アイルランド渡航前ワクチン|MMR・基本ワクチンと接種スケジュールを薬剤師が解説

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アイルランド渡航前の予防接種について

アイルランドは西ヨーロッパの先進国で、感染症リスクは比較的低い地域です。しかし、渡航前の予防接種は旅の安全を確保する重要なステップです。本ガイドでは、必須ワクチンから推奨ワクチンまで、薬剤師の観点から詳しく解説します。

アイルランド(Republic of Ireland)はEU加盟国であり、国民保健サービス(HSE: Health Service Executive)が整備されています。WHO欧州地域の中でも公衆衛生水準は高水準で、コレラや黄熱病など熱帯性感染症の流行は現時点で確認されていません。しかしながら、麻疹やB型肝炎といった「ワクチンで予防可能な疾患(Vaccine-Preventable Diseases: VPDs)」については、日本とは流行状況が異なる点があり、十分な免疫状態で渡航することが重要です。また、近年は留学・ワーキングホリデー・ファームステイなど滞在形態が多様化しており、渡航者個々のリスクに応じた予防接種計画が求められます。

渡航前の予防接種が重要な理由

アイルランドは医療水準が高く、一般的な感染症リスクは低めですが、以下の点で事前準備が必要です。

  • 麻疹などの予防可能疾患:日本との流行状況の違いにより、免疫状態を確認・補強する必要がある
  • 長期滞在・バックパッカー旅行:標準以上のワクチン保護が推奨される場合がある
  • 医療施設へのアクセス:緊急時に備えた事前対策が重要
  • 帰国後の感染症持ち込み防止:社会への責任

特に麻疹については、2018〜2019年にアイルランドを含む欧州各国でアウトブレイクが報告され、WHOが欧州全体に警戒を呼びかけた経緯があります。日本国内でも2019年に輸入麻疹例が増加し、帰国後の二次感染が問題となりました。ウイルスの侵入経路を個人レベルで遮断するためにも、渡航前の免疫確認は公衆衛生上の責務といえます。

薬剤師メモ アイルランドはEU加盟国で医療制度が整備されていますが、観光ビザで渡航する場合、緊急治療以外の医療費は自己負担になります。事前の予防接種で「保険」をかけることが重要です。海外旅行保険への加入と組み合わせることで、万一の受診費用もカバーできます。

必ず確認しておくべき基本ワクチン

1. 麻疹・風疹・おたふくかぜ(MMR)

重要度: ★★★★★(最重要)

  • 推奨対象:1歳以上の全渡航者(特に1972年以降生まれの日本人は確認推奨)
  • 必要回数:2回接種(1回目と2回目の間隔は4週間以上)
  • 有効期間:生涯免疫(通常)
  • 接種時期:渡航の4週間前までに2回目完了が理想的
対象者 必要な対応
1972年以降生まれで接種歴不明 2回接種推奨
1972年以前生まれ 通常1回で足りる(流行時は2回)
妊娠中・妊娠予定 生ワクチンのため接種不可。3ヶ月避妊必要
免疫不全状態 医師相談必須

【薬学的解説:MMRの免疫学的機序】

MMRワクチンは、麻疹ウイルス・風疹ウイルス・ムンプスウイルスの3種類の弱毒生ウイルスを含む混合生ワクチンです。接種後、体内で弱毒化ウイルスが限定的に増殖し、自然感染に類似した抗原提示が行われます。これによりCD4陽性T細胞・CD8陽性T細胞の両方が活性化され、液性免疫(IgG抗体産生)と細胞性免疫の双方が誘導されます。1回接種後の麻疹抗体陽転率は約95%、2回接種後は99%以上とされており、2回接種完了後は「生涯免疫」が期待できます。

ただし、加齢や免疫抑制薬使用、ステロイド長期投与などにより抗体価が低下する場合があります。渡航前に不安な方は、医療機関で麻疹・風疹の血清抗体価(HI法またはEIA法)を測定することが可能です。抗体価が基準値以下であれば、接種歴にかかわらず追加接種を検討します。

日本では1990年代以前に1回接種のみ受けた世代(いわゆる「1回接種世代」)が存在します。この世代は2回接種完了者と比較して麻疹感受性が高い可能性があり、渡航前に接種歴と抗体価の確認が特に推奨されます。

