相談窓口完全ガイド——電話・SNS・対面、誰でも今夜つながれる場所
眠れない夜、薬の包みを目の前にしている時、家族の様子が心配で頭が回らない時。「誰かに話したい、でも誰に?」と固まってしまう瞬間があります。この記事は、そんな夜に開いてもらうために書きました。電話が苦手な人にはチャットやLINE、声を出せない人には文字、対面が必要な人には地域の窓口——選び方を整理しています。
どの窓口も、相談者を責めません。「うまく話せない」「何から話せばいいかわからない」まま電話してかまいません。匿名で大丈夫です。
薬剤師(博士(薬学))の立場から本記事を執筆するにあたり、単なる窓口リストにとどまらず、なぜ相談窓口がOD(過量服薬)の予防に直結するか、薬を前にした時に身体に何が起きているか、相談した後の実際の流れを含めて解説します。一つの記事で「今夜の行動」と「その先の回復イメージ」が持てるよう構成しました。
まず知っておいてほしい3つのこと
- 匿名でかけられます。本名・住所・電話番号を言う必要はありません。
- 「死にたい」と言っても警察は来ません。本人の同意なしに通報されることは原則ありません(生命の危機が切迫し、住所を伝えた場合などは別途判断されます)。
- つながらない時は別の窓口へ。一つで諦めないでください。窓口によって混雑時間帯が違います。
なぜ「すぐつながること」がこれほど大切なのか
自殺念慮や自傷衝動には「衝動のピーク」と呼ばれる特性があります。強い衝動は、多くの場合30〜90分程度で強度が下がることが研究で示されています。このピークの間に「誰かと話す」「声を聞く」「文字でやりとりする」という行動を挟むことで、衝動の波を乗り越えやすくなります。これは感情的な問題を意志の力で解決するのではなく、神経生理学的なタイムラグを利用した安全戦略です。
また、薬剤師の視点からつけ加えると、手持ちの薬を「見えない場所に移す」「他の人に預ける」「鍵のかかる場所にしまう」という物理的な距離の確保(手段の制限)も、ピークをやり過ごすうえで実証的な効果があります。相談窓口のスタッフはこうした安全プランの相談にも乗ってくれます。
24時間対応の電話窓口
夜間も含めて受け付けている代表的な窓口です。
| 窓口名 | 電話番号 | 対応時間 | 通話料 |
|---|---|---|---|
| よりそいホットライン | 0120-279-338 | 24時間 | 無料 |
| いのちの電話(ナビダイヤル) | 0570-783-556 | 毎日10時〜22時、毎月10日は8時〜翌8時 | 通話料あり |
| いのちの電話(フリーダイヤル) | 0120-783-556 | 毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌8時 | 無料 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556 | 都道府県・政令市により異なる | 通話料あり |
よりそいホットライン
24時間つながる無料電話です。一般的な悩みのほか、ガイダンスで「外国語の相談」「セクシュアルマイノリティの相談」「DV・性暴力被害の相談」「自殺を考えるほどつらい方の相談」などに分岐できます。「何を話せばいいかわからない」状態でかけてもかまいません。
実際の利用イメージとして、最初のガイダンス音声は15〜30秒ほどで終わり、番号を押すか待っているとオペレーターにつながります。うまく分岐できなかった場合でも最初のオペレーターが話を聞いてくれます。混雑時は「ただいまお電話が混み合っています」というアナウンスが流れることがありますが、切らずに待つか、少し時間をおいてかけ直すことでつながりやすくなります。
いのちの電話
全国に拠点があり、地域ごとの番号もあります。フリーダイヤル(0120-783-556)は毎日16時〜21時、ナビダイヤル(0570-783-556)は毎日10時〜22時。混みやすい時間帯はありますが、何度かかけ直すことでつながりやすくなることがあります。
一般社団法人日本いのちの電話連盟には全国50を超える加盟センターがあり、それぞれ地域ごとに独自の電話番号と対応時間を持っています。自分の地域のセンターを調べると、より長い時間帯でつながれることがあります。
こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけると、発信地の都道府県・政令指定都市が運営する相談窓口につながります。地域の医療機関や精神保健福祉センターへの橋渡しを得意とする窓口で、対応時間は地域ごとに違います。「病院を紹介してほしい」「今の状態でどこに行けばいいかわからない」という相談に特に向いています。専門職(精神保健福祉士・保健師・看護師など)が対応している地域も多く、より具体的な地域資源の情報を得やすいのが特長です。
SNS・LINE・チャットで相談したい
声を出せない夜、文字のほうが落ち着く人、過呼吸で話せない人。文字での相談窓口がいくつもあります。厚生労働省「まもろうよこころ」のサイトに最新の一覧と受付時間が載っています。
代表的なものを挙げます(受付曜日・時間は変動するため、各団体の公式ページで最新情報を確認してください)。
| 団体名 | 主な手段 | 特徴 |
|---|---|---|
| 生きづらびっと | LINE・チャット | 自殺対策支援センターライフリンクが運営 |
| 東京メンタルヘルススクエア「こころのほっとチャット」 | LINE・X・チャット・メール | 全国から利用可 |
| 自殺対策支援センターライフリンク | チャット・電話 | 緊急支援につなぐ役割も |
| BONDプロジェクト | LINE・電話・メール | 10代20代の女性に特化 |
| あなたのいばしょ | チャット | 24時間、年齢・性別問わず |
「LINEで友だち追加するだけで相談できる」窓口が多く、最初のメッセージは「つらいです」「眠れません」だけでも受け止めてもらえます。
SNS相談の実際の流れと使い方のコツ
LINEやチャット相談は、電話と違って自分のペースで文章を送れるのが最大のメリットです。相手が返信している間に深呼吸したり、次に何を伝えたいか考えたりする余裕が生まれます。初回メッセージに迷ったら、以下のような書き出しで十分です。
- 「死にたいと思っています」
- 「薬をたくさん飲んでしまいそうで怖いです」
- 「何がつらいかうまく説明できないのですが、話を聞いてほしいです」
文字でのやりとりは記録が残るため、後から自分の状態を振り返ったり、医療機関で「こんな状態でした」と見せたりするのにも使えます。また、SNS相談のスタッフは電話の窓口にもつなげてくれることが多く、「最初はLINEで話し、必要なら電話に切り替えてもらう」という使い方も有効です。
返信が来るまでに時間がかかることもあります(混雑時は30〜60分程度)。その間に気持ちが高ぶった場合は、電話窓口に切り替えることをためらわないでください。
子ども・若者向けの窓口
| 窓口名 | 番号・手段 | 対象 |
|---|---|---|
| チャイルドライン | 0120-99-7777 | 18歳以下 |
| 子どもSOSの電話相談(24時間子供SOSダイヤル) | 0120-0-78310(なやみいおう) | 児童生徒・保護者 |
| BONDプロジェクト | LINE・電話 | 10代20代の女性 |
| Mex(ミークス) | Webチャット | 10代向け総合 |
チャイルドラインは月〜土の16時〜21時。学校・家庭・友人関係・自分のからだのこと、どんな話でもかまいません。「相談」という重い言葉でなく「話したいだけ」でも大丈夫、と案内されています。
若者のODリスクと薬学的背景
10代・20代の若者がODに使いやすい薬として、市販薬(OTC医薬品)が問題になっています。特に総合感冒薬・鎮咳薬・鎮痛薬は、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるため、アクセスが容易です。
薬学的に重要な点を簡潔に整理します。
| 成分カテゴリー | 代表的な成分名 | 過量時の主なリスク |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛成分 | アセトアミノフェン | 肝毒性(症状が遅れて出る) |
| 鎮咳成分(オピオイド系) | ジヒドロコデインリン酸塩 | 呼吸抑制・依存性 |
| 鎮静系抗ヒスタミン成分 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 意識障害・不整脈 |
| NSAIDs | イブプロフェン | 消化管出血・腎障害 |
