【緊張型頭痛】の薬一覧——薬剤師が種類・機序・使い分けを解説

概要

緊張型頭痛は最も一般的な一次性頭痛で、頭頚部の筋肉の持続的な緊張に伴う圧迫感・重感を特徴とします。発症メカニズムは筋肉の血流低下と筋肉内代謝物の蓄積、中枢神経の痛み調節異常と考えられています。治療は急性期と予防期で異なり、急性期はNSAIDsまたはアセトアミノフェンが第一選択です。反復性・慢性型では筋弛緩薬の併用やアミトリプチリンなどの予防薬が有効です。ストレス軽減・姿勢改善などの生活指導が基本となり、薬物療法は補助的役割を担います。


治療の基本方針

治療戦略の全体像

緊張型頭痛の薬物治療は急性期治療予防療法の2層構造で成り立ちます。

急性期治療(頭痛発作時)

頻度・重症度 第一選択 第二選択 注記
月1~3回程度 NSAIDs(イブプロフェン400~600mg) または アセトアミノフェン1000mg 鎮痛補助薬(アリルイソプロピルアセトカルバミド配合薬) 市販OTC利用可
週1回以上 NSAIDs or アセトアミノフェン+生活指導評価 筋弛緩薬(クロルフェネシン3-10mg 医師の処方が必要

予防療法(月4日以上の頭痛)

  • 第一選択: アミトリプチリン10~75mg/日(三環系抗うつ薬、非適応外)
  • 第二選択:
    • ベンラファキシン(SNRI):75mg/日以上
    • 筋弛緩薬の定期服用
    • ボツリヌストキシン(重症慢性型)

重症度別アプローチ

軽度~中等度(月1~10日): NSAIDs/アセトアミノフェン+生活指導が中心。医薬品を使用しない期間を意識的に作ることが重要(薬剤使用過多頭痛(MOH)予防)。

重度・慢性型(月10日以上): 予防薬(アミトリプチリン)の開始を検討。認知行動療法やストレス管理を並行し、急性期薬の頻度を段階的に減らす戦略が必須です。


薬効群別一覧(8群)

1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

項目 内容
代表薬 イブプロフェン(市販: ブルフェン®他)
ナプロキセンナトリウム(市販: アレビアチン®他)
ロキソプロフェンナトリウム(市販: ロキソニンS 🛒®)
機序 COX阻害による炎症性プロスタグランジン産生抑制。緊張型頭痛は炎症が主体でないため、作用は限定的だが、実臨床で有効
適応の位置付け 急性期治療の第一選択。特に頭痛と頸肩部痛を併発する場合
主な副作用 消化器症状(胃痛・下痢)、腎機能障害、アレルギー反応
禁忌・注意 活動性胃潰瘍、重度の腎機能障害、喘息既往、妊娠第3三半期以降
用量(成人) イブプロフェン: 1回400~600mg、1日2400mg以下
ロキソプロフェン: 1回60mg、1日240mg以下

選択のコツ

  • ロキソプロフェン: 作用発現が速い(30分以内)ため、頓用向き
  • ナプロキセン: 作用時間が長い(8~12時間)ため、反復性頭痛に有利
  • イブプロフェン: 入手性が最高。OTC市販品も豊富

2. アセトアミノフェン

項目 内容
代表薬 アセトアミノフェン(一般名) / 市販: タイレノールA 🛒®、アンパシア®他
機序 COX-3(視床)阻害とセロトニン神経を介した下行性疼痛抑制。末梢炎症作用は弱い
適応の位置付け NSAIDs不耐性患者の第一選択。消化管リスク高い高齢者に推奨
主な副作用 肝毒性(過量摂取時)、まれにStevens-Johnson症候群
禁忌・注意 肝機能障害、アルコール常飲者、重度腎機能障害
用量(成人) 1回500~1000mg、1日3000mg以下(肝機能正常時);アルコール使用者は2000mg/日以下推奨

選択のコツ

  • 胃が弱い患者、腎機能軽度低下患者に優先
  • NSAIDsより効果が弱い傾向だが、忍容性が高い
  • 複合薬(アセトアミノフェン+カフェイン+アリルイソプロピルアセトカルバミド)でやや効果増強

3. アミトリプチリン(三環系抗うつ薬・予防薬)

項目 内容
代表薬 アミトリプチリン塩酸塩(成分名)/ トリプタノール®(先発医薬品)
機序 ノルアドレナリン・セロトニン再吸収阻害による下行性疼痛抑制系の賦活。抗ムスカリン作用あり
適応の位置付け 慢性緊張型頭痛(月10日以上)の予防薬・第一選択。抑うつ・不安合併時はさらに有利
主な副作用 口渇、眠気、便秘、体重増加、起立性低血圧、QT延長(高用量時)
禁忌・注意 緑内障、前立腺肥大、心伝導障害、最近のMI、妊娠中(奇形リスク)、高齢者は転倒リスク
用量(成人) 初期: 10~25mg夜間1回;維持: 50~75mg/日。高齢者は10~25mg/日から開始