薬剤師メモ MMRは生ワクチンです。他の生ワクチン(水痘、帯状疱疹ワクチンの生ワクチン製剤など)との同時接種は可能ですが、異なる日に接種する場合は4週間の間隔を空ける必要があります。不活化ワクチン(B型肝炎、破傷風など)とは同日の異なる部位への同時接種が可能です。

2. 破傷風(Tetanus)

重要度: ★★★★☆

  • 推奨対象:全渡航者(特に戸外活動を予定する人)
  • 必要回数:基礎接種3回+10年ごとの追加接種
  • 有効期間:10年(最後の接種から)
  • 接種方法:通常、ジフテリア・百日咳と三種混合(DPT)で接種

接種スケジュール例(初回の場合):

  1. 1回目:基準日から0日
  2. 2回目:基準日から4週間
  3. 3回目:基準日から6ヶ月

【薬学的解説:破傷風トキソイドの特性】

破傷風ワクチンに含まれる成分は「トキソイド」です。これは破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する外毒素(テタノスパスミン)をホルマリン処理により無毒化したもので、毒素タンパクの構造を保ちながら毒性を失わせたものです。接種により産生された抗トキソイド抗体が、実際の感染時に産生される毒素を中和する仕組みです。

破傷風は土壌・錆びた金属・動物の糞便に広く分布しており、アイルランドのような農業国では農村部での野外活動や動物との接触で感染リスクが生じます。特にトレッキング、乗馬体験、農場ボランティアを予定している場合は、最終接種から10年以内であることを母子手帳・接種記録で確認してください。10年を超えている場合は1回の追加接種(ブースター)が推奨されます。

日本では破傷風トキソイドは単独ワクチンおよびジフテリア・破傷風混合(DT)、あるいはジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)・不活化ポリオ混合(IPV)の4種混合ワクチンとして入手可能です。成人への追加接種にはDTまたは単独破傷風トキソイドが用いられることが多いです。

接種スケジュール例(初回の場合):

  1. 1回目:基準日から0日
  2. 2回目:基準日から4週間
  3. 3回目:基準日から6ヶ月

渡航まで時間がない場合は1〜2回の接種で部分的な免疫を付与し、帰国後に残りの回数を接種する方法が一般的に用いられます。接種を開始した医療機関で計画表を受け取り、継続接種を記録管理することが大切です。

3. ポリオ(小児麻痺)

重要度: ★★★☆☆

  • 推奨対象:日本の定期予防接種で4回未接種の場合
  • 必要回数:4回(不足分を補完)
  • 有効期間:生涯免疫
  • 接種時期:渡航2ヶ月前までに完了が理想的

【薬学的解説:不活化ポリオワクチン(IPV)の安全性と有効性】

日本では2012年9月以降、経口生ポリオワクチン(OPV)から皮下注射による不活化ポリオワクチン(IPV)に全面切り替えが行われました。IPVはポリオウイルス(1型・2型・3型)をホルマリンで不活化したもので、免疫不全者にも接種可能という安全性上の利点があります。OPVで問題となっていた「ワクチン関連麻痺ポリオ(VAPP)」のリスクがなく、現在の定期接種スケジュールではIPV単独または4種混合ワクチンとして接種されています。

アイルランドはポリオフリー国として認定されており、渡航による直接感染リスクは極めて低い状況です。しかし、アイルランドを経由して中東・アフリカ・南アジアへの移動を予定している場合、接種状況の確認は特に重要となります。

薬剤師メモ 日本生まれで2000年以降に予防接種を受けた人は、通常ポリオ4回接種済みです。母子手帳で確認してください。2000年以前生まれで生ポリオ(OPV)2回のみの方は、追加のIPV接種を検討する価値があります。

4. 麻疹のみ(M)または風疹のみ

重要度: ★★★★☆(MMR未接種・不完全の場合)

ワクチン 対象者 接種回数
単独麻疹ワクチン MMRアレルギーがある場合 1〜2回
単独風疹ワクチン 妊娠前の免疫確認が必要な女性 1〜2回
単独おたふくかぜワクチン 特定の医学的理由がある場合 1〜2回

