TL;DR(5分で要点)
- 熱中症は I度・II度・III度 の3段階(日本救急医学会2015)。II度以上は医療機関、III度は即119。
- 深部体温40℃以上+意識障害があれば「熱射病(III度)」を疑い、救急要請しながら現場で冷却を開始。冷却の遅れが予後を決める。
- 嘔吐・意識朦朧・自力で水が飲めない人に水分を飲ませない(誤嚥・窒息のリスク)。点滴が必要。
- 「水だけ大量摂取」は低ナトリウム血症(水中毒)を招き危険。電解質を含む経口補水液を使う。
- 金科玉条: 「水だけ飲ませない・冷却を止めない・迷ったら119」
重症度分類(日本救急医学会2015)
熱中症の対応は重症度によって大きく異なります。まず下表で症状を当てはめてください。「同じ熱中症」であっても、I度の対応(涼所安静+経口補水)をIII度に適用すると致命的な結果を招くことがあります。逆に、すべての熱中症で救急車を呼ぶ必要はなく、正確な判定が過不足のない対応につながります。
| 重症度 | 旧分類 | 主な症状 | 意識 | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| I度 | 熱痙攣・熱失神 | めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量発汗、生あくび | 清明 | 現場で改善可。涼所+経口補水+見守り |
| II度 | 熱疲労 | 頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力低下、虚脱感 | 軽度低下あり | 医療機関受診。点滴が必要なことが多い |
| III度 | 熱射病 | 意識障害、痙攣、肝腎障害、DIC、多臓器不全(MOF) | 明らかに障害 | 即119+現場冷却継続 |
薬剤師メモ: III度の診断基準には①中枢神経症状(意識障害・痙攣・小脳症状)②肝腎機能障害③血液凝固異常(DIC)のいずれかを含む、と記載されています(日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」)。深部体温40℃という数字は補助所見であり、必ずしも40℃を超えなくてもこれらの所見があればIII度と判断します。
重症度を見極める3つのポイント
現場では検査機器がありませんが、以下の3点を観察するだけでI度〜III度の大まかな仕分けができます。
- 呼びかけへの反応: 名前を呼んで目を開けるか、会話が成立するか。「変だな」と感じたらIII度寄りと判断してください。
- 嘔吐の有無と程度: 1回の嘔吐と繰り返す嘔吐は意味が違います。繰り返す嘔吐はII度以上のサインです。経口補水を進めようとしても吐くようであれば、点滴を必要とする可能性が高い。
- 自力での座位保持・歩行: 介助なしに座れない・立てない場合は、少なくともII度と判断し医療機関受診を検討します。
「労作性」と「古典的(非労作性)」の違い
同じ熱射病でも背景によって2タイプに分かれ、治療の緊急度・予後が異なります。
| タイプ | 典型例 | 発症速度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 労作性 | 部活動の学生、建設作業員、自衛官、マラソン | 数十分〜数時間で急激 | 若年で基礎疾患なしでも発症。横紋筋融解・DIC合併が多い |
| 古典的(非労作性) | エアコンなしの室内で過ごす高齢者、乳幼児 | 数日かけて緩徐 | 脱水と循環不全がベース。基礎疾患(心不全・糖尿病・認知症)を持つことが多い |
薬剤師メモ: 古典的熱中症ではループ利尿薬・抗コリン薬(過活動膀胱治療薬・抗ヒスタミン薬)・SGLT2阻害薬・βブロッカーなどが発汗や口渇感、心拍応答を鈍らせ、リスクを高めると指摘されています。服薬中の高齢者は要注意です。
発症機序の違いが治療方針に影響する
労作性では激しい筋肉運動により内因性熱産生が急増するため、体温上昇のスピードが速く、横紋筋融解症(筋肉が壊れてミオグロビンが血中に流出)が起きやすいのが特徴です。横紋筋融解に伴うミオグロビンは腎尿細管を閉塞させ、急性腎障害を引き起こします。血液検査ではCK(クレアチンキナーゼ)が数千〜数万U/Lに上昇することがあります。
**古典的(非労作性)**では体温が数日かけてゆっくり上昇するため、本人や周囲が「体調が悪い」と気づきにくく発見が遅れる傾向があります。脱水・低血圧・基礎疾患の悪化が複合して重篤化するため、「夏場の体調不良」として安易に経過観察せず、高齢者のぐったり感・食欲不振・意識のぼんやりには熱中症の可能性を積極的に疑う姿勢が重要です。
5分で判定するフローチャート
