10月末〜12月の豪州、雷雨で喘息が急増する理由

日本が秋深まる頃、南半球は花粉のピーク

10月末。日本では空気が乾き、インフルエンザの季節が近づきます。一方で南半球は春の盛り。オーストラリア南東部(ビクトリア州・ニューサウスウェールズ州の一部)やニュージーランドでは、10月から12月がライグラス(牧草)花粉の飛散ピークにあたります。

なぜ雷雨で喘息が起こるのか

通常の花粉粒は直径20〜40マイクロメートル程度で、鼻や喉で捕らえられます。だから症状は鼻水・くしゃみ・目のかゆみが中心です。

ところが雷雨の下降気流で花粉が地表付近に巻き込まれ、高湿度にさらされると花粉粒が吸水して破裂し、内部のアレルゲン粒子が放出されます。この破片は数マイクロメートル以下で、下気道(気管支)まで到達します。結果として、普段は鼻症状だけの人でも咳・胸の締めつけ・呼吸困難が出ることがあります。

項目 通常の花粉症 雷雨喘息
到達部位 鼻・目・咽頭 気管支(下気道)
主症状 鼻水・くしゃみ・目のかゆみ 咳・呼吸困難・胸の圧迫感
発症の速さ 数時間〜日単位 雷雨の前後、数十分単位
リスク層 花粉アレルギー保有者 同じ層+喘息未診断の人も含む

ビクトリア州では公衆衛生対策として、花粉シーズン(おおむね10月1日〜12月31日)に雷雨喘息のリスク予報が提供されています。渡航中は現地の気象・防災情報を確認する価値があります。

渡航前に準備しておきたいこと

  • 発作治療薬(リリーバー)を機内持ち込み手荷物に入れる:サルブタモール等の短時間作用性β2刺激薬の吸入器。預け荷物に入れると、到着まで手が届きません。
  • 長期管理薬(吸入ステロイド等)を自己中断しない:旅行中こそ継続。発作予防の土台です。
  • 吸入器の残量カウンターを出発前に確認。残りわずかなら処方元に相談を。
  • 英語の薬剤名(成分名)をメモ。I have asthma.(アイ ハヴ アズマ) / I need a reliever inhaler.(アイ ニード ア リリーヴァー インヘイラー)

現地で発作が起きたら

息苦しさが強い、会話が途切れる、唇が青い——これらは受診をためらう場面ではありません。オーストラリア・ニュージーランドの救急番号は000(NZは111)。リリーバーを使っても改善しない場合は迷わず連絡してください。

薬剤師メモ: 雷雨喘息で最も危ないのは「自分は花粉症だけだと思っていた人」です。日本で鼻症状しかなかった方が、南半球の春に初めて下気道症状を経験することがあります。アレルギー既往がある方は、渡航前に「もし咳と息苦しさが出たらどうするか」を主治医と一度だけ話しておくと安心です。処方があれば、お薬手帳や英文の薬剤情報を一緒に持っていきましょう。

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