選択のコツ

  • 開始は少量夜間投与(眠気を利用し不眠改善にも寄与)
  • 4~6週間で効果判定;即効性はない(予防薬)
  • 抑うつ症状や不眠を伴う患者では特に有効

4. 筋弛緩薬

項目 内容
代表薬 クロルフェネシン(市販・一般用医薬品)
ジクロフェナク+クロルゾキサゾン配合(医療用)
機序 脊髄レベルでの多シナプス反射抑制、または直接筋肉の収縮蛋白への作用。末梢筋の緊張を緩和
適応の位置付け 頸肩部筋緊張が顕著な場合の第二選択。単独では効果限定的;NSAIDs併用で相乗効果
主な副作用 眠気、めまい、肝機能障害(稀)、頭痛の悪化
禁忌・注意 肝機能障害、妊娠中、授乳中。高齢者では転倒・転落リスク
用量(成人) クロルフェネシン: 3~10mg、1日2~3回;医療用配合薬は製品により異なる

選択のコツ

  • OTC市販品は用量が低いため、医療用の方が効果的
  • 反復性より慢性型に向く
  • 夜間服用で朝の筋こわばりを改善

5. SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬)

項目 内容
代表薬 ベンラファキシン塩酸塩(エフェクサー®:国内未承認、一部処方可能)
実臨床ではアミトリプチリンが優先
機序 ノルアドレナリン+セロトニン再吸収阻害で下行性疼痛抑制を増強。アミトリプチリンより副作用が少ない
適応の位置付け アミトリプチリン不耐性(口渇・便秘など)の患者の代替第一選択
主な副作用 悪心、眠気、高血圧(用量依存)、性機能障害
禁忌・注意 未治療・不安定な高血圧、QT延長症候群、妊娠中
用量 初期: 37.5mg/日;維持: 75~225mg/日(分割)

選択のコツ

  • 抗ムスカリン副作用が少ないため高齢者に優位
  • 国内未承認の場合が多いため、可用性を医師に確認

6. カフェイン配合薬

項目 内容
代表薬 アセトアミノフェン+カフェイン+アリルイソプロピルアセトカルバミド配合
(市販: エキセドリン®他、国内では複合薬は限定的)
機序 カフェインによる脳血管収縮と中枢興奮性の増強;痛み感受性の低下。相乗効果
適応の位置付け 単剤では効果不十分な急性期治療の補助的併用薬。常用化リスクあり
主な副作用 不眠、心悸亢進、胃不快感、カフェイン依存
禁忌・注意 不眠症、心疾患、カフェイン過敏症、妊娠中(カフェイン胎児影響)
用量 カフェイン成分として1回50~100mg;1日200mg程度が上限

選択のコツ

  • 朝~昼間の頭痛に有効;夕方以降は不眠を招く
  • 週1回以下の頓用に限定(常用化回避)
  • NSAIDs/アセトアミノフェン単独で効果不十分な場合の追加

7. ボツリヌストキシン(重症慢性型)

項目 内容
代表薬 オナボツリヌストキシンA(ボトックス®ビスタ:偏頭痛適応)
緊張型頭痛への適応は各国で異なり、日本では保険外が多い
機序 アセチルコリン遊離抑制による神経筋遮断。末梢疼痛受容器の機械刺激感受性低下
適応の位置付け 重症慢性型(月15日以上)で他薬無効時の最後の手段。侵襲性あり
主な副作用 注射部位の筋脱力、頭痛悪化(初期)、まれに嚥下障害
禁忌・注意 妊娠中・授乳中、神経筋疾患、抗凝固療法中、感染症活動中
投与間隔 12週間おき。初回判定に3カ月要す

選択のコツ

  • 緊張型頭痛への使用は医学的consensus が弱く、保険適応外の施設が多い
  • 偏頭痛にはボトックス®ビスタとして保険適応あり
  • 医師の高度な判断と同意が必須

8. 心理社会的補助薬(抗不安薬)

項目 内容
代表薬 ジアゼパム(セルシン®)、ロラゼパム(アチバン®)
※ベンゾジアゼピン系;習慣性リスクあり
機序 GABA受容体作動による中枢神経抑制。ストレス・不安に伴う筋緊張を緩和
適応の位置付け ストレス関連の筋緊張が強い場合の補助薬。単独治療ではなく短期使用のみ
主な副作用 眠気、ふらつき、認知機能低下、依存形成
禁忌・注意 睡眠時無呼吸症候群、肝機能障害、妊娠中、高齢者、アルコール併用禁止
用量 ジアゼパム: 2~5mg/回、1日5~10mg以下;2~4週間の短期使用に限定

選択のコツ

  • 常用化回避が絶対条件:2~4週間以上の継続は依存形成リスク
  • 認知行動療法・マインドフルネスなどの非薬物療法との並行が必須
  • 高齢者・肝機能低下患者は第一選択ではない

患者背景別の使い分け

高齢者(75歳以上)

