アスピリンはヤナギの樹皮から、医薬品の意外な歴史

アスピリンはヤナギの樹皮から始まった——古代医学から現代医学へ

ヤナギ樹皮:人類最古の解熱鎮痛薬

紀元前1550年のエジプト医学パピルス「エドウィン・スミス・パピルス」には、頭痛や関節痛の治療にヤナギやポプラの樹皮を使う記載があります。その後、古代ギリシャのヒポクラテス(紀元前460年頃)も、出産時の痛みや発熱にヤナギの樹皮抽出液を処方していた記録が残っています。

しかし当時の医師たちは、なぜヤナギが効くのか、その理由を知りませんでした。 有効成分が樹皮に含まれる「サリチン」という配糖体で、体内で「サリチル酸」に変わることが判明したのは、18〜19世紀のことです。

19世紀:科学が伝統医学を追い付く

1897年、ドイツの化学企業バイエルの化学者フェリックス・ホフマンは、サリチル酸を化学的に改変し、「アセチルサリチル酸」 を合成しました。目的は父親のリウマチ痛を和らげることでしたが、この改変により:

  • 胃への刺激が減った
  • 吸収速度が速くなった
  • 効果が強くなった

という利点が得られました。翌1899年、バイエルは「Aspirinアスピリン」という商標で販売開始。名前の由来は、昔の医学用語「spiräa」(ヤナギの古名)の「a」+ 「spirin」という説と、ドイツ語の「Acetyl Spirsäure」を短縮したという説があります。

現代での服用と渡航時の注意

地域 ステータス 備考
米国 OTC Bayer Aspirinアスピリン 等、薬局で購入可
UK OTC Aspirinアスピリンの1回用量は最大2錠(500mg×2)
フランス 医師処方 市販の解熱鎮痛薬はパラセタモール優先
ドイツ OTC Apotheke(薬局)で購入可
日本 医師処方 一般用医薬品では非売品

渡航者が知るべき3つのポイント:

  1. 胃への負担が実は大きい
    アセチルサリチル酸は胃粘膜を傷める可能性があります。空腹時の服用は避け、食事と一緒に飲むか、制酸薬と併用してください。

  2. 出血リスク
    アスピリンは血小板の凝集を抑えます。外科手術予定の1週間前から中止する必要がある場合があるので、現地医師に相談を。

  3. アレルギー反応の可能性
    ぜんそく患者や過去に薬物アレルギーがある人は服用前に薬剤師に相談してください。

古代医学から現代へ:知識の螺旋

興味深いのは、古代エジプトの医師は無意識のうちに正しい治療をしていた という点です。伝統医学は長い時間をかけて試行錯誤され、実は科学的根拠を持っていたケースが多いのです。

渡航地で「民間薬」を勧められたときも、その背景にある歴史や科学的根拠を知っておくと、判断がしやすくなります。アスピリンの物語は、まさに人類が自然から学び、化学がそれを最適化してきたプロセスの証なのです。

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