ノルウェーで病院・薬局を使うには|救急113・LegevaktとApotekの使い方を薬剤師が解説

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ノルウェーの医療システムの基礎知識

ノルウェーは世界保健機関(WHO)から高い評価を受ける先進医療体制を持つ国です。しかし、日本とは異なるシステムのため、事前の理解が不可欠です。

医療体制の特徴

ノルウェーの医療は国民皆保険制度(Helserettigheter)で支えられており、以下の特徴があります:

項目 特徴
初診時の対応 かかりつけ医(GP / Fastlege)を通じるのが基本
処方箋システム 医師の指示で薬局で入手。電子処方箋(eResept)が主流
言語 ノルウェー語が主流だが、観光地では英語対応も
医療費 高額だが旅行保険でカバー推奨
診療時間 平日8時〜16時が一般的
夜間・休日対応 Legevakt(レゲバクト)と呼ばれる夜間救急外来が主要都市に設置

ノルウェーの医療の特徴として、gate-keeper制度が徹底している点が挙げられます。これは、一次医療(GP)を経由しないと専門医に直接かかれない仕組みです。旅行者の場合はこの制度の適用外となりますが、軽症であればまずLegevaktや一般開業医に相談することが推奨されます。また、電子処方箋(eResept)システムが2013年から全国的に普及しており、医師が処方すると薬局のシステムに直接データが送信される仕組みとなっています。紙の処方箋は事実上ほぼ不要になっており、旅行者が「処方箋をもらった」と思っても実態は電子データのみというケースがあります。

薬剤師メモ ノルウェーは医療体制が整備されており、ジェネリック医薬品(Generika / byttbare legemidler)の普及率も高い国です。薬局では医師が処方したオリジナル製品と同等の後発品(バイオシミラーを含む)への自動切替が行われることがあります。日本のようなドラッグストア文化はなく、OTC(一般用医薬品)も薬局(Apotek)またはスーパーマーケット等で認可された一部の製品のみ販売が許可されています。


体調不良時の医療機関の探し方

旅行者向けの初期対応

ノルウェー滞在中に体調を崩した場合、以下の優先順位で対応してください:

1. ホテルの総合案内デスク(フロント)に相談

  • スタッフが英語で医療機関を紹介してくれることが多い
  • 医療翻訳サービスの手配も可能な場合がある

2. 領事館・大使館への連絡

  • 日本国大使館(オスロ):+47-2213-7600
  • 重症の場合は領事保護サービスで医療機関の紹介を受けられる

3. 医療機関の検索方法

検索方法 利用場面
Helsenorge.no(国家医療ポータル) 病院・診療所の検索、待ち時間確認
Legevakten.no 最寄りの夜間救急(Legevakt)の検索
Google Maps「Doctor near me」 リアルタイム位置情報から検索
旅行保険会社の24時間サポート 直接紹介・予約手配

薬剤師メモ ノルウェーでは緊急以外の夜間診療が充実していないため、観光シーズン(夏季)に体調不良になった場合は早朝の医療機関受診をお勧めします。Legevaktは夜間・休日の急患を受け入れますが、軽症と判断された場合は待ち時間が数時間に及ぶこともあります。

Legevakt(夜間・休日救急外来)とは

日本の「救急外来」に相当するLegevaktは、ノルウェーの各市区町村(Kommune)が運営する夜間・休日の急患対応施設です。通常のかかりつけ医(Fastlege)が診察していない時間帯に機能します。

Legevaktの特徴

  • 完全予約不要で飛び込み受診可能
  • 軽症〜中等症の急患対応(生命に関わる場合は救急病院へ搬送)
  • 24時間対応(都市部)または夜間のみ対応(地方部)
  • 英語対応スタッフが在籍していることが多い(オスロ・ベルゲン等の主要都市)

Legevaktへの連絡番号

Legevakt電話相談:116 117
(非緊急の医療相談・最寄りLegevaktの案内)