日本ではMRワクチン(麻疹・風疹混合)が定期接種として広く使われています。MMRワクチン(おたふくかぜを含む3種混合)は任意接種ですが、アイルランドを含む欧州諸国でのおたふくかぜ流行事例を考慮すると、MRではなくMMRでの接種完了が推奨されます。なお、ゼラチンアレルギーや卵アレルギーの既往がある方は接種前に医師に申告してください。MMRワクチンは鶏卵で製造される成分を含みますが、重篤な卵アレルギーがあっても多くの場合は接種可能とされており、医療機関で経過観察のもと接種することが基本方針です。

渡航期間・形態に応じた推奨ワクチン

短期観光(1〜2週間、都市部滞在)

最小限必要なもの

  • MMR(2回、未接種・1回のみの場合)
  • 破傷風追加(10年以上未接種の場合)
  • ポリオ確認(母子手帳で4回接種済みか確認)

ダブリン、コーク、ゴールウェイなどの主要都市に滞在する短期旅行者であれば、衛生環境は日本と同等以上であるため、食水系感染症(A型肝炎、腸チフスなど)のリスクは低く、基本ワクチンの確認に留めることが一般的です。ただし、渡航先として「都市部のみ」であっても、麻疹のような飛沫感染症は人混みの多い観光スポットや公共交通機関で感染する可能性があるため、MMRの接種状況は必ず確認してください。

中期滞在(2〜4週間、郊外・農村部含む)

推奨されるもの:上記に加えて

  • B型肝炎(初回シリーズ・通常3回。0日→4週→6ヶ月が標準スケジュール)
  • 腸チフス(食事が不確実な地域への移動がある場合)

コネマラ、ウィックロー山地、アラン諸島など地方・農村部への滞在が含まれる場合は、食事環境や衛生設備の水準にばらつきが生じる可能性があります。地元の食材を活用したB&Bやホームステイでの食事は新鮮で安全なことが多いですが、旅先での体調変化に備えてワクチンで対策を講じておくことが安心です。

長期滞在(1ヶ月以上、医療ボランティアなど)

推奨されるもの

  • 上記すべて
  • 髄膜炎菌ワクチン(学生寮・シェアハウス滞在の場合)
  • A型肝炎(食水衛生が確実でない地域への移動がある場合)
  • B型肝炎(医療職・ケア職に従事する場合は特に重要)

【薬学的解説:髄膜炎菌ワクチンの種類と血清型】

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は血清型によりA・B・C・W135・Yなどに分類されます。アイルランド・英国を含む欧州では、血清型Bが最も多く検出されており、学生寮などの集団生活環境での感染リスクが高いとされています。利用可能なワクチンとしては4価ワクチン(A・C・W135・Y型対応)と血清型B専用ワクチン(4成分髄膜炎菌Bワクチン: 4CMenB)があります。日本では4価ワクチン(MenACWY)が任意接種として使用可能です。血清型B対応ワクチンについては日本での入手状況が限定的であるため、渡航前に旅行医学専門クリニックに相談することを推奨します。

薬剤師メモ アイルランド自体の水道水は安全ですが、郊外のファームステイやB&Bでは衛生状態に幅があります。長期滞在予定者は医師・薬剤師に相談のうえ、滞在スタイルに応じた最適なワクチンプランを立ててください。

ワクチン接種スケジュール計画

理想的な接種開始時期

渡航時期 推奨接種開始時期 備考
1〜2ヶ月 直ちに(即日) MMR 2回目間隔(4週)に注意
3〜4ヶ月 今月中 B型肝炎初回接種が可能
5〜6ヶ月 2ヶ月以内に開始 B型肝炎全シリーズ完了可能
6ヶ月以上後 4〜6ヶ月前に開始 余裕を持って計画的に

複数ワクチン同時接種のガイドライン

同日接種可能(異なる腕・部位に接種):

  • 不活化ワクチン同士(B型肝炎、腸チフス、破傷風など)
  • MMR(生ワクチン)と不活化ワクチンの組み合わせ

同日接種不可4週間間隔必要):

  • 生ワクチン同士(MMRと水痘など)を異なる日に接種する場合
  • ただし同日・同時接種であれば複数の生ワクチンを接種しても差し支えない(同日接種は例外規定)

【薬学的解説:生ワクチン間の干渉(インターフェロン仮説)】

2種類の生ワクチンを数日〜数週間の間隔をおいて別々に接種すると、先に接種したウイルスへの免疫応答(自然免疫活性化やインターフェロン産生)が、後から接種したウイルスの増殖を抑制し、免疫原性が低下する可能性があります。これが「4週間間隔ルール」の根拠です。一方、同日同時接種では両者が同時に免疫系に提示されるため干渉が生じにくく、有効性が保たれます。不活化ワクチンはウイルスが増殖しないためこの干渉は起こらず、日程の制約なく同時・異日接種が可能です。

