UAEで胃もたれ・胸焼けになったら|現地薬局で買える薬と正しい買い方を薬剤師が解説
UAE(アラブ首長国連邦)への渡航中、胃もたれや胸焼けを訴える日本人旅行者・駐在者は少なくありません。現地の食文化・気候・生活リズムの急変が重なり、消化器症状が出やすい環境が整っているためです。本記事では、薬学博士・薬剤師の視点から、症状の原因・重症度の見極め・現地OTC薬の具体的な選択肢・薬局での買い方・緊急時の対応まで体系的に解説します。
UAEで胃もたれ・胸焼けが起きやすい原因
食文化と食事内容の急変
UAEでは中東・アラブ料理に加え、インド料理・パキスタン料理・レバノン料理・西洋ファストフードが混在しています。日本人が日常的に口にしない食材・調理法が胃腸に強い刺激を与えます。
- 高脂肪料理の連続摂取:シャワルマ(lamb/chicken shawarma)はラム肉や鶏肉を大量のスパイスとオイルで調理します。マクブース(machboos)やマンサフ(mansaf)も動物性脂肪が豊富で、日本食に比べ脂質量が2〜4倍に達することがあります。
- スパイスの過剰摂取:クミン・カルダモン・コリアンダー・チリは胃酸分泌を促進する作用があります。特にビリヤニやカレー系料理は日本のカレーより刺激が強く、胃粘膜への負荷が高まります。
- 揚げ物文化:ファラフェル・サンブーサ(samboosa)・揚げ魚料理など、揚げ物を一日複数回摂取するとリパーゼ(消化酵素)が追いつかず、未消化の脂肪が胃に滞留します。
- 食事量と時間帯の変化:UAE(特にラマダン期間)では夕食が深夜になることも多く、就寝直前の大量摂取は逆流性食道炎(GERD)のリスクを高めます。
気候・環境的要因
- 極端な高温環境:夏季(6〜9月)は外気温が45℃を超えることもあります。高温による発汗・脱水は消化液の分泌バランスを乱し、胃粘膜の防御機能を低下させます。
- 室内外の温度差:40℃超の屋外から15〜20℃のショッピングモール内に移動するパターンが繰り返されると、自律神経が乱れ、消化管の蠕動運動に影響が出ます。
- 水質の違い:UAE の水道水は海水淡水化処理水が中心で、ミネラルバランスが日本と異なります。ミネラルウォーターのブランドも硬水が多く(エビアン・ヴォルヴィックより硬度が高い製品が一般的)、腸内環境の急変を招くことがあります。
- 過剰な冷飲料摂取:熱中症対策として冷たい水やスポーツドリンクを大量に飲むと、胃酸が希釈され消化機能が低下します。また炭酸飲料の過剰摂取は胃内圧を上昇させ、逆流を起こしやすくします。
生活リズムの乱れ
- 時差と睡眠不足:日本との時差は概ね−5〜−6時間(季節により変動)です。概日リズムの乱れは胃酸分泌リズムにも影響し、空腹時の胃酸過多を招きやすくなります。
- 旅行・出張ストレス:精神的ストレスはコルチゾール分泌を増加させ、胃粘膜の血流低下とプロスタグランジン産生低下をもたらします。結果として胃粘膜の防御機能が落ち、少量の胃酸でも痛みを感じやすくなります。
重症度判定チェックリスト
症状の程度を3段階で評価し、適切な対応を選択してください。
🟢 経過観察レベル(OTC薬で対応可能)
以下の症状がすべて該当する場合、まず市販薬での対応が選択肢に入ります。
- 食後2〜3時間以内に始まった胃もたれ・胸焼け
- 痛みは鈍痛程度で、日常生活は継続できる
- 発熱なし(37.5℃以下)
- 嘔吐がないか、1〜2回の軽度の嘔吐で収まっている
- 便の色・性状に変化なし(黒色・血便なし)
- 食事の変化・過食・飲酒などの明確な誘因がある
- 症状は24〜48時間以内に発症した
🟡 準緊急レベル(24時間以内に医療機関を受診)
以下のいずれかに該当する場合、翌日中に医師の診察を受けることを推奨します。
- OTC薬を正しく服用しても48時間以上改善しない
- 症状が繰り返し(3日以上)続いている
- 食欲がまったくなく、水分摂取も困難
- 37.5〜38.0℃の発熱を伴う
- 体重減少を自覚している
- 嘔吐が繰り返される(1日3回以上)
- みぞおち〜背中への放散痛がある
- 既往に胃潰瘍・逆流性食道炎・胆石症がある