特にアセトアミノフェンは「飲んだ直後は症状が軽い」ため危険です。肝臓での代謝過程で毒性代謝物(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン:NAPQI)が生成され、グルタチオンが枯渇すると肝細胞障害が進行します。症状が本格化するのは服用後24〜72時間以降であることが多く、「たいしたことなかった」と放置されるケースがあります。アセトアミノフェンの過量服薬が疑われる場合は、症状の有無にかかわらず医療機関を受診してください。
若者向けの相談窓口(Mexやチャイルドライン)は、こうした薬の問題を直接扱う専門窓口ではありませんが、「薬をたくさん飲んだ」「飲んでしまいそうで怖い」という相談を受け止め、適切な専門窓口や医療機関につなぐ役割を担っています。
性暴力・DVの相談
| 窓口名 | 番号 | 内容 |
|---|---|---|
| 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター | #8891(はやくワンストップ) | 全国共通短縮番号 |
| DV相談+(プラス) | 0120-279-889 | 24時間、電話・メール・チャット |
| 性犯罪被害相談電話(警察) | #8103(ハートさん) | 警察の専門相談 |
被害から時間が経っていても相談できます。「もう何年も前のこと」「自分にも非があった気がする」と感じていても、その感覚自体を一緒に整理する場所です。
トラウマとODリスクの関係——薬学的視点から
性暴力やDVを経験した方は、PTSDや解離症状を背景に、痛みや感覚を麻痺させる手段として薬物を使うパターンが見られることが臨床的に知られています。これは「依存の弱さ」や「意志の問題」ではなく、脳のストレス応答システム(視床下部-下垂体-副腎軸・HPA軸)が長期的に変容することによる神経生物学的な反応です。
相談窓口はこの背景を理解したうえで話を聞いてくれます。「薬を使ってしまった」「お酒で感覚を消そうとした」という話も、責めずに聞いてもらえます。
OD・薬・中毒の相談
過量服薬してしまった本人・家族・支援者からの相談を受ける専門機関があります。
| 窓口名 | 番号 | 対象・時間 |
|---|---|---|
| 中毒110番(大阪) | 072-727-2499 | 24時間 |
| 中毒110番(つくば) | 029-852-9999 | 9時〜21時 |
| たばこ専用電話 | 072-726-9922 | 24時間(自動音声) |
公益財団法人日本中毒情報センターが運営しています。医療従事者向けの有料窓口もありますが、上記は一般市民向けで無料(通話料は発生します)。「家族が薬を多めに飲んでしまった、どうすれば」という相談を受け付けます。
ただし意識がない・けいれん・呼びかけに反応しない場合は迷わず119です。中毒110番は「これから受診すべきか」「家でどう様子を見るか」の判断助けに使う窓口で、救急搬送の代わりではありません。
OD後に医療機関で行われること——家族・本人が知っておきたい薬学的知識
過量服薬で救急受診した場合、医療機関では服薬内容・量・時間の確認から始まります。家族の方は、見つかった薬のパッケージや薬袋を持参するか、薬の名前をメモして持っていくと診療がスムーズになります。
救急外来での主な対応(薬の種類・量・時間によって異なります):
| 処置の種類 | 目的 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 胃洗浄 | 未吸収薬の除去 | 服薬後おおむね1〜2時間以内が目安 |
| 活性炭投与 | 消化管での薬物吸着 | 多くの薬物(一部の金属・アルコールは無効) |
| アセチルシステイン投与 | アセトアミノフェン中毒の解毒 | アセトアミノフェン過量服薬 |
| 血液・尿検査 | 服薬成分の確認・臓器障害の評価 | 全例 |
| 点滴・モニタリング | 循環・呼吸管理 | 重症例・抗精神病薬・三環系抗うつ薬など |
三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)や抗不整脈薬は少量でも心毒性が出やすいため、これらを含む薬を飲んだ場合は迷わず119を呼んでください。一般の解熱鎮痛薬より「少量に見えても危険なカテゴリー」があることを覚えておいてください。
対面・地域でつながる窓口
電話やチャットの先には、地域の対面支援があります。継続的な伴走が必要な時、家族が動きたい時に役立ちます。
精神保健福祉センター