初回接種(ワクチン未経験)の具体例

渡航まで8週間ある場合

  • 0週目:MMR 1回目 + 破傷風 1回目 + B型肝炎 1回目(同日・異なる部位)
  • 4週目:MMR 2回目 + B型肝炎 2回目
  • 6週目:破傷風 2回目
  • 帰国後:破傷風 3回目(初回から6ヶ月後)、B型肝炎 3回目(初回から6ヶ月後)

渡航まで4週間しかない場合

  • 0日目:MMR 1回目 + 破傷風 1回目
  • 28日目(渡航直前):MMR 2回目 + 破傷風 2回目
  • 帰国後:破傷風 3回目・B型肝炎シリーズ開始

渡航まで時間が限られている場合でも、可能な範囲で接種を開始し、帰国後に残りを完了させる「分割接種」プランが一般的です。接種開始を先延ばしにするより、渡航前に1〜2回でも接種を受けた方が免疫誘導の観点から有益です。

予防接種にかかる費用

日本での接種費用(目安、2024年現在)

ワクチン名 単価(円・目安) 備考
MMR 7,000〜10,000 2回接種で14,000〜20,000円
破傷風(含DPT) 3,000〜5,000 3回シリーズが必要な場合あり
ポリオ(IPV) 3,000〜5,000 1回あたり
B型肝炎 5,000〜7,000 3回シリーズで15,000〜21,000円
A型肝炎 6,000〜8,000 1〜2回
腸チフス 5,000〜7,000 1回のみ(経口・注射製剤あり)
髄膜炎菌(4価) 8,000〜12,000 1回
合計(フル接種の場合) 40,000〜80,000円程度 個人差・医療機関・地域による

上記はあくまで目安であり、医療機関の種類(旅行クリニック・一般内科・大学病院など)や地域によって価格差があります。旅行クリニックは渡航医学に特化しているため、相談から接種計画立案までワンストップで対応できる利点があります。初診料・再診料が別途発生する場合もあるため、事前に問い合わせて総費用を確認してください。

海外(アイルランド現地)での接種

一般的な相場(目安)

  • HSE(Health Service Executive)登録:GPへの登録後、一部ワクチンは無料または低額で提供される場合あり(ただし登録手続きに数週間を要することがある)
  • プライベートクリニック:€30〜80/回程度
  • 薬局での接種:€20〜50/回程度(ワクチンの種類により変動)

薬剤師メモ 現地での接種は言語・手続きの負担、接種記録の互換性(日本の母子手帳との連携困難)などの問題があります。渡航前に日本で完了させることを強く推奨します。やむを得ず現地接種となる場合は、英語での接種記録書(接種日・ロット番号・製造者を記載したもの)を必ず受け取ってください。

健康保険・補助金制度

利用可能な支援制度

  1. 健康診断時の同時接種

    • 企業健診でワクチン接種できる場合あり(一部費用補助)
  2. 市区町村の補助

    • 自治体によっては渡航者向けワクチン補助あり(要事前確認)
    • 補助金額・対象ワクチンは自治体ごとに異なるため、居住地の保健センターに問い合わせを推奨
  3. 旅行保険の医療相談サービス

    • 加入時に「推奨ワクチン情報」が提供される場合あり
    • 接種後の重篤な副反応が補償対象かどうかを事前確認することを推奨
  4. 海外駐在予定者向け補助

    • 企業が接種費用全額負担するケースあり(人事・総務部門に確認)

なお、日本の健康保険(国民健康保険・社会保険)は、任意接種ワクチンの費用には原則として適用されません。定期接種の対象年齢外での接種も自費となります。一方、医療費控除(確定申告)の対象となる可能性があるため、領収書は必ず保管しておいてください。海外赴任・留学に必要であることが明確であれば、医療費控除の申告時に税務署に相談する価値があります(税務判断は税理士・税務署に確認してください)。

