スペイン渡航者必読!現地の医療事情と体調不良時の対処法
スペインへの渡航を計画されている方にとって、現地の医療事情の理解は大切な準備のひとつです。スペインは西ヨーロッパの中でも比較的医療レベルが高く、衛生環境も良好ですが、システムが日本と大きく異なるため、事前の知識が必要です。本記事では、体調を崩した場合の対処法から病院受診の手順、保険の使い方まで、薬剤師の視点から実用的な情報をお伝えします。
スペインの医療体制の基礎知識
医療制度の仕組み
スペインの医療制度は、国民健康保険制度(Sistema Nacional de Salud:SNS)と民間保険に二分されています。SNSは税財源で運営される国民皆保険型の公的制度であり、EUおよびEEA市民は欧州健康保険カード(EHIC)を提示することで公立医療機関を利用できます。しかし日本人を含む非EU国籍の観光客は、原則として公立医療機関の無料診療対象外となります。
観光客が現実的に利用できる医療機関は主に私立クリニック(Clínica Privada)・私立病院です。主要観光都市であるマドリッド、バルセロナ、セビリア、グラナダ、マラガなどには英語対応の国際クリニックが整備されており、旅行者にとってアクセスしやすい環境が整っています。一方、農村部や小規模都市では英語話者の医師が少なく、スペイン語の基礎知識があると非常に役立ちます。
スペインの各自治州(Comunidad Autónoma)は独自の保健行政機関を持っており、医療サービスの提供体制に一定の地域差があります。アンダルシア州であればSAS(Servicio Andaluz de Salud)、マドリッド州ではSERMAS(Servicio Madrileño de Salud)が公的医療を管轄しています。救急受診の窓口として機能する「Urgencias(ウルヘンシアス)」は公私双方の病院に設置されており、観光客が自費で受診することが可能です。
薬局(ファルマシア)の役割
スペインの薬局は「Farmacia(ファルマシア)」と呼ばれ、医療システムにおいて重要な役割を担っています。特に軽度の症状に対しては、医師の処方箋がなくても薬剤師に相談できるという利点があります。これは日本の薬局と大きく異なる点です。
スペインの薬局は緑色に光る十字マーク(Cruz Verde)を掲げており、街中でも非常に視認しやすいのが特徴です。EU域内の薬局規制に従い、調剤・一般医薬品販売のいずれも薬剤師(Farmacéutico)が常駐することが法令で義務付けられています。スペインの薬剤師は5年制の薬学部を修了後、国家登録を経て業務につくため、臨床的な相談能力は高水準です。
なお、薬局の営業は地方自治体が定める当番制(Farmacia de Guardia)によって24時間体制が確保されています。夜間・休日に当番薬局を探す場合は、薬局の扉や窓に貼られた当番薬局案内、または地域の番号(例:アンダルシア州は900 848 061など)に電話すると最寄りの当番薬局を教えてもらえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常営業時間 | 9:00〜14:00、17:00〜20:00(地域差あり) |
| 日曜・祝日 | 当番制(Farmacia de Guardia)により対応 |
| 緊急薬局の目印 | 点滅する緑十字マーク |
| 言語 | スペイン語が主。英語対応は都市部の一部薬局に限定 |
| 処方箋不要医薬品 | 解熱鎮痛薬、消化薬、抗ヒスタミン薬(一部)など |
| 処方箋必須医薬品 | 抗生物質、睡眠薬、医療用オピオイドなど |
薬剤師メモ スペインの薬剤師は高度な臨床訓練を受けており、風邪や胃腸不良などの初期対応では信頼できるアドバイザーです。ただし、すべての薬剤師が英語を話すわけではないため、スマートフォンの翻訳アプリ(DeepL・Google翻訳)を用意しておくと安心です。症状をテキスト入力してスペイン語で見せるだけでも十分対応してもらえます。
体調不良時の段階別対処法
軽度の症状(風邪、頭痛、胃腸不良)の場合
第一選択肢:薬局(Farmacia)への相談
軽い風邪やアレルギー症状の場合、直接薬局に訪問することをお勧めします。スペインでは市販医薬品(OTC)が充実しており、以下のような薬が薬剤師の判断で入手可能です。
| 症状 | 有効成分(一般名) | 薬学的補足 |
|---|---|---|
| 発熱・頭痛 | イブプロフェン(Ibuprofen)400mg | NSAIDsに分類。空腹時は胃粘膜刺激に注意 |