都道府県と政令指定都市に必ず設置されています。本人だけでなく家族からの相談も受け付け、無料です。アルコール・薬物・ギャンブル・ひきこもり・自殺念慮など、こころの健康に関わる幅広いテーマを扱い、必要に応じて医療機関や自助グループを紹介してくれます。
精神保健福祉センターは「受診前の相談場所」として特に重要です。「病院に行くべきかどうかわからない」「どの診療科に行けばいいか」「本人が受診を拒んでいる」など、受診の一歩手前で迷っている段階の相談に慣れたスタッフがいます。電話相談だけでなく、来所相談や必要に応じた訪問支援も行っています。
保健所
地域精神保健の最前線。訪問支援(アウトリーチ)や、「本人がまだ受診を拒んでいる」段階での家族相談に応じます。お住まいの市区町村の保健所を検索してみてください。
保健所の精神保健相談は、保健師・精神保健福祉士が担当します。「繰り返しODをしている家族をどう支えればいいか」「本人が薬をため込んでいるようだが介入できるか」といった、家族特有の悩みに対応できる地域資源として活用してください。
警察相談専用電話 #9110
「事件性はまだないけれど不安」「ストーカーかもしれない」「家族が暴れていて怖い」など、110番するほどではないけれど警察の助言が欲しい場面で使えます。緊急の危険があれば110番です。
救急 119
意識がない、呼吸がおかしい、けいれんしている、大量の薬を飲んだ直後で本人が苦しんでいる——こうした時はためらわずに119。電話口で状況を伝えれば、応急処置の指示も受けられます。
「救急を呼ぶべきかどうか」の目安
家族が過量服薬した・していると思われる場面で、「119を呼ぶべきか迷う」ことがあります。以下は目安です(医学的な診断基準ではなく、判断の参考として示すものです)。
| 状況 | 推奨される行動 |
|---|---|
| 意識がない・呼びかけに反応しない | 迷わず119 |
| けいれんしている | 迷わず119 |
| 呼吸が浅い・不規則・止まりそう | 迷わず119 |
| 嘔吐して意識が朦朧としている | 迷わず119 |
| 「何錠飲んだかわからない」と言っている | 迷わず119 or 中毒110番に相談 |
| 飲んだが今は普通に話せる・症状なし | 中毒110番に相談のうえ判断 |
| アセトアミノフェン系・三環系抗うつ薬を複数錠飲んだ | 症状がなくても受診を強く推奨 |
海外在住の日本人向け
| 窓口 | 内容 |
|---|---|
| 在外公館(大使館・領事館) | 邦人援護担当が相談を受ける |
| JICEメンタルヘルスサポート | 海外在住邦人向けのカウンセリング窓口(時間帯あり) |
| よりそいホットライン(IP電話・国際) | 一部地域から接続可能。公式サイト参照 |
時差の関係で日本の窓口がつながりにくい時、現地のクライシスライン(英語圏なら各国の自殺予防ホットライン)も選択肢になります。
海外で薬物に関連した緊急事態が起きた場合、現地の救急番号(米国911、英国999、欧州共通112など)への連絡が最優先です。在外公館の邦人援護ダイヤルも、夜間・休日対応の緊急連絡先を持っています。渡航先の緊急連絡先を事前にスマートフォンに保存しておくことを推奨します。
多様な背景を持つ方のための窓口
- LGBTQ+: よりそいホットラインの「セクシュアルマイノリティ専門ライン」、にじいろどっとねっと、にじーず(ユース)など。
- 聴覚障害: よりそいホットラインのFAX・チャット、各自治体の聴覚障害者向け相談窓口。
- 在留外国人: よりそいホットライン外国語ライン(英語・中国語・韓国朝鮮語・タガログ語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語・ネパール語・インドネシア語)。
- HIV/性感染症の不安: 各保健所の匿名検査と相談窓口。
LGBTQ+とメンタルヘルスリスク
国内外の調査で一貫して示されているのは、LGBTQ+当事者は自殺念慮・自傷・ODのリスクが一般集団に比べて高いという事実です。これは当事者自身の「問題」ではなく、社会的なマイノリティストレス(差別・偏見・カミングアウトへの不安など)が積み重なることによって生じます。よりそいホットラインのセクシュアルマイノリティ専門ラインは、こうした背景を理解した相談員が対応しています。「親にバレたくない」「パートナーに言えない」という状況でも、匿名で話せます。