ワクチン接種後の注意点

副反応と対応

ワクチン 一般的な副反応 対応 渡航への影響
MMR 発熱・発疹(接種後1〜2週間後に出現) 通常経過観察 10日以上経過後なら渡航可
破傷風(トキソイド) 接種部位の腫れ・痛み・軽微な発熱 冷却・鎮痛薬(アセトアミノフェン等) 即日渡航可
B型肝炎 局所反応のみ(通常) 冷却 即日渡航可
A型肝炎 頭痛・軽微な発熱・倦怠感 経過観察・水分補給 翌日渡航可
髄膜炎菌(4価) 接種部位の発赤・腫れ 冷却・経過観察 翌日渡航可

【薬学的解説:副反応のメカニズムと対処薬の薬理】

ワクチン接種後の局所反応(腫れ・赤み・痛み)は、アジュバント(免疫賦活剤)や抗原タンパクに対する自然免疫応答によるものです。マクロファージや樹状細胞が活性化され、IL-1β・TNF-α・IL-6などの炎症性サイトカインが放出されることで局所の炎症・全身の発熱が生じます。この反応はワクチンが正常に機能していることを示す生理的応答でもあります。

接種部位の疼痛には、アセトアミノフェン(成分名)を含む解熱鎮痛薬の服用が一般的に用いられます。NSAIDs(イブプロフェン等)も鎮痛に有効ですが、一部の研究では抗炎症作用によってワクチンの免疫応答が軽度に抑制される可能性が示唆されているため、予防的服用より症状出現後の服用が推奨されています。生ワクチン(MMR)の接種後1〜2週間後に出現する「遅発性発疹」は、弱毒ウイルスの一過性増殖によるものであり、インフルエンザ様症状が数日で自然軽快します。この時期はウイルスの限定的な複製が起きているため、免疫不全者や妊婦との濃厚接触は避けることが推奨されています。

薬剤師メモ 生ワクチン(MMR等)接種後の発疹は通常2〜3週間で消退します。渡航直前の接種は避け、最低10日前、理想的には3〜4週間前に2回目の接種を完了してください。特に飛行機など密閉空間での長距離移動を考慮すると、体調が万全な状態で渡航することが重要です。

接種証明書の取得

必ず受け取るもの

  • 予防接種証明書(医療機関発行):接種日・ロット番号・製造者・ワクチン名を記載したもの
  • 国際予防接種証明書(イエローカード):黄熱病接種が必要な国への渡航に必要だが、アイルランドへの入国に黄熱病ワクチン証明書は不要
  • 医療機関発行の接種記録(日本語版・英語版の双方があると現地で役立つ)

デジタル化への対応

  • スマートフォンへの接種記録の保存(写真・PDFバックアップ)
  • 紙の証明書も持参(デジタルとのダブル管理を推奨)

なお、日本では2023年3月以降、新型コロナウイルスワクチン接種証明書のデジタル化が進みましたが、従来の渡航前ワクチン(MMR・破傷風など)のデジタル化統合システムは整備途上です。接種記録は母子手帳・医療機関発行の紙証明書を原本として保管し、スキャン画像をクラウドにも保存しておくことを推奨します。

アイルランド到着後の留意事項

現地での医療アクセス

  • GP(General Practitioner)登録:滞在期間3ヶ月以上の場合はHSEへのGP登録を推奨。初診は有料(€50〜€80程度が目安)となる場合がある
  • 緊急時:Emergency Department(A&E)で24時間対応。ただし待ち時間が長くなることがある
  • 薬局(Pharmacy):薬剤師への相談が可能(英語対応)。処方箋なしで購入できるOTC医薬品も豊富

現地の薬局でよく使うフレーズ:

  • I need something for a headache.(アイ ニード サムシング フォー ア ヘッドエイク)
  • Do you have any antihistamines?(ドゥ ユー ハヴ エニー アンチヒスタミンズ?)
  • I'm allergic to penicillin.(アイム アラージック トゥ ペニシリン)
  • I have a prescription from Japan.(アイ ハヴ ア プレスクリプション フロム ジャパン)

日本の処方箋はアイルランドで原則として使用できませんが、主治医から英文の薬歴・処方内容証明書を持参することで、現地GPに状況を説明し、同等の薬剤を再処方してもらうことが可能な場合があります。慢性疾患の薬を服用中の方は、渡航前に必ず主治医に相談のうえ、英文の処方内容証明書・薬剤情報提供書を準備してください。

