【痛風】の薬一覧——薬剤師が種類・機序・使い分けを解説

概要

痛風は、血清尿酸値の上昇により尿酸塩結晶が関節に沈着し、急性炎症を引き起こす代謝性疾患です。男性に圧倒的に多く、食生活や遺伝が関与します。治療は急性発作の緩和長期的な尿酸値管理の二本立てです。発作時にはNSAIDsやコルヒチン、ステロイドで炎症を鎮静化させ、寛解期には尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット)または尿酸排泄促進薬で血清尿酸値を目標値(6.0mg/dL以下)に維持します。

治療の基本方針

急性発作時の治療

痛風発作は関節への急性炎症であり、可能な限り早期に抗炎症薬を開始することが重要です。第一選択はNSAIDs(例:インドメタシン、ナプロキセン)です。胃腸障害のリスク管理のため、プロトンポンプ阻害薬の併用が推奨されます。NSAIDs禁忌(消化器潰瘍歴、腎機能低下、心不全)の場合はコルヒチンが第二選択となり、発症72時間以内の投与が効果的です。ステロイド(プレドニゾロン)は、NSAIDsとコルヒチンが両者禁忌の場合の最終手段です。

寛解期の尿酸低下療法

発作が治まった後、尿酸生成抑制薬の開始が基本です。日本のガイドライン(痛風・核酸代謝異常に関する調査研究班)では、第一選択はアロプリノール(キサンチン酸化酵素阻害薬)とされています。フェブキソスタット(非プリン型キサンチン酸化酵素阻害薬)は、アロプリノール不耐や効果不十分時の第二選択です。尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン)はアロプリノール併用や単独使用時の選択肢ですが、尿路結石形成リスクから常用量以上での初回投与は避けるべきです。治療開始時は低用量から漸増し、2〜4週ごとに血清尿酸値を測定して調整します。

重症度別戦略

  • 初回軽症発作:NSAIDs + 尿酸低下療法延期(発作後2〜4週間経過後に開始)
  • 反復発作・中等症以上:NSAIDs/コルヒチン + 発作中からの尿酸低下療法
  • 腎機能低下(eGFR<30):アロプリノール用量削減、コルヒチン慎重投与、フェブキソスタット選択肢

薬効群別の一覧

1. キサンチン酸化酵素阻害薬(尿酸生成抑制薬)

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
アロプリノール(プリン型) アロプリノール / ザイロリック® キサンチン酸化酵素を競合的に阻害し、ハイポキサンチンからキサンチンを経由しての尿酸生成を抑制 第一選択。長年の実績あり、汎用性高い 痛風発作誘発(開始時)、皮疹、肝機能障害、稀に薬剤性過敏症症候群(DRESS) 開始時に十分説明。HLA-B*5801陽性者は発疹リスク高い
フェブキソスタット(非プリン型) フェブキソスタット / ウラリット® キサンチン酸化酵素の非競合的阻害。キサンチンから尿酸への段階を強く抑制 第二選択。アロプリノール不耐・効果不十分時、あるいは高尿酸血症と心血管疾患合併時の選択肢 痛風発作誘発(開始時)、肝機能障害、心血管イベントの相対リスク増加報告あり 開始時発作抑制療法必須。心血管疾患既往者は医師判断

2. 尿酸排泄促進薬(ウリコスリック薬)

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
ベンズブロマロン ベンズブロマロン / ナズリック® 腎尿細管における尿酸再吸収(URAT1)を阻害し、尿中への尿酸排泄を増加 アロプリノール効果不十分・不耐時、または両者併用時の第二・第三選択 尿路結石(結晶尿)、肝機能障害 尿量不足・脱水時は結石形成リスク。開始前に尿量確保と2L/日以上の水分摂取指導必須

3. コルヒチン(微小管阻害薬)

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
コルヒチン コルヒチン / コルヒチン錠 微小管重合を阻害し、白血球の遊走と炎症性サイトカイン産生を抑制。尿酸結晶の自然免疫応答を減弱 NSAIDsアレルギーまたは禁忌時の第一選択。発症72時間以内投与が有効 下痢、悪心・嘔吐、骨髄抑制(長期使用) 腎機能低下(eGFR<30)時は用量厳密調整必須。他の微小管阻害薬(ベラパミル等)との相互作用注意

4. NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
インドメタシン インドメタシン / インドメタシン錠 COX-1/COX-2を非選択的に阻害し、プロスタグランジン産生を抑制。痛風発作の急性炎症を迅速に軽減 急性痛風発作の第一選択。強力な抗炎症作用 消化器潰瘍・出血、腎機能低下、頭痛 消化器潰瘍歴・PPI併用患者でもリスク残存。腎臓病、心不全、高血圧患者は慎重
ナプロキセン ナプロキセン / ナイキサン® COX非選択的阻害。作用時間がインドメタシンより長い 急性発作時の選択肢。単回投与でも効果持続 消化器障害、腎機能低下、心血管リスク 同上。高齢者はより低用量から開始
ロキソプロフェン ロキソプロフェン / ロキソニン® COX非選択的阻害。プロドラッグで肝で活性化 急性発作に有効だが、日本では処方笺医療用。OTC製品も存在 消化器障害、アレルギー反応 同上

5. ステロイド

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
プレドニゾロン プレドニゾロン / プレドニン® 副腎皮質ホルモン。幅広い抗炎症・免疫抑制作用 NSAIDs・コルヒチン両禁忌時のみ。短期使用のみ 感染症易感染、血糖上昇、不眠、胃潰瘍 活動性感染症患者禁忌。糖尿病患者は血糖管理強化

6. 補助的治療薬

薬効群 代表薬 機序 適応の位置付け 主な副作用 禁忌・注意
ウリカーゼ(ラスブリカーゼ) ウリカーゼ / オザディス® 尿酸を尿酸塩からアラントインに酵素分解。降尿酸速度が従来薬より極めて高速 腫瘍崩壊症候群(TLS)や再発性痛風発作で血清尿酸が著しく高い急性期。通常外来では使用しない アナフィラキシス、G6PD欠損患者でメトヘモグロビン血症リスク 腎機能低下では短時間投与。G6PD欠損スクリーニング必須
プロトンポンプ阻害薬(PPI) オメプラゾール / オメプラゾール錠、ランソプラゾール / タケプロン® 胃酸分泌抑制 NSAIDsと併用し、消化器潰瘍予防 長期使用で低Mg血症、B12/Ca吸収低下 同時使用。NSAIDs単独投与より胃潰瘍リスク低い

選択のポイント:患者背景別

高齢患者(70歳以上)

  • アロプリノールを低用量(50mg/日)から開始し、腎機能に応じて漸増
  • NSAIDs使用時はPPI併用必須
  • コルヒチンは下痢誘発に伴う脱水リスクが高いため、可能な限り避ける
  • ステロイド短期投与は比較的安全だが、感染症リスク・血糖管理に注意

腎機能低下(eGFR 30〜60 mL/min/1.73m²)

  • アロプリノール用量50%削減が基本(eGFR<30ではさらに慎重)
  • フェブキソスタットは腎排泄依存度が低く相対的に有利
  • コルヒチンは蓄積リスク。可能ならNSAIDs/ステロイドで対応
  • ベンズブロマロンは避ける(尿酸結晶化リスク)
  • 血清尿酸値目標を8.0mg/dLに緩和する場合もある

CKD G5(透析患者)

  • アロプリノール投与は原則禁止(蓄積)
  • 非透析日のフェブキソスタット投与か、ウリカーゼ検討
  • 痛風発作時はステロイド短期投与が最安全
  • 透析液へのリン酸ナトリウム添加で尿酸低下療法の効果が減弱することを念頭に

胃潰瘍・消化管出血既往者

  • NSAIDs は原則禁止、またはPPI二重投与(オメプラゾール20mg×2)が前提
  • コルヒチン低用量(発作時のみ)またはステロイド短期投与を選択
  • アロプリノール/フェブキソスタットは胃腸リスクが低いため、長期寛解期は有利

心不全患者

  • NSAIDs 厳禁(ナトリウム貯留、心機能悪化)
  • コルヒチン低用量またはステロイド短期投与
  • アロプリノール/フェブキソスタットは心不全悪化リスクなく使用可(ただしフェブキソスタットは心血管イベント報告あり)

妊娠・授乳患者

  • 痛風発症自体が妊娠中に極めて稀(女性ホルモンが尿酸排泄促進)
  • 妊娠中の尿酸低下療法は催奇性リスク回避のため延期が原則
  • 発作時はステロイド短期投与(プレドニゾロン ≤20mg/日×数日)が相対的に安全
  • NSAIDs、コルヒチン、アロプリノールは奇形リスクまたは不詳なため避ける

アロプリノール不耐(皮疹、DRESS症候群)

  • フェブキソスタットへ切替。別系統のため交差反応は稀
  • HLA-B*5801陽性者(アジア系、特に台湾・タイ系)での重症発疹リスク予測に有用
  • フェブキソスタット不耐の場合、ベンズブロマロン+尿酸排泄促進療法を検討