🔴 緊急受診レベル(直ちに救急・病院へ)
以下のいずれか一つでも該当する場合は、OTC薬での対応を中止し、ただちに救急受診してください。
- 吐血(赤い血・コーヒー残渣様の嘔吐物)
- 黒色便・タール便(消化管出血の可能性)
- 激しい胸痛・左腕・顎・背中への放散痛(心筋梗塞との鑑別が必要)
- 腹部の板状硬直・強い圧痛(穿孔・腹膜炎の疑い)
- 38.5℃以上の高熱+腹痛
- 意識レベルの低下・失神
- 黄疸(皮膚・白目の黄変)
- 4時間以上持続する嘔吐で水分が保てない
薬剤師メモ: 「胸焼けと思っていたら心筋梗塞だった」というケースは実際に報告されています。特に50歳以上・喫煙者・糖尿病・高血圧のある方で、胸部不快感が左肩や顎に広がる場合は躊躇なく救急対応を。UAE救急番号は 998(警察・救急統合)です。
現地薬局で買えるOTC薬一覧
UAE(ドバイ・アブダビ・シャルジャ等)の薬局では、以下の医薬品が比較的容易に入手できます。ただし処方箋の要否は薬局・在庫状況・薬剤師の判断によって異なります。購入前に必ず薬剤師に確認してください。
プロトンポンプ阻害薬(PPI):強力な胃酸分泌抑制
| ブランド名 | 有効成分 | 主な規格 | 用法の目安 | 価格帯(AED) | 入手しやすい薬局 |
|---|---|---|---|---|---|
| Nexium | エソメプラゾール | 20mg / 40mg | 1日1回・朝食前 | 25〜45 | Life Pharmacy, Aster Pharmacy |
| オメプラゾール(ジェネリック各社) | オメプラゾール | 20mg / 40mg | 1日1回・朝食前 | 10〜20 | 多くの独立系薬局 |
| Losec | オメプラゾール | 20mg | 1日1回・朝食前 | 概ね20〜35 | 大型薬局チェーン |
特徴と注意点
- PPIは胃酸分泌の最上流(プロトンポンプ)を不可逆的に阻害するため、効果発現まで2〜3日かかります。即効性は期待できません。
- 旅行中の短期使用(1〜2週間)であれば安全性は高いです。
- UAEでは一部のPPI製品が処方箋(Rx)扱いになる場合があります。薬局で「OTCで購入可能ですか?(Is this available over the counter?(イズ ディス アヴェイラブル オーバー ザ カウンター?))」と確認してください。
H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):中等度の胃酸抑制・比較的速効
| ブランド名 | 有効成分 | 主な規格 | 用法の目安 | 価格帯(AED) | 入手しやすい薬局 |
|---|---|---|---|---|---|
| Pepcid | ファモチジン | 20mg / 40mg | 1日2回(朝夕食後)または夜間1回40mg | 15〜30 | Life Pharmacy, Boots UAE |
| ファモチジン(ジェネリック各社) | ファモチジン | 20mg | 上記に準じる | 10〜18 | 独立系薬局 |
特徴と注意点
- 服用後30〜60分で効果が出始め、PPIより速効性があります。
- 胸焼けが食後に強く出るタイプや、就寝前の逆流に悩む方に適しています。
- ラニチジン(Zantac)は発がん性不純物(NDMA)問題により、2020年以降多くの国で自主回収・販売停止となっています。UAEでも入手困難な状況が続いており、ラニチジン製品は選択しないことを強く推奨します。
制酸薬(アンタシッド):即効性・応急処置向け
| ブランド名 | 有効成分 | 主な剤形 | 用法の目安 | 価格帯(AED) | 入手しやすい薬局 |
|---|---|---|---|---|---|
| Gaviscon | アルギン酸ナトリウム+炭酸水素ナトリウム | 液体・チュアブル錠 | 食後・就寝前 1〜2包/錠 | 12〜22 | ほぼすべての薬局・スーパー |
| Tums | 炭酸カルシウム | チュアブル錠 | 症状時・食後 2〜4錠 | 8〜15 | スーパー・薬局全般 |