感染症情報の入手

薬剤師メモ アイルランドでの医療相談は英語が必須です。渡航前に「予防接種歴」「服用中の薬(成分名・用量)」「アレルギー(特に薬剤・食物・ゼラチン)」の英語表記を1枚のカードにまとめておくと、現地の医師・薬剤師との対話がスムーズです。特にアナフィラキシー歴のある方はエピネフリン自己注射製剤の携帯と保管方法についても事前に確認してください。

予防接種に関するよくある質問

Q:妊娠している場合、どのワクチンが接種できますか? A:生ワクチン(MMR・水痘など)は妊娠中に禁忌です。破傷風トキソイド(不活化)やB型肝炎ワクチン(組換えタンパク製剤)は医師の判断で接種可能な場合があります。妊娠中の渡航自体についても産科医に相談してください。接種後に妊娠が判明した場合は慌てず産科医に報告し、経過観察が推奨されます。

Q:前回の接種から10年以上経過しています。追加接種は必要ですか? A:破傷風は10年ごとの追加接種(ブースター)が推奨されます。MMRは通常1〜2回で生涯免疫ですが、渡航前に血清抗体価検査(麻疹IgG・風疹IgG)で免疫状態を確認することも可能です。抗体価が基準値を下回っていれば追加接種が推奨されます。検査費用は3,000〜5,000円程度が目安です。

Q:ワクチン接種後、いつから渡航できますか? A:不活化ワクチン(破傷風・B型肝炎など)は接種当日翌日からの渡航も可能です。生ワクチン(MMR)は遅発性の副反応(接種後1〜2週間後の発熱・発疹)が生じる可能性があるため、接種後最低10日、理想的には3〜4週間経過してからの渡航が推奨されます。

Q:ワクチンアレルギーがあるかどうか心配です。どうすれば? A:MMRワクチンは鶏卵成分・ゼラチン・ネオマイシンを含みます。これらに対して重篤なアレルギー既往がある方は、接種前に医師に詳細を伝えてください。卵アレルギーのみであれば多くの場合接種可能ですが、医療機関での30分程度の経過観察が推奨されます。接種後のアナフィラキシーは通常15〜30分以内に発症するため、接種後は医療機関内で待機することが大原則です。

Q:すでに海外のワクチン接種記録があります。有効ですか? A:海外で接種を受けたワクチン記録は、接種日・製品名・ロット番号が記載されていれば日本の医療機関でも参照可能です。英語・各国語の接種証明書を日本語に翻訳した上で医師に提示してください。ただし、製品名から有効回数・間隔の充足を確認するためには、医師・薬剤師による内容精査が必要です。

まとめ

  • 最重要ワクチン:MMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)2回接種完了、破傷風追加接種(10年以内)、ポリオ4回確認
  • 推奨ワクチン:滞在期間・地域・活動内容に応じてB型肝炎・A型肝炎・腸チフス・髄膜炎菌ワクチンの検討
  • 接種スケジュール:渡航4〜8週間前から計画開始。複数ワクチンの同日同時接種を活用して効率化
  • 費用目安:最小限(MMR+破傷風のみ)で15,000〜25,000円、フル接種で40,000〜80,000円程度(日本での任意接種)
  • 副反応対応:不活化ワクチンはアセトアミノフェン等で対症療法可能。生ワクチンは10日以上経過後の渡航推奨
  • 接種証明書:医療機関発行の日英2言語の接種記録を用意。スキャン画像のクラウド保存も推奨
  • 最新情報確認:外務省・HSE・WHOの感染症情報を出発2〜4週間前に必ず再確認
  • 医師相談必須:妊娠中・免疫不全・抗がん剤・免疫抑制薬服用中・重篤なアレルギー歴がある場合は必ず事前に医師に相談

参考文献・出典

  1. World Health Organization (WHO). "Vaccines and immunization." https://www.who.int/health-topics/vaccines-and-immunization
  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Travelers' Health – Ireland." https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/ireland
  3. Health Service Executive Ireland (HSE). "Immunisation and vaccines." https://www.hse.ie/eng/health/immunisation/
  4. 厚生労働省. 「予防接種に関する情報(渡航者向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/index.html
  5. 国立感染症研究所(NIID). 「麻疹(はしか)」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/measles-m.html
  6. 外務省. 「海外安全情報(アイルランド)」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_001.html#ad-image-0
  7. PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構). 「ワクチン製品情報」 https://www.pmda.go.jp/

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監修: 薬剤師(博士(薬学))

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