空港で没収されやすい薬TOP10|薬剤師が解説する持ち込み失敗の典型例

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この記事の内容を、薬剤師(博士(薬学))が動画で解説しています。 各章のタイムスタンプから直接ジャンプできます。

  1. 0:16没収の評価基準
  2. 0:53TOP10〜6位の薬
  3. 1:44TOP5〜2位の薬
  4. 2:35第1位とその回避法
  5. 3:26渡航前の準備フロー

「日本では普通に買える薬が、現地空港で没収された」——海外渡航で最も悔しい体験の一つです。本記事では、薬剤師(博士(薬学))の視点から、実際に各国大使館・税関で報告されている没収事例をランキング形式でまとめます。

ランキングは「没収頻度・拘束リスク・日本人観光客が関わる事例数」を総合評価しました。

日本は世界的に見ても「市販薬(OTC薬)に規制成分が多い国」の一つです。コデイン、プソイドエフェドリン、エフェドリンといった成分は、欧米や中東では麻薬・覚醒剤原料として厳しく管理されているにもかかわらず、日本では薬局やドラッグストアで手軽に購入できます。この「規制の非対称性」が、無意識の「密輸入」につながる最大のリスクです。

渡航前に本記事のチェックリストを活用し、不必要なトラブルを未然に防いでください。


没収されやすさの評価基準

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評価項目 配点
日本での流通量(接触機会) 25点
海外規制の厳しさ 25点
税関検査での発見率 20点
書類整備の難易度 15点
拘束・罰則のリスク 15点

評価基準の補足:なぜこの5項目か

「海外規制の厳しさ」だけでランキングすると、実際には日本人旅行者がほとんど持参しない薬が上位になりかねません。本ランキングでは**「日本人が持参しやすい」かつ「現地で問題になりやすい」**の掛け合わせで評価しています。

また「税関検査での発見率」については、X線検査・スキャナー技術の向上により、ピル状・粉状の医薬品の判別精度が年々上がっています。液体薬・クリーム・注射薬は別途申告義務が生じる場合もあり、固形薬より発見・質問されるリスクが高い傾向があります。


第10位:エフェドリン含有の咳止め・気管支拡張薬

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項目 内容
代表成分 エフェドリン水和物、dl-メチルエフェドリン塩酸塩
含有製品例 麻黄(マオウ)配合の漢方エキス製剤( 葛根湯 🛒、小青竜湯など)、一部の咳止め配合剤
没収頻度 ★★☆☆☆
規制理由 覚醒剤原料、ドーピング規制対象
没収国(例) UAE、シンガポール、サウジアラビア

薬学的解説:エフェドリンとは何か

エフェドリンはアミン構造を持つアドレナリン受容体作動薬で、α受容体・β受容体の両方を刺激します。気管支拡張作用・鼻粘膜血管収縮作用があり、喘息や鼻炎の治療に用いられてきた歴史的な成分です。一方で、中枢神経刺激作用を持つため、化学構造がメタンフェタミン(覚醒剤)の前駆物質に近く、多くの国で「覚醒剤原料」として規制されています。

日本では麻黄(マオウ)を含む漢方薬に広く含まれており、葛根湯・小青竜湯・麻黄附子細辛湯などに1〜5g/日相当の麻黄が配合されています。漢方薬を「自然由来だから安全」と思い込んで大量に持参するケースは、特に注意が必要です。

回避法: 漢方薬は「葛根湯」「小青竜湯」など麻黄含有が多い。事前に成分表示を確認し、必要なら別の鎮咳薬に切り替え。スポーツ競技に出場する場合はWADA(世界アンチ・ドーピング機関)の禁止リストも確認してください。


第9位:ニコチン置換療法(ニコチンガム・パッチ)

項目 内容
代表成分 ニコチン
含有製品例 ニコチン置換療法薬(ガム剤・パッチ剤、OTCで市販)
没収頻度 ★★☆☆☆
規制理由 ニコチン濃度・量の制限
没収国(例) UAE、シンガポール、香港

薬学的解説:ニコチンの規制背景

ニコチンはアセチルコリン受容体(ニコチン性受容体)に作用し、ドーパミン放出を促す依存性物質です。医薬品としての禁煙補助製品は、日本ではOTCとして薬局で購入できますが、シンガポールでは禁煙目的の処方薬以外のニコチン製品は原則禁止となっており、ガムやパッチの個人持ち込みにも制限があります。

