ドラッグストアの鎮痛薬コーナーに並ぶ「 ロキソニンS 🛒」「バファリンA」「 イブA錠 🛒」。パッケージを見比べても違いがわかりにくく、結局「一番よく聞く名前」「CMで見たもの」で選んでしまいがちです。しかし、これらは主成分そのものが異なる別の薬であり、効き始めの速さ・副作用の出やすさ・飲んではいけない人もまったく違います。
本記事では、博士(薬学)の薬剤師の視点で、この3種に加えてアセトアミノフェン製剤も含めた比較を整理します。薬学的な作用機序から薬物動態・相互作用・副作用まで、「なぜそう選ぶのか」の根拠とともに解説します。
TL;DR(薬剤師の白衣ノート)
薬剤師の白衣ノート
- ロキソニンS:主成分はロキソプロフェンナトリウム。プロドラッグ型のNSAIDsで、効き目が比較的速く強い。胃腸への負担はある。
- バファリンA:主成分はアスピリン(アセチルサリチル酸)+制酸成分。NSAIDsの一種だが、15歳未満には使わない(小児用バファリンは別成分)。
- イブA錠:主成分はイブプロフェン。生理痛・頭痛で選ばれやすいNSAIDs。
- タイレノールA 🛒等のアセトアミノフェン製剤:NSAIDsではなく、胃に比較的やさしい。妊娠中・小児・高齢者で選択肢になりやすい。
「どれが一番強いか」ではなく「自分の症状・体質・併用薬」で選ぶのが正解です。
主成分マッピング:4成分の立ち位置
「ロキソニン」「バファリン」「イブ」は商品名であり、薬学的にはまず成分名で理解するのが近道です。
| 商品名(例) | 主成分(一般名) | 分類 | 国際的な代表名 |
|---|---|---|---|
| ロキソニンS | ロキソプロフェンナトリウム | NSAIDs(プロドラッグ) | Loxoprofen |
| バファリンA | アスピリン(アセチルサリチル酸) | NSAIDs(サリチル酸系) | Aspirin |
| イブA錠 | イブプロフェン | NSAIDs(プロピオン酸系) | Ibuprofen |
| タイレノールA等 | アセトアミノフェン | 解熱鎮痛薬(非NSAIDs) | Acetaminophen / Paracetamol |
注意:「バファリン」シリーズは派生品が多く、バファリンプレミアムはイブプロフェン+アセトアミノフェン配合、小児用バファリンCIIはアセトアミノフェン主体など、同じ「バファリン」でも中身が違います。箱裏の成分表示を必ず確認してください。
なぜ商品名だけで覚えると危険なのか
日本のOTC市場では、同一ブランド名を冠した製品が成分を変えてラインナップされているケースが非常に多くあります。薬剤師がカウンセリングで最初に確認するのは「どのバファリンか」「どのロキソニンか」という点です。同じ「バファリン」でも主成分がアスピリンのものとアセトアミノフェンのものでは、禁忌となる患者層や相互作用のリスクがまったく異なります。
たとえば抗凝固薬(ワルファリン等)を服用中の方がアスピリン含有製品を選んでしまうと、出血リスクが大幅に高まります。一方でアセトアミノフェン製品であれば同じ場面でも比較的リスクが低く、担当医の確認のもとで使用できるケースがあります。このように、成分名を知ることが安全な薬の選択の出発点です。
4成分の作用機序:なぜ痛みが和らぐのか
鎮痛薬の作用を理解するうえで欠かせないのが**プロスタグランジン(PG)**の概念です。
NSAIDs共通の基本メカニズム(COX阻害)
炎症・発熱・痛みのシグナルを伝達する物質の中心が**プロスタグランジン(PG)**です。PGはアラキドン酸カスケードにおいて、**シクロオキシゲナーゼ(COX)**という酵素によって産生されます。NSAIDsはこのCOXを阻害することでPG産生を抑え、炎症・痛み・発熱を軽減します。
COXには主に2種類のアイソザイムがあります。
| アイソザイム | 主な役割 | 阻害されると |
|---|---|---|
| COX-1 | 胃粘膜保護・血小板凝集・腎血流調節など生理的役割 | 胃粘膜障害・出血傾向・腎機能低下 |
| COX-2 | 炎症時に誘導される。痛み・発熱に関与 | 鎮痛・解熱・抗炎症効果 |
市販のNSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・アスピリン)はCOX-1とCOX-2の両方を阻害するため、炎症を抑える一方で胃腸障害・腎障害などの副作用も生じやすいという二面性を持ちます。
アスピリンが特別な理由:不可逆的COX阻害
