イスラエルに薬を持ち込む手順|MOH-IL規制と麻向法・申告書を薬剤師が解説

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イスラエルへの医薬品持ち込み基本ルール

イスラエルは比較的医療水準が高い国ですが、医薬品の持ち込みに関する規制が複雑です。特に処方薬(Rx医薬品)と麻薬性物質に指定された医薬品の持ち込みは厳しく制限されています。

イスラエルの医薬品規制の基盤は、国内の薬事法(Pharmacists' Ordinance)および保健省(Ministry of Health、以下MOH-IL)が発布する行政命令にあります。日本の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と同様に、医薬品の輸入・流通・販売は厳格な許可制が採られており、旅行者が医薬品を個人携帯で持ち込む場合にも、この規制の枠組みの中で判断されます。

特に重要なのは、イスラエルが国連麻薬条約(1961年の麻薬単一条約、1971年の向精神薬条約)の締約国であり、国際的な麻薬・向精神薬の規制に準拠している点です。これは日本の麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)と規制対象が重複する部分が多いことを意味しますが、規制の程度や手続き要件が国によって異なるため、日本国内では合法的に処方・使用されている薬物であっても、イスラエルへの持ち込みに事前許可が必要なケースがあります。

基本原則:

  • 個人使用の医薬品のみ持ち込み可能
  • 1用量の使用量程度(通常30日分以内推奨)
  • 医師の処方箋または処方箋画像の所持が必須
  • 英文医師診断書(Letter of Medical Necessity)を推奨
  • 薬剤師による成分説明書(英文)があると検査時の説明がスムーズ

イスラエルの医薬品規制機関

イスラエルの医薬品審査はIsraeli Ministry of Health(保健省、MOH-IL)により厳格に行われます。MOH-ILの下には医薬品局(Pharmaceutical Administration)が設置されており、医薬品の製造承認・輸入許可・市場監視の一元管理を担っています。

特に輸入許可の観点では、個人旅行者が携帯する医薬品については、MOH-ILの定めるガイドラインに従い、数量・成分・用途に応じて持ち込みの可否が判断されます。医療麻薬(Narcotic drugs)および向精神薬(Psychotropic substances)については、MOH-ILへの事前届出または許可申請が求められる場合があり、これを怠ると税関での没収だけでなく、法的手続きの対象となるリスクがあります。

最新情報は外務省およびイスラエル大使館・総領事館の公式サイトで随時更新されるため、渡航前14日以内の確認を強く推奨します


処方薬の持ち込み手続き

必要書類チェックリスト

書類 詳細 必須度
処方箋または処方箋画像 日本の医師発行、英文翻訳 ★★★
医師の英文診断書 Medical Necessity Letter、医師直筆署名 ★★★
薬剤師の成分説明書 英文、有効成分・用量・用途明記 ★★
日本語処方箋 念のため原本と英訳コピー両方 ★★
薬剤師からの英文手紙 薬歴・アレルギー情報含む ★★

書類準備において特に薬剤師の立場から強調したいのは、**薬剤師の成分説明書(Pharmacist's Letter)**の重要性です。この書類には、単に商品名を記載するだけでなく、国際一般名(INN: International Nonproprietary Name)による有効成分名、含有量(mg/錠など)、剤形、用法・用量、適応疾患を英文で明記することが求められます。イスラエルの税関検査官は日本の医薬品商品名に馴染みがないため、成分名で記載することが信頼性向上に直結します。

また、書類はすべてA4サイズで統一し、医療機関・薬局の公式レターヘッドに印刷することで、より正式な書類として認識されやすくなります。

英文医師診断書の取得方法

ステップ1: 医師に依頼

  • かかりつけ医または内科医に「イスラエル渡航用のMedical Necessity Letter」を要望
  • 記載内容:患者名・パスポート番号・医学的理由・投与期間・医師署名
  • 作成期間:1~2週間