UAEでは一般的なニコチン含有電子タバコ関連製品の持ち込みに制限があり、医薬品として承認されたニコチン置換療法薬であっても、事前の確認が推奨されます。香港では一定量以内の持ち込みは認められていますが、規制改正が頻繁なため、渡航前に香港衛生署または日本国大使館を通じた最新情報の確認が不可欠です。

回避法: UAEなど一部の国はニコチン製品全般に厳しい。短期渡航なら持ち込まないのが安全。バレニクリン(チャンピックス)を処方されている場合は別途向精神薬としての手続きが必要な国もあります。


第8位:吸入器(喘息治療薬)

項目 内容
代表成分 サルブタモール(別名アルブテロール)、ブデソニド、フルチカゾン等
含有製品例 短時間作用型β2刺激薬(SABA)吸入器、ステロイド吸入薬
没収頻度 ★★☆☆☆
規制理由 加圧式エアゾール容器の機内持ち込み制限
没収国(例) 国によらず機内預け入れ規制の問題

薬学的解説:吸入器の規制は「薬」より「容器」の問題

喘息吸入薬そのものは麻薬・向精神薬ではありませんが、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI: pressurized metered-dose inhaler)はフロン代替ガス(HFA: ヒドロフルオロアルカン)を内包した加圧容器であるため、航空安全の観点から一定のルールが設けられています。

IATAおよびICAOの規定では、患者本人が治療目的で携帯する医療用吸入器は個人使用分として機内持ち込みが認められています。ただし、航空会社によっては搭乗前の申告や医師の診断書の提示を求める場合があります。預け入れ荷物に入れると、温度・気圧の変化により噴霧特性が変わるリスクもあるため、必ず機内持ち込み手荷物に入れるのが正解です。

サルブタモールはWADAのドーピング禁止リストにおいて「閾値を超える使用は禁止」とされており、アスリートは特別な申請(TUE: 治療使用特例)が必要な場合があります。

回避法: ICAO/IATA規則で個人用の医療用吸入器は機内持ち込み許容。ただし事前に航空会社へ申告が望ましい。喘息患者は英文診断書と処方箋を必ず携帯してください。


第7位:CBD製品(オイル・グミ・コスメ)

項目 内容
代表成分 カンナビジオール(CBD)
含有製品例 CBDオイル、CBDグミ、CBD配合化粧品・サプリメント
没収頻度 ★★★☆☆
規制理由 THC残留、現地法でのCBD扱い差
没収国(例) シンガポール、マレーシア、UAE、日本

薬学的解説:CBDとTHCの違いと規制の複雑さ

CBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)はいずれも大麻草に含まれるカンナビノイドです。THCは中枢神経に作用して精神活性(いわゆる「ハイ」の状態)をもたらす一方、CBDには精神活性作用がなく、抗炎症・抗不安作用が研究されています。

問題は製品中のTHC残留量です。欧米の規制(例:EU基準0.3%以下、米国基準0.3%以下)に従って製造されたCBD製品でも、日本・シンガポール・マレーシア・UAEなどではCBD製品自体または微量THCが問題になります。日本では2023年の大麻取締法改正によりCBDの扱いが変わりましたが、THCを含む製品の輸入・所持は依然として規制対象です。

シンガポール・マレーシアでは大麻関連物質全般に対して極めて厳格な規制があり、CBDも例外ではありません。違反した場合の罰則は非常に重いため、これらの国へのCBD製品の持参は絶対に避けてください。

回避法: 海外で買ったCBD製品の日本持ち帰りはTHC残留検査でひっかかる事例多数。シンガポール・マレーシアではCBD自体が違法。また、米国の一部の州でも連邦法上の扱いとの乖離があるため、州をまたぐ移動時にも注意が必要です。


第6位:エチゾラム

項目 内容
代表成分 エチゾラム
含有製品例 エチゾラム製剤(デパス等のブランドで流通)
没収頻度 ★★★☆☆
規制理由 米国未承認、英国Class C規制薬物
没収国(例) 米国、英国、ドイツ、UAE

薬学的解説:エチゾラムが国際的に問題になる理由

エチゾラムはチエノジアゼピン系薬物で、GABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用します。ベンゾジアゼピン骨格にチオフェン環が融合した構造を持ち、ベンゾジアゼピン類と薬理作用はほぼ同等ですが、化学分類上はベンゾジアゼピンとは区別されます。