併用療法・順序

単剤失効時の追加・切替戦略

シナリオ1:アロプリノール 300mg/日でも目標値未達(血清尿酸値 > 6.0mg/dL)

  1. アロプリノールを最大用量(300〜400mg/日)まで増量
  2. 目標未達時はベンズブロマロン 25mg/日をアロプリノール併用で追加
  3. さらに未達時は、アロプリノールをフェブキソスタット 40mg/日に切替、またはフェブキソスタットを併用

シナリオ2:アロプリノール不耐(皮疹)

  1. 即座にフェブキソスタット 20mg/日から開始(交差反応は稀)
  2. 2週ごとに血清尿酸値測定、40mg/日まで漸増
  3. フェブキソスタット不耐ならベンズブロマロン単独(ただし尿路結石リスク高い)

シナリオ3:反復痛風発作(6ヶ月に2回以上)

  • 尿酸低下療法を開始直後は発作抑制療法を併用
    • コルヒチン 0.5mg×1日1〜2回、または
    • インドメタシン 25mg×1日2〜3回
    • 期間:尿酸低下療法開始から3ヶ月
  • これにより発作誘発を80%以上軽減

シナリオ4:急性痛風発作中に初回尿酸低下療法が必要な場合

  1. 発作時NSAIDs/ステロイドで急性炎症を鎮静化(3〜5日)
  2. 並行してアロプリノール 50mg/日を低用量で開始
  3. 発作軽快後、2週間経過してから漸増

非薬物療法

食生活指導

  • 高プリン食の制限:内臓類、濃厚なブイヨン、干物、アンチョビを最小化
  • 果糖摂取制限:清涼飲料水(特にコーラ等の果糖コーンシロップ)の中止
  • アルコール摂取制限:特にビール(グリセロール含有)は発作誘発リスク大。1日20g以下(標準缶ビール約1本分)に制限
  • 適正体重維持:1年で3kg以上の急速な体重減少も発作誘発。徐々に減量(月0.5kg程度)

水分摂取・尿量管理

  • 毎日2L以上の水分摂取:尿中尿酸濃度を下げ、結石形成リスクを軽減
  • 特にベンズブロマロン使用時は最低2.5L/日の水分摂取が必須
  • 尿pH 6.0以上に保つ:アルカリ化食(野菜・果実)の摂取が補助的に有効

運動

  • 中等強度の有酸素運動(週3日、各30分):肥満改善、尿酸値低下に有効
  • 激しい無酸素運動(短距離走、筋トレ)は一時的に尿酸値上昇させるため回避
  • 関節発作時は患部の安静が優先

血圧・血糖・脂質管理

  • 高血圧患者でのループ利尿薬・チアジド利尿薬は尿酸再吸収を増加させるため、アロプリノール/ベンズブロマロンを同時投与するか、より安全な降圧薬(ACE阻害薬、ARB)への変更を検討
  • 糖尿病患者は血糖コントロール不良時に尿酸値が上昇するため、HbA1c目標達成が重要

手術の位置付け

  • 通常の尿酸低下療法では手術適応はない
  • 慢性痛風結節(tophi)が関節機能や美容上問題となった場合、外科的切除可を検討。ただし術後も再発リスクがあるため、薬物療法の継続が必須

参考文献

日本のガイドライン

  1. 痛風・核酸代謝異常に関する調査研究班ガイドライン(最終版 2012)
    — 第一選択薬、初期用量、目標血清尿酸値、患者教育の標準基準を提示

  2. 日本痛風・核酸代謝学会編『痛風と高尿酸血症の治療ガイドライン』第3版(2019)
    — 急性発作時の段階的アプローチ、ベンズブロマロンの適応判定

  3. 日本腎臓学会『CKD診療ガイド 2023』
    — 腎機能別のアロプリノール用量調整、透析患者での尿酸管理

医薬品情報


免責事項

本記事は薬学的知識に基づいた情報提供であり、医学的診断・治療判断の代替ではありません。痛風の診断確定、治療方針決定、薬物選択は必ず医師の診察・指示のもとで行ってください。薬物療法の開始・変更・中止、用量調整は医師と相談の上で進めてください。本記事の記載内容により生じた健康被害について、著者および発行元は一切の責任を負いません。個別患者での治療判断には、最新の学会ガイドライン、診療報酬制度、添付文書情報を必ず参照してください。


監修:薬剤師(博士(薬学))

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