Medical Necessity Letterには、以下の6項目を必ず含むよう医師に依頼してください。

  1. 患者氏名(パスポート表記に合わせたローマ字)
  2. パスポート番号・国籍
  3. 診断名(ICD-10コードまたは英文病名)
  4. 処方されている薬物名(INN、含有量、剤形)
  5. 渡航期間および使用日数(例: "30-day supply for travel from Japan to Israel")
  6. 医師の氏名・所属機関・医師免許番号・直筆署名・日付

ステップ2: 薬局での確認

  • 調剤薬局の薬剤師に医師診断書の内容を確認してもらう
  • 必要に応じて薬剤師から追加の英文書類を作成(有効成分・使用方法)

薬剤師が発行する成分説明書は、医師診断書を補完する重要書類です。特に麻薬指定成分や向精神薬が含まれる場合、日本の麻薬処方箋(黄色の処方箋)のコピーと薬剤師の英文説明書を組み合わせることで、書類の整合性が高まります。ただし、麻薬処方箋の原本は薬局に保管義務があるため、必ずコピーを使用してください。

ステップ3: 複数部数の準備

  • 原本1部と英訳コピー3~4部を用意(税関検査時の提示、予備用)

持ち込み禁止・要注意医薬品

完全禁止成分

以下の成分を含む医薬品は、医師の処方箋があっても原則として持ち込み不可です:

禁止成分分類 代表的な有効成分(INN) 日本での主な用途 規制根拠
麻薬性物質 モルヒネ(morphine)、オキシコドン(oxycodone) 癌性疼痛・術後疼痛 麻薬単一条約Schedule I
コデイン含有製剤 コデインリン酸塩(codeineコデイン phosphate) 咳止め・鎮痛 麻薬単一条約
ベンゾジアゼピン系向精神薬 アルプラゾラム(alprazolam)、ロラゼパム(lorazepam)、トリアゾラム(triazolam) 抗不安・睡眠導入 向精神薬条約Schedule IV
覚醒剤原料・覚醒剤 メタンフェタミン(methamphetamine)、メチルフェニデート(methylphenidateメチルフェニデート ADHD治療(メチルフェニデートは日本で使用) 最重度規制
バルビツール酸系 フェノバルビタール(phenobarbital)高用量製剤 抗てんかん(日本では使用) 向精神薬条約

薬学的観点から補足すると、コデインは日本では一般用医薬品の咳止めにも含有されており、旅行者が意識せずに持参するケースが特に注意が必要です。コデインはオピオイド受容体(主にμ受容体)に作用するプロドラッグであり、体内でCYP2D6によりモルヒネに代謝されることで鎮痛・鎮咳効果を発揮します。国際規制上はモルヒネと同じく麻薬単一条約のスケジュール管理対象であり、イスラエルを含む多くの国で厳格な管理が行われています。コデインを含む咳止め薬を「市販薬だから問題ない」と考えて持参することは絶対に避けてください。

**ベンゾジアゼピン系薬物(BZD)**についても薬学的解説を加えます。アルプラゾラムやロラゼパムはGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用し、GABA(γ-アミノ酪酸)の抑制性神経伝達を増強することで抗不安・鎮静・筋弛緩・抗けいれん効果を示します。依存性形成リスクが高く、乱用薬物としても問題視されているため、イスラエルを含む多くの中東・欧米諸国では厳格な携帯規制が設けられています。

要注意医薬品(要許可または要申告)

