台湾の医療は「カード1枚」で動いている
台湾では1995年に全民健康保険(National Health Insurance)が始まり、現在はICチップ入りの「健保卡」を窓口のリーダーに挿すだけで受診履歴や処方歴が参照できる仕組みになっています。日本の保険証より一歩進んだ電子化で、重複処方のチェックにも使われています。
旅行者(短期滞在)は使えない
健保の加入対象は、台湾の国民や、一定期間の居留資格を持つ外国人です。観光・短期出張のビザなし入国者は加入できず、受診は自費になります。費用は施設の種別(診所/地区医院/医学中心)で大きく変わるため、海外旅行保険またはクレジットカード付帯保険の確認は必須です。領収書と診断書(診斷證明書)をもらっておくと帰国後の請求がスムーズです。
旅行者に優しい「薬袋(藥袋)」文化
台湾では、医療機関や薬局が薬を渡す袋に、薬品名・用法用量・外観などを記載する運用が広く定着しています。日本の薬剤情報提供文書に近い内容が、袋そのものに印字されているイメージです。
ここで効いてくるのが漢字。台湾は成分名を漢字音訳するため、日本人でもパターンを覚えれば推測できます。
| 中文表記 | 一般名(成分) | 日本でおなじみの系統 |
|---|---|---|
| 乙醯胺酚 | アセトアミノフェン | 解熱鎮痛薬の基本 |
| 布洛芬 | イブプロフェン | NSAIDs |
| 氯菲尼拉明 | クロルフェニラミン | 第一世代抗ヒスタミン |
| 洛哌丁胺 | ロペラミド | 下痢止め |
| 奧美拉唑 | オメプラゾール | 胃酸分泌抑制薬 |
台湾でアセトアミノフェン製剤として広く知られているのは 普拿疼(Panadol) です。ドラッグストア系では Watsons(屈臣氏)や Cosmed(康是美)でも一般用医薬品が扱われますが、処方薬は「健保特約薬局」や医療機関での対応になります。
薬剤師メモ: 自費受診でも、薬袋に印字された薬品名・1回量・1日何回をスマホで撮影しておくことを強くおすすめします。帰国後に副作用が出た場合や、かかりつけ医に相談する場合、「黄色い錠剤をもらった」では再現性がありません。成分名が1枚の写真に残っていれば、日本の医療者が即座に評価できます。常用薬がある人は、英文の薬剤名リスト(一般名・含量・1日量)を事前に用意しておくと、相互作用の確認が格段に速くなります。
窓口で使える一言
I don't have Taiwanese health insurance. I'll pay by myself.(アイ ドント ハヴ タイワニーズ ヘルス インシュアランス。アイル ペイ バイ マイセルフ)Could I have a medical certificate and receipt?(クッド アイ ハヴ ア メディカル サティフィケイト アンド レシート?)- 中文なら「我沒有健保卡」(ウォ メイヨウ ジェンバオカー=健保カードがありません)
薬袋という小さな文化が、言葉の壁を越える手がかりになる——台湾受診の際は、袋を捨てずに持ち帰ってください。