アスピリンは他のNSAIDsと異なり、COX酵素を不可逆的に(共有結合で)アセチル化して阻害します。これは薬が体から消えた後もCOX機能が回復しないことを意味します。血小板はCOX-1に依存して血栓形成物質(トロンボキサンA2)を産生しますが、血小板は核を持たず新たなCOX-1を合成できないため、アスピリンを飲んだ血小板は寿命(約10日)が尽きるまで血小板凝集が低下したままです。これが「アスピリンは抗血小板作用が持続的に強い」理由です。手術前の服薬中止期間が長く設定される背景もここにあります。
ロキソプロフェンのプロドラッグ設計
ロキソプロフェンは経口投与後、消化管でほぼ不活性な状態で吸収され、肝臓で代謝を受けてトランス-OH体(活性体)に変換されてから薬効を発揮します。このプロドラッグ設計の狙いは、消化管内でのCOX阻害による直接的な胃粘膜傷害を軽減することです。しかし重要な点として、全身循環に入った後のCOX阻害作用(PG産生抑制)は他のNSAIDsと同様に生じるため、腎機能への影響・喘息誘発(NSAIDs過敏)・胎児への影響などの全身性副作用リスクは消えません。「プロドラッグだから安全」という誤解には注意が必要です。
アセトアミノフェンのメカニズム:現在も研究途上
アセトアミノフェンの正確な鎮痛・解熱メカニズムは完全には解明されていません。末梢のCOX阻害作用は弱く、中枢神経系(脊髄・脳)での作用が主体と考えられています。エンドカンナビノイド系への関与やセロトニン系を介した下行性疼痛抑制経路への関与も議論されています。このメカニズムの違いが「NSAIDsでは胃が荒れる方にも使いやすい」という特性につながっています。一方で抗炎症作用は弱いため、炎症が主体の痛み(関節炎の急性増悪など)には他剤に比べて効果が限定的になる場合があります。
薬物動態(ADME)の比較:吸収・分布・代謝・排泄
臨床的な選択を左右する薬物動態(ADME:吸収・分布・代謝・排泄)の概要を整理します。数値はあくまで参考の目安であり、食事・年齢・体質・併用薬により変動します。
| パラメータ | ロキソプロフェン | アスピリン | イブプロフェン | アセトアミノフェン |
|---|---|---|---|---|
| 最高血中濃度到達時間(Tmax)の目安 | 約30〜60分(活性体) | 約30〜60分 | 約1〜2時間 | 約30〜60分 |
| 血漿タンパク結合率 | 高い(約97%) | 高い(用量依存性) | 高い(約99%) | 低〜中程度(約10〜25%) |
| 主な代謝経路 | 肝臓(CYP関与は限定的) | 肝臓(エステラーゼ、CYP) | 肝臓(CYP2C9等) | 肝臓(グルクロン酸抱合・硫酸抱合、一部CYP2E1) |
| 半減期の目安 | 約1〜2時間(活性体) | 約15〜20分(アスピリン自体) | 約2時間 | 約2〜3時間 |
| 主な排泄経路 | 腎臓(尿中) | 腎臓(尿中) | 腎臓(尿中) | 腎臓(尿中) |
食事の影響
イブプロフェンやロキソプロフェンは空腹時に服用すると胃粘膜への刺激が強くなる可能性があります。製品添付文書には「食後に服用」と記載されているものが多い理由はここにあります。アセトアミノフェンは食事の影響を比較的受けにくいとされますが、これも製品により異なるため、添付文書の指示に従うのが基本です。
腎機能が低下している場合の注意点
NSAIDsはCOX-1阻害を通じてプロスタグランジン(PGE2・PGI2)産生を抑制します。これらのPGは腎臓において輸入細動脈を拡張して糸球体濾過率(GFR)を維持する働きを担っています。腎機能が低下している患者や脱水状態の方では、NSAIDsによるPG産生抑制が腎血流の著しい低下につながり、急性腎障害(AKI)を誘発するリスクが高まります。高齢者・糖尿病患者・慢性腎臓病(CKD)の方は、自己判断でのNSAIDs使用には特に慎重であるべきです。
効き始めと作用時間(薬剤師の白衣ノート)
薬剤師の白衣ノート:プロドラッグの意味 ロキソプロフェンは「プロドラッグ」、つまり胃の中ではほぼ不活性で、吸収後に肝臓で活性体に変換されてから効きます。これは胃粘膜への直接的な刺激を減らす設計ですが、全身性のNSAIDs副作用(腎・喘息誘発など)が消えるわけではないことに注意が必要です。
イブプロフェン・アスピリンは服用後すぐから消化管で作用しうる「直接型」NSAIDsです。一方アセトアミノフェンは中枢性の作用が中心と考えられており、抗炎症作用は弱いとされます。
ざっくりした使い分けの目安は以下の通りです(個人差があります)。