医薬品・成分 日本での代表的な用途 イスラエルでの状況 推奨対応
フェノバルビタール(phenobarbital) 抗てんかん薬 向精神薬として規制 要医師診断書+事前確認
ジアゼパム(diazepam) 抗てんかん・筋弛緩 向精神薬条約対象 要診断書・大使館確認必須
ゾルピデム(zolpidem) 不眠症治療 向精神薬条約Schedule IV 要処方箋・申告
一部の抗精神病薬 統合失調症・双極性障害 個別成分で判断 要診断書・申告
ジギタリス製剤(ジゴキシン等) 心不全・不整脈 一般的には要処方箋 処方箋と診断書
ステロイド全身投与製剤 自己免疫疾患等 通常は要処方箋 処方箋携帯推奨
ステロイド外用薬 皮膚疾患 特別制限なし 通常OK
抗生物質 感染症 通常OK 処方箋推奨
NSAIDs(イブプロフェン等) 解熱鎮痛 通常OK 個人使用量なら申告不要

**ゾルピデム(zolpidem)**は日本では睡眠薬として広く処方されていますが、GABA-A受容体のω1サブタイプに選択的に作用する非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(いわゆるZ薬)であり、向精神薬条約のSchedule IVに分類されています。イスラエルでも処方は行われていますが、旅行者が持ち込む場合は必ず医師の処方箋を携帯し、税関で申告する必要があります。長時間フライト後の時差ぼけ対策などで使用する方は特に注意が必要です。

薬学的観点から見る持ち込みリスクの高い日本製OTC医薬品

旅行者が特に見落としやすいのが、日本のOTC(一般用医薬品)に含まれる規制成分です。

日本のOTCカテゴリ 要注意成分(INN) リスクレベル
OTC咳止め・総合風邪薬 コデインリン酸塩(codeineコデイン phosphate)、ジヒドロコデインリン酸塩(dihydrocodeine phosphate) 非常に高い
OTC鼻炎薬・風邪薬 プソイドエフェドリン(pseudoephedrineシュードエフェドリン)※日本では現在OTC利用少 中程度
OTC睡眠改善薬 ジフェンヒドラミン(diphenhydramineジフェンヒドラミン)※抗ヒスタミン系は通常問題少 低い
漢方製剤 エフェドリン含有成分(麻黄:Ephedra sinica)を含む製剤 中程度

特にコデインリン酸塩またはジヒドロコデインリン酸塩を含むOTC咳止め薬は、日本では第1類医薬品または第2類医薬品として市販されていますが、成分名が国際規制対象であることを多くの旅行者が認識していません。渡航前に使用中・携帯予定のOTC薬の成分表示(添付文書または外箱)を必ず確認してください。

市販薬の取り扱い

持ち込み可能(申告推奨)

  • 総合感冒薬(アセトアミノフェン、イブプロフェン含有)
  • 胃腸薬(H2ブロッカー、制酸薬)
  • 目薬(人工涙液、充血除去薬)
  • 皮膚外用薬(ステロイド軟膏を含む)
  • 消化酵素製剤
  • ビタミン剤(通常医療用量)

持ち込み不可または要注意

  • コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩含有の咳止め薬
  • 一部の漢方製剤(麻黄含有製剤はエフェドリン系成分が問題となる場合あり)
  • 睡眠導入薬(ゾルピデム等の向精神薬成分を含むもの)

薬学的解説:持ち込み規制薬物の機序と代替薬の考え方

オピオイド系薬物(麻薬性鎮痛薬)の薬理学的背景

モルヒネ、オキシコドン、コデインなどのオピオイド系薬物は、中枢神経系および末梢神経系のオピオイド受容体(μ、κ、δ受容体)に結合することで鎮痛・鎮咳・鎮静効果を発揮します。特にμ受容体への作用が主な鎮痛効果に関与し、κ受容体への作用は脊髄レベルの鎮痛および鎮静に関わります。

これらの薬物は身体的依存性・精神的依存性・耐性形成のリスクが高く、国際麻薬規制の最も厳格なカテゴリに分類されています。癌性疼痛や術後疼痛でモルヒネ・オキシコドンを使用している患者が長期の海外渡航を計画する場合、治療の継続性と渡航国の規制を両立させるために、主治医・薬剤師・在外公館との三者間での調整が必須となります。