薬剤師メモ 「116 117」はノルウェー国内全土で通じる非緊急医療相談ナビダイヤルです。旅行者でも利用でき、英語対応が可能です。症状を伝えると適切な医療機関に案内してくれます。

オスロ・ベルゲン・トロンハイムなど主要都市の医療機関(例)

都市 主要病院 特徴
オスロ Ullevål Hospital(Oslo universitetssykehus) ノルウェー最大級の総合病院
オスロ Oslo Legevakt オスロ市中心部の夜間救急、24時間対応
ベルゲン Haukeland University Hospital 西部ノルウェーの中核医療機関
トロンハイム St. Olavs Hospital 中部ノルウェーの主要拠点病院

薬局の利用方法と処方箋の取得

ノルウェーの薬局システム

ノルウェーの薬局(Apotek)では医師の処方箋なしに購入できる医薬品が極めて限定的です。規制当局であるノルウェー医薬品庁(Statens legemiddelverk / Norwegian Medicines Agency)がOTC販売可能な医薬品のリストを厳しく管理しており、日本のドラッグストアで自由に購入できるような製品の多くが処方箋を要する医薬品(Reseptpliktig legemiddel)に分類されています。

薬局で処方箋なしに購入できる医薬品の例(代表的成分)

成分名(一般名) 主な用途 1回用量の目安 注意点
アセチルサリチル酸(アスピリン) 鎮痛・解熱・抗血小板 500mg(規格は製品により異なる) 消化管出血リスク、ライ症候群(小児禁忌)
アセトアミノフェン(パラセタモール) 頭痛・発熱・軽度疼痛 500〜1000mg(規格は製品により異なる) 過量投与による肝障害に注意
イブプロフェン 炎症性疼痛・発熱 200〜400mg(規格は製品により異なる) 消化器系副作用、腎機能への影響
セチリジン塩酸塩 季節性アレルギー性鼻炎 10mg(規格は製品により異なる) 眠気(自動車運転に注意)
ロラタジン 季節性アレルギー性鼻炎 10mg(規格は製品により異なる) 非鎮静性抗ヒスタミン薬
水酸化マグネシウム・炭酸水素ナトリウム系制酸薬 胃不快感・胸やけ 製品規格に従う 長期使用は医師相談

薬学的解説:OTC鎮痛薬の使い分け

ノルウェーで入手できる代表的なOTC鎮痛薬について、薬剤師の立場から解説します。

アセトアミノフェン(パラセタモール)

アセトアミノフェンは中枢性の鎮痛・解熱薬で、消炎(抗炎症)作用はほぼありません。作用機序については視床下部体温調節中枢への作用や脊髄後角でのシグナル抑制が関与するとされていますが、詳細はいまだ解明中です。肝臓でCYP2E1・CYP3A4を介して代謝される際、過量摂取(成人では24時間以内に目安4g超が危険域)では活性代謝物N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)が蓄積し、肝細胞壊死を引き起こします。飲酒習慣がある方は肝障害リスクがより低い摂取量でも顕在化する可能性があり注意が必要です。他の医薬品との相互作用は比較的少なく、消化管への刺激も少ないため、胃腸が弱い方・高齢者・妊娠中の方(妊娠各期での使用については必ず医師に相談)に適するとされています。

イブプロフェン(NSAIDs)

イブプロフェンはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類され、COX-1/COX-2の両方を阻害してプロスタグランジン産生を抑制します。鎮痛・解熱に加え抗炎症作用も有する点でアセトアミノフェンと異なります。消化管粘膜保護に関与するプロスタグランジンも抑制するため、空腹時服用は胃粘膜への刺激・潰瘍リスクがあります。食後服用が推奨されます。また腎臓への血流を維持するプロスタグランジンも減少させるため、脱水状態・腎機能低下者では急性腎障害のリスクに注意が必要です。旅行中は長時間の移動や気温変化による脱水が起こりやすいため、十分な水分補給とともに服用してください。

