変わりうるので、出発4〜6週間前に医師と渡航先当局(在日大使館)に確認してください。
本回答は一般的な情報提供であり、個別の医学的判断は主治医または薬剤師にご相談ください。