状況 推奨薬 理由・注意
急性期(軽度) アセトアミノフェン500~750mg NSAIDs避ける;腎機能・消化管リスク
予防療法 アミトリプチリン10~25mg夜間 用量は若年者の1/2以下から開始。転倒リスク監視
筋緊張強い クロルフェネシン少量 眠気・転倒リスクあり;日中避ける
併用禁止 ベンゾジアゼピン系 認知機能低下・転倒・骨折リスク著増

腎機能低下患者(eGFR 30~60 mL/min/1.73m²)

状況 推奨薬 理由・注意
急性期 アセトアミノフェン500mg±、1日1500mg以下 NSAIDs禁止:腎悪化リスク
予防療法 アミトリプチリンから開始可だが血清濃度監視 代謝遅延;用量調整が必要な場合あり
ベンラファキシン 避ける。必須なら腎機能に応じ用量↓ 代謝産物蓄積
筋弛緩薬 最小限;可能なら避ける 代謝に腎機能を要する製品多し

肝機能低下患者(Child-Pugh分類 B/C)

状況 推奨薬 理由・注意
急性期 NSAIDsのみ使用可(1回1回量は通常) アセトアミノフェン禁止:肝毒性リスク極大
予防療法 アミトリプチリン・ベンラファキシン禁止 肝代謝依存度高く、血中濃度上昇→毒性
代替予防 相談の上、施設内での専門家判断 基本は非薬物療法へ

妊娠中

時期 推奨薬 禁止薬 理由
第1・2三半期 アセトアミノフェン(各国で最も安全) NSAIDs、アミトリプチリン 器官形成期;先天奇形リスク
非薬物療法優先 ベンゾジアゼピン、カフェイン
第3三半期 アセトアミノフェンのみ NSAIDs(特に後期)、全予防薬 NSAIDsは母体・胎児血管作用
予防療法 非薬物療法のみ 全医薬品 出生児への長期影響不明

消化性潰瘍既往

状況 推奨薬 理由・注意
急性期 アセトアミノフェン第一選択 NSAIDs絶対禁止:再発・穿孔リスク
予防療法 アミトリプチリン or ベンラファキシン 抗潰瘍薬併用下ならNSAIDsも検討可(医師判断)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)併用下でもNSAIDsは第二選択

併用療法・切替戦略

単剤失効時の追加・切替の流れ

シナリオ1:急性期(アセトアミノフェン無効)

ステップ1: アセトアミノフェン1000mg × 無効
   ↓
ステップ2: NSAIDs(ロキソプロフェン60mg)に変更
   ↓
ステップ3: NSAIDs + 筋弛緩薬(クロルフェネシン)の併用
   ↓
ステップ4: 医師に相談(他の二次性疾患の鑑別)

ポイント

  • 各ステップで1~2週間の観察期間を設ける
  • MOH(薬剤使用過多頭痛)の兆候がないか確認(月10日以上の使用)

シナリオ2:反復性(月1~4日 → 月4日以上への進行)

ステップ1: NSAIDs/アセトアミノフェン頓用 + 生活指導
   ↓(月4日以上の頭痛に進行)
   ↓
ステップ2: 予防薬開始検討
   ├─ アミトリプチリン 10mg夜間 から開始
   ├─ 4~6週間で効果判定
   ↓(無効 or 副作用強い場合)
   ↓
ステップ3: ベンラファキシン 37.5mg/日 に変更
   ↓
ステップ4: 用量漸増(段階的に50~75mg/日まで)

ポイント

  • 予防薬の効果判定には最低4週間必要(即効性なし)
  • 用量は「少量から始めて段階的に増やす」原則を守る

シナリオ3:慢性型(アミトリプチリン+生活指導でも月10日以上)

ステップ1: アミトリプチリン 75mg/日 に増量 or ベンラファキシンに変更
   ↓(3カ月観察後も頭痛日数≥10日/月)
   ↓
ステップ2: 認知行動療法(CBT)・マインドフルネス導入
   (医師/心理士と連携)
   ↓
ステップ3: ボツリヌストキシン注射の検討
   (施設に応じて保険外の可能性)
   ↓
ステップ4: 頭痛外来・神経内科への紹介
   (器質的疾患の再検査、高度な治療選択肢の検討)

重要な併用注意

  • アミトリプチリン + ベンラファキシンの併用は相互作用リスク高い(セロトニン症候群)→ 切替時は十分なウォッシュアウト期間を設ける
  • MAOIとの同時使用は禁止

薬剤使用過多頭痛(MOH)の回避戦略

定義:月10日以上、3カ月以上の鎮痛薬使用に伴う二次性頭痛

医薬品 MOH形成リスク
NSAIDs 月15日以上で形成リスク
アセトアミノフェン 月15日以上で形成リスク
トリプタン 月10日以上で形成リスク(偏頭痛)
カフェイン 月10日以上で形成リスク
アミトリプチリン等予防薬 MOH形成しない

回避のコツ

  1. 月に使用する日数を月10日以下に制限する
  2. 予防薬(アミトリプチリン)の導入で急性期薬の頻度を低減
  3. 患者に「使用日誌」の記録を指導し、使用頻度を可視化

非薬物療法

重要性

緊張型頭

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