アセチルサリチル酸(アスピリン)

アスピリンはCOXを不可逆的にアセチル化して阻害します。OTC用量(鎮痛目的)では500mg前後ですが、日本では小児・10代のウイルス感染症発熱時のアスピリン使用はライ症候群のリスクから禁忌とされています。ノルウェーでも同様の注意が医薬品情報に記載されています。抗血小板薬として低用量(75〜100mg)が処方されることも多いため、すでにアスピリン処方を受けている方が海外でOTCアスピリンを重複服用しないよう注意してください。

処方箋取得から薬購入までの流れ

ステップ1:医師の診察を受ける

  • 患者本人が医療機関を受診
  • 言語バリアがある場合:翻訳アプリ(Google Translate)、翻訳機(Pocketalk など)を持参

ステップ2:処方箋(Resept)の発行

  • 医師からノルウェー語または英語の処方箋を受け取る(紙、または電子処方箋eResept)
  • 処方箋にはATC分類コード、用量、用法、処方日数が記載される
  • 電子処方箋システム(eResept)の場合、薬局のシステムに直接送信される

ステップ3:薬局での購入

  • 薬局スタッフに氏名・生年月日を伝えることで電子処方箋を確認
  • 薬剤師から用法用量の説明を受ける(英語対応薬局も多い)
  • 支払い:現金またはカード(Visa、Mastercard対応)

薬剤師メモ ノルウェーの処方箋は有効期限が一般的に1年間(慢性疾患)または短期(急性疾患用途)で異なります。電子処方箋は薬局のシステムに自動登録されますが、旅行者の場合はスキャン可能な紙の処方箋を医師に依頼するとより確実です。「Can I have a paper copy of the prescription?(キャン アイ ハヴ ア ペーパー コピー オブ ザ プレスクリプション?)」と申し出てください。


主要薬局チェーンと営業情報

ノルウェーには国内に約800店舗以上の薬局があります。規制上、薬局の開設・運営には国家ライセンスが必要であり、すべての薬局には薬剤師(Farmasøyt)の常駐が義務付けられています。

薬局チェーン 特徴 24時間営業
Apotek 1 ノルウェー最大チェーン。主要都市・地方に広く展開 オスロ中央駅(Oslo S)近隣店舗あり
Vitusapotek 全国展開の大手チェーン。オスロ・ベルゲン・トロンハイムに多数 一部店舗あり
Boots Apotek 国際ブランド。観光地・ショッピングセンターに立地 限定的
Sjukehusapotek(病院薬局) 各大学病院・総合病院内に併設。入院患者・外来患者対応 病院診療時間に準ずる

薬局での英語フレーズ

「処方箋の薬を受け取りたい」
→ I have a prescription to fill.(アイ ハヴ ア プレスクリプション トゥ フィル)

「処方箋なしで買える頭痛薬はありますか?」
→ Do you have any OTC painkillers for headache?(ドゥ ユー ハヴ エニー オーティーシー ペインキラーズ フォー ヘッドエイク?)

「この薬の副作用を教えてください」
→ Can you tell me the side effects of this medicine?(キャン ユー テル ミー ザ サイド イフェクツ オブ ディス メディスン?)

「子どもに使っても安全ですか?」
→ Is this safe for my child?(イズ ディス セーフ フォー マイ チャイルド?)