倒れている人・ぐったりしている人を見たら、上から順にチェックしてください。
【STEP1】呼びかけ反応・意識
- 反応なし/会話成立しない/痙攣あり
→ ● III度(熱射病)疑い → 即119+現場冷却開始(後述)
- 反応あり、会話可能
→ STEP2へ
【STEP2】症状の重さ
- 頭痛・嘔吐・強い倦怠感・ふらつきで歩けない
→ ● II度疑い → 医療機関受診(独歩困難なら救急要請)
- 嘔吐を繰り返す/自力で水が飲めない
→ ● II度以上 → 119
- めまい・立ちくらみ・こむら返り・発汗のみ、会話明瞭
→ STEP3へ
【STEP3】現場応急処置(I度)
- 涼しい場所へ移動(エアコン室・日陰)
- 衣服をゆるめる、靴下を脱がせる
- 経口補水液(OS-1等)を少量ずつ
- 首・腋窩・鼠径部を保冷剤で冷やす
- 30分以内に改善しない/悪化
→ ● II度として医療機関受診
119を呼ぶ閾値は低めで構いません。II度かIII度かの線引きは医療者でも難しく、現場では「迷ったら呼ぶ」が原則です。
フローチャートを使う際の注意点
フローチャートは意識の有無を最初の分岐に置いていますが、「一見意識がある」ように見えてもIII度相当という事態が起こり得ます。具体的には以下の状態に注意してください。
- 目は開いているが会話がちぐはぐ(見当識障害)
- 暑い・寒いなど感覚の訴えがおかしい(体温感知の異常)
- 自分の名前は言えるが、日付・場所がわからない(軽度の意識障害)
- 突然ボーっとして反応が遅くなった
これらは中枢神経機能の低下を示唆し、III度の初期である可能性があります。「意識清明」を確認する際は名前だけでなく「今日は何月何日ですか?」「ここはどこですか?」といった質問を加えることで精度が上がります。
現場冷却 — 「冷やし方」が予後を決める
熱射病は時間との勝負です。深部体温が40℃を超えている時間が長いほど、肝腎障害・DIC・神経後遺症のリスクが上がります。救急車到着までの間も冷却を止めないことが重要です。
推奨される冷却法(効果が高い順)
| 方法 | 概要 | 適応場面 |
|---|---|---|
| 冷水浸漬(cold water immersion) | 浴槽・大型容器に冷水を張り首から下を浸ける | 労作性熱射病の標準。最も冷却速度が速い |
| 蒸散冷却(evaporative cooling) | 全身に霧吹きで水をかけ、扇風機で送風 | 高齢者・搬送中など浸漬不可な場面 |
| 氷嚢・保冷剤 | 首・腋窩・鼠径部・背部の太い血管周囲に当てる | 補助的。これ単独では冷却不足 |
| 冷却ブランケット | 医療機関で使用 | 病院内 |
薬剤師メモ: 米国スポーツ医学会(ACSM)は労作性熱射病で 「Cool first, transport second(先に冷やしてから搬送)」 を推奨しています。深部体温39℃を切るまで冷却してから搬送する施設もあります。家庭・現場では浴槽に水を張る・庭でホースをかけるなど、できる手段で開始してください。
冷却の生理学的根拠
なぜ冷却速度が予後を左右するのかを理解しておくと、「とにかく冷やす」という行動が自然と取れるようになります。
体温が41〜42℃を超えると細胞内酵素の失活が始まります。酵素は特定の温度範囲でのみ立体構造を保てる蛋白質であり、高温にさらされると変性してATP産生や膜輸送などの生命維持反応が停止します。脳神経細胞はとりわけ温度変化に敏感で、40℃台の高体温が持続すると**神経細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)**が誘導され、後遺症として小脳失調・認知機能障害が残ることがあります。
また、高体温は血管内皮細胞を直接障害し、凝固因子の活性化と線溶系の抑制が同時に起こることでDIC(播種性血管内凝固)が引き起こされます。DICが進行すると出血と血栓が全身で同時進行し、肝臓・腎臓・肺・消化管など多臓器が障害されます。集中治療室での管理が必要になるのはこのためです。
やってはいけないこと
- ❌ 意識のない人に水を飲ませる(誤嚥・窒息)
- ❌ 「様子を見る」(深部体温40℃が続けば多臓器不全に進行)
- ❌ アルコールで体を拭く(皮膚血管収縮で逆効果という議論あり)