日本では1984年に承認された歴史のある向精神薬で、睡眠障害・神経症・うつ症状などに広く処方されています。しかし米国FDA未承認であり、米国には同成分の承認薬がないため、「Scheduleに分類されていない未承認薬」として没収されるケースがあります。英国ではClass C(Misuse of Drugs Act)に指定されており、処方箋なしの所持は違法です。

ドイツなどEU諸国でも向精神薬として規制されており、英文処方箋なしでの持ち込みはリスクが高いです。

回避法: 米国・英国渡航時は代替薬への切り替えを医師と相談するのが最も安全。どうしても持参が必要な場合は英文処方箋+医師レターを準備し、渡航先大使館に事前問い合わせを。


第5位:ラニチジン含有胃酸抑制薬

項目 内容
代表成分 ラニチジン塩酸塩
含有製品例 ラニチジン製剤(世界的に販売停止済み)
没収頻度 ★★★☆☆
規制理由 NDMA(N-ニトロソジメチルアミン)不純物の発がん性懸念
没収国(例) オーストラリア、カナダ、欧州各国

薬学的解説:NDMA問題とラニチジン販売停止の経緯

ラニチジンはH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)で、胃壁細胞のH2受容体を遮断することで胃酸分泌を抑制します。1980年代から世界中で広く使用されてきた薬剤ですが、2019年にFDAおよびEMAがラニチジン製品中にNDMAが検出されたと発表しました。

NDMAは国際がん研究機関(IARC)によりGroup 2A(おそらく発がん性あり)に分類されている物質です。さらにラニチジンは分子構造の不安定性から、保存中・体内でもNDMAを生成しやすいという特性があることが明らかになり、2020年にFDA・EMAはラニチジン全製品の市場撤退を勧告しました。日本でも同年に製造販売承認が整理されています。

現在、日本国内での正規流通はありません。古い在庫を自宅に保管していた場合や、海外の一部市場で非公式に流通しているものを持参するのは、成分の分解・変質リスクも重なり、二重の意味で危険です。

回避法: ファモチジン(同じH2ブロッカーで安全性が確認されている)への切り替え、またはプロトンポンプ阻害薬(PPI)への変更を主治医・薬剤師に相談してください。


第4位:メチルフェニデート

▶ この章を動画で見る (1:44)

項目 内容
代表成分 メチルフェニデート塩酸塩
含有製品例 メチルフェニデート製剤(徐放錠含む)
没収頻度 ★★★★☆
規制理由 1971年国連向精神薬条約 Schedule II(最厳格)
没収国(例) タイ、UAE、中国、シンガポール

薬学的解説:メチルフェニデートの薬理と国際条約上の位置づけ

メチルフェニデートはドーパミントランスポーター(DAT)およびノルエピネフリントランスポーター(NET)を阻害し、シナプス前膜へのカテコールアミン再取り込みを阻害します。その結果、前頭前皮質でのドーパミン・ノルエピネフリン濃度が上昇し、注意力・実行機能の改善をもたらします。ADHD(注意欠如・多動症)や一部の重度ナルコレプシーに用いられます。

化学構造的にアンフェタミン類と類似しており、1971年の国連向精神薬条約ではSchedule IIに分類されています(最も制限の厳しいカテゴリの一つ)。日本国内でも向精神薬(麻薬及び向精神薬取締法)に指定されており、処方・調剤・保管に厳格なルールがあります。

タイ・UAE・シンガポール・中国では、条約に基づく許可申請を経ても持ち込みを認めない場合があるため、長期滞在時には現地での代替薬の確保を渡航前から計画しておく必要があります。アトモキセチンは非刺激性のADHD治療薬(選択的NET阻害薬)で、国際条約のScheduleに含まれないため、多くの国で持ち込みが比較的容易です。

回避法: タイ・UAEは事前許可しても却下されることがある。長期滞在ならアトモキセチンへの切り替えを医師と渡航3ヶ月前から相談することを推奨します。どうしてもメチルフェニデートが必要な場合は、厚生労働省への「麻薬輸出証明書」申請が必要です。


第3位:プソイドエフェドリン配合の風邪薬・鼻炎薬

項目 内容
代表成分 プソイドエフェドリン塩酸塩(偽エフェドリン)
含有製品例 プソイドエフェドリン配合の総合感冒薬・鼻炎薬(成分表で確認)
没収頻度 ★★★★☆
規制理由 覚醒剤原料規制(各国のメタンフェタミン製造対策)
没収国(例) UAE、サウジアラビア、メキシコ、タイ