| 発熱・疼痛(胃弱の方) | アセトアミノフェン(Paracetamol / Acetaminophen)500mg | 胃への負担が少ない解熱鎮痛薬。1日最大服用量(通常4,000mgまで)を超えないよう注意 |
| 咽頭痛 | 抗菌・局所麻酔成分配合トローチ(成分は製品により異なる) | スペインではアミルメタクレゾール・ジクロロベンジルアルコール配合製品が一般的 |
| 下痢 | ロペラミド(Loperamide)2mg | μオピオイド受容体に作用し腸管蠕動を抑制。細菌性下痢では使用を慎重に検討 |
| 吐き気・胃酸過多 | オメプラゾール(Omeprazole)20mg | プロトンポンプ阻害薬(PPI)。スペインでは一部処方箋が必要 |
| 便秘 | ビサコジル(Bisacodyl)5mg | 大腸刺激性下剤。連用は避け、短期使用に限る |
| アレルギー性鼻炎・蕁麻疹 | セチリジン(Cetirizine)10mg / ロラタジン(Loratadine)10mg | 第二世代抗ヒスタミン薬。眠気が少ないが、個人差がある |
| 水虫・皮膚真菌症 | クロトリマゾール(Clotrimazole)1%クリーム | スペインでは比較的容易に入手可能 |
薬学的補足 ― NSAIDsとアセトアミノフェンの使い分け
解熱鎮痛薬として最も入手しやすいイブプロフェンとアセトアミノフェンは作用機序が異なります。イブプロフェンはシクロオキシゲナーゼ(COX-1・COX-2)を非選択的に阻害し、プロスタグランジン産生を抑制することで解熱・鎮痛・抗炎症作用を発揮します。一方、アセトアミノフェンは中枢性の解熱・鎮痛作用が主体で、末梢の抗炎症作用は弱く、胃粘膜への影響も少ないとされます。胃潰瘍の既往歴がある方、空腹時に服用する状況が多い旅行中はアセトアミノフェンを優先するのが薬学的に合理的です。ただし飲酒習慣がある場合、アセトアミノフェンは肝毒性リスクが高まるため用量管理に注意が必要です。
薬剤師メモ スペインの薬局では成分名(一般名)を言うと確実です。「Ibuprofeno(イブプロフェーノ)」「Paracetamol(パラセタモール)」はそのまま通じます。商品名よりも一般名での依頼が、成分の取り違え防止にもなります。
中程度の症状(3日以上の症状継続)の場合
医師の診察が必要です。以下の選択肢があります:
-
民間クリニックの緊急外来(Urgencias)
- 予約不要で当日対応可能
- 費用目安:診察のみ40〜150ユーロ程度(検査は別途)
- 大都市の私立クリニックは英語対応スタッフを配置していることが多い
-
ホテル経由の医師派遣サービス
- 多くの高級ホテルではコンシェルジュが医師を手配可能
- ホテル内での診察も可能なため、体調が悪い場合に移動負担が少ない
- やや割高だが、手続きが簡便で言語的サポートも受けやすい
-
国際クリニックへの直接受診
- 英語に完全対応していることが多く、日本人患者への対応経験を持つスタッフがいる場合もある
- 事前予約があればスムーズ
-
テレメディシン(遠隔診療)の活用
- 日本の遠隔診療サービスの中には海外在住・滞在中の日本人向けに対応しているものもある
- 軽〜中等度の症状であれば、日本語でのオンライン相談後に現地受診の判断材料とすることができる
薬剤師メモ 渡航前に常用薬の英語薬歴(Medication List)をスクリーンショット保存しておくことが重要です。薬品名・用量・用法を一覧できる形式で用意しておくと、現地医師との情報共有が格段にスムーズになります。薬の相互作用確認にも役立ちます。
重度の症状(緊急性が高い場合)
病院の緊急科(Urgencias)への受診が必要です:
- 高熱(39℃以上)が持続する
- 激しい腹痛・血便・頻回の下痢
- 呼吸困難・胸痛
- 意識混濁・けいれん
- 重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)の疑い
この場合は以下の手順で対応してください:
- ホテルスタッフまたは現地の知人に相談し、移動手段を確保する
- **救急番号 112(スペイン全土共通)**に電話し「Ambulancia(アンブランシア)」を依頼する
- 直接最寄りの総合病院(Hospital General)に移動する
アナフィラキシーが疑われる場合は、エピネフリン自己注射薬(エピペン等)を処方されている方は直ちに使用し、その後必ず救急要請してください。アナフィラキシーは分単位で病態が進行するため、自力での薬局受診は極めて危険です。