旅行保険の使い方

ノルウェー渡航時に保険加入が必須な理由

ノルウェーは医療費が非常に高額です。旅行者は国民皆保険の適用外であり、全額自己負担となります。クレジットカード付帯の保険では補償額が不十分な場合があるため、別途旅行傷害保険への加入を強く推奨します。

医療費の例(目安)

医療行為 目安額(NOK) 円換算目安
Legevakt診察料 200〜400 NOK 約3,000〜6,000円
一般外来(GP) 200〜350 NOK 約3,000〜5,000円
X線検査 500〜1,500 NOK 約7,500〜22,500円
MRI検査 3,000〜8,000 NOK 約45,000〜120,000円
入院(1泊、目安) 5,000〜15,000 NOK 約75,000〜225,000円
救急搬送 500〜2,000 NOK 約7,500〜30,000円

※1 NOK≒15円として計算(為替レートは変動します)

旅行保険の選択ポイント

重要項目 推奨内容
医療費補償 500万円以上(入院リスクを考慮)
歯科治療 対象外が多いため別途確認
疾病死亡・後遺障害 100万円以上推奨
無料通話サービス 24時間対応の電話相談
キャッシュレス(直接払い)対応 主要病院での対応可否を事前確認
緊急医療搬送(エアアンビュランス) 北ノルウェー・フィヨルド地帯の遠隔地旅行時に特に重要

薬剤師メモ ノルウェー北部(トロムソ、ロフォーテン諸島、北極圏)への旅行では、最寄りの高度医療機関まで数時間かかる地域があります。緊急時の医療搬送費用は数百万円に達することもあるため、医療搬送(エアアンビュランス)を補償範囲に含む保険を選ぶことが特に重要です。

保険請求時の手続き

必要書類

  1. 医療機関発行の領収書・診断書

    • 医療機関名、診療日、診療内容、金額を記載
    • ノルウェー語で発行される場合が多い
  2. 処方箋・薬局領収書

    • 薬局名、医薬品名(成分名を含む)、金額、購入日を確認
  3. 保険請求書

    • 保険会社指定フォームに記入
    • ノルウェー国内で診療を受けた事実を証明する書類
  4. パスポートコピー

    • 渡航事実の確認用
  5. 診断書(できれば英文)

    • 受診時に「英文診断書が必要」と申し出ると発行してもらえる場合がある

請求までの流れ

  • 帰国後、速やかに保険会社に連絡(30日以内推奨)
  • 必要書類を郵送またはオンラインで提出
  • 書類不備がなければ2〜4週間で振込

薬剤師メモ 診断書は英語記載をリクエストすることで、後の保険請求をスムーズにできます。医療機関受診時に「I need a medical certificate in English for insurance claim purposes.(アイ ニード ア メディカル サーティフィケート イン イングリッシュ フォー インシュランス クレイム パーパシズ)」と申し出てください。薬局の領収書(kvittering)も必ず受け取り、保管してください。


渡航前の準備:常備薬と医療情報

持参すべき医薬品リスト

ノルウェーでは日本のOTC薬の多くが処方箋なしでは入手困難です。よく使用する医薬品は5〜7日分を目安に日本から持参することをお勧めします。

目的 推奨成分(一般名) 代表的な日本製品例 携帯量の目安
解熱・鎮痛 アセトアミノフェン カロナール(処方)、市販のアセトアミノフェン配合薬 5〜7日分
解熱・鎮痛(NSAIDs) イブプロフェン、ロキソプロフェン イブA錠 🛒(成分名: イブプロフェン)、 ロキソニンS 🛒(成分名: ロキソプロフェン) 5日分
胃痛・消化不良 ファモチジン、ランソプラゾール(処方品)、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物 市販のH₂ブロッカー配合薬(成分名: ファモチジン) 3〜5日分
下痢 ロペラミド塩酸塩 市販のロペラミド配合薬(成分名: ロペラミド塩酸塩) 3日分
乳酸菌・整腸 酪酸菌、ビフィズス菌 ビオフェルミンR(医療用)等の整腸薬 5日分
花粉症・アレルギー フェキソフェナジン塩酸塩、セチリジン塩酸塩 アレグラFX 🛒(成分名: フェキソフェナジン塩酸塩)等 旅行日数分+予備
外傷・切り傷 ポビドンヨード、白色ワセリン 市販の消毒薬・ガーゼ・絆創膏 小型セット
目薬 ヒアルロン酸ナトリウム(人工涙液) 市販の人工涙液型目薬(成分名を確認) 小型
乗り物酔い ジフェンヒドラミン塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩水和物 市販の乗り物酔い防止薬 必要分