- ❌ 解熱薬(アセトアミノフェン・NSAIDs)の投与(熱中症は感染性発熱と機序が異なり無効。むしろ肝腎障害を悪化させる懸念)
薬学的解説 — 解熱薬が熱中症に「無効かつ有害」な理由
熱中症と感染症の発熱は、体温調節の機序がまったく異なります。この違いを正確に理解することで、「解熱薬を飲ませればいい」という誤解が解消されます。
感染性発熱と熱中症の機序比較
| 項目 | 感染性発熱 | 熱中症(環境性高体温) |
|---|---|---|
| 原因 | 病原体→サイトカイン(IL-1β・IL-6・TNF-α)→PGE2産生→視床下部のセットポイント上昇 | 外部熱負荷または運動による内因性熱産生の蓄積 |
| 体温調節中枢 | セットポイントが高く設定されている(意図的に発熱) | セットポイントは正常。放熱が追いつかず不随意に体温上昇 |
| 解熱薬の作用点 | COX阻害→PGE2合成抑制→セットポイント低下→解熱 | PGE2の関与が乏しいためCOX阻害では体温を下げられない |
アセトアミノフェンやNSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を抑えることで、感染時に高く設定された視床下部のセットポイントを元に戻すという機序で解熱効果を発揮します。
熱中症では視床下部のセットポイント自体は正常であるため、COXを阻害してもセットポイントは下がらず解熱効果は期待できません。さらに、NSAIDsは腎臓のプロスタグランジン依存性の血流を低下させるため、すでに脱水状態にある熱中症患者では腎血流をさらに減少させ急性腎障害を悪化させるリスクがあります。アセトアミノフェンについても、熱射病に伴う肝障害が先行している場合には通常用量でも肝毒性が顕在化する可能性があります。
結論として、熱中症に対して市販・処方を問わず解熱薬を自己投与することは推奨されず、むしろ有害となり得ます。解熱は物理的冷却のみで行ってください。
リスクを高める薬剤一覧と機序
高齢者・慢性疾患患者で特に問題となる「熱中症リスクを高める薬剤」を薬学的な機序とともに整理します。主治医・薬剤師への相談なく自己中断することは危険ですが、服用中であることを念頭に置いて夏場の管理を行う必要があります。
| 薬剤カテゴリ | 代表的な成分例 | 熱中症リスクを高める機序 |
|---|---|---|
| ループ利尿薬 | フロセミド | 尿量増加→脱水・低Na・低K血症の促進 |
| サイアザイド系利尿薬 | ヒドロクロロチアジド | 同上。低Na血症が特に問題 |
| βブロッカー | アテノロール、メトプロロール | 心拍数上昇抑制→心拍出量増加で体温を逃がす代償反応が低下 |
| 抗コリン薬(泌尿器・消化器) | オキシブチニン、スコポラミン | 発汗抑制→放熱障害。口渇感抑制→飲水量減少 |
| 第一世代抗ヒスタミン薬 | ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン | 抗コリン作用による発汗抑制 |
| 抗精神病薬・三環系抗うつ薬 | ハロペリドール、アミトリプチリン | 視床下部の体温調節機能障害+抗コリン作用 |
| SGLT2阻害薬 | エンパグリフロジン、ダパグリフロジン | 尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿→脱水 |
| ACE阻害薬・ARB | エナラプリル、カンデサルタン | 腎血流調節に関与。脱水との組み合わせで腎機能悪化のリスク |
| 利尿を促すOTC製品 | カフェイン含有製品(眠気防止薬等) | 腎でのNa再吸収低下→利尿→脱水 |
薬剤師メモ: 「服薬をやめれば安全」とは限りません。βブロッカーや抗精神病薬を突然中断すると、リバウンドによる重篤な心事故や離脱症状を生じます。夏場の暑さ対策(室温管理・水分摂取・外出時間の調整など)を主治医・薬剤師と相談しながら行うことが適切です。
経口補水の用量と禁忌
I度・軽症II度で意識が清明なら、経口補水液を使います。
推奨される飲料
- 経口補水液(Na 50mEq/L前後の市販製品が相当する): Na濃度が高く吸収が速い。脱水の補正に適している
- スポーツドリンク: Na 20mEq/L前後とやや薄め。長時間労作には可、重度脱水にはやや力不足
- ただの水・お茶のみ: ❌ 電解質が補えず低Na血症を悪化させる
用量の目安
- 成人: 500〜1000mL/時を目安に少量頻回(一気飲みは嘔吐誘発)