「電話が苦手」な人へ——文字から始める選択肢
電話の沈黙、相手の声、自分の声が震えること。電話のハードルが高い人は本当に多いです。次のような順番が役立つことがあります。
- まず厚生労働省「まもろうよこころ」のページを開く。
- 「いま受付中」のSNS窓口を見る(時間帯で変動)。
- LINEを友だち追加して「つらいです」とだけ送る。
- やりとりが続いた段階で、必要なら電話や対面につなげてもらう。
文字でのやりとりは記録が残るため、後から自分の状態を振り返ったり、医療機関で「こんな状態でした」と見せたりするのにも使えます。
解離症状・パニック状態での相談の工夫
強い苦しさの中では、「何を話したいか整理する」こと自体が難しくなります。脳が過負荷の状態になると、言語化能力が一時的に低下することが神経科学的に確認されています。こうした時は「今、話せる状態じゃないかもしれないけど、つながっていたいです」と伝えるだけで構いません。
チャットであれば、以下のような短文でも十分伝わります。
- 「こわい」
- 「薬が目の前にある」
- 「助けて」
一言でもメッセージを送ることで、相談員がペースを合わせてくれます。「うまく説明できなかったから相談にならなかった」ということにはなりません。
薬を安全に管理する——相談窓口と並行してできること
相談窓口はすぐに使える資源ですが、日常の中でできる「薬の安全な管理」も、ODリスクを下げる実践的な方法です。薬剤師として、以下を提案します。
手段の制限(Means Restriction)
自殺予防の分野で最も証拠レベルの高い介入の一つが手段の制限です。致死的な手段へのアクセスを物理的に遠ざけるだけで、リスクが有意に下がることが多くの研究で示されています。
薬の管理に関する具体的な提案:
| 状況 | 推奨される対応 |
|---|---|
| 自分が心配な場合 | 薬を家族・信頼できる人に預ける |
| 一人暮らしの場合 | かかりつけ薬局に少量処方を依頼する・鍵付き薬箱を使う |
| 家族が心配な場合 | 本人の同意を得たうえで薬の管理者になる |
| 市販薬の大量ストックがある場合 | 薬局で返品・廃棄の相談をする |
「薬を誰かに預けること」は弱さではありません。衝動が一時的に高まった時のために、あらかじめ安全な距離を作っておくことは、自分を守るための合理的な選択です。かかりつけの薬局に「少量ずつの調剤」を依頼することは、医療機関・薬局ともに対応可能なケースが多いです。主治医・薬剤師に遠慮なく相談してください。
家族・支援者が相談窓口を使う際のポイント
「家族が心配で眠れない」「本人に声をかけても拒絶される」「自分がどうすれば」——家族や支援者自身も限界を超えて消耗しています。
家族が使える窓口の整理
| 窓口 | 家族相談への対応 |
|---|---|
| 精神保健福祉センター | 家族専門の相談枠を設けているセンターも多い |
| 保健所 | 「本人が受診しない」段階での家族支援 |
| よりそいホットライン | 家族からの相談も受け付け |
| いのちの電話 | 家族からの相談も受け付け |
「巻き込まれない」ための薬剤師からのひとこと
ODを繰り返す家族を支えている方へ。薬剤師の立場から一つ伝えておきたいことがあります。「薬を隠した」「薬を捨てた」「騙して受診させようとした」——こうした行動は気持ちからくるものですが、長期的には回復を複雑にすることがあります。依存や自傷の回復は「管理されること」よりも「本人が安全を自分で選べる環境を整えること」が基盤になります。精神保健福祉センターや保健所では、家族自身の心理的な疲弊に対するケアと、「どう関わるか」の具体的な相談ができます。一人で抱え込まないでください。
家族・支援者向けの詳細な関わり方については、[[family-craft-codependency]] も参考にしてください。
利用前のFAQ
Q. 匿名でいいですか?
ほとんどの窓口で匿名OKです。ニックネームで構いません。住所を聞かれた場合も、安全確認のためで、無理に答える必要はありません。
Q. 何を話せばいいかわかりません
「何を話せばいいかわからない」とそのまま伝えてください。多くの窓口は、まず聞き役に徹してくれます。沈黙してもいいです。
Q. つながらない時は?
夜間や週末は混みやすい傾向があります。違う窓口を試す、SNS・LINE窓口に切り替える、時間を置いてかけ直す、という方法があります。一つの窓口で諦めないでください。