| 成分 | 効き始めの体感 | 抗炎症作用 | 胃への負担 |
|---|---|---|---|
| ロキソプロフェン | 比較的速い | あり | 中程度 |
| アスピリン | 中程度 | あり | やや強い |
| イブプロフェン | 中程度 | あり | 中程度 |
| アセトアミノフェン | 中程度 | 弱い | 比較的少ない |
「効き始めが速い」は何を意味するか
体感としての「効き始め」の速さは、主に血中の活性成分濃度が有効域に達するまでの時間に依存します。ロキソプロフェンは活性体への変換を経るにもかかわらず比較的速い体感が得られやすいとされていますが、これは個人の代謝速度・食事の影響・痛みの種類によって大きく変わります。「Aのほうが絶対速い」という断言は難しく、ある人に速く効いた薬が別の人には効きにくいこともあるという理解が重要です。
症状別の選び方
頭痛(緊張型・片頭痛の軽症)
炎症性の要素が強い片頭痛では、NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン)が選ばれやすい傾向があります。片頭痛の病態にはプロスタグランジンが関与しており、COX阻害によるPG産生抑制が痛みの緩和に寄与します。胃が弱い方・妊娠中・アスピリン喘息の既往がある方はアセトアミノフェンが第一候補です。
**注意点として、鎮痛薬を週に2〜3回以上、または月に10〜15日以上服用し続けると「薬剤の使用過多による頭痛(MOH: Medication Overuse Headache)」を引き起こすリスクがあります。**頭痛が慢性化・頻発している場合は、OTCで対処し続けず神経内科や頭痛外来を受診することを強く推奨します。
生理痛
生理痛はプロスタグランジンが強く関与するため、NSAIDs全般が合理的です。イブプロフェン製剤が「生理痛向け」として広く販売されています。痛み始めの早いタイミングで服用したほうが効果を実感しやすいとされます。これはPG産生が本格化する前に抑制を始めることが理由です。月経開始の1〜2日前から飲み始める「先制鎮痛」の考え方も研究されていますが、OTCでの自己判断による長期服用は推奨されません。生理痛が日常生活を著しく妨げるほど強い場合は、子宮内膜症などの基礎疾患が隠れている可能性もあり、婦人科の受診が重要です。
歯痛・抜歯後
炎症を伴うため抗炎症作用のあるNSAIDsが候補です。ただし歯科処置後は出血リスクの観点から、自己判断でアスピリンを足さず、歯科医の指示に従ってください。特にアスピリンは抗血小板作用が持続するため、抜歯後の使用は担当歯科医への相談が必要です。
発熱(風邪・インフルエンザ疑い)
インフルエンザが疑われる場合や15歳未満では、アセトアミノフェンが無難な選択とされています。アスピリン系薬剤と小児のウイルス性疾患の組み合わせに対しては**ライ症候群(Reye syndrome)**との関連が報告されており、国際的にも小児への使用を避ける勧告が出ています。ロキソプロフェン・イブプロフェン等も、15歳未満への投与はOTC製品では原則として禁止されています。
成人でもインフルエンザ罹患中のNSAIDs使用は炎症性サイトカインの産生に影響を与える可能性があるとして、一部のガイドラインでは注意喚起がなされています。発熱時のセルフメディケーションは体温管理と水分補給を基本とし、高熱が続く・呼吸困難など重症感がある場合は速やかに医療機関を受診してください。
関節痛・筋肉痛
抗炎症作用のあるNSAIDsが選ばれます。筋肉痛(DOMS: 遅発性筋肉痛)ではNSAIDsが短期的な痛みを和らげる効果が知られていますが、一部の研究では、NSAIDsが筋肉の修復・適応を阻害する可能性を示唆するものもあり、スポーツ医学の分野では議論が続いています。長期的に毎日使うような場面では、自己判断を続けず医療機関の受診を検討してください。
副作用プロファイル比較
| 副作用領域 | ロキソプロフェン | アスピリン | イブプロフェン | アセトアミノフェン |
|---|---|---|---|---|
| 胃腸障害 | あり | あり(比較的多い) | あり | 比較的少ない |
| 腎機能への影響 | あり | あり | あり | 比較的少ない |
| アスピリン喘息(NSAIDs過敏) | 起こしうる | 起こしうる | 起こしうる | 比較的安全とされるが既往者は要相談 |
| 出血傾向(抗血小板) | 一過性 | 持続的に強い | 一過性 | ほぼなし |