| Maalox | 水酸化アルミニウム+水酸化マグネシウム | 液体 | 食後1時間・就寝前 15mL | 10〜18 | 大型薬局 |
| Rennie | 炭酸カルシウム+炭酸マグネシウム | チュアブル錠 | 食後・症状時 1〜2錠 | 概ね10〜18 | Life Pharmacy, Boots UAE |
特徴と注意点
- Gavisconは胃内でアルギン酸がゲル状の「いかだ(raft)」を形成し、胃内容物の逆流を物理的に防ぐユニークなメカニズムを持ちます。妊婦・授乳中でも使用実績が多く、UAEの薬局では最も目立つ位置に陳列されています。
- Tums・Rennieの炭酸カルシウムは中和作用が速い反面、「酸リバウンド」(中和後に胃酸が増加する現象)が起きることがあります。
- Maaloxの水酸化アルミニウムは便秘を、水酸化マグネシウムは下痢を引き起こす場合があり、長期連用は避けてください。
- UAEの薬局ではGavisconの認知度が非常に高く、「Do you have Gaviscon?(ドゥ ユー ハヴ ガビスコン?)」と尋ねるだけで入手できることがほとんどです。
価格の目安換算:1 AED(UAE ディルハム)≒ 40〜42円(2024年時点の概算。為替は変動するため旅行前に確認してください)
現地語での症状表現・薬局での買い方フレーズ
UAEはドバイ・アブダビを中心に英語が広く通用しており、薬局スタッフの多くはインド・パキスタン・フィリピン出身の英語話者です。以下のフレーズは英語で十分に通じますが、アラビア語も補助として掲載します。
症状を伝える英語フレーズ
| 日本語 | 英語フレーズ | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 胃もたれがあります | I have indigestion.(アイ ハヴ インダイジェスチョン) | アイ ハヴ インダイジェスチョン |
| 胸焼けがあります | I have heartburn.(アイ ハヴ ハートバーン) | アイ ハヴ ハートバーン |
| 胃が重たい感じがします | My stomach feels heavy.(マイ ストマック フィールズ ヘビー) | マイ ストマック フィールズ ヘビー |
| 食後に胃が痛くなります | I get stomach pain after eating.(アイ ゲット ストマック ペイン アフター イーティング) | アイ ゲット ストマック ペイン アフター イーティング |
| 胃酸が逆流する感じがします | I feel acid reflux.(アイ フィール アシッド リフラックス) | アイ フィール アシッド リフラックス |
| 吐き気があります | I feel nauseous.(アイ フィール ノーシャス) | アイ フィール ノーシャス |
薬を探す・買うための英語フレーズ
| 日本語 | 英語フレーズ | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 胸焼けの薬はありますか? | Do you have medicine for heartburn?(ドゥ ユー ハヴ メディスン フォー ハートバーン?) | ドゥ ユー ハヴ メディスン フォー ハートバーン |
| 処方箋なしで買えますか? | Is this available without a prescription?(イズ ディス アヴェイラブル ウィズアウト ア プレスクリプション?) | イズ ディス アヴェイラブル ウィズアウト ア プレスクリプション |
| 最も一般的な制酸薬を見せてください | Please show me the most common antacid.(プリーズ ショウ ミー ザ モースト コモン アンタシッド) | プリーズ ショウ ミー ザ モースト コモン アンタシッド |
| 妊娠中でも使えますか? | Is this safe during pregnancy?(イズ ディス セーフ デューリング プレグナンシー?) | イズ ディス セーフ デューリング プレグナンシー |