主要都市の私立病院(英語対応あり):
| 都市 | 病院名 | 特徴 |
|---|---|---|
| マドリッド | Hospital Ruber Internacional | 私立、国際診療部門あり |
| マドリッド | Quirónsalud Madrid | ネットワーク病院、24時間対応 |
| バルセロナ | Teknon Medical Center | 私立高水準、観光客対応 |
| バルセロナ | Hospital Quirón Barcelona | 英語対応、総合診療 |
| セビリア | Hospital Quirónsalud Sagrado Corazón | 24時間緊急外来あり |
| マラガ | Hospital Quirónsalud Málaga | コスタ・デル・ソル観光客対応 |
緊急番号「112」と医療相談窓口の使い方
112 ― スペイン全土対応の緊急番号
スペインでは112がEU統一の緊急番号として機能しており、救急車(Ambulancia)・警察(Policía)・消防(Bomberos)すべてに繋がります。24時間365日対応、携帯電話・公衆電話・ローミング中の外国SIMからも無料でかけられます。
112を使う際の英語フレーズ例:
-
I need an ambulance.(アイ ニード アン アンビュランス) -
There is a medical emergency at [hotel name / address].(ゼア イズ ア メディカル エマージェンシー アット __) -
Please send help. My friend is unconscious.(プリーズ センド ヘルプ。マイ フレンド イズ アンコンシャス)
英語オペレーターへの転送を求める場合は Do you speak English?(ドゥ ユー スピーク イングリッシュ?) と聞くとスムーズです。
061 ― 医療相談専用ダイアル
スペインでは061が医療専用の緊急・相談番号として各自治州で運用されています(地域によって番号・サービス内容が異なります)。アンダルシア州のSASでは「112」経由でも医療トリアージを受けることができます。軽〜中等度の症状で自力受診が可能な場合、まず061に相談して「どの施設に行くべきか」のアドバイスを受けることも有効です。
| 番号 | 用途 |
|---|---|
| 112 | 全緊急対応(救急・警察・消防) |
| 061 | 医療相談・緊急搬送調整(地域差あり) |
| +34(国番号) | 日本からスペインへ電話する際のプレフィックス |
病院・クリニック受診時の実践的ステップ
初診時に必要な持ち物
| 書類・物品 | 内容・ポイント |
|---|---|
| パスポート | 身分確認と国籍確認。コピーより原本が求められることが多い |
| 旅行保険証券 | 保険会社名・証券番号・緊急連絡先を一枚にまとめておく |
| 常用薬リスト | 英語(またはスペイン語)で薬品名・用量・用法を記載したもの |
| アレルギー情報 | 薬物アレルギー(特にペニシリン・NSAIDsなど)の記録 |
| 体温・症状記録 | 発症日時・体温推移・症状の変化をメモしておく |
| クレジットカード | 私立医療機関では先払いを求められることがある |
受診の流れ
-
受付(Recepción / Admisión)
- パスポートと保険情報を提示する
- 症状を簡潔に説明。スペイン語が難しい場合は翻訳アプリを活用
-
問診(Anamnesis)
- 医師(Médico)または看護師(Enfermera / Enfermero)が症状詳細を聴取
- 役立つ英語フレーズ:
-
I have had a fever for three days.(アイ ハヴ ハド ア フィーバー フォー スリー デイズ) -
I have severe abdominal pain.(アイ ハヴ シビア アブドミナル ペイン) -
I am allergic to penicillin.(アイ アム アレルジック トゥ ペニシリン) -
I take [薬品名] every day.(アイ テイク __ エブリデイ) -
I am pregnant.(アイ アム プレグナント)(妊娠中の場合)
-
-
診察・検査
- 採血・尿検査・X線撮影・超音波検査など必要に応じて実施
