「気圧低下で抗ヒスタミン薬が効きにくくなる」の根拠はありません
台風や低気圧でアレルギー薬の吸収が落ちる、という説明を見かけます。これを裏づける確立した知見はありません。 気圧に応じて服用間隔を詰める、といった調整も推奨されません。
一方で、「雨季や台風の時期にアレルギー症状が重くなる」という実感には、別の説明がつきます。
雨季に症状が増えるのは湿度が原因
室内のアレルゲンは湿度で増えます。 ここは薬の吸収の話ではなく、原因物質が増える話です。
| アレルゲン | 増える条件 | 雨季の東南アジアで起きること |
|---|---|---|
| カビ | 高湿度(おおむね60%以上)と結露 | 浴室・エアコン内部・クローゼットで繁殖 |
| ダニ | 高温多湿 | 寝具・カーペット・布製ソファで増加 |
| ゴキブリ由来の抗原 | 高温多湿 | 都市部の宿泊施設で問題になりうる |
宿でありがちな追い打ちがエアコンです。長く使われていない部屋のエアコンを入れた直後は、内部に溜まったカビの胞子が部屋中に吹き出します。
薬の側の準備
世代の違いを把握しておく
| 世代 | 成分の例(日本のOTC) | 特徴 |
|---|---|---|
| 第一世代 | ジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ糖衣錠等)、クロルフェニラミン | 効果は速いが眠気・口渇・排尿しにくさが強い |
| 第二世代 | フェキソフェナジン(アレグラFX)、エピナスチン(アレジオン20)、ロラタジン(クラリチンEX)、セチリジン(コンタック鼻炎Z等) | 眠気は相対的に少ない。持続が長い |
常用薬は切らさない量を持つ
台風での欠航・足止めを前提に、渡航日数+7〜10日分を持ってください。手荷物と預け荷物に分散させます。
現地で買うときの注意
海外で見かける代表的な名前と成分の対応は次のとおりです。
| 現地でよく見る名前 | 成分 | 日本のOTCでの相当品 |
|---|---|---|
| Claritin | ロラタジン | クラリチンEX |
| Zyrtec | セチリジン | コンタック鼻炎Z等 |
| Allegra / Telfast | フェキソフェナジン | アレグラFX |
| Benadryl(米国) | ジフェンヒドラミン | レスタミンコーワ糖衣錠等 |
持ち帰りで問題になる成分
海外の鼻づまり薬・鼻炎薬にはプソイドエフェドリンが配合されているものが多くあります(Sudafed など)。
まとめ
- 気圧で抗ヒスタミン薬の効きが変わるという根拠はない。服用間隔を詰めない
- 雨季に症状が増えるのは湿度でカビ・ダニが増えるから。宿のエアコンと寝具が要注意
- 判断力が必要な日は第二世代を選ぶ。初めての薬は日本で試しておく
- 常用薬は日数+7〜10日分、手荷物と預け荷物に分散
- 現地購入は商品名ではなく成分表示を見る。Benadrylは国で中身が違う
- プソイドエフェドリン配合薬は日本へ持ち込めない
薬剤師メモ: この記事には以前、「気圧低下で弱塩基性薬の生物学的利用能が低下する」「服用間隔を1〜2時間短縮するのが正解」といった記述があり、実在しない学会文献・ガイドラインを根拠として挙げていました。いずれも事実ではなく、用法用量を超える服用を促す内容だったため全面的に書き替えました。
雨季のアレルギー対策で効くのは、アレルゲンを減らすことと薬を切らさないことです。気圧を気にする必要はありません。