| これはいくらですか? | How much is this?(ハウ マッチ イズ ディス?) | ハウ マッチ イズ ディス |
アラビア語フレーズ(補助用)
| 日本語 | アラビア語(アラビア文字) | 発音(カタカナ) |
|---|---|---|
| 胸焼けがあります | عندي حرقة في المعدة | アンディ ハルカ フィル マイダ |
| 胃もたれがあります | عندي عسر هضم | アンディ ウスル ハドム |
| 薬が欲しいです | أريد دواء | ウリード ダワー |
| 胃の薬はどこにありますか? | أين أدوية المعدة؟ | アイナ アドウィヤット アル マイダ? |
都市部(ドバイ、アブダビ)の薬局では英語で問題なく対応してもらえることがほとんどです。アラビア語フレーズはあくまで補助として活用してください。
UAEの医療事情
医療体制の概要
UAEは中東の中でも医療インフラが整備された国の一つです。ドバイ・アブダビには国際水準の私立病院が多数あり、日本語対応サービスを提供する機関も存在します。
| 種別 | 特徴 | 費用感 |
|---|---|---|
| 私立病院(総合) | 設備・英語対応が充実。旅行者に最適 | 外来1回 AED 300〜800程度(概算) |
| 公立病院 | UAE市民・居住者が優先。旅行者は利用しにくい場合もある | 安価だが待ち時間が長い |
| クリニック(GP) | 軽症に最適。ショッピングモール内にも設置 | 外来1回 AED 150〜400程度(概算) |
| 薬局 | pharmacyAccessが「easy」と分類されるUAEでは市内に多数存在 | OTC薬はAED 8〜45程度 |
費用はあくまで概算です。実際の費用は医療機関・保険適用状況により大きく異なります。必ず海外旅行保険に加入し、緊急連絡先を事前に確認してください。
主な薬局チェーン
- Life Pharmacy:UAE全土に展開する最大手チェーンの一つ。英語対応スタッフが常駐し、OTC薬の品揃えが豊富です。
- Boots UAE:英国系ブランド。ドバイ・アブダビの主要ショッピングモールに出店。ヨーロッパ系OTC薬が充実。
- Aster Pharmacy:インド系チェーンで、UAE全土に広く展開。ジェネリック医薬品が豊富で価格帯が抑えめ。
- independent pharmacies(独立系薬局):スーク周辺・居住区に多数。営業時間が長いことが多い。
救急・緊急連絡先
| 用途 | 番号 |
|---|---|
| 救急・警察(統合番号) | 998 |
| 消防・救急(別番号) | 997 |
| 在ドバイ日本国総領事館(緊急) | +971-4-204-6900(代表、時間外は緊急専用へ) |
| 在アブダビ日本国大使館 | +971-2-443-5696(代表) |
在外公館の電話番号は変更される場合があります。渡航前に外務省「海外安全情報」で最新情報を確認してください。
日本語対応医療機関
ドバイを中心に日本語通訳・日本語対応を提供するクリニックが存在します。具体的な施設名・連絡先は変更される可能性があるため、在ドバイ日本国総領事館の公式サイトまたは外務省の海外安全情報ページで最新リストを確認することを強く推奨します。
薬剤師の視点:渡航前準備と持参OTC
渡航前に準備すべきこと
UAE渡航前に以下の点を確認・準備することで、現地での不安を大幅に軽減できます。
- 海外旅行保険の加入:医療費は日本と比較して高額になる場合があります。消化器疾患でも入院が必要となるケースがあるため、キャッシュレスで受診できる保険プランが理想的です。
- 現在服用中の薬の確認:PPIやH2ブロッカーをすでに服用している方は、渡航中も同成分の薬を継続できるよう、処方薬を十分な日数分持参してください。
- ラマダン期間の確認:イスラム圏の UAE では、ラマダン期間中は公共の場での飲食が制限されます(旅行者は免除されますが、マナーとして意識が必要)。食事タイミングが乱れやすく、胃もたれのリスクが上がります。