- それぞれ追加費用が発生するため、事前に「Is this covered by my insurance?(イズ ディス カバード バイ マイ インシュランス?)」と確認することを推奨
-
処方と会計
- 処方箋(Receta Médica)を受け取り、近隣の薬局で調剤してもらう
- 領収書(Factura)と診断書(Informe Médico)の原本を必ず請求する
- 英語版の診断書が必要な場合は
Please provide the medical report in English.(プリーズ プロバイド ザ メディカル リポート イン イングリッシュ)と伝える
薬剤師メモ スペインの医師は抗生物質を日本より積極的に処方する傾向があると指摘されることがあります。抗生物質を処方された際は、菌種・用量・服用日数を確認し、指示通りに服用を完遂することが重要です。自己判断で途中中断すると耐性菌のリスクが高まります。処方された抗生物質の種類(βラクタム系・マクロライド系など)を把握しておくと、帰国後の医師への報告にも役立ちます。
海外旅行保険の使い方と注意点
保険請求の重要ポイント
スペインで医療を受ける際、海外旅行保険の請求は**立替払い(後日請求)**が原則である場合が多く、一部の大手保険会社ではキャッシュレス対応(直接支払い)が可能な提携医療機関があります。渡航前に自分の保険証券を確認し、スペインでのキャッシュレス対応機関リストを入手しておきましょう。
| 段階 | 手続き内容 |
|---|---|
| 渡航前 | キャッシュレス対応機関の確認、緊急連絡先番号の保存 |
| 診療前 | 可能な限り保険会社のコールセンターへ事前連絡 |
| 診療時 | 保険会社名・証券番号を受付に告知 |
| 診療後 | 領収書・診断書・処方箋控えをすべて保管 |
| 帰国後 | 所定の請求書類に添付して提出(期限に注意) |
保険請求に必須の書類
-
医療費の領収書(Factura / Receipt)
- スペイン語で「Factura」と呼ばれます
- 診療日・医療機関名・請求項目・金額が明記された原本を入手してください
-
診断書(Informe Médico / Medical Report)
- 英語版を明示的に請求
- 傷病名・治療内容・期間が記載されていることを確認する
-
処方箋と薬局領収書
- 処方薬の費用も保険対象になることが多い
- 薬局での購入金額がわかる領収書を保管
-
パスポートのコピー
- 渡航期間・入出国スタンプで滞在を証明するため
薬剤師メモ 多くの海外旅行保険は「治療目的での渡航」や「出国前から判明している既知の疾病」を免責事由としています。慢性疾患(高血圧・糖尿病・喘息等)がある方は出発前に「既往症担保特約」の加入を検討してください。また、精神疾患関連の治療費は標準的な旅行保険では補償対象外となることがほとんどです。
一般的な医療費の目安(私立医療機関・2024年時点の参考値)
| 診療内容 | 費用目安(ユーロ) |
|---|---|
| 初診料(内科) | 50〜150 |
| 採血検査(基本項目) | 20〜50 |
| 胸部X線撮影 | 40〜100 |
| 処方薬(1剤) | 5〜30 |
| 腹部超音波検査 | 80〜150 |
| 心電図検査 | 30〜80 |
| 入院費(1泊・個室) | 300〜700 |
※私立医療機関の参考値であり、施設・地域・処置内容により大きく異なります。
常備すべき医薬品と事前準備
日本から持参を推奨する医薬品
以下の医薬品は現地での入手が困難または代替品との成分差が大きいため、日本から持参することを強く推奨します。なお、医薬品の持ち込みには国際ルールが適用されます(後述)。
| 医薬品カテゴリー | 持参推奨理由 | 薬学的ポイント |
|---|---|---|
| 処方薬(常用薬) | スペイン医師が同等品を認識しない場合がある | 英語の薬歴と処方箋のコピーを添付 |
| 整腸剤(ビフィズス菌・乳酸菌製剤) | スペインではOTCとして入手困難 | 旅行者下痢症の予防・補助として有用 |
| 湿布剤(ジクロフェナクナトリウム含有等) | スペインの薬局にはほぼ流通していない | 局所抗炎症薬として筋肉痛・打撲に有効 |
| 目薬(ドライアイ・アレルギー用) | 気候の違い(乾燥・紫外線)により需要が高い | 防腐剤フリー品が望ましい |
| 経口補水塩(ORS) | スペインでも入手可能だが日本品に慣れている場合 | 下痢・発汗による脱水補正に有効 |