| 肝臓への影響 | まれ | まれ | まれ | 過量で重篤(用量厳守) |
| 心血管リスク | 長期使用で上昇の懸念 | 低用量では抑制方向 | 長期使用で上昇の懸念 | 影響は比較的小さいとされる |
薬剤師の白衣ノート:アセトアミノフェンの落とし穴 「胃にやさしい」「子どもにも使える」というイメージから油断されがちですが、過量服用では重い肝障害を起こします。総合感冒薬と鎮痛薬を併用すると、知らずにアセトアミノフェンを重複摂取してしまうことがあります。箱を2つ並べて成分名を見比べる習慣をつけてください。
アセトアミノフェン過量服用の機序
通常用量のアセトアミノフェンは主にグルクロン酸抱合・硫酸抱合で無毒化されて排泄されます。しかし過量摂取時にはこれらの経路が飽和し、CYP2E1を介して生成される**毒性代謝物NAPQI(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)**が蓄積します。NAPQIは肝細胞内のグルタチオンを枯渇させ、肝細胞壊死を引き起こします。飲酒習慣がある方はCYP2E1が誘導されてNAPQI産生が増加するため、常用量でも肝障害リスクが上昇することがあります。
NSAIDs過敏(アスピリン喘息)について
アスピリン喘息(正式には「NSAIDs過敏喘息」)は、COX-1阻害によってアラキドン酸代謝が5-リポキシゲナーゼ経路に偏り、ロイコトリエンが過剰産生されることで気管支収縮・喘息発作を引き起こす病態です。有病率は喘息患者の10〜20%程度とされ、アスピリンだけでなくイブプロフェン・ロキソプロフェンなどCOX-1阻害作用を持つNSAIDs全般で起こりえます。アセトアミノフェンはCOX阻害が弱いため比較的安全とされていますが、重症のNSAIDs過敏の既往がある方は医師への相談が先決です。
飲んではいけない人・併用に注意したい場面
- 15歳未満:アスピリン・ロキソプロフェン・イブプロフェンを含むOTCは避ける(ライ症候群等の懸念から、小児用と明示された製品以外は使わない)。
- 妊娠後期(妊娠28週以降が目安):NSAIDs全般は胎児の動脈管早期閉鎖・新生児遷延性肺高血圧症との関連が指摘されており、避ける必要があります。妊娠初期・中期も安易な使用は避け、産科医に相談してください。
- 消化性潰瘍の既往・治療中:NSAIDsは原則避ける。
- 喘息(特にアスピリン喘息):NSAIDs全般で発作を誘発する可能性。
- 抗凝固薬・抗血小板薬を服用中:出血リスクが上がるため自己判断で追加しない。
- 高齢者・腎機能が低下している方:NSAIDsは腎血流を下げるため慎重に。
- アルコールと一緒に:胃腸障害(NSAIDs)・肝障害(アセトアミノフェン)のリスクが上がるため避ける。
該当する方は、購入前に必ず薬剤師・登録販売者に相談してください。持病や常用薬がある場合、海外渡航中の場合は、医師への相談も検討しましょう。
主な相互作用一覧
| 相互作用する薬・物質 | 影響する成分 | リスク |
|---|---|---|
| ワルファリン(抗凝固薬) | アスピリン・NSAIDs全般(アセトアミノフェンも高用量では注意) | 出血リスク増大 |
| メトトレキサート | NSAIDs全般 | メトトレキサートの血中濃度上昇・毒性増強 |
| 利尿薬・ACE阻害薬 | NSAIDs全般 | 降圧効果の減弱・腎機能低下 |
| 他のNSAIDs・アスピリン低用量 | NSAIDsの重複使用 | 胃腸障害・腎障害リスクの相加的増大 |
| アルコール | アセトアミノフェン・NSAIDs全般 | 肝障害・胃腸障害リスク増大 |
| 総合感冒薬(アセトアミノフェン含有) | アセトアミノフェン | 重複投与による過量服用リスク |
実践的な購入前チェックリスト
ドラッグストアで迷ったとき、次のステップで選択を絞ることができます。
STEP 1:「自分が該当する禁忌・注意事項」を確認する
- 15歳未満ではないか
- 妊娠中・授乳中ではないか
- 喘息(特にNSAIDsで悪化したことがある)はないか
- 胃潰瘍・消化性潰瘍の既往はないか
- 腎臓・肝臓の病気はないか
- 現在飲んでいる薬(処方薬・OTCを問わず)はないか
→ 1つでも該当する場合、まず薬剤師に相談してから購入する。
STEP 2:「症状の種類」を整理する
- 炎症・腫れを伴う痛み(歯痛・生理痛・関節炎など)→ NSAIDsが候補
- 発熱を伴う痛み(子ども・インフルエンザ疑い)→ アセトアミノフェンが候補