渡航期間が14日以内であれば、イスラエル大使館を通じてMOH-ILへの輸入許可申請を行うことで持ち込みが認められる可能性があります(申請から許可までの期間は目安として2〜4週間、ただしMOH-ILの審査状況により異なります)。

ベンゾジアゼピン系薬物の薬物動態と突然中断のリスク

BZD系薬物はGABA-A受容体のCl⁻チャネル開口頻度を増加させることで中枢抑制作用を示します。長期使用患者が突然服薬を中断すると、反跳性不安・不眠、振戦、発汗、重篤な場合は痙攣発作を含む離脱症状が生じるリスクがあります。

この観点から、BZD系薬物を長期服用中の旅行者は「持ち込みできないなら飲まなければよい」という単純な判断は危険です。主治医に渡航計画を相談し、渡航先で入手可能な代替薬への切り替えや、漸減プログラムの可能性について事前に相談することを強く推奨します。

イスラエルでは現地の精神科・神経内科でBZD系の処方を受けることは可能ですが、外国人旅行者への初回処方には医療機関の判断が伴い、時間・費用・言語の壁があります。絶対に自己判断で薬を中断しないでください。


税関申告と入国手続き

ベングリオン空港での申告方法

テルアビブのベン・グリオン国際空港(Ben Gurion International Airport)はイスラエルの主要国際空港であり、ここでの入国審査・税関検査は世界でも最も厳格なレベルとして知られています。セキュリティ上の理由から、入国審査では渡航目的・滞在先・荷物の中身について詳細な質問が行われることがあり、医薬品の持ち込みについても例外ではありません。

1. 搭乗前の準備

  • 医薬品は機内持ち込み(carry-on)に限定することを推奨
  • 預け荷物に入れた場合、検査時に没収されるリスク増加
  • 医薬品用の小型ポーチに書類と一緒に整理
  • 注射薬(インスリン等)を使用する場合は、針(注射針)についても医師の診断書と合わせて説明できるよう準備する

2. 入国カード記入時

  • イスラエル入国カードの「Medical items」欄に正直に記入
  • 医薬品の一般名(成分名、INN)と用途を英語で記載
  • 薬剤師・医師の連絡先を記載(イスラエル側問い合わせ対応)

3. 税関検査(Customs)での対応

税関検査では、落ち着いて医薬品と書類を提示することが最も重要です。以下の英語フレーズが役立ちます。

  • These are my personal prescription medications.(ジーズ アー マイ パーソナル プリスクリプション メディケーションズ)
  • I have a letter from my doctor in Japan.(アイ ハヴ ア レター フロム マイ ドクター イン ジャパン)
  • This medication is for my [disease name].(ディス メディケーション イズ フォー マイ [疾患名])

没収・トラブル時の対応

医薬品が没収された場合:

  1. 没収通知書(Receipt)を必ず受け取る
  2. 日本大使館・総領事館(在イスラエル日本国大使館)に連絡
  3. 帰国後、医師に経緯を報告(再処方検討)
  4. 今後の渡航ルートの見直し検討

没収通知書(レシート)は、帰国後に日本の医師に状況を説明し再処方を受ける際の記録としても重要です。また、海外旅行保険の医療費補償請求において、没収に起因する現地での医薬品購入費用を申請する際の証拠書類となる場合があります。保険条件の詳細は、加入している保険会社に事前に確認してください。


代替手段と事前購入

イスラエル現地での医薬品購入

イスラエルの薬局(Pharmacy、ヘブライ語ではבֵּית מִרְקַחַת / Beit Mirkahat)での医薬品購入は比較的容易です。主要都市(テルアビブ、エルサレム、ハイファなど)の薬局ではヘブライ語・英語・アラビア語対応が可能なことが多く、旅行者にとっても利用しやすい環境が整っています。