持参を推奨する日本のOTC薬
UAE では Gaviscon や Pepcid など有効な OTC 薬が入手しやすい環境ですが、使い慣れた日本の薬を持参することでさらに安心です。
| 日本の製品名 | 有効成分(主な) | 持参時の用途 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ガスター10 | ファモチジン10mg | 胸焼け・胃もたれへの速効対応 | H2ブロッカー。UAE現地のPepcidと同成分 |
| 太田胃散 | 制酸成分・消化酵素配合(複合処方) | 食べ過ぎ・もたれの一般的対処 | 粉末で携行しやすい、副作用が少ない |
| セルベール整胃錠 | トリメブチンマレイン酸塩など | 胃の運動機能調整 | 現地では同成分の入手が難しいため持参推奨 |
| パンシロンキュアSP | 炭酸水素ナトリウム・制酸剤複合 | 急性の胸焼け応急処置 | 速効性がある |
持参量の目安:個人用医薬品として1〜2か月分程度が目安ですが、UAE税関は医薬品持ち込みに関する独自規制を設けています。麻薬・向精神薬を含む薬は事前にUAE保健省(MOHAP)への申請が必要な場合があります。日常的な胃腸薬については一般に問題になることは少ないですが、疑問がある場合は渡航前に在日UAE大使館または外務省に確認してください。
現地入手のリスクと対策
- 偽造品リスク:UAEは医薬品規制が中東では比較的厳格ですが、ネット通販(非公式ルート)や無認可店舗では品質が保証されません。必ず**認可薬局チェーン(Life Pharmacy・Boots UAE・Aster Pharmacyなど)**で購入してください。
- パッケージ確認:購入時にパッケージが未開封・シールが無傷であること、ロット番号・製造日・有効期限の記載があることを確認します。
- MOHAPロゴの確認:UAE保健省・予防省(Ministry of Health and Prevention: MOHAP)が承認した医薬品にはMOHAP登録シールが貼付されています。購入前に確認することを推奨します。
- 絶対に避けるべき成分:胃もたれ・胸焼けの症状にNSAIDs(イブプロフェン・ナプロキセン・アスピリン)は使用しないでください。胃粘膜を直接障害し、症状を悪化させます。
避けるべき薬と成分
胃もたれ・胸焼けに禁物の成分
| 成分 | なぜ避けるべきか |
|---|---|
| アスピリン(アセチルサリチル酸) | プロスタグランジン合成を阻害し、胃粘膜の防御機能を低下させる |
| イブプロフェン・ナプロキセン | 同上。NSAID全般は空腹時服用で潰瘍リスクが高まる |
| カフェイン過剰摂取製品 | 下部食道括約筋を弛緩させ、逆流を促進する |
| ラニチジン(Zantac) | NDMA(ニトロソジメチルアミン)汚染問題により多くの国で回収済み。UAE でも実質入手困難 |
重複服用に注意
- 制酸薬+PPIの同時服用:制酸薬(Gaviscon・Tums等)とPPIを同時に服用しても相加効果は限定的で、制酸薬は胃内pHを一時的に上げてしまいPPIの活性化を妨げる可能性があります。PPIは朝食前(空腹時)に単独で服用してください。
- H2ブロッカー+PPIの重複:旅行中の短期使用に限れば組み合わせる意義は低く、副作用のリスクが上がる可能性があります。どちらか一方を選んでください。
帰国後の観察ポイント:輸入感染症の見分け方
胃もたれ・胸焼けが旅行中に発症し、帰国後も持続する場合や、以下の症状が新たに加わった場合は、国内の医療機関(内科・消化器科・感染症科)を早めに受診してください。
受診の目安となる症状と懸念疾患
| 症状 | 疑われる疾患 | 受診科の目安 |
|---|---|---|
| 帰国後も2週間以上続く下痢・腹痛 | 旅行者下痢症(細菌性・原虫性)、ジアルジア症 | 内科・感染症科 |
| 帰国後の黒色便・貧血症状 | 胃潰瘍・消化管出血 | 消化器科(内視鏡検査) |