薬学的解説:プソイドエフェドリンが世界中で規制される背景

プソイドエフェドリンはエフェドリンの立体異性体(ジアステレオマー)で、α1受容体を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させ、鼻づまりを改善します。鼻炎・副鼻腔炎・感冒の充血緩和薬として、日本を含む多くの国の市販薬に配合されてきました。

問題はメタンフェタミン(覚醒剤)の前駆物質として容易に合成転用できる点です。特に1990年代以降、北米・東南アジア・中東でメタンフェタミンの密造問題が深刻化し、国際麻薬統制委員会(INCB)の勧告を受けた各国が相次いでプソイドエフェドリン規制を強化しました。

UAEでは2014年以降、プソイドエフェドリン含有の市販薬は事前許可なしでの持ち込みが禁止されています(医師の処方箋があっても事前申請が原則)。サウジアラビアでも同様の規制があり、規制量を超えて持ち込もうとした場合には没収だけでなく、より重大な法的問題に発展する可能性があります。

日本の市販の総合感冒薬・鼻炎薬には「成分名:プソイドエフェドリン塩酸塩」と記載があります。商品名だけでは判断できないため、必ず成分表を確認してください。

回避法: 配合剤は成分表示確認が必須。鼻づまりにはオキシメタゾリン点鼻薬(血管収縮薬・局所作用)や第2世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン等)への切り替えが有効。これらは国際的な規制を受けないため、代替としてより安全です。


第2位:ベンゾジアゼピン系薬

項目 内容
代表成分 アルプラゾラム、トリアゾラム、ジアゼパム、フルニトラゼパム等
含有製品例 アルプラゾラム製剤、トリアゾラム製剤、ジアゼパム製剤等
没収頻度 ★★★★☆
規制理由 1971年国連向精神薬条約 Schedule IV
没収国(例) UAE、サウジアラビア、シンガポール

薬学的解説:ベンゾジアゼピン系薬の国際規制

ベンゾジアゼピン系薬はGABA-A受容体に結合してGABAの抑制作用を増強し、抗不安・睡眠・筋弛緩・抗けいれん作用をもたらします。日本では不眠症・パニック障害・てんかん等に広く処方されており、処方量の多さから海外渡航時に持参するケースが多い薬剤群です。

1971年の国連向精神薬条約でSchedule III〜IVに分類されており、30日を超える量の持ち込みは多くの国で事前許可が必要です。特に中東諸国(UAE・サウジアラビア等)では規制が非常に厳しく、フルニトラゼパム(ロヒプノール等)はSchedule IVの中でも特に規制が厳しい薬剤です。

シンガポールでは向精神薬の持ち込みに対して処方箋に加え、シンガポール保健科学庁(HSA)への事前申告が求められる場合があります。フルニトラゼパムは「デートレイプドラッグ」としての悪用事例から、日本から持ち込んだだけで意図を問われるリスクがある薬剤です。

渡航先によっては、同じ成分でも「処方箋があれば持ち込み可」の国と「事前許可なしでは全量没収」の国が混在するため、国別の個別確認が不可欠です。

回避法: 必ず英文処方箋+医師レターを準備。中東渡航時は各国大使館への事前許可申請を出国2週間以上前に開始。添付薬は元の容器に収め、処方箋と一緒にジッパー付き袋で一括管理してください。


第1位:コデイン含有市販薬

▶ この章を動画で見る (2:35)

項目 内容
代表成分 リン酸コデイン、ジヒドロコデインリン酸塩
含有製品例 コデイン配合の市販咳止め(成分表でリン酸コデインまたはジヒドロコデインリン酸塩と記載のあるもの)
没収頻度 ★★★★★(最多)
規制理由 1961年国連麻薬単一条約(麻薬指定)
没収国(例) ほぼ全世界(日本以外でOTC販売はきわめてまれ)

薬学的解説:コデインの薬理と国際的な麻薬分類

コデインはモルヒネの3位メチルエーテル体(3-メチルモルヒネ)で、体内でCYP2D6酵素によりモルヒネに変換されます(約10%がモルヒネに代謝)。この変換によりオピオイドμ受容体に作用して鎮咳・鎮痛効果を発揮しますが、同時に依存性・乱用リスク・呼吸抑制リスクも持ちます。