- 胃が弱い・空腹時に飲む必要がある → アセトアミノフェンが候補
STEP 3:「成分の重複」をチェックする
- 手元にある総合感冒薬・他の鎮痛薬・サプリの成分を確認する
- アセトアミノフェンの重複摂取に特に注意する
STEP 4:用法・用量を守り、必要最低限の期間にとどめる
- 鎮痛目的のOTC使用は、添付文書に「症状がある間のみ、最大5日間程度」などの制限が設けられているものが多い
- 5日以上使用しても改善しない場合は医療機関を受診する
海外OTCとの違い:旅行者向けメモ
海外で日本のロキソニン・バファリン・イブが見つからなくても、成分名で代替を探せます。
| 国・地域 | 主流のOTC鎮痛成分 | 一般名での尋ね方 |
|---|---|---|
| 米国 | イブプロフェン / ナプロキセン / アセトアミノフェン | Do you have ibuprofen?(ドゥ ユー ハヴ イブプロフェン?) |
| 英国・欧州 | パラセタモール(=アセトアミノフェン)/ イブプロフェン | I'd like paracetamol, please.(アイド ライク パラセタモール プリーズ) |
| 東南アジア | パラセタモール / イブプロフェン | Is this paracetamol?(イズ ディス パラセタモール?) |
注意点として、ロキソプロフェンは欧米のOTCでは一般的ではありません。海外で同じ感覚の薬を探すなら、イブプロフェン(NSAIDs系)かパラセタモール/アセトアミノフェン(非NSAIDs系)に置き換えて考えるのが現実的です。
また、米国のExcedrinはアセトアミノフェン+アスピリン+カフェイン配合のように、複合処方のOTCが多いため、成分の重複に注意してください。
海外でのOTC購入時の注意点
- 規格(mg)が日本製品と異なる場合がある:たとえばイブプロフェンのOTC規格は国によって異なります。購入時は規格を確認し、日本の添付文書に準じた用量の範囲内で使用することを目安にしてください。
- 海外のアセトアミノフェン製品は「Paracetamol」と表記される:米国式の「Acetaminophen」と同じ成分です。表記が違っても成分は同一です。
- 国によってはNSAIDsの一部が処方箋必要品:日本ではOTCのロキソプロフェンも、欧米では処方箋が必要な国があります。渡航前に現地の薬事規制を確認しましょう。
- 持参する場合の注意:海外への医薬品持ち込みは原則として国ごとの規制に従います。旅行に必要な常用薬は事前に外務省・行き先の大使館のウェブサイトで確認してください。
海外でのOTC利用・薬の持ち込みについてさらに詳しくは [[overseas-medicine-carry-on]] も参考にしてください。
アセトアミノフェン vs NSAIDs:どちらを先に試すか
「最初はアセトアミノフェン、効かなければNSAIDs」という戦略を推奨する立場と、「炎症が明確ならNSAIDs」という立場があり、ガイドラインによっても差があります。薬剤師の現場感覚では、以下のような考え方が参考になります。
アセトアミノフェンを先に試すのが向いているケース:
- 胃が弱い・空腹時の服用が多い
- 妊娠中・授乳中(産婦人科への相談が前提)
- 高齢者・腎機能に不安がある
- 他にNSAIDsを服用中・NSAIDsの副作用経験がある
- 発熱が主症状(特に小児・インフルエンザ疑い)
NSAIDsを先に考えるケース:
- 炎症・腫れが明確(生理痛・関節炎の急性期・歯痛など)
- アセトアミノフェンを以前試して効果が不十分だった
- 禁忌・注意事項に該当しない
どちらを選んでも、用法・用量を守り、漫然と長期服用しないことが最も重要です。
子ども・高齢者への特別な注意事項
小児(15歳未満)
OTC鎮痛薬において「小児用」と明示された製品(アセトアミノフェン主体のものなど)以外は、15歳未満には使用しないことが原則です。**ライ症候群(Reye syndrome)**は、ウイルス感染中(特にインフルエンザ・水痘)にアスピリンを投与した小児に発症することが報告されている稀ながら重篤な疾患(脳症・肝障害)です。日本を含む多くの国でアスピリン系薬剤の小児への使用は禁忌とされています。
小児の解熱・鎮痛にはアセトアミノフェンが第一選択とされていますが、体重あたりの用量設定が重要であり、市販の小児用製品は年齢・体重に応じた用量が設定されています。必ず年齢・体重を確認のうえ、添付文書の指示通りに使用してください。
高齢者
高齢者では以下の理由からNSAIDsの使用に注意が必要です。