| 持病の薬(インスリン・抗てんかん薬等) | 規格・剤形が異なる可能性大 | 適切な保管(冷蔵等)に留意 |
処方薬の海外持ち出し・持ち込みに関する注意点: 麻薬・向精神薬に分類される薬(一部の睡眠薬・鎮痛薬・ADHD治療薬等)を持参する場合、スペイン側の入国規制と日本の輸出規制の両方を確認する必要があります。厚生労働省の「麻薬及び向精神薬取締法」に基づく輸出入許可が必要な場合があり、在スペイン日本大使館または厚生労働省地方厚生局へ事前に問い合わせることを強く推奨します。詳しくは [[medicine-international-travel]] も参照してください。
渡航前の準備チェックリスト
- ☐ 常用薬の英語薬歴(Medication List)を作成し、スクリーンショットで保存する
- ☐ 薬物アレルギー情報を英語でメモ化する
- ☐ 海外旅行保険の補償内容を確認し、証券・緊急連絡先番号を控える
- ☐ 保険会社の24時間サポートデスク番号と、キャッシュレス対応機関リストを保存する
- ☐ 常用薬を滞在日数+余裕分(7日程度)で持参する
- ☐ 医療用語の英語・スペイン語基本表現を最低限学習する
- ☐ 渡航地(マドリッド・バルセロナ等)の主要病院の位置情報をオフラインマップに保存する
- ☐ パスポートのコピー(身分証)を別途保管し、旅行鞄と別に携帯する
- ☐ かかりつけ医から「英文診断書」を入手しておく(慢性疾患・手術歴がある場合)
スペイン主要都市の医療リソース
マドリッド
マドリッドはスペインの首都であり、国内最大規模の医療インフラが集積しています。私立国際病院では英語・日本語サポートを持つコーディネーターが在籍していることもあります。夜間・週末の緊急対応が必要な場合は、Urgencias表示のある私立病院かSERMASが管轄する公立病院に直接出向くことが最も確実です。
- Hospital Ruber Internacional:私立。複数の専門診療科を持つ総合病院で、国際患者向けデスクを設置。
- Quirónsalud Madrid:チェーン型私立病院グループ。スペイン全土に展開しており24時間緊急対応あり。
バルセロナ
バルセロナはカタルーニャ語とスペイン語の二言語地域であり、英語対応スタッフも比較的多い観光都市です。
- Teknon Medical Center:私立高水準。観光客対応の実績があり、英語に対応した専門医が多数在籍。
- Hospital Quirón Barcelona:24時間緊急外来、英語診療対応。
セビリア・アンダルシア地方
SAS(Servicio Andaluz de Salud)が公的医療を管轄。観光客は私立クリニック利用が基本ですが、生命にかかわる救急の場合は公立病院の緊急外来(Urgencias)で自費対応が可能です。
- Hospital Quirónsalud Sagrado Corazón(セビリア):24時間緊急対応。
スペイン全土で使える緊急電話番号
| 番号 | 用途 |
|---|---|
| 112 | 全緊急対応(救急・警察・消防。EU統一番号) |
| 061 | 医療専用相談・救急調整(地域によって対応が異なる) |
| 091 | 国家警察(Policía Nacional) |
| 062 | 市民警備隊(Guardia Civil。農村部) |
| +34(国番号) | 日本からスペイン国内番号に連絡する際のプレフィックス |
よくある質問と薬剤師からのアドバイス
Q1: スペインで処方箋なしに抗生物質は入手できますか?
A: 原則として不可です。
EU全体の薬事規制により、スペインでは抗生物質は処方箋(Receta Médica)必須の医療用医薬品(Medicamento de Prescripción)に分類されています。薬局で処方箋なしに抗生物質を販売することは違法です。
薬学的観点からも、自己判断での抗生物質使用は耐性菌の発生・無効治療・副作用(下痢・薬疹・アナフィラキシー等)のリスクを高めるため、医師の診断を経た処方が不可欠です。スペイン国内では近年、抗菌薬耐性(AMR)対策として薬局での管理が厳格化されています。旅行者下痢症が懸念される方は、日本出発前にかかりつけ医に相談のうえ、渡航先を明示して適切な薬を処方してもらうことをお勧めします(詳しくは [[traveler-diarrhea-medicine]] を参照)。
Q2: スペインで花粉症や喘息の薬はどこで買えますか?