Q. 警察に通報されますか?
原則として、本人の同意なく通報されることはありません。ただし「今すぐ命が危ない状況で、住所がわかっている」場合は、救急要請を勧められたり、緊急対応がとられることがあります。これは相談者を罰するためではなく、命を守るための仕組みです。
Q. 家族として相談していいですか?
精神保健福祉センター、保健所、よりそいホットライン、いのちの電話、いずれも家族からの相談を受け付けています。「本人を動かすにはどうすれば」と一人で抱え込まないでください。家族支援の枠組みについては [[family-craft-codependency]] もあわせて参照してください。
Q. 回復の道筋は?
相談窓口は最初の一歩です。継続的な治療や自助グループにつながる流れについては [[recovery-darc-smarpp-clinic]] で扱っています。ODや薬物依存に関する薬学的な背景・身体への影響については [[od-mechanism-pharmacology]] も参考になります。
Q. 相談したら入院させられますか?
相談しただけで強制入院になることは原則ありません。精神科への入院(特に措置入院)には法律上の要件があり、相談員や医師が一方的に決定できるものではありません。「相談したら何かされてしまうかもしれない」という不安は多くの方が持っていますが、相談窓口のスタッフは「安全を確認したうえで、できる限り本人の希望に沿った選択肢を提示すること」を原則としています。
今夜のあなたへ
つらさは、相談したからといって一晩で消えるものではありません。それでも、誰かに話すことで、明日の朝までの数時間が少し軽くなることがあります。「今夜だけ、つながってみる」で十分です。
もし今、薬が目の前にあるなら——まずその薬を別の部屋に移す、引き出しの奥にしまう、それだけでも構いません。次のステップは、電話を一本かけること、またはLINEに「つらいです」と一行送ること。それだけでいいです。
あなたがこの記事を読んでいるという事実は、まだどこかで「助かりたい」という気持ちがあることを意味しています。その気持ちを、今夜使ってください。
免責事項
本記事は啓発目的の一般的な情報提供であり、個別の医療判断・治療方針の指示を行うものではありません。記載の電話番号・受付時間・運営団体は、変更されることがあります。利用前に各窓口の公式情報をご確認ください。緊急時(意識障害・呼吸異常・大量服薬直後など)は迷わず119に連絡してください。薬学的な内容は一般的な医薬品情報をもとにした解説であり、特定の状況への適用には必ず医師・薬剤師にご相談ください。
相談窓口(再掲)
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料・匿名)
- いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)/0120-783-556(フリーダイヤル)
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(発信地の都道府県・政令市につながる)
- 中毒110番 大阪 072-727-2499(24時間)/つくば 029-852-9999(9時〜21時)
- チャイルドライン 0120-99-7777(18歳以下)
- 24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(児童生徒・保護者)
- 性暴力被害ワンストップ支援センター #8891
- DV相談+(プラス) 0120-279-889
- 警察相談専用電話 #9110
- 救急 119
- 最寄りの精神保健福祉センター(都道府県・政令市に必置、無料、家族相談可)
- 厚生労働省「まもろうよこころ」: SNS・LINE・チャット相談の最新一覧
参考文献
-
厚生労働省「まもろうよこころ」相談窓口一覧 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
-
厚生労働省 こころの健康相談統一ダイヤル案内 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
-
公益財団法人日本中毒情報センター 公式サイト https://www.j-poison-ic.jp/
-
一般社団法人日本いのちの電話連盟 公式サイト https://www.inochinodenwa.org/
-
内閣府 男女共同参画局 DV相談+案内 https://soudanplus.jp/
-
厚生労働省 自殺対策 自殺総合対策大綱(令和4年改定版) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/taikou_r4.html
-
WHO. Live Life: An implementation guide for suicide prevention in countries. Geneva: World Health Organization; 2021. https://www.who.int/publications/i/item/9789240012271
-
警察庁 警察相談専用電話 #9110案内 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/soudan/index.html
-
文部科学省 24時間子供SOSダイヤル案内 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
-
一般社団法人社会的包摂サポートセンター(よりそいホットライン)公式サイト https://comarigoto.jp/
監修: 薬剤師(博士(薬学))