1961年の国連麻薬単一条約ではコデインはSchedule IIIに分類されており、医薬品としての使用は認められるが、製造・輸出入・保管に厳格な管理が求められます。日本ではリン酸コデイン・ジヒドロコデインリン酸塩が配合された咳止め市販薬が広く流通しており、「薬局で普通に買える」という感覚のまま海外に持参するのが最大の危険です。

2017年に欧州医薬品庁(EMA)は12歳未満への使用を禁止、一部国では年齢にかかわらずOTC販売を廃止しました。米国ではOTCコデイン製品は段階的に規制強化されており、多くの州で市販薬としては入手困難です。フランス・オーストラリアもOTCコデインの規制を大幅に強化しています。

「日本では薬局で買える」は世界では通用しない常識として、渡航前に必ず確認してください。

回避法: 代替としてデキストロメトルファン(DXM)配合の咳止めが多くの国で規制対象外として入手できます(ただし過剰摂取は問題になるため適正使用が前提)。または現地の医師に処方を求めるのが最も安全です。


TOP10総覧

順位 薬剤・成分 主な没収国 規制根拠
1位 コデイン含有市販薬(リン酸コデイン等) ほぼ全世界 1961年国連条約 Schedule III
2位 ベンゾジアゼピン系(アルプラゾラム等) UAE、サウジ、シンガポール 1971年国連条約 Schedule IV
3位 プソイドエフェドリン配合薬 UAE、サウジ、メキシコ、タイ 各国覚醒剤原料規制
4位 メチルフェニデート タイ、UAE、中国 1971年国連条約 Schedule II
5位 ラニチジン製剤 世界的販売停止のため全域 NDMA汚染・各国回収措置
6位 エチゾラム 米英、UAE 各国向精神薬規制
7位 CBD製品 シンガポール、マレーシア、UAE 各国大麻関連物質規制
8位 喘息吸入器 機内預け入れ規制 IATA/ICAO航空安全規制
9位 ニコチン置換療法薬 UAE、シンガポール、香港 各国ニコチン製品規制
10位 エフェドリン・麻黄含有漢方 UAE、シンガポール、サウジ 覚醒剤原料規制、WADA

特別注意:地域別の規制特性

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中東(UAE・サウジアラビア・クウェート等)

中東諸国は薬物規制が特に厳格で、向精神薬・麻薬性薬物の不法所持に対する罰則が重い可能性があります(各国の法令による)。ベンゾジアゼピン系・オピオイド系薬剤を処方されている方は、必ず出国前に渡航先の在外公館(大使館・領事館)に問い合わせ、必要な書類を準備してください。

UAEでは薬物関連の規制が厳しいことで知られています。詳細はUAE保健予防省(Ministry of Health and Prevention)の公式情報を参照してください。

東南アジア(シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア等)

シンガポールは薬物法(Misuse of Drugs Act)に基づく規制が非常に厳しい国として知られます。タイは近年大麻規制の揺り戻しがあり、2023〜2024年にかけて規制が強化される方向です。インドネシアはCBD・大麻関連物質への規制が厳格です。

マレーシアも薬物法により、一定量以上の規制薬物の所持は重大な法的リスクを伴う可能性があります。これらの国への渡航では、持参する医薬品すべての成分確認が不可欠です。

北米(米国・カナダ・メキシコ)

米国はDEA(Drug Enforcement Administration)がSchedule I〜Vで管理。日本人がひっかかりやすいのはエチゾラム(未承認)とコデイン(OTCなしの地域では処方薬)です。90日分以内かつ処方箋があれば多くの向精神薬は持ち込み可能ですが、麻薬類は事前申告が推奨されます。

メキシコはプソイドエフェドリンの規制が厳しく、覚醒剤原料として厳格に管理されています。市販の鼻炎薬・総合感冒薬でも成分によっては問題になる場合があります。


渡航前の没収防止フロー

□ 1. 持参予定の薬すべての成分表示を確認
□ 2. 上記TOP10成分が含まれていないかチェック
□ 3. 該当する場合、渡航先での扱いを在外公館サイトで確認
□ 4. 事前許可が必要なら申請(5〜10営業日前から)
□ 5. 英文処方箋+医師レターを準備(オリジナル+コピー)
□ 6. 元の容器のまま、機内持ち込み手荷物に
□ 7. 入国カードで「Yes(医薬品あり)」を申告
□ 8. 不安なら持参を中止し、代替成分に切り替え