- 小児: 体重1kgあたり5〜10mL/時から開始
経口補水の禁忌
下記に当てはまる場合は経口摂取させず即119・医療機関へ:
- 意識が朦朧としている/呼びかけに反応が鈍い
- 嘔吐を繰り返している
- 自力でコップを持てない・座位を保てない
- 痙攣の既往がある
薬剤師メモ: 「水分はとっています」と訴える患者が低Na血症で来院するケースは珍しくありません。マラソン後の意識障害でNa 120mEq/L台ということもあります。水だけを大量に飲むと相対的にNaが希釈され、脳浮腫を起こします。電解質補給を必ずセットにしてください。
低ナトリウム血症(水中毒)の薬学的機序
正常な血清Na濃度は135〜145mEq/Lです。大量発汗では水と電解質の両方が失われますが、水のみで補充を続けると、体内の総水分量が増えてNa濃度が相対的に低下する希釈性低Na血症が起こります。
血清Na濃度が120mEq/L台まで低下すると脳細胞が浮腫を起こし、頭痛・嘔吐・意識障害・痙攣が出現します(低Na血症性脳症)。これらの症状は熱中症の重症化と見分けがつきにくく、「意識障害だから熱射病」と判断して経口水分補給を続けることが逆に状態を悪化させるというジレンマが生じます。
医療機関では血清Naを測定して補正速度を厳密に管理しながら点滴(生理食塩液・高張食塩液)で補正しますが、急速に補正しすぎると脱髄性疾患(浸透圧性脱髄症候群)を引き起こすため、専門的な管理が必要です。
受診後にチェックされる検査
II度以上で医療機関に運ばれると、以下が一通り評価されます。家族が状況を把握しておくと医師との連携がスムーズです。
| 検査 | 何を見るか | 異常値の目安(参考) |
|---|---|---|
| 動脈血液ガス | 代謝性アシドーシス、乳酸値 | 乳酸2mmol/L以上で組織低酸素を示唆 |
| CK(クレアチンキナーゼ) | 横紋筋融解症 | 1000U/L以上で要注意。数万U/Lに達することも |
| AST / ALT | 肝障害 | 熱射病では数百〜数千U/Lに達することも |
| Cre / BUN / 尿所見 | 急性腎障害、ミオグロビン尿 | ミオグロビン尿では尿が赤褐色に変色 |
| PT / APTT / フィブリノゲン / D-dimer | DIC評価 | フィブリノゲン低下+D-dimer上昇はDICを示唆 |
| Na / K / Cl | 低Na血症・高K血症 | Na 130mEq/L未満、K 5.5mEq/L以上で要対応 |
| 直腸温・膀胱温 | 深部体温の正確な評価 | 腋窩・口腔温は深部温より1〜2℃低く不正確 |
| 血小板数 | DIC・骨髄抑制 | 急激な低下はDICの進行を示す |
| 尿中ミオグロビン | 横紋筋融解の腎障害への波及 | 陽性なら十分な輸液で尿量確保が急務 |
これらの異常が複数あればIII度として集中治療管理になります。
検査結果を踏まえた治療の流れ(家族への説明補足)
医療機関で「ICUに入ります」「人工透析を検討します」と言われると家族は動揺します。あらかじめ以下を把握しておいてください。
- 横紋筋融解→急性腎障害が進行した場合、腎臓を休ませながら老廃物を除去するために透析(持続血液濾過透析:CHDF)が必要になることがあります
- DICに対しては新鮮凍結血漿・濃厚血小板の輸血、抗凝固療法(トロンボモジュリン製剤等)が行われます
- 体温管理のため集中治療室では冷却ブランケット・冷却液の点滴・血管内冷却カテーテルなどが使用されます
- 経過が良好でも、神経後遺症(小脳失調・記憶障害)が残る場合があるため、退院後のリハビリ評価が重要です
特別な配慮が必要な集団
高齢者
高齢者は複数の機能低下が重なるため熱中症リスクが特に高い集団です。
- 口渇感の鈍化: 高齢者は血液が濃縮されても口渇を感じにくく、気づかないうちに脱水が進む
- 腎臓の濃縮能低下: 尿を濃縮して水分を保持する腎機能が加齢で低下し、同じ状況でも若者より早く脱水になる
- 皮膚血流の調節障害: 暑いときに皮膚血管を広げて放熱するメカニズムが加齢で鈍る
- 複数薬剤の服用: 前述のリスク薬剤を複数服用しているケースが多い
- 認知症による訴えの困難: 「暑い」「気分が悪い」という訴えができない、またはできても周囲が熱中症と結びつけにくい
高齢者では室温28℃でも熱中症を発症し得ます。エアコンの設定温度は「涼しすぎる」くらい(25〜26℃程度)でも構わないという意識が必要です。
小児・乳幼児