処方薬を持参する場合

  • 医師の処方箋コピーを英文で取得
  • 医薬品の英語名・一般名(INN)を記録
  • 容器は元の医薬品パッケージのままで(処方箋情報が記載)
  • 向精神薬・麻薬性鎮痛薬等の規制薬品はノルウェー入国時に税関申告と医師証明書が必要

向精神薬・規制薬品の持ち込みに関する注意

ノルウェーは向精神薬(睡眠薬、抗不安薬等のベンゾジアゼピン系薬剤等)の個人輸入に対して厳格な規制を設けています。日本で処方されたこれら薬剤を携帯する場合、英文の医師証明書(数量・用途・患者氏名・処方医氏名・連絡先を記載)を必ず取得し、税関申告を行ってください。詳細はノルウェー税関(Tolletaten)の公式情報および在日ノルウェー大使館に事前確認することを強く推奨します。

薬剤師メモ 旅行中は睡眠リズムの乱れ・食事内容の変化・ストレス等により胃腸症状が出やすい状況です。特にロペラミド塩酸塩は急性の下痢症状に有効ですが、発熱を伴う下痢・血便がある場合は腸管感染症(細菌性腸炎等)の可能性があり、服用を中止して医療機関を受診してください。ロペラミドは腸管蠕動を抑制するため、感染症では毒素や病原菌の排出を妨げる可能性があります。

医療情報カード(英文)の作成

ノルウェーで医療機関を受診する際、以下の情報を英文で記載したカードを携帯することをお勧めします:

記載内容

Medical Information Card(メディカル インフォメーション カード)

Name: (フルネーム)
Date of Birth: (生年月日)
Blood Type: (血液型)
Allergies:(アレルギー情報)
  例: Penicillin allergy(ペニシリン系抗菌薬アレルギー)
      NSAIDs allergy(非ステロイド性抗炎症薬アレルギー)
      Shellfish allergy(甲殻類アレルギー)
Current Medications:(常用薬:成分名/一般名で記載)
  例: Metoprolol 50mg once daily(βブロッカー)
      Atorvastatin 10mg once daily(スタチン)
Medical Conditions:(既往歴・現病歴)
  例: Hypertension, Type 2 Diabetes
Emergency Contact:(緊急連絡先・日本の親族・電話番号)
Insurance Company:(保険会社名・証券番号・24時間連絡先)
Japanese Embassy Oslo:(+47-2213-7600)

薬剤師メモ アレルギー情報は薬剤名(成分名)で記載することが重要です。たとえば「ペニシリンアレルギー」の場合、アモキシシリンなどの同じβ-ラクタム系抗菌薬との交差アレルギーについても医療機関で確認が必要です。「Penicillin allergy – please check cross-reactivity with other beta-lactams.(ペニシリン アレルジー – プリーズ チェック クロス リアクティビティ ウィズ アザー ベータ ラクタムズ)」と記載しておくと、ノルウェーの医師にも伝わりやすくなります。

ノルウェーは感染症対策が厳格です。渡航前に予防接種状況(特にインフルエンザ、MMR、DTaP)を確認し、必要に応じて接種してください。夏季は北欧特有のダニ媒介脳炎(TBE: Tick-borne encephalitis)のリスクもあり、森林地帯や草原での活動が多い場合はTBEワクチン接種も検討してください。