チェックフローの詳細解説

ステップ1・2:成分表示の確認方法

日本の医薬品の添付文書はPMDA(医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトで無料公開されています。商品名で検索し、「成分・分量」の欄に上記TOP10の成分が含まれていないか確認してください。漢方薬は「配合生薬」の欄にマオウ(麻黄)の有無を確認します。

ステップ3:渡航先の情報確認先

  • 外務省 海外安全情報( https://www.anzen.mofa.go.jp/)
  • 各国在外日本大使館・総領事館の医療情報ページ
  • 渡航先国の保健省・税関当局の公式ウェブサイト

ステップ4:事前許可申請の目安

向精神薬・麻薬の輸出入には厚生労働省への申請が必要な場合があります(麻薬輸出入許可、向精神薬輸出入許可等)。審査期間の目安は申請から最低でも2週間程度とされており、渡航直前の申請は間に合わない場合があります。

ステップ5:英文書類の準備

英文処方箋には最低限以下の情報が必要です:

  • 患者フルネーム(パスポートと一致)
  • 薬剤の一般名(generic name)および規格
  • 処方量・日数
  • 処方医の署名・連絡先・資格
  • 処方医の施設名・住所

よくある誤解:「少量だから大丈夫」は通用しない

「市販薬の1シートくらいなら問題ないだろう」という考え方は、法的根拠がありません。多くの規制は**「量」ではなく「成分の有無」**で判断されます。コデイン1錠でも、プソイドエフェドリン1錠でも、それが規制対象成分であれば没収・罰則の対象になり得ます。

また「処方箋があるから大丈夫」も過信は禁物です。処方箋は「正当な使用目的の証明」にはなりますが、「持ち込み許可」とは別の問題です。事前許可制の国では、処方箋があっても事前申請なしでは没収されることがあります。


代替薬の考え方:渡航先での薬の調達

没収リスクの高い薬を持参できない場合、以下の対策が考えられます。

状況 推奨される対応
短期観光(1週間以内) 現地調達を前提に、事前に現地薬局・病院の情報収集
長期滞在・留学 現地の専門医に紹介状持参で受診、現地処方を取得
慢性疾患の治療薬 渡航3ヶ月前から主治医と相談、代替薬への切り替えを検討
緊急の場合 旅行保険の海外緊急医療サービス、在外公館への相談

現地調達する場合も、成分名(一般名)で薬を探す習慣をつけてください。ブランド名は国によって異なりますが、一般名は国際的に共通です。「I need ibuprofenイブプロフェン.(アイ ニード アイビュプロフェン)」のように一般名で伝えれば、世界中どこでも薬剤師に通じます。


まとめ

没収されやすい薬の共通パターン:

  • 麻薬性成分(コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール等)
  • 覚醒剤原料(プソイドエフェドリン、エフェドリン)
  • 向精神薬(ベンゾジアゼピン系、メチルフェニデート)
  • 国際的に販売停止になった薬(ラニチジン)
  • 国により扱いが大きく違う成分(CBD、エチゾラム)

回避の3原則:

  1. 添付文書で成分を確認(商品名だけで判断しない)
  2. 書類は英文で完備(処方箋+医師レター+必要なら事前許可書)
  3. 不安なら持参しない(代替成分への変更か現地調達を選択)

渡航前の薬の準備は「医師・薬剤師・大使館の3者に確認する」ことが最も確実なアプローチです。特に中東・東南アジアへの渡航では、日常的に服用している薬でも事前確認を怠らないようにしてください。


参考文献・情報源

  1. 外務省 海外安全ホームページ 各国・地域情報 https://www.anzen.mofa.go.jp/

  2. 厚生労働省 医薬品等を携帯して海外に持ち出す場合(麻薬・向精神薬の輸出入手続き) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html

  3. PMDA(医薬品医療機器総合機構)添付文書情報 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuTop.do

  4. United Nations Office on Drugs and Crime (UNODC): Convention on Psychotropic Substances 1971 https://www.unodc.org/unodc/en/treaties/psychotropics.html

  5. U.S. Drug Enforcement Administration (DEA): Drug Scheduling https://www.dea.gov/drug-information/drug-scheduling

  6. European Medicines Agency (EMA): Referral on codeineコデイン for cough and cold in children https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/codeine-containing-medicinal-products-cough-cold-children

  7. World Anti-Doping Agency (WADA): Prohibited List 2024 https://www.wada-ama.org/en/resources/prohibited-list


監修:薬剤師(博士(薬学))

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