| 発熱+腹痛+黄疸 | 腸チフス、ウイルス性肝炎(A型・E型) | 感染症科・内科 |
| 上腹部の持続的な鈍痛+体重減少 | 胃がん(H. pylori感染との関連を含む)、膵臓疾患 | 消化器科 |
| 右上腹部の激痛+発熱 | 胆嚢炎・胆管炎(旅行中の高脂肪食が誘因になることがある) | 消化器科・外科 |
ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染に注意
中東・南アジア出身の食品衛生環境が異なる地域での飲食は、H. pylori(ヘリコバクター・ピロリ菌)感染のリスクを多少高める可能性があります。帰国後に胃もたれ・胃痛が持続する場合は、H. pylori検査(尿素呼気試験・便中抗原・血中抗体)を受けることを検討してください。
受診時の医師への伝達事項
帰国後に受診する際は以下の情報を伝えると診断がスムーズです。
- 渡航先の国名・地域・滞在期間
- 症状の発症日時(現地滞在中 or 帰国後)
- 現地で服用した薬の名前・成分(写真撮影しておくと便利)
- 現地での食事内容・飲料水の種類(水道水 or ミネラルウォーター)
- 同行者に同様の症状があるか
参考文献・情報源
-
外務省 海外安全情報 ― アラブ首長国連邦 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_050.html
-
UAE Ministry of Health and Prevention (MOHAP) — Official Drug Information https://www.mohap.gov.ae/en/services/
-
WHO — Traveller's diarrhoea and food safety https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/food-safety
-
CDC — Travelers' Health: Middle East https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/united-arab-emirates
-
日本医療薬学会・日本薬剤師会 ― 胃食道逆流症(GERD)の薬物療法ガイドライン(参考) https://www.jstage.jst.go.jp/(関連論文検索用ポータル)
-
European Medicines Agency(EMA)— Ranitidine recall and NDMA https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/referrals/ranitidine-containing-medicines
-
在アラブ首長国連邦日本国大使館 ― 医療情報 https://www.ae.emb-japan.go.jp/itpr_ja/m_00065.html
まとめ:UAE旅行中の胃もたれ・胸焼けへの対処ステップ
- 症状の重症度を確認する(上記チェックリスト参照)
- 🟢経過観察レベルであれば、**Gaviscon(即効性)またはPepcid/ファモチジン(中等症)**を薬局で購入
- 薬局では英語で
Do you have medicine for heartburn?(ドゥ ユー ハヴ メディスン フォー ハートバーン?)と伝えれば対応してもらえる - PPIは短期使用向きだが処方箋が必要な場合もあるため薬剤師に確認
- 🟡準緊急・🔴緊急レベルは迷わず医療機関へ(救急は998)
- 帰国後も症状が続く場合は消化器科・感染症科を受診し、渡航歴を伝える
免責事項:本記事は薬学的情報の提供を目的としており、個別の診断・治療行為に代わるものではありません。症状の改善が見られない場合や、重篤な症状が現れた場合は、必ず医師または医療機関を受診してください。薬の使用にあたっては添付文書をよく読み、用法・用量を守ってください。価格・入手可能性は時期・地域・為替レートにより変動します。
監修:薬剤師・博士(薬学)