次サリチル酸ビスマスはアメリカに持って行ける?
米国ではPepto-Bismol・Kaopectateとしてスーパー・ドラッグストアで広く市販されています。
実務注意
- サリチル酸を含むため、アスピリン過敏や小児・10代のウイルス感染時は使用しない
なぜ次サリチル酸ビスマスは国によって扱いが変わるのか
米国・カナダでは代表的な旅行常備薬だが、日本では一般用医薬品として流通しておらず、EU諸国でも入手しにくい。危険だからではなく、国ごとの承認・販売慣行の差が理由。
条約の附表に載っている成分は、治療目的の携帯であっても入国時に「規制物質を持ち込む行為」として 扱われます。自国での販売区分(OTCか処方薬か)は、渡航先での判断とは別物だと考えてください。
次サリチル酸ビスマスについて
成分(INN): bismuth subsalicylate
日本ブランド: (日本未承認・市販無し)
海外ブランド: Pepto-Bismol・Kaopectate
米国では旅行者下痢の予防・対症で広く使われるが、日本では未承認に近い。EU諸国でも入手しにくい。
作用機序
ビスマスが胃腸粘膜を被覆して保護し、腸管毒素と結合する。同時に遊離するサリチル酸が腸管の水・電解質分泌を抑える。ビスマス自体にも弱い抗菌作用があり、旅行者下痢の予防に使われる。
薬物動態(渡航中の服用間隔を考えるうえで)
ビスマスはほとんど吸収されないが、サリチル酸は吸収される。ビスマスが腸内で硫化ビスマスになるため、便や舌が黒くなる(無害で、消化管出血の黒色便との区別が必要)。
渡航中に問題になりやすい相互作用
- ワルファリン・抗凝固薬: サリチル酸による出血傾向の増強
- テトラサイクリン系・ニューキノロン系: ビスマスがキレートを作り吸収を阻害(2時間以上あける)
- メトトレキサート: サリチル酸が排泄を阻害
- アスピリン: サリチル酸の重複
旅行中は普段飲まない薬(時差対策の睡眠薬、乗り物酔い止め、現地で買った鎮痛薬)が加わりやすく、 相互作用は自宅にいるときより起きやすくなります。お薬手帳の英訳またはスマートフォンの写真を 持っておくと、現地の薬剤師・医師に確認してもらえます。
副作用・使用上の注意
- 黒色便・黒色舌(服用によるもので心配はいらないが、帰国後の検査で誤解されないよう申告する)
- アスピリン過敏・喘息では使用しない
- 小児・10代のウイルス感染時はライ症候群のリスクがあるため使わない
アメリカで入手しやすい代替成分
- ロペラミド(Imodium): 止瀉が目的ならこちら。ただし発熱・血便時は避ける
- 経口補水液(ORS): 旅行者下痢で最も重要なのは脱水補正
- アジスロマイシン等の抗菌薬: 中等症以上では現地医療機関で
海外の薬局では商品名ではなく成分名(bismuth subsalicylate)で伝えるのが確実です。 同じ成分でも国によって商品名が変わるため、商品名だけを頼りにすると別の成分を渡されることがあります。
アメリカの規制を確認する窓口
医薬品規制当局: 食品医薬品局/税関国境警備局
正式名称: Food and Drug Administration / Customs and Border Protection(FDA / CBP)
医薬品の承認はFDA、入国時の可否判断は実際にはCBPが行います。
当サイトの判定は薬剤師が整理した参考情報です。次のいずれかで最新の一次情報を確認してください。
- 食品医薬品局/税関国境警備局(FDA / CBP)の公表情報
- アメリカの在日大使館・総領事館(日本語で問い合わせられる場合があります)
- アメリカの税関当局が公表する旅行者向けの持ち込みルール
- 長期滞在・処方薬の大量携帯であれば、渡航前に主治医と薬剤師に相談
英文の処方箋・診断書に入れておく項目
OTCで購入可の成分でも、量が多い場合や乗り継ぎ国の規制が厳しい場合は書類を求められることがあります。次の項目を用意しておくと確実です。
- 患者本人の氏名(パスポートの綴りと一致させる)と生年月日
- 診断名または治療目的
- 一般名(bismuth subsalicylate)での成分名。商品名だけでは各国の担当者が判断できません
- 1日量・1回量・用法と、携帯する総量(滞在日数に見合う量であること)
- 処方医の署名・連絡先・医療機関名
- 処方ラベルの付いた元の容器のまま携帯すること(詰め替えない)
アメリカで次サリチル酸ビスマスを飲むときの水
水道水の飲用: おおむね飲用可
硬度: 130 mg/L(硬水/120-180 mg/L)
カルシウム: 35 mg/L / マグネシウム: 10 mg/L
都市により硬度差が大きい(西海岸は硬水、北東部は軟水)。水道水は飲用可。
現地でよく見るボトル水: Dasani(50 mg/L・軟水)、Aquafina(30 mg/L・軟水)、Poland Spring(80 mg/L・軟水)、Fiji(130 mg/L・硬水)
硬水のカルシウム・マグネシウムは、テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬、 ビスホスホネート、レボチロキシンなど一部の薬とキレートを作って吸収を落とします。次サリチル酸ビスマス自体はその影響を受ける成分ではありませんが、これらを併用しているなら軟水のボトル水で服用してください。
アメリカで症状が出たときに現地で買えるもの
次サリチル酸ビスマスを持ち込めるかどうかとは別に、現地で症状が出たときに何を買えるかを知っておくと 計画が崩れにくくなります。アメリカの症状別ガイドに、現地で入手できる成分と商品名をまとめています。
アメリカの他の渡航準備情報
次サリチル酸ビスマスの扱いが特に分かれる国
※ 規制は予告なく変更されます。最終確認はアメリカの大使館・税関・公的医薬品規制機関の最新情報を必ずご確認ください。 本判定は薬剤師監修の参考情報であり、法的助言ではありません。診断・治療方針の決定は医師の領域です。