- 腎機能の生理的低下:GFRが低下しており、NSAIDsによる腎血流低下の影響を受けやすい
- 胃粘膜防御能の低下:NSAIDsによる胃腸障害が起きやすく、かつ症状が出にくい(無症状の潰瘍・出血)
- 複数の持病・多剤服用(ポリファーマシー):相互作用リスクが高い
- 転倒リスク:鎮痛薬の種類とは直接関係しませんが、痛みのコントロールが不十分でも過剰でも転倒リスクに影響する
高齢者が鎮痛薬を選ぶ際は、薬剤師への相談を強く推奨します。
まとめ
「効き目の強さ」だけで鎮痛薬を選ぶと、自分に合わない成分を選んでしまうことがあります。成分名で理解し、症状・体質・併用薬で使い分けるのが、薬剤師が日常的にやっている選び方です。
以下のポイントを押さえておきましょう。
- 商品名ではなく成分名で理解する:同一ブランドでも製品によって成分が大きく異なる
- NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・アスピリン)は炎症に強いが副作用もある:COX阻害により胃腸障害・腎機能低下・喘息誘発リスク
- アスピリンは抗血小板作用が特に強く持続する:術前・抗凝固薬服用中は要注意
- アセトアミノフェンは胃にやさしいが過量で肝障害:重複摂取に特に注意
- 15歳未満・妊娠後期・消化性潰瘍・喘息・腎機能低下・多剤服用中は特別な配慮が必要
- 長期・頻回使用はしない:改善しない場合は医療機関へ
迷ったときは、必ずドラッグストアの薬剤師・登録販売者に相談してください。持病や常用薬がある場合、海外渡航中の場合は、医師への相談も検討しましょう。
OTC薬全般の正しい使い方については [[otc-medicine-basics]] も、海外での医療対応については [[overseas-medical-english-phrases]] も参考にしてください。
出典・参考文献
-
医薬品医療機器総合機構(PMDA):ロキソプロフェンナトリウム水和物 添付文書・審査報告書
https://www.pmda.go.jp/ -
厚生労働省:一般用医薬品の添付文書の記載要領について(薬食発)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/otc/index.html -
WHO Model List of Essential Medicines(23rd edition, 2023):鎮痛薬の国際的位置づけ
https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.02 -
U.S. Food and Drug Administration(FDA):Drug Safety Communication – FDA warns about rare but serious skin reactions with the pain reliever/fever reducer acetaminophen
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/acetaminophen-prescription-drug-products-require-boxed-warning-about-potential-severe-liver-injury -
U.S. FDA:NSAIDs – Drug Safety Communication(心血管・胃腸リスクに関する情報更新)
https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/nonsteroidal-anti-inflammatory-drugs-nsaids -
日本薬剤師会:OTC薬・セルフメディケーション税制に関する情報
https://www.nichiyaku.or.jp/activities/self-medication/ -
European Medicines Agency(EMA):Ibuprofen – Assessment report(NSAIDsの心血管リスク評価)
https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/ibuprofen-dexibuprofen
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療を代替するものではありません。
監修:薬剤師(博士(薬学))