- 体表面積/体重比が大きく、外気温の影響を受けやすい
- 発汗機能が未発達で放熱効率が低い
- 自分で水分補給ができない、暑さを訴えられないことがある
- チャイルドシートでの車内放置は数分で致命的な高体温を招く
運動部活動・スポーツイベントの参加者
- WBGT(湿球黒球温度)28℃以上での激しい運動は原則避ける
- 水分補給は自覚的な渇き以前に「計画的」に行う(30分ごとに150〜250mL程度が目安)
- 運動前日から十分な水分・電解質を摂取しておくこと(当日だけの補給では間に合わない)
予防のチェックリスト
- WBGT(暑さ指数)28℃以上で運動原則中止、31℃以上で外出も控える(環境省「熱中症予防情報サイト」基準)
- 喉が渇く前に飲む(高齢者は口渇感が鈍い)
- 起床時・就寝前にコップ1杯
- エアコンを我慢しない(電気代より命)
- 利尿薬・抗コリン薬を服用中の方は主治医・薬剤師に夏場の調整を相談
体調・薬・環境の「3つの複合リスク」を意識する
熱中症は単一の原因ではなく、①環境(気温・湿度・日射)×②身体(脱水・睡眠不足・発熱・飲酒)×③薬剤という3要素が重なったときに重症化しやすいです。
- 前日の飲酒: アルコールには利尿作用があり、翌日起床時に軽度の脱水状態になっていることがある
- 睡眠不足・疲労: 自律神経機能が低下し、発汗・皮膚血管拡張などの放熱機能が鈍る
- 感染症回復直後: 体力・水分量が低下した状態で高温環境に出るのは特に危険
- 暑さへの慣れ(暑熱順化)不足: 夏の初め(6〜7月)は体がまだ暑さに順化していないため、熱中症が起きやすい。意識的に2週間程度かけて暑い環境に慣れさせることが有効
塩タブレット・塩飴の正しい使い方
発汗量が多い作業や運動では電解質の補給として塩分摂取が推奨されますが、水分補給なしに塩分だけ摂ると高ナトリウム血症を招く可能性があります。塩タブレット・塩飴は必ず水分と一緒に摂取し、1粒(0.1〜0.2g程度の食塩相当)につき200mL前後の水分を目安に合わせてください(製品によって食塩含量が異なるため表示を確認)。腎疾患・心疾患・高血圧で減塩食を指示されている方は事前に主治医・薬剤師に相談してください。
まとめ — 金科玉条3か条
- 水だけ飲ませない(電解質をセットで)
- 冷却を止めない(救急車到着までも、搬送中も)
- 迷ったら119(II度かIII度かの判断は現場では困難)
熱中症は予防・早期発見・現場冷却で予後が大きく変わります。意識障害や繰り返す嘔吐がある場合の経口補水は禁忌であり、ためらわず救急要請してください。基礎疾患のある方・服薬中の方の個別判断は、かかりつけ医・薬剤師にご相談ください。
参考文献
-
日本救急医学会 熱中症に関する委員会「熱中症診療ガイドライン2015」(日本救急医学会公式サイト) https://www.jaam.jp/info/2015/files/info-20150529.pdf
-
環境省「熱中症予防情報サイト(WBGT・熱中症警戒アラート)」 https://www.wbgt.env.go.jp/
-
厚生労働省「熱中症について」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuusho/index.html
-
消防庁「令和6年(2024年)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」 https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
-
Casa DJ, et al. "National Athletic Trainers' Association Position Statement: Exertional Heat Illnesses." Journal of Athletic Training. 2015;50(9):986-1000. https://doi.org/10.4085/1062-6050-50.9.07
-
Leon LR, Bouchama A. "Heat stroke." Comprehensive Physiology. 2015;5(2):611-647. https://doi.org/10.1002/cphy.c140060
-
日本神経学会・日本内科学会「熱中症に伴う神経障害の診療ガイド」参考:神経障害評価に関連する部分は各学会ガイドラインを参照のこと。
監修: 薬剤師(博士(薬学))