言語と医療コミュニケーション

医療用語の英語表現

日本語 英語 使用例(英語)
頭痛 Headache I have a severe headache.(アイ ハヴ ア シビア ヘッドエイク)
吐き気 Nausea I feel nauseous.(アイ フィール ノージアス)
下痢 Diarrhea I have had diarrhea for 2 days.(アイ ハヴ ハド ダイアリーア フォー トゥー デイズ)
発熱 Fever I have a fever of 38 degrees Celsius.(アイ ハヴ ア フィーバー オブ サーティエイト ディグリーズ セルシウス)
アレルギー Allergy I'm allergic to penicillin.(アイム アラジック トゥ ペニシリン)
薬の副作用 Side effect This medicine is causing side effects.(ディス メディスン イズ コージング サイド イフェクツ)
処方箋 Prescription Can I have a prescription for this?(キャン アイ ハヴ ア プレスクリプション フォー ディス?)
薬局はどこ Where is the pharmacy Where is the nearest pharmacy?(ウェア イズ ザ ニアレスト ファーマシー?)
痛み(10段階) Pain scale On a scale of 1 to 10, my pain is about 7.(オン ア スケール オブ ワン トゥ テン、マイ ペイン イズ アバウト セブン)

翻訳ツール・アプリの活用

アプリ名 機能 医療対応
Google Translate リアルタイム翻訳、カメラ翻訳、会話モード 処方箋のノルウェー語テキストの読み込み可
Pocketalk 音声双方向翻訳 医師との会話に有効
iTranslate オフライン翻訳対応 山岳地帯・フィヨルド等の通信環境がない場所で利用可
Microsoft Translator グループ会話対応 複数人での医療通訳的利用に適する

緊急時の対応

救急車の呼び方と緊急電話番号

ノルウェーの緊急連絡先は日本の「110/119」とは異なります。渡航前に必ず確認・メモしておいてください。

緊急電話番号一覧

生命に関わる救急・外傷(救急車・ポリス・消防共通):112
救急医療(Ambulanse):113
非緊急医療相談・Legevakt案内:116 117
ポリス(警察):112(緊急)/ 02800(非緊急)
日本国大使館(オスロ):+47-2213-7600

薬剤師メモ ノルウェーでは「救急(113)」と「非緊急医療相談(116 117)」が明確に分けられています。骨折・アナフィラキシー・胸痛・意識消失・呼吸困難などの場合は迷わず113へ。軽度の発熱・胃腸症状・軽傷であれば116 117に相談し、適切な医療機関に案内してもらうことをお勧めします。

電話での基本説明フレーズ

「救急車を呼んでください」
→ I need an ambulance immediately.
  (アイ ニード アン アンビュランス イミーディアトリー)

「場所は〇〇ホテルです」
→ I am at [ホテル名/施設名], the address is [住所].
  (アイ アム アット [施設名]、ジ アドレス イズ [住所])

「日本語が話せる通訳者を手配してもらえますか?」
→ Can you arrange a Japanese interpreter?
  (キャン ユー アレンジ ア ジャパニーズ インタープリター?)

アナフィラキシー(重篤アレルギー反応)への対応

アナフィラキシーは、食物(甲殻類・ナッツ類等)・蜂刺され・医薬品等への暴露後、数分以内に発症する可能性がある全身性の重篤アレルギー反応です。主な症状:皮膚の紅潮・蕁麻疹、喉の腫れ・呼吸困難、血圧低下・意識消失。アドレナリン自己注射薬(エピネフリン自己注射デバイス、例:エピペン)を処方されている方は必ず携行し、使用後は必ず救急(113)を呼んでください。エピネフリン投与後も必ず医療機関での監視が必要です。

薬剤師メモ ノルウェーは医療体制の効率化のため、軽症の患者は一般開業医(GP)での対応を推奨されます。救急搬送は命に関わる場合のみ利用してください。意識がある・呼吸が安定している・大量出血していない場合は、まず116 117に電話して指示を仰ぐことが現地の医療リソース活用として推奨されています。


帰国後の対応

症状が継続する場合

ノルウェー滞在中に受けた診療について、帰国後に日本の医療機関で継続治療を受ける場合は、以下の情報を用意してください:

  • ノルウェーの医師からの診断書(英文)
  • 処方された医薬品の英語名・一般名(INN)
  • 医療検査結果(X線画像、血液検査値など)のコピー

日本の医師への情報提供

  1. 医師名、医療機関名、住所(ノルウェー側)
  2. 診療日、診断名(英語)
  3. 処方内容(成分名・用量・用法・投与期間)
  4. 検査結果の数値

ノルウェーで処方された薬剤の日本での継続治療について

ノルウェーで処方された抗菌薬・抗炎症薬等を継続服用している場合、帰国後に日本の医師に必ず相談してください。薬剤名が異なっていても、同一成分(一般名)を日本の薬局で入手できる場合があります。処方薬の一般名(INN)を医師に伝えることで、同等薬の処方を受けやすくなります。

薬剤師メモ ノルウェーで一般的に処方されるアモキシシリン(アモキシシリン水和物)、セフジニル等の抗菌薬は日本でも処方されます。ただし用量・投与期間は疾患・患者状態によって異なるため、自己判断で継続・中断せず、帰国後速やかに日本の医療機関を受診してください。抗菌薬の中途中断は耐性菌発生リスクに関わる重要な問題です。


まとめ

  • 医療体制の理解:ノルウェーはGP(Fastlege)を中心としたgate-keeper制度と電子処方箋(eResept)が整備された先進医療国。日本と異なるシステムのため事前準備が必須

  • 医療機関の探し方:軽〜中等症は夜間救急(Legevakt・116 117)、緊急は113番、ホテルフロント・日本大使館・旅行保険24時間サポートを活用

  • 処方箋と薬局:電子処方箋(eResept)が主流。紙の処方箋コピーを医師に依頼するとよい。Apotek 1・Vitusapotek等の主要チェーンを利用。OTCはアセトアミノフェン・イブプロフェン・抗ヒスタミン薬等が入手可能

  • 薬学的注意点:アセトアミノフェンは過量摂取による肝障害リスク、イブプロフェンは消化管・腎への影響に注意。必ず食後服用・十分な水分補給を

  • 旅行保険:診察料3,000〜6,000円、入院75,000〜225,000円/泊(目安)の高額医療費に備え、500万円以上の補償と医療搬送特約付きの保険を推奨

  • 常備薬の準備:解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン・イブプロフェン系)、整腸薬(ロペラミド塩酸塩等)、抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン等)を5〜7日分持参

  • 向精神薬・規制薬品:ベンゾジアゼピン系等の規制薬品は英文医師証明書が必須。税関申告を忘れずに

  • 言語対応:英語対応医療機関が増えているが、Google Translate・Pocketalk等の翻訳ツール携帯を推奨。医療情報カード(英文)を常携

  • 緊急連絡先:救急113番、非緊急医療相談116 117、日本国大使館(オスロ)+47-2213-7600

  • 書類準備:英文診断書・成分名入り処方箋コピー・薬局領収書・保険証券を保管。帰国後30日以内に保険会社に連絡

  • 帰国後:ノルウェーで処方された薬剤の継続が必要な場合は日本の医師に一般名(INN)を提示して相談


参考文献・情報源

  1. Norwegian Medicines Agency(Statens legemiddelverk). "OTC medicines and classification in Norway." https://legemiddelverket.no/english/medicinal-products/otc-medicines

  2. Helsenorge.no. "Find health services in Norway." https://www.helsenorge.no/en/

  3. World Health Organization(WHO). "Paracetamolパラセタモール: pharmacokinetics and clinical use." WHO Model Formulary. https://www.who.int/publications/i/item/978924154694-5

  4. Norwegian Directorate of Health(Helsedirektoratet). "Emergency medical services in Norway." https://www.helsedirektoratet.no/english

  5. 外務省海外安全情報. 「ノルウェー:医療事情・感染症情報」. https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcmedical_005.html

  6. PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構). 「解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン・NSAIDs)の適正使用情報」. https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0005.html

  7. CDC(Centers for Disease Control and Prevention). "Travelers' Health: Norway." https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/norway


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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