A: 抗ヒスタミン薬はFarmaciaで処方箋なし購入が可能、吸入ステロイドは要処方です。
スペインはオリーブ・イトスギ・ポプラなど日本とは異なる花粉が飛散します。セチリジン(Cetirizine)・ロラタジン(Loratadine)・ビラスチン(Bilastine)などの第二世代抗ヒスタミン薬はOTCとして薬局で入手可能です。眠気が少ないことが特徴ですが、アルコールとの併用で中枢抑制作用が増強されることがあるため注意が必要です。
一方、サルブタモール(Salbutamol)などのβ2刺激薬吸入剤や吸入ステロイド薬(フルチカゾン等)は処方箋が必要です。喘息持ちの方は日本で十分な量の吸入薬を処方してもらい持参することを強く推奨します。
Q3: 旅行中に持病の薬が切れた場合はどうすればよいですか?
A: 現地の私立クリニックで処方を受けることが必要です。
スペインの薬局では、他国の処方箋を原則として調剤することができません(EU加盟国の処方箋については相互認証の動きがありますが、日本の処方箋は対象外です)。持病の薬が不足した場合は、現地の医師に診察を受け、新たな処方箋を発行してもらう手続きが必要です。その際、英語で作成した薬歴(薬品名・用量・診断名を含む)と、可能であれば日本の処方箋のコピーを持参すると、医師が同等品を判断しやすくなります。保険会社の緊急デスクに相談すると、適切な医療機関を紹介してもらえることもあります。
Q4: スペインで日本人がかかりやすい感染症は何ですか?
A: 旅行者下痢症・食中毒・日焼けによる熱中症・はしか(麻疹)に注意が必要です。
スペインは食文化が豊かですが、バルやレストランでの生ハム・シーフード・アイスクリームによる食中毒(サルモネラ菌・カンピロバクター等)のリスクがあります。旅行者下痢症の薬学的対処としては、経口補水塩(ORS)による脱水補正を優先し、症状が重度であれば医師の診断のもとロペラミドや抗菌薬を使用します。ロペラミドは腸管運動を抑制するため、細菌性下痢(血便・高熱を伴う場合)では使用を控え医師に相談してください。
また、スペインを含む欧州では麻疹(はしか)の流行が断続的に報告されています。日本のMRワクチン接種歴が2回未満の方は渡航前に接種を検討してください。詳しくは [[vaccine-travel-preparation]] を参照してください。
薬学的に知っておきたい「薬の機内持ち込み・預け荷物」ルール
旅行中の薬の管理は医療安全に直結します。以下のポイントを渡航前に必ず確認してください。
- 液体薬・シロップ剤:機内持ち込みは100ml以下の容器に限り、透明な再封可能袋(1L以下)に入れることがIATAルールで定められています。ただし医薬品は証明書(処方箋・薬剤師の説明書)を提示することで一定量を超えて持ち込める場合があります(航空会社・空港により異なる)。
- 注射薬・自己注射器具:インスリン・エピペンなどは処方箋と医師の証明書があれば機内持ち込み可能です。針は使用済みのものも適切な容器に入れ、現地の医療廃棄物ルールに従って処分してください。
- 麻薬・向精神薬:オピオイド鎮痛薬・ベンゾジアゼピン系薬などは各国の輸出入規制の対象となる場合があります。厚生労働省の輸出確認制度を事前に確認し、必要に応じて証明書を取得してください。
参考文献
-
World Health Organization (WHO). "International Travel and Health." https://www.who.int/publications/i/item/9789241580472
-
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). "Spain – Traveler's Health." https://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/traveler/none/spain
-
厚生労働省. 「海外渡航者のための感染症情報」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html
-
外務省. 「スペイン 感染症危険情報・安全対策」 https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_097.html
-
厚生労働省医薬・生活衛生局. 「医薬品の個人輸入・持込みについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
-
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC). "Country health profile: Spain." https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/country-health-profile-spain
-
Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios (AEMPS). "Medicamentos de uso humano." https://www.aemps.gob.es/medicamentos-de-uso-humano/
監修: 薬剤師(博士(薬学))