ただし、以下の点には注意が必要です。

  • イスラエルで流通している医薬品のブランド名は日本と異なることがほとんどです。成分名(INN)を英語で伝えることが最も確実なコミュニケーション手段です。
  • 処方薬に相当する医薬品は現地でも処方箋が必要です。
  • 費用は日本の保険診療と比較して相当高額になる可能性があります。

現地薬局で役立つ英語フレーズ:

  • Do you have a painkiller with ibuprofen?(ドゥ ユー ハヴ ア ペインキラー ウィズ アイビュープロフェン?)
  • I'm looking for an antacid.(アイム ルッキング フォー アン アンタシッド)
  • I need an antihistamine for allergies.(アイ ニード アン アンチヒスタミン フォー アラジーズ)

イスラエルで入手可能な主な一般用医薬品の成分例:

用途 有効成分(INN) 備考
解熱鎮痛(アセトアミノフェン系) パラセタモール(paracetamolパラセタモール / acetaminophenアセトアミノフェン 現地でも広く流通
解熱鎮痛(NSAIDs系) イブプロフェン(ibuprofenイブプロフェン 現地でも広く流通
抗ヒスタミン(第1世代) クロルフェニラミン(chlorphenamineクロルフェナミン)等 現地で入手可能
制酸薬 炭酸カルシウム(calcium carbonate)等 現地で入手可能
人工涙液 ヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronate)等 現地で入手可能

なお、成分名は実在する国際一般名(INN)のみを記載しています。現地での具体的なブランド名については、薬局スタッフに成分名を提示して確認してください。

医療体制の質

  • イスラエルの医療水準は国際的に高く評価されています
  • テルアビブ、エルサレムなど主要都市の医師は英語対応可能な場合が多い
  • 観光客向けの医療サービスも整備されています
  • ただし医療費は非常に高額であるため、海外旅行保険への加入は必須です

事前にイスラエル大使館で相談

在日本イスラエル大使館

  • 所在地:東京都千代田区(最新情報は公式サイトでご確認ください)
  • 電話:+81-3-3264-0911(目安。最新情報は公式サイトで確認)
  • 公式サイト経由のメール相談も可能(回答に1〜2週間要する場合あり)

渡航前の確認事項

  • 特定医薬品(向精神薬・麻薬・BZD系等)の持ち込み可否
  • MOH-ILへの事前許可申請が必要かどうか
  • 医師診断書の形式要件(記載言語、公証の要否等)
  • 最新の規制情報(規制内容は予告なく変更される場合があります)

インスリン・生物学的製剤など注射剤の特別な取り扱い

糖尿病患者がインスリン製剤を携帯する場合、または自己注射用の生物学的製剤(関節リウマチ・炎症性腸疾患等の治療薬)を持参する場合には、通常の処方薬と異なる追加的な配慮が必要です。

インスリン製剤の持ち込み

インスリンは生物製剤であり、適切な保冷管理が必要です。フライト中の保管については、機内の気温・圧力変動を考慮した専用の保冷ポーチの使用を推奨します。また、注射針(注射器)については、多くの国でセキュリティ検査時に医師の証明書の提示を求められます。イスラエルも例外ではなく、インスリン使用を証明する医師診断書と処方箋を注射用品と一緒に携帯することが必須です。

生物学的製剤(自己注射)の持ち込み

TNF-α阻害薬(アダリムマブ等)やIL-6阻害薬(トシリズマブ等)など自己注射型の生物学的製剤は、要冷蔵(通常2〜8℃)の製品が多く、長距離渡航時の温度管理が課題となります。これらは高額製剤であり、紛失・没収のリスクを最小限にするためにも事前の大使館確認と十分な書類準備が重要です。


渡航者向けの準備チェックリスト

医薬品準備(渡航3週間前から開始)

□ 医師に医学的必要性書簡(Medical Necessity Letter)の発行を依頼 □ 薬局で英文処方箋コピー取得 □ 薬剤師から成分説明書作成依頼(INN記載、英文) □ 医薬品の使用期限確認(渡航期間中に有効期限が切れないか) □ 医薬品名・成分名(INN)をメモ帳に整理(英語) □ イスラエル大使館で持ち込み可否確認(規制対象成分を含む場合は必須) □ MOH-ILへの事前許可申請が必要か確認 □ 書類3〜4部複製(原本保護、提示用コピー確保) □ 小型ポーチに整理(機内持ち込み荷物に) □ 注射剤を使用する場合は保冷ポーチ・注射針の証明書を準備 □ OTC薬の成分表示を確認(コデイン系・BZD系等が含まれていないか)

入国時の対応準備

□ 入国カード記入例を事前作成(英語、医薬品名をINN表記で) □ 医師・薬局の連絡先メモ(イスラエル側の問い合わせ対応用) □ 海外旅行保険で医療費をカバー(保険証書・緊急連絡先をスマートフォンに保存) □ 日本大使館・総領事館の連絡先を携帯(在イスラエル日本国大使館: +972-3-695-8300) □ 現地での代替薬取得に備えた成分名一覧(英文)の携帯

薬剤師に相談すべきタイミング

渡航の計画段階で薬剤師に相談することで、以下の問題を事前に回避できます。

  1. 現在服用中の薬物に規制成分が含まれていないか確認
  2. 英文成分説明書(Pharmacist's Letter)の作成依頼
  3. 旅行先での代替薬について情報提供を受ける
  4. 長期渡航時の薬物保管方法(特に要冷蔵製剤)についてアドバイスを受ける

まとめ

  • 基本原則:個人使用30日分以内、医師診断書と処方箋の英文版が必須
  • 禁止成分:BZD系(アルプラゾラム、ロラゼパム等)、麻薬性物質(モルヒネ、コデイン等)、覚醒剤系は持ち込み不可または厳格な制限あり
  • 要許可医薬品:向精神薬条約対象成分(ゾルピデム等)、抗てんかん薬(フェノバルビタール等)は個別判断・事前確認必須
  • OTC薬の落とし穴:コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩含有の咳止め薬は要注意
  • 市販薬:アセトアミノフェン・イブプロフェン含有の感冒薬・胃腸薬は申告推奨で持ち込み可能
  • 必須書類:医師診断書(Medical Necessity Letter)、処方箋の英文版、薬剤師の英文成分説明書(INN記載)
  • 薬学的背景:BZD系の突然中断は離脱症状リスクあり。服薬変更は必ず主治医と相談
  • 事前確認:渡航前にイスラエル大使館・MOH-ILに最新ルールを確認(規制は予告なく変更)
  • 税関申告:入国カードに医薬品を記入、検査時にINNで書類提示
  • トラブル対策:没収時は没収通知書を取得し在イスラエル日本国大使館に連絡、海外旅行保険で医療費に備える
  • 現地購入:やむを得ない場合は成分名(INN)を英語で提示して現地薬局で購入(費用は高額)

最後に: この記事の情報は一般的なガイドラインであり、個別の医薬品に関する最新規制は渡航前14日以内にイスラエル大使館・外務省で必ず確認してください。医薬品の没収や入国拒否を避けるため、事前準備を十分に行うことが何より重要です。


参考文献・公的情報源

  1. 外務省「イスラエル国 安全情報・感染症危険情報」
    https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_009.html

  2. 厚生労働省「麻薬及び向精神薬取締法」(最終改正版)
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/law_01.pdf

  3. INCB(国際麻薬統制委員会)「旅行者のための麻薬・向精神薬携帯ガイド」
    https://www.incb.org/incb/en/travellers/health-requirements.html

  4. WHO「モデル必須医薬品リスト(EML)第23版」
    https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.02

  5. 厚生労働省「海外渡航時における医薬品の携帯について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kaigai_yakuzaishi/index.html

  6. PMDA(医薬品医療機器総合機構)「医薬品に関する情報」
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0001.html


監修: 薬